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羽田新ルート|品川区議会「22年第1回定例会」質疑応答

品川区議会の「22年第1回定例会」本会議代表・一般質問(2月18日)で、羽田新ルートに関して、2名の質疑応答があった。

議会中継(録画)をもとに、全文テキスト化(約4千文字)しておいた。

※以下長文。時間のない方は「質疑応答のポイント」と「雑感」をお読みいただければと。


質疑応答のポイント

※答弁は都市環境部長


安藤泰作 議員(共産、代表質問)

安藤泰作 議員
安藤泰作議員(共産、区議4期、漫画家、宮城教育大学卒、48歳)

安藤:なぜ、国に意見を述べることをこうまでして拒否するのか

76年前、日本国憲法に地方自治が位置付けられました。戦前、地方は国政方針を末端まで浸透させるための中央集権的官僚行政の一環とされ、いやおうなしに、あの侵略戦争に突き進み、アジアで2000万人、国内で310万人が犠牲になりました。

この痛烈な反省のもとに、戦後、日本国憲法が公布され、第8章に地方自治が謳われたのです。国から独立し、自主自律的に住民の意思によって、住民の安全、健康、生活を守り、福祉を充実させることこそ、自治体の役割とされました

しかし、今の品川区政はどうか。コロナ対策、羽田新ルート、消費税や憲法、核廃絶など、あらゆる面で国の悪政から独立して区民の命と暮らしを守るという立場を放棄しています。

濱野区長は、地方自治法を引いて、外交、防衛、エネルギー政策等は国の専権事項であり、地方自治体の首長は口を出すべきではないなどと、役割分担論を主張してきました。

しかし、地方自治法第1条の2の趣旨は、国は地方自治体の自主自律性の発揮を妨げてはいけないというもので、むしろ国に意見を述べることを認めています

なぜ、国に意見を述べることをこうまでして拒否するのか、結局のところ、濱野区長は新自由主義、改憲を志向する自公の政治に賛同しているが、それを表明したくないだけなのではないでしょうか。伺います。

濱野健 品川区長
濱野健 品川区長(4期、元品川区助役、早大卒、74歳)

区長:区長は、国の専管的分野に関して意見を述べるべきではない

「区長は、国の専管的分野に関して意見を述べるべきではない」という、従来からの姿勢について変わるところはありませんので、ご質問の見解につきましても、自治体の長として意見を表明する考えはございません。

奥野晋治 議員(共産、一般質問)

奥野晋治 議員
奥野晋治 議員(共産党、区議2期、東大法卒、塾講師・家庭教師、65歳)

奥野:国に対して羽田新ルート中止を区として求めるべき

次に、「飛び続ける限り、今も将来も区民の暮らしを壊し続ける羽田新ルートは中止を」です。

羽田新ルートの本格運用が開始されて、3月末で2年になります。不動前駅からかむろ坂を超えて住宅街の中に入った西五反田にお住まいの方々にお話を伺いました。ここは新ルートから800mほど離れたところになります。

「飛行機が飛んでくる度に、テレビの画像が乱れ、大相撲の結果が分からなくなる」と言われる方がいました。実際に、新ルート飛行機が飛ぶようになってから、ところどころで聞くようになった電波障害です。

このことを区に伝えると、区は「そういう話は時に聞いている」としながらも、国の案内窓口を紹介するだけで、国も話を聞くだけです。これでは実態把握も解決策も明らかになりません。品川区には「羽田新ルートが原因でテレビの電波障害が起こっている」との相談は、区民から何件あったのか伺います。

国土交通省は電波障害について被害とは認めていません。騒音や落下物の被害と合わせ、電波障害についても、解決には羽田新ルートの中止以外にはないのです。

また、近くに住む別の方は、「続けざまに飛んできた時には、そのうるささに『いい加減にしろよ』という気持ちになる」とおっしゃいます。

さらに、部屋を借りて音楽制作の会社を経営する方は、「飛行機が飛ぶ3時から7時までの間はレコーディングの仕事はできない。このまま続くようなら引越しも考えている。仕事に支障をきたす。また、とにかくうるさいし、落下物などの事故が怖い。人口密集地の上に飛行機を飛ばすことが間違っている。外国では、人口が密集する都市の上は飛行機を飛ばさないのが当たり前。騒音や落下物の危険の中で育つ子どもたち。これが、その子達にとって何をもたらすのか。何十年も飛ぶうちに必ず事故が起こる。これは次の世代、子供たちに残す負の遺産だ」と怒りを露わにされます。

