品川区議会の「24年第1回定例会」本会議代表・一般質問(2月20日~22日)で、羽田新ルートに関して3名の質疑応答があった。
個人が運用している「starshipglory - YouTube」に掲載された議会中継(録画)をもとに、全文テキスト化(約4千600文字)しておいた。
※以下長文。時間のない方は「質疑応答のポイント」と「雑感」をお読みいただければと。
※部長答弁は都市環境部長。
- 若林ひろき 議員(公明)【代表質問】2月20日
- 安藤たい作 議員(共産)【代表質問】2月21日
- 柳沢聡 議員(無)【一般質問】2月22日
- 雑感
- 【参考】品川区議会の定例会本会議での代表・一般質疑応答(まとめ)
若林ひろき 議員(公明)【代表質問】2月20日
若林ひろき 議員(公明、区議6期、元住友倉庫、創価大卒、62歳)
若林:事故等発生時、区民や区への速やかかつ丁寧な説明が必須
羽田衝突事故については、1月2日、事故発生の3日後、区長は国交省に対し申し入れを行いました。公明党としても、事故原因究明と再発防止、損傷設備の早期復旧、事故アクシデント発生時の速やかで丁寧な区民および区への情報提供、固定化回避の早急な具体化を求める要望を行います。
そこで区の申し入れの内容とそれに対する国の対応をお聞きします。
また、トルコ航空機のルート逸脱と日本航空不適切整備事案について、国からの説明の経緯・経過をお聞きします。
事故等発生時は特にルート直下の区民や区への速やかかつ丁寧な説明が必須ですが、区から国に対して強く要望すべきと思いますが、お考えをお聞きします。
部長:引き続き国に対し強く求めてまいります
(都市環境部長)
次に、羽田空港衝突事故等に関するご質問にお答えをいたします。
はじめに、区の申し入れと国の対応についてですが、令和6年1月5日に事故の早急な原因究明、再発防止と区民への丁寧な説明の実施を区長名により国に強く求めたものでございます。
国は令和6年1月9日に緊急対策を表明し、有識者を含めた委員会を1月19日に立ち上げ、安全安心に向け検討を進めていくとしています。
次に、令和5年9月22日のトルコ航空機ルート逸脱では、国からは事案の判明後直ちに区へ報告が行われました。その後、令和5年11月20日にトルコ当局および航空会社から国に対し、再発防止策を確実に実施していく旨の回答があったと報告を受けております。
また、JALエンジニアリングの不適切整備事案でございますけれども、令和5年12月22日付で同社に対して改善勧告が出され、令和6年1月16日に国に対し改善書が同社から提出されております。
次に、事故発生時の迅速かつ丁寧な説明を国に求めることについてでございますが、1月2日の事故発生時には緊急時の連絡として、国より迅速な情報提供を受けました。
また、国のホームページ等においても速やかな周知が行われましたが、専門的な用語により区民にとって分かりづらい部分もありましたため、丁寧な情報提供を国に対し求め、その都度改善が図られております。
区といたしましては、区民の不安払拭に向け、迅速かつ丁寧な説明や情報提供を引き続き国に対し強く求めてまいります。
安藤たい作 議員(共産)【代表質問】2月21日
安藤たい作 議員(共産、区議5期、漫画家、宮城教育大学卒、50歳)
安藤:大臣に羽田新ルートの中止を申し入れなかったのか
次は、「羽田空港での衝突事故を受け、過密を加速する羽田新ルートは改めて撤回を求める」です。
都心のど真ん中を低空で飛行する新ルート強行からまもなく4年。品川区民の生活に広く影響を及ぼしていることが、区民アンケートにより明らかになりました。回答者全体の44%、ルート近傍地域では6割超が生活や暮らしの中で、影響を受けていると回答。行政による実態調査で8万7,086人もの回答が寄せられ、被害が見える化した意義は大変大きいと思います。
しかし、区長は大臣に直接結果を手渡したにもかかわらず、反対や中止を口にしませんでした。なぜ、区長はこれだけのアンケート結果が出たにもかかわらず大臣に羽田新ルートの中止を申し入れなかったのか、伺います。
アンケートでは「影響を受けている」と回答した方のうち、具体的な影響として挙げたのは1位騒音88.9%に続き、落下物など安全性の不安が61.8%で2番目でした。
こうした不安が明らかになるなか、1月2日の羽田空港内の衝突事故は区民に衝撃を与えました。1月11日、共産党国会議員団東京事務所は緊急の国交省レクチャーを開き、私も参加しました。
国は、事故当時新ルート運用