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羽田新ルート|品川区議会「25年第1回定例会」質疑応答

品川区議会の「25年第1回定例会」本会議一般質問(2月20日~21日)で、羽田新ルートに関して4名の質疑応答があった。

個人が運用している「starshipglory2 - YouTube」に掲載された議会中継(録画)(2月20日21日)をもとに、全文テキスト化(約700文字)しておいた。

※時間のない方は「質疑応答のポイント」と「雑感」をお読みいただければと。


質疑応答のポイント

※荻野議員に対する答弁は区長室長。それ以外の答弁は全て都市環境部長。


荻野綾香 議員(参政党)2月20日

荻野綾香 議員(参政党)
荻野綾香議員(参政党/無所属、区議1期、薬剤師、50歳)

荻野議員:新ルート、日本の利益になっているのか?

羽田空港の発着枠を増やすために、品川区上空を飛ぶ羽田新ルート問題もございます。新ルート下の区民の生活に負担をかけてまで、果たして日本の利益になっているのか。国にはあらゆる角度から検証を行っていただきたいと思いますが、区としてはどうお考えでしょうか。

区長室長:国の責任において行うもの

区長室長
(区長室長)

次に、インバウンドの指標につきましては、インバウンド消費動向調査の統計等を参考としております。また、羽田空港の機能強化を含む国の様々なインバウンド増加の取り組みがもたらす効果や課題とその対応策につきましては、国の責任において行うものと考えております。

木村健悟(未来)2月21日

木村健悟(未来)
木村健悟議員(無所属、区議4期、元プロレスラー、71歳)

木村:固定化回避の声を上げていきたい

羽田空港の低空飛行ルート問題について質問いたします。2020年3月に羽田空港の新ルートが始まって間もなく5年となりますが、住民から上がる不安の声に対策を講じずにここまで来てしまったのが現状です。この都心を低空で着陸するルートは、南風の時の午後3時から7時のうちの3時間程度、品川区などの上空を南下し着陸するもので、1時間あたり最大90回の発着が可能となり、昼間の国際線発着枠は年間6万回から9万9千回に増え、国際競争力の強化やより多くの訪日外国人旅行者の受け入れ等のためと言われています。


そもそも1978年に成田空港が開港したことによって国際線は成田、国内線は羽田が基本になっていましたが、羽田空港滑走路の沖合展開や在日米軍横田基地が航空管制を担う空域の一部返還などを受けて、発着枠が増加したのを契機に国際線のチャーター便などが運航されるようになりました。その後、ビジネス路線が多い長距離便も羽田に、格安運賃のLCCは成田へ誘致の流れとなり、いつのまにか進んでいたのは都心を低空で飛行するルートでした。


そこで質問です。低空飛行の問題点について、低空飛行だと何が問題になるのかというと、住宅密集地の都心を低空で飛べば当然騒音が起きます。高層マンションになればなおさら大きくなります。防音対策もルート上にある学校や保育園、病院などの防音対策工事については補助をしますが、住宅は対象外としています。住民の方々は泣き寝入りをするしかない状態になっています。


また飛行機からの落下物も数多く見受けられ、2019年度は382件、20年度468件、21年度530件、22年度418件で、1kg以上の落下部品はこの4年間で42件にも上り、都心の住宅街に落下した場合は重大な事故になる可能性が高く非常に危険ですが、住宅の防音対策工事の補助、落下物の問題点についてどのようにお考えでしょうか。お考えをお聞かせください。


質問の2です。区民の切実な声について、羽田空港の低空飛行で専門家や元パイロットから世界一着陸の難しい空港になると言われています。昨年1月2日に起きた日本航空の旅客機と海上保安庁の衝突・炎上事故は羽田空港の過密化や人員体制などの課題が指摘されています。


区民の皆さんからも「騒音で窓も開けられない」「騒音による不動産価値の低下で引っ越ししたくてもできない」「大きな機体が頭上を飛んでいくのは恐怖を感じる」など、切実な声が上がっていますが、どのようにお考えでしょうか。お聞かせください。


質問の3です。区民のアンケートについてです。令和5年、2023年8月から9月に15歳以上の全区民約36万人を対象に調査を実施。約8万7千人が回答し、44.5%が「影響を受けている」「やや影響を受けている」と回答。


昨年令和6年、2024年の12月24日に開催された「第6回 羽田新経路の固定化回避に係る技術的方策検討会」に示された検討結果は翌12月25日、堀越副区長が国土交通省を訪問されて発言されたように、品川区が求めてきた具体的な方策は示されていないのが現状です。