飛行機の騒音のために仕事ができず、移転を考えざるを得なくなっている。このような被害が出ていることを区は把握していますか。伺います。

また、子供への影響をどのように考えているのか、伺います。


この間、品川区は具体的な被害を突きつけても、被害すら認めようとしておりません。

また、区独自の実態調査も拒否。コロナで国際線が減便なのだから、少なくても今はやめるべきとの意見すら国に言わない。それどころか、区の立場は、羽田新ルートは国の判断で決めた国策であるから、国の責任において行うべきもので、区はそれには口を出さないということで一貫しています


羽田新ルート自体の中止には決して踏み込もうとはしません。羽田新ルートという国策には、国策であるがゆえに、決して中止を求めないとは許せません。

テレビの電波障害、仕事の妨害、騒音、落下物の危険、墜落事故の危険、大気汚染、健康被害など、どれも区民の日々の暮らし、仕事、健康などへ深刻な被害を及ぼしています。見過ごしていいわけはありません。羽田新ルートの中止を求めるのは、区政の基本的な役割です。国に対して羽田新ルート中止を区として求めるべきです。なぜ求めないのか、伺います。

都市環境部長
都市環境部長

部長:本事業は国策であり国の責任において実施されるべき

私からは、羽田空港の機能強化についてお答えいたします。
はじめに、新飛行ルートによるテレビ受信に関する相談件数についてですが、令和2年4月の運用開始以降、これまでに10件の声が区に寄せられています。


次に、航空機騒音に関する区民の状況の把握についてですが、騒音に関する94件の声が区に寄せられております。区はこうした声を速やかに国に届け、可能な限りの騒音軽減策等の実施を国に求めてまいりました。


次に、子供への影響につきましても、より一層の安全対策と騒音軽減の取り組みを国に求めてまいります。本事業は国策であり国の責任において実施されるべきものでございます。

区としましては、落下物対策や騒音軽減へのさらなる取り組みと共に新飛行経路を固定化しない取り組みの実施を要望してまいりました。現在、国により固定化回避検討会が設置され、検討が進められています。早急に具体的な方策が示されるよう、国に引き続き求めてまいります

奥野:区として、羽田新ルートの中止を求める考えはない?

それから羽田です。私は騒音によって仕事が出来なくなっている、そういう仕事場の移転を考えている被害が出ている。これを区は把握しているか、ということを伺いました。答弁がなかったと思います。お答えください。


それから、羽田新ルートは国策であって国の責任において実施されるべきものだとおっしゃいました。繰り返しそう言われています。それは区として、羽田新ルートの中止を求める考えはないということでしょうか。伺います。

部長:区としましては、国の結論を今、待っている

羽田空港の機能強化に関する再質問にお答えを致します。

はじめに、騒音についての区民の声というところでございますけれども、区としましても頂いた声、これは適宜、逐一、国のほうへ速やかに届けているところでございます。

様々声をいただいているところでありますが、なにしろ国のほうに対しては、こういった騒音、あるいは落下物に対する不安なんかも声も届いております。

こういったものに対してさらなる対応策、こういったものを考えていただいているというところで、区としましては、国の結論を今、待っているというところでございます。

この固定化回避検討会でございますけれども、これは区が求めて現在検討中というところでございます。具体的な結論を早急に示していただくことが重要だと考えております。

区としましても、国から当初説明のありました地方の活力を保つこと、また、国の経済の発展、こういったことに対して一定の理解を示すというところで、ただ、騒音あるいは落下物に対する環境影響、これは少しでも軽減していただく、こういったことはもう強く国に対して求めてまいりましたし、引き続き国に求めてまいります

