品川区議会の「21年第1回定例会」本会議一般質問(2月18日)で、羽田新ルートに関して、中塚亮議員(共産)の質疑応答があった。
ネット中継録画をもとに、質疑応答(約2千文字)を可視化しておいた。
※以下長文。時間のない方は「質疑応答のポイント」と「雑感」をお読みいただければと。
※答弁は都市環境部長
中塚亮議員(共産)
中塚亮議員(共産、区議5期、東京農大中退、45歳)
中塚:品川区民投票条例の提出を改めて求めます
次に、「区長は羽田新ルートの賛否を問う区民投票に、なぜ反対したのか」です。
昨年12月末、品川区民の2万筆を超える直接請求を受け、羽田新飛行経路の賛否を問う品川区民投票条例が品川区議会で審議されました。
コロナ禍という条件のもと、地方自治法で定められた1か月間という期間のなかで、法定数の3倍を超えての提出は住民投票への区民の強い願いの表れです。
国交省は「地元の理解を得て進める」と、「住民合意が実施の前提」と何度も説明。ところが、ただの一度も国は区民に賛否を問うことなく、国交大臣は「地元の理解は得られた」と発言し、昨年3月より本格運用を強行。これに対し、賛否が問われていないのだから、自分たちで賛否を問う条例を作ろう、自分の意見を表明する場を作ろうとの思いが集まり、提出されたのが、今回の区民投票条例です。
ところが、区長は反対意見を付け、議会に提出しました。区議会で条例に反対し、否決とした自民、公明らは許せません。同時に、反対した区長も許せません。区長の反対理由は「区議会および区長が国に対して要望を伝えている」「一定以上の投票数が必要。また、賛成、反対の二者択一式は相応しくない」「コロナ対策実施のなか、1億5,000万円もの経費がかかる」「計画運用は、国の決定事項である」の4点です。
まず、まとめて伺います。
区議会と区長が繰り返し国に対して要望していると、なぜ区民投票条例が必要ないと考えるのか。「二者択一式は相応しくない」と言うなら言うのなら、どのような選択したら区民意見の把握が可能と考えるのか。
コストについて、なぜコロナ対策を理由に慎重であるべきと考えるのか。
国の決定事項に対して、なぜ区民投票は必要ないと考えるのか。
それぞれ4点、伺います。
区長の反対意見は、いずれも難癖でしかありません。「議会と区長が国に要望していることから、区民投票の実施は必要はない」とは全くの屁理屈です。
区民投票はあくまで区民が自らの意思を表明する場であり、その意見の把握です。
国は「地元の理解を得て進めていく」と説明しているのだから、理解の有無を把握するには「賛成」「反対」の二択が合理的です。より、多様な意見の反映ならば、「どちらともいえない」も有効です。
その他、1億5,000万円のコストについても、ほかに削減すべき事業はいくらでもあり、それこそ重要な区民投票の優先順位を低く見ている表れです。
最後に、国策だから区民は口を出すなとは、地方自治を全く理解していない証拠です。
また、国が設置した固定化回避検討会について、国はこの検討会の前提として南風運行ではA/C滑走路を使うことを何度も明言しています。着陸機は、滑走路に向かって直進し、高度を下げます。つまり、A/C滑走路である限り、手前にある品川区を必ず通過します。よって、この検討会は品川の上空を飛行するルートの変更を検討するものではないのです。区民投票の実施に区長は賛成し、羽田新経路の賛否を問う品川区民投票条例の提出を改めて求めますが、いかがでしょうか。
都市環境部長
部長:品川区民投票条例について提出を行う考えはございません
私からは、羽田空港の機能強化についてお答えいたします。
始めに区民投票条例に対する区の考え方についてですが、区民の不安の声に対しては、区議会および区がすでに国に対し取り組みを求める要望を行っております。
落下物対策や騒音環境軽減に向けた更なる取組の実施や都心上空を飛行する新飛行ルートを固定化することがないよう国に求めており、これらの事柄について、まずは最優先に取り組んでもらうことが重要であると考えます。また、二者択一式以外の選択肢についてですが、本来国が丁寧な説明を行った上で、様々な意見を受け止めるべきと考えます。
区民投票にかかるコストにつきましては、現在も緊急事態宣言が発出されるなか、多額の費用をかけて区民投票を実施することは慎重であるべきと考えます。
次に、国の決定事項である点についてですが、新飛行経路の運用は国として進められてきたものであり、当該運用に関する意見調整も含め国が責任をもって実施すべきとの考えによるものです。
最後に、区としましては、品川区民投票条例について提出を行う考えはございません。
中塚:なぜ、国に要望することを最優先に取り組むと、区民投票は実施しないことになるのか
次は、羽田の住民投票です。
「国への要望が最優先で重要だ」と言いますが、だからなぜ、国に要望することを最優先に取り組むと、区民投票は実施しないことになるのか、伺いたいと思います。
こんな屁理屈で区民の意思表示を奪うことは許せません。
部長:総合的に勘案した結果、反対をするという意見を表明したものでございます
私からは、羽田空港の機能強化についてお答えいたします。
まず初めに国の決定事項というところでございますけれども、現在、区では、すでにこの新飛行ルートに対しましては、落下物対策、騒音環境軽減、こうしたものに向けたさらなる取り組みを求めております。
また、合わせて都心上空を飛行する新ルートを固定化することがないよう、これも国に求めているところでございます。
国はこれを受けまして、昨年6月30日、固定化をしないための検討会として、学識経験者を集めて検討するとして、現在検討中でございます。区としては何より、まずこの検討中であるというところについて、具体的な回答を得られるように、現在のところは注視をしていくという考えが最優先で取るべきことだというふうに考えております。
また、この区民投票の反対の理由につきましても、国の決定事項であるということ以外にも二者択一といった投票の方法、また経費、こういったことについて、総合的に勘案した結果、反対をするという意見を表明したものでございます。
雑感(飛行騒音被害の大きい品川区なのだが…)
羽田新ルートが通過する13の区のうち、特に渋谷・品川・港の3区議会では過去2年間、定例会本会議で羽田新ルートに係る代表・一般質問が活発に行われてきた(次表)。
「羽田新ルート|20年第4回定例会(都・区議会まとめ)」より
ところが、今回の品川区議会定例会本会議の代表・一般質問で羽田新ルート問題を取り上げたのは12名のうち1人(共産)だけであった。登壇した7人の自公系議員はもちろん、品川改革連合や投票条例に賛成票を投じた無所属議員も羽田新ルート問題を取り上げていない。
これまで羽田新ルート問題をたびたび取り上げていた生活者ネットは、今回は登壇の機会が得られなかったようだ。
特に、今回(21年第1回定例会) は議員がたったの1名であっただけでなく、文字数(≒質疑応答時間)が過去2年間で最も少ない(次図)。
飛行騒音被害の大きい品川区の定例会本会議の場で、羽田新ルート問題を取り上げる議員が減ったことを区民は知っているのだろうか……。
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