品川区議会の「21年第3回定例会」本会議一般質問(9月16日・17日)で、羽田新ルートに関して、2名の質疑応答があった。
議事録をもとに、全文テキスト化(約4千700文字)しておいた。
※以下長文。時間のない方は「質疑応答のポイント」と「雑感」をお読みいただければと。
※答弁は都市環境部長
奥野晋治 議員(共産)
奥野晋治 議員(共産党、区議2期、東大法卒、塾講師・家庭教師、65歳)
奥野:2つの着陸方式は品川区の上を飛ぶものだと認めますか
続いて、<「心底うんざり」「我慢の限界」「転居したい」ルート直下から悲鳴、羽田新ルートは中止を>です。
大井町より低く飛行機が飛ぶ勝島、東大井地域。南風だけでなく北風時には朝も離陸の被害が。地域の住民の方が集めた声を紹介します。
「飛行機が通過し始めるとイライラし、仕事をしても集中できず、全くくつろぐことができない」「強風にあおられ、機体が横に流される飛行機を度々目にし、恐怖を感じる」「来ては去りとエンジン音が繰り返され、イライラが募って、我慢の限界を迎えていく。イライラを家人にぶつけるようになった」「早朝から離陸音が聞こえ始め、朝の支度や子どもたちが学校に行くときの間もずっとうるさくて、子どもたちが出払った後リラックスしたいのにまだうるさくて、着陸来たら死ぬほどうるさいし、深夜まで音が聞こえて心底うんざり」「体調不良の際に耐えられず外出したことが何度もある。朝起きると今日も飛ぶのだろうかと憂鬱な気分になる」「頭上からの威圧が非常にストレス。落下物が一番怖い。子どものことを考えると転居したい。子育てしたくて選んだのに生活が崩れてしまう」。
ルート直下で区民の平穏な生活が壊されている実態が明らかになりました。コロナで減便の下でもこれだけの被害があり、区民は新ルートに憤りを感じています。
区はこうした区民の悲鳴をつかんでいるのか、伺います。しかし、区民の被害を把握する調査は行われていません。それは騒音などを国や区が被害だと捉えていないからです。かつて区は1976年に航空機騒音を公害と捉え、住民にどのような被害があるのか、訪問し、意識調査を実施。時間帯や疾病など生活と身体への影響を調査し、「心理的、肉体的に大きな悪影響を受けており、抵抗力の弱い老人、乳幼児は特に著しい」とし、国等に対し、飛行経路、運行方法の改善などを求めました。
区民の感じるストレスや恐怖と、それが心と体に及ぼす影響の調査を区が実施することを求めます。いかがでしょうか。
これまで区は2か所で騒音測定を実施。しかし、ルート直下の測定局がありません。区は「増設の考えはない」と説明しますが、直下の被害状況を把握するために測定局を増設すべきです。なぜ区はルート直下に騒音測定局を設置しないのか、伺います。
被害に苦しむ区民を欺くのが国の“固定化回避検討会”です。先日、第4回を開催。2つの着陸方式を選定し、さらに検討を進めるもの。しかし、滑走路の使い方を変えずに2つに絞ったところで、着陸直前は安全のため一定の直線距離が必要で、やはり品川を飛ぶことに変わりありません。
検討会が決定した2つの着陸方式は品川区の上を飛ぶものだと認めますか、伺います。
区は国に固定化回避は求めますが、品川を飛ばないルートや中止を求めることは決してありません。「区民の安全安心第一」と説明しながら容認する姿勢です。
区長は新ルートの中止を求めずに区民の安全安心を守れるとは思っているのか、伺います。
都市環境部長
部長:早急に具体的な方策が示されるよう国に求めてまいります
私からは、羽田空港の機能強化についてお答えいたします。
初めに、区民の声の把握についてですが、令和2年4月の本格運用開始以降、これまでに、落下物や騒音、コロナ禍での運用などに対する約400件の声が区に寄せられています。区は、こうした声を国に届け、落下物対策や騒音軽減策の実施を求めてまいりました。
今後も引き続き地域の声をしっかりと国に届けるとともに、より一層の騒音軽減策や落下物防止の取組を国に求めてまいります。
次に、新飛行ルート運用に対する影響調査についてですが、調査の実施は、事業主体である国の責任において判断すべきものと考えます。区が独自に調査を行う考えはありませんが、今後も区に寄せられた区民の声をしっかりと国に届けてまいります。
次に、騒音測定局の設置についてですが、現在の測定局は、環境省の「航空機騒音・測定評価マニュアル」に基づき、可能な限り条件に合う施設を選定したもので、増設を行う考えはございません。
次に、固定化回避検討会で示された2つの飛行方式についてですが、国は、導入の可能性があるものとして選定したとしており、今後、それぞれの飛行方式について具体的な検討を進めるとしています。区としましては、引き続き検討結果を注視し、早急に具体的な方策が示されるよう国に求めてまいります。