次回開催が1年以上とのことですが、もう少し具体的に早い段階での開催はできないのか。また前回のアンケート実施より約1年半が過ぎており、区民の皆様の意見も変化があるかもしれませんので、もう一度アンケートを実施する予定はありますでしょうか。これもお聞かせください。


次に質問の4です。低空飛行に係る回答について。先ほども述べましたが、次回の検討会はぜひ踏み込んだ内容を提示し、例えば従来の海上ルートへ戻すなどの抽象的でない回答を求め、1日も早い低空飛行ルートの固定化回避の声を上げていきたいと思いますが、区のお考えをお聞かせください。

部長:(固定化回避)早期に行うよう国に対し強く求めてまいります

都市計画部長
(鈴木和彦 都市環境部長(元 都市環境部都市計画課長))

私からは羽田新飛行ルートについてお答えいたします。
はじめに、防音工事補助についてですが、区はこれまでも騒音環境軽減に向けた取り組みを国に対し求めてきており、学校や保育所などへの助成の拡充などが図られてきました。今後もさらなる取り組みの実施について、引き続き国に対し求めてまいります。


次に、落下物対策につきましては、国は平成30年に「落下物対策総合パッケージ」を取りまとめ、世界的に類を見ない基準を策定するなど、落下物対策の充実・強化を進めてきました。区としましては、航空の安全は最優先で確保されるべきものと考えており、安全対策の着実な履行とさらなる取り組みの実施について、引き続き強く国に対し求めてまいります。


次に、区民アンケートについてですが、令和5年8月に実施した全区民アンケートは羽田新飛行ルートによる区民の影響を具体的に表すものとして重く受け止めております。このアンケートの結果とともに、今後も日々寄せられる区民の声一つ一つをしっかりと国に届けながら、区民負担の軽減につなげる方策の提示とその実施を国に対し求めてまいります。


次に、固定化回避検討会についてです。昨年12月の第6回検討会では前回の開催から2年以上の検討期間があったにもかかわらず、具体的な方策が示されませんでした。

もとより区は、具体的な取り組み内容の提示と早期の実施について強く要望してきたところであり、今回の結果は看過できず、検討会翌日の12月25日に国へ申し入れを行いました。申し入れでは改めて、全区民アンケートによる地元区民の声を重く受け止め、区民負担軽減につながる具体的な方策の提示とその実施を強く求めたところです。


今後も、次回検討会の開催と具体的な方策の提示を早期に行うよう国に対し強く求めてまいります。

安藤たい作(共産)2月21日

安藤たい作(共産)
安藤たい作 議員(共産、区議5期、漫画家、宮城教育大学卒、51歳)

安藤:今回示された案は、A滑走路ルートの固定化

次は、「行き詰まりが明らかな固定化回避検討会では区民を守れない。羽田新ルートの撤回を求めよ」です。
航路下では、騒音への苦情が後を絶たず、区民アンケートには、多数の電波障害、大気汚染等の被害も寄せられています。国は前回から2年半以上空いた昨年末、第6回固定化回避検討会を開催。


A滑走路の既存進入方式と組み合わせた上で同時運用可能なC滑走路の飛行方式としてRNP-ARが適当との結論は、目黒、五反田、大崎、大井町の各駅の上を飛ぶA滑走路ルートは固定化したうえ、C滑走路ルートについても、具体的にどこを飛ぶのか、あえて示さない内容でした。


さらに国は「未対応の機材があるため、直ちに導入することは困難。仮に導入したとしても新たな経路は市街地上空を通過することから検討については慎重な対応が必要」と認め、この案が都心低空飛行を回避するものではなく、実現性もないことが浮き彫りとなりました。にもかかわらず国は新たなごまかしを行おうとしています。


1月28日に行われた羽田新ルート国会議連の国交省聞き取りの場で配布された資料には、「今後、海上ルートの実現に資する方策についても国際動向等を踏まえた調査研究が必要」などと書かれていたのです。


後日、共産党が詰めると国は、「現在の滑走路の使い方を前提としたもの。今のところの技術では難しいが、さらに小回りができないかなど、C滑走路ルートを検討するものだ」と答えました。


C滑走路ルートをいくらいじっても、海上ルートにはなり得ません。住民・議会を欺く新たなごまかし手法と分かり、メッキは10日と持たず剥がれ落ちました。

区は固定化回避検討会の翌日に「結果を看過できない」と述べ、区民負担軽減につながる具体的な方策の提示と実施を申し上げました。


今回示された案は、A滑走路ルートの固定化と考えるが、いかがでしょうか。

区が求めている区民負担軽減の具体的な方策とは何か伺います。固定化回避検討会では、区民負担をなくすことはできないと考えますが、いかがでしょうか。


新ルート導入の当初の目的だった1時間あたり90回の離発着は、従来ルートで実現できている実態もあります。行き詰まりが明らかな固定化回避検討会の結論を待つだけでは守れません。国に羽田新ルートの撤回、海上ルートへ戻すことを求めるべき時です。いかがでしょうか。