奥野:品川区の上を飛ばないことを国に求めていただきたい

それから羽田です。仕事場の移転という単なる騒音の問題ではなく、仕事場の移転という被害を被っているんです。重大な被害だと思います。認識すべきです。これに対するご答弁、依然としてありません

それから、固定化回避検討会。これ、やっぱりごまかしです。「品川の上を飛ぶな」ということでは、飛ばないということでないことは、もう何度もこの間、浮き彫りになっております。

品川区民にとって大切なのは、羽田空港に着陸する飛行機が区の上を飛ぶのか飛ばないのかということです。品川区の上を飛ばなければ区民にとっては問題ないんです。飛べば自分たちがいろんな形で被害を被り、大いに問題です。それだけのことなんです。

そこで羽田に着陸する飛行機が品川区の上を飛ばないことを国に求めていただきたい。それを繰り返し言ってるだけなんです。いかがでしょうか。

部長:固定化回避検討会において一歩一歩着実に具体的な検討が今進められている

私からは羽田空港の機能強化についてお答えを致します。

まず、騒音に関する声、様々ございます。いま議員から紹介のありました、ご商売の話もそうですけれども、そういったことを含めて一つ一つの声、区は大変重く受け止めております

これに対しまして、区としましては、国に対して誠意のある対応をするように強く今までも求めてまいりました。引き続きこういった区民の声を真摯に受け止めまして、国に対して誠意ある対応を求めてまいります


また、固定化回避検討会についてですけれども、こちらのほうでは最初の、当初の頃は航空機のコントロール方法に複数の方法があるということで、地上波を使ったものですとか、目視や衛星を使ったもの、様々あるというところで、ここからいま、12の選択肢から2つの候補に絞り込まれたというところでございます。

測位衛星、それから目視、こういったものを併用した方法について、今検討がなされていると聞いております。この飛行方法につきましては、可能な限り直線の距離が短くて済むような、そういったこともホームページの中でも公開をされておりますけれども、こういった固定化回避検討会において一歩一歩着実に具体的な検討が今進められているというふうに認識をしているというところでございます。


具体的なルートが示されていない以上、今どこのルートをどのように飛ぶかというところが不明でございますので、先ほど申し上げました具体的な内容について早急に公表ができるように、国に対して強く求めているというのが現在の状況でございます。

雑感(地方自治法に依拠した具体的な論戦、今後期待したい)

安藤議員(共産、代表質問)

濱野区長が羽田新ルートに係る答弁に立ったのは18年第3回定例会(10月25日)と20年第4回定例会(11月27日)の2回だけ。あとは毎回、都市環境部長に丸投げ。区長の意を受けた都市環境部長は、「本事業は国策であり国の責任において実施されるべき」と繰り返し答えてきた。

安藤議員が代表質問として、羽田新ルート問題に限らず、外交、防衛、エネルギー政策等も含めた幅広い分野において「区長は、国の専管的分野に関して意見を述べるべきではない」を論破すべく、地方自治法第1条の2(国は地方自治体の自主自律性の発揮を妨げてはいけないというもので、むしろ国に意見を述べることを認めている)を持ち出してきたことは大変興味深い

地方自治法に依拠したさらに具体的な論戦も今後期待したい。

奥野 議員(共産、一般質問)

電波障害、飛行機騒音のために移転を考えざるを得なくなっている音楽制作会社の経営者、固定化回避検討会のごまかしなど、さまざまな事例を掲げ、区として羽田新ルートの中止を国に求めることを求めている。でも、都市環境部長はサラリと受け流す。都市環境部長の鉄壁の守りを打ち破るためには更なる工夫が求められる

そんななか、奥野議員から「品川区の上を飛ばなければ区民にとっては問題ないんです」というNIMBYな意見が飛び出した。これが本心ならば、航路下の他区議会との連携は危ういのではないか……

※NIMBY(Not In My Back Yard 我が家の裏には御免):公共のために必要な事業であることは理解しているが、自分の居住地域内で行なわれることは反対という住民の姿勢を揶揄していわれる概念。

 

(都・区議会の定例会本会議での代表・一般質疑応答まとめ)

(参考)

羽田新ルートに係る本会議定例会の 代表・一般質問の登壇者数・質疑応答文字数推移(品川区議会)

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