奥野:認めるか、認めないか
それから、羽田です。
固定化回避検討会で選定した2つの着陸方式、品川の上を飛ぶものだと認めますかと伺いました。これにはお答えになっていません。この点について端的に、認めるか、認めないか、お答えください。
それから、私は冒頭に直下の悲鳴をご紹介いたしました。この被害を悲鳴と捉えているのか、寄り添う姿勢が全く見えなかったので、この点を捉えているのか伺います。
部長:具体的にどこを通るのか、これは今後検討されるという事柄
私からは、羽田空港の機能強化のご質問にお答えいたします。
初めに、品川区内の具体的な飛行ルートというところでございますけれども、これは固定化回避検討会が令和3年8月25日に開催された後に、8月27日に大臣会見がございました。その中で、今後は具体化、この固定化回避策を具体化していくために、具体的な経路案の検討などの作業を進めていくという発言がございました。
したがいまして、現在のところ区といたしましても、具体的にどこを通るのか、これは今後検討されるという事柄ですので、それについては引き続き注視をして、品川区として必要なことを国に求めていくことが重要だというふうに捉えております。
また、地域の声、様々あることは承知しておりまして、この声の捉え方というところでございますけれども、地域の皆様方からは、安全性ですとか、あるいは騒音、そういったことに対する不安の声と、それからあと、国は今後そういったことに対してどういった考え方でどういう対策を取っていくのか、安全対策、騒音対策についてどういったことを行っていくのか、そういった問合わせも非常に多いというところでございますので、まだまだ区といたしましては国に対して、地域に対して必要な説明と情報提供をしっかりとしていただく、これがまだまだ不足しているというところで、これを引き続き求めていくという考えでございます。
奥野:品川の上を飛ぶというのは明らかではないでしょうか
それから、羽田です。
航空専門家の方が、品川の上を飛ぶと言っているんです。それが、まだ分からないから見るということは成り立たないと思いますけれども、その点、品川の上を飛ぶというのは明らかではないでしょうか。この点、やはり伺います。それから、この悲鳴のような声、私が紹介した声ですけれども……
本多健信 議員(自民党、区議7期、読売東京理工専門学校卒、元大和ハウス販売、54歳)
議長:質問をまとめてください
奥野議員、質問をまとめてください。
奥野:新ルートの中止こそが求められる解決策だ
情報提供するとか、騒音軽減策とかいうことは、もはや成り立たないような声だと思うんですね。
新ルートの中止、品川を飛ばさせないということによってしか、この声、悲鳴をなくしてしまうことはできないんだと思います。
新ルートの中止こそが求められる解決策だというのは明らかではないでしょうか。この点考えていただきたい。伺います。
部長:早急にこの固定化回避の議論について結論、強く要望してまいります
私からは、羽田空港の機能強化の質問にお答えをいたします。
まず、具体的な飛行ルートについてですけれども、様々専門家の声もあるというところでございますが、この固定化回避検討会が昨年6月30日に開かれて以降、現在までに、当初12通りほどの技術的な方策があったところ、現在は2通りまで議論を積み重ねて絞り込まれてきたというところもございます。
その中には静止衛星を使ったり、あるいは目視をしながらといった、そういった具体的な議論もされてきているところでございますので、現在のところは、やはり国の今後の議論を待つというところが重要だというふうに考えております。
そして、併せて、それとともに、区としましても、日々届けられます区民の皆様の声を国に対して届けまして、早急にこの固定化回避の議論について結論を出していただきますよう、強く要望してまいります。以上でございます。
西本たか子 議員(無所属)
西本たか子議員(無所属、区議5期、東京農工大卒、60歳)
西本:固定化回避ではなく、固定化ではないでしょうか
最後に、安心・安全なまち品川区にするために、羽田空港新ルートの運用は撤回すべきです。
国土交通省では、羽田新経路の固定化回避に係る技術的方策検討会を開催しています。
この検討会では、A・C滑走路に着陸する前提で検討がなされています。この滑走路を使用する限り、品川区の上空は必ず通ることになります。品川区にしてみれば、固定化回避ではなく、固定化ではないでしょうか。