部長:引き続き国に対し強く求めていく考え

私からは羽田新飛行ルートについてお答えいたします。はじめに、国の固定化回避の取り組みについてです。


区は現在の新ルートを将来にわたり固定化することなく、区民負担軽減につながる具体的な方策を実施するよう大臣との直接面会を含め、一貫して強く求めてまいりました。


第6回検討会で示された飛行経路に係る検討結果について国は、「今回の検証は1時間あたりの到着回数が多いC滑走路の到着経路を対象に検討を実施し、RNP-AR方式の導入が技術的に可能であるとの結論に至ったものである。見直し後のルート案が具体的に決まったものではなく、引き続き固定化回避に向けた取り組みを継続する」としております。


区としましては、継続して行われる検討会において、区民負担軽減につながる具体的な方策の提示とその実施が早期に行われるよう、引き続き国に対し強く求めていく考えでございます。


次に新飛行経路の中止を求めることについてです。
前回開催から2年以上の検討期間があったにもかかわらず、この度の検討会で具体的な方策が示されませんでした。もとより区は、具体的な取り組み内容の提示と早期の実施について強く要望してきたところであり、今回の結果は看過できず、検討会翌日の12月25日に区長名により国土交通大臣へ宛て、申し入れ書を提出いたしました。


今後も、全区民アンケートによる地元区民の声を重く受け止め、区民負担軽減につながる具体的な方策の提示とその実施を早期に行うよう国に対し強く求めてまいります。

安藤:A滑走路ルートのほうは固定化されたと捉えている?

最後、羽田です。「今回、C滑走路についての検討だった」というご答弁でした。区はA滑走路ルートのほうは固定化されたと捉えているのか、そこをちょっと伺いたいと思います。

部長:具体的な内容がまだ示されていないという認識

安藤泰作議員の再質問についてお答えいたします。
第6回の固定化回避検討会で示された検討結果について国は、「検証はC滑走路の到着経路を対象に検討を実施したもので、見直し後のルート案が決まったものではない」としてございます。


区としても、第6回の検討会で具体的な内容がまだ示されていないという認識でございます。

安藤:A滑走路のほうは、固定化そのものではないですか

羽田です。区も今おっしゃったように、今回の検証はC滑走路の到着経路を対象にしたと。A滑走路のほうは、はなから検証や検討の対象にもされてこなかったってことなんですよ。ずっとですよ。固定化そのものではないですか、伺います、A滑走路のですね。そういう認識ないですか。

また、それでも引き続き固定化回避検討会に期待するのはなぜか、伺いたいと思います。

行き詰まりが明らかな検討会に期待することは止め、新ルートに反対し、撤回を求めるべき時ではありませんか。伺います。

部長:(具体的対策)早期に行うよう国に対し強く求めてまいります

安藤泰作議員の再々質問についてお答えいたします。
第6回検討会で示された検討結果について国は、「検証はC滑走路到着経路を対象に検討を実施したもので、見直し後のルート案が決まったものではない」としてございます。


昨年12月に国に対し提出した申し入れ書での「看過できない」とする区の姿勢は、前回開催から2年以上の検討期間があったにもかかわらず、この度の検討会で具体的な方策が示されなかったことに対するものでございます。


区としましては今後も、全区民アンケートによる地元区民の声を重く受け止め、区民負担軽減につながる具体的な方策の提示とその実施を早期に行うよう国に対し強く求めてまいります。

柳沢聡(れいわ)2月21日

柳沢聡(無所属)
柳沢聡 議員(れいわ新選組/無所属、区議1期、介護職員、立正大卒、42歳)

柳沢:他自治体の区長とどのような連携?