技術的に検討しているルートを地図上に落とし込み、示すべきです。コロナ禍で当初の計画から大幅に変わっているのですから、以前のルートに変えるよう強く要請をすべきです。さらに、固定化回避検討会をどのように捉えているか、ご見解を伺います。
都市環境部長
部長:具体的な方策が早急に示されるよう国に求めてまいります
私からは、羽田空港の機能強化についてお答えいたします。
初めに、固定化回避検討会に対する区の評価についてですが、令和3年8月25日に開催されました第4回検討会では、導入の可能性のある2つの飛行方式が選定されたということで、一歩進んだ検討状況が示されたと受け止めております。
次に、検討結果の地図への反映についてですが、国では今後、選定した飛行方式について具体的な検討を行っていくとしております。地図への反映につきましては検討が進む中で示されると考えますが、区としても具体的な方策が早急に示されるよう国に求めてまいります。
西本:ちゃんと地図に落としてください
それから、羽田空港の新ルートです。A滑走路、C滑走路で着陸というのは、これは誰が考えても品川区の上空を通るんですよ。それをちゃんと示してください。
国の方向を待っているのではなくて、品川区から要求してください。ちゃんと地図に落としてください。どこを通るルートを考えているんですかということを要望していいと思うんです、品川区として。品川区の住民の皆さんの命がかかっているんですから……
塚本よしひろ 副議長(公明党、3期、価大学卒、57歳)
副議長:質問をまとめてください
西本たか子君、質問をまとめてください。
西本:待ち状況ではなくて、積極的なアプローチが必要
はい。なので、そこの待ち状況ではなくて、積極的なアプローチが必要ではないかということを私は主張しておりますので、それに対しての答弁をお願いします。
部長:方策が早急に示されるよう引き続き国に対して求めてまいります
私からは、羽田空港の機能強化のご質問にお答えいたします。
まず、固定化回避検討会におきましては、現在、通算4回開催されておりまして、これまでいわゆる先端技術がどのように飛行ルートに適用できるかということが検討されまして、その検討の積み重ねによって、12通りから今は2通りまで絞り込まれたという状況だというふうに認識をしております。
そうした中、現在採用できるこの技術とともに、現在の航空機にそれがどういったような形で適用して、具体的なルートとして生かせていけるかというところは、これから国として検討を進めるというふうに示されているところでございますので、区といたしましても、その検討状況は注視しなければいけないと考えますが、その結論についても、具体的な飛行経路ですとか、あるいは便数などもございますが、そうした方策が早急に示されるよう引き続き国に対して求めてまいります。
雑感(部長の鉄壁の守りvs二番煎じ質問)
2人の議員が共通して取り上げたのは、固定化回避検討会に係る事項。
奥野議員(共産)
奥野議員(共産)は、固定化回避は品川区上空を飛ぶものだと認めますかと迫るが、都市環境部長に「今後検討されるという事柄」とかわされる。
じつは、固定化回避は品川区上空を飛ばない検討なのかと迫るやり方は、前回の定例会本会議一般質問(6月23日)で同じ共産党の安藤泰作 議員と同じ。そのときも部長に「具体的なルートを予測することは困難」とかわされていた。
西本議員(無所属)
西本議員(無所属)は、検討しているルートを「ちゃんと地図に落としてください」と迫るが、都市環境部長は「早急に示されるよう引き続き国に対して求めてまいります」と受け流す。
じつは、この「検討ルートを地図に落とせ」論法は、前回の定例会本会議一般質問(6月23日)で吉田ゆみこ 議員(ネット)が畳みかけるように使っていた。そのときも部長に「国に対して伝えていきたい」とかわされていた。
都市環境部長
羽田新ルートの答弁に逃げ回る濱野区長の代わりに、毎回苦しい答弁を強いられてきた都市環境部長。最近は都市環境部長のごまかし方に益々磨きがかかってきた。
ちょっとやそっとじゃ部長から有効な答弁を引き出すことは難しい。まして前回の定例会の二番煎じ質問ではムリではないか。
都市環境部長の鉄壁の守りを打ち破るために、都議会や他の区議会議員の質疑応答実績を研究されてはいかがだろうか……。
- (都・区議会の定例会本会議での代表・一般質疑応答まとめ)
- 21年定例会(第1回、第2回、第3回、第4回)
- 20年定例会(第1回、第2回、第3回、第4回)
- 19年定例会(第1回、第2回、第3回、第4回)
(参考)
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