最後に羽田の話。羽田新飛行ルートについてです。昨年12月に2年ぶりに開催された国交省主催の固定化回避検討会では、Aルートの固定化が事実上示され、Cルートは一部のみの変更がある程度となりました。区民としても、一区民としても、怒りを覚えるものであり、区長も同じ思いかと存じます。


区長は固定化回避を公約に区長選を戦われ、当選。それから早2年が経ちました。この間に、羽田新飛行ルートを取り巻く状況も大きく変わりました。先ほどのAルートの固定化の件もそうですが、「新ルートでないと不可能」とされていた1時間あたり90本の離発着が従来ルートで何度も運航がされ、品川区上空を飛ぶ必要性に疑問符がつきました。


さらに、区長公約で行った区民アンケートではルート直下にお住まいの方の6割以上が影響を受けており、低空飛行がウェルビーイングの明らかな阻害要因となっている実態も明らかになりました。これは、就任前には知り得なかった様々な状況の変化であり、そして様々な事実が積み上がったことによって、区長の心境にも変化が生じている可能性を感じております。


そこで質問です。品川区全体でも44.5%の方が影響を受けており、区民にとって大きな問題である羽田新飛行ルートについて、この2年間の経過を踏まえて、区長のお考えに変化はあったでしょうか。現状の認識をお示しください。

また、この2年間で、品川区同様にルート直下にあり影響を受けている他自治体の区長とどのような連携を図ってきたのか、具体的な事例があればお示しいただきたいと思います。

部長:都及び関係区で組織する連絡会の場など、品川区の行動を共有

私からは羽田新飛行ルートについてお答えいたします。区長就任後の令和5年8月に実施した全区民アンケートでは、回答した区民の44.5%が新飛行ルートによる影響を受け、そのうち88.9%が騒音の影響を受けているなどとする結果を得たところです。


これらの結果を国に届け、区民負担の軽減につながる取り組みの実施を直接国へ求める必要があるとの考えから、令和5年度2回にわたり、区長等が直接国土交通省を訪問しました。その中では、区民の声をしっかりと受け止めるとともに、固定化回避検討会を含め、区民負担軽減につながる取り組みを提示し実施するよう国へ強く要望したところです。


他方、昨年12月の第6回検討会では前回の開催から2年以上の検討期間があったにもかかわらず、具体的な方策が示されませんでした。区としましては、今回の結果は看過できず、検討会翌日の12月25日に国へ申し入れを行い、改めて全区民アンケートによる地元区民の声を重く受け止め、区民負担軽減につながる具体的な方策の提示とその実施を強く求めたところです。

今後も、次回検討会の開催と具体的な方策の提示を早期に行うよう国に対し強く求めてまいります。


次に他自治体との連携についてですが、東京都および関係区で組織する連絡会の場などにより情報の共有や、国への要望などについて意見交換を行っているところです。品川区の行動を共有することで、他区における国への実際の要望にもつながっているものと認識しております。

今後も関係自治体との連携を図りながら国に対し、区民負担の軽減を求めてまいります。

柳沢:具体的な詳細の内容?

羽田の件ですが、また「他の自治体と意見交換を行っている」というようなお話がありました。具体的に何を行っているのかっていうのをお示ししていただきたいというふうに質問しておりますので、具体的な詳細の内容を是非お聞かせください。お願いします。

部長:区長名要望書、情報共有を行ってきた

柳沢聡区議の再質問についてお答えいたします。関係区市等で組織する連絡会では、森澤区長就任後これまでに実施した3度の国土交通省訪問による区長名要望書の提出などについても、具体的に情報共有を行ってきたところでございます。

こうした品川区の行動を共有することで、他区における国への実際の要望にもつながっているものと認識しているところでございます。

柳沢:具体的な話?

そして羽田の意見交換ですけど、結局具体的な話があまりなかったんで、改めていただければと思います。

部長:羽田新ルートに対する姿勢を要望書として提出

柳沢聡区議の再々質問についてお答えいたします。先ほどご紹介しました関係区市等で組織する連絡会での情報共有でございますが、直接的な区長間のやり取りではございませんが、まさに区長の羽田新ルートに対する姿勢を要望書として提出したというところを共有させていただきまして、そうしたところが他区の実際の要望にもつながっているものというふうに認識しているものでございます。

雑感(極めて不誠実な区の姿勢)

羽田低空飛行見直しのための議員連盟の主催による国交省へのヒアリング(開催25年1月28日)共産党国会議員団(東京事務所)の主催による国交省へのヒアリング(25年2月6日)によって、A滑走路到着ルートが都心低空を通過することは確定し、C滑走路の見直ししても陸域を通過することも避けられないことが確定した(次図)。

固定化回避ルート
固定化回避検討会に係る国交省ヒアリング(共産党、25年2月6日)」より

 

だから、森澤区長が選挙公約で掲げていた「固定化回避を国へ要望」のスタンスは変更する必要がある。「固定化回避」というマジックワードは使えないのである。

それにもかかわらず、いまだに固定化回避の早期実現を国に強く求めるといった区の姿勢は、極めて不誠実ではないだろうか……。

あわせて読みたい

過去の定例会の質疑応答詳細については、以下参照。

2025年6月1日、このブログ開設から21周年を迎えました (^_^)/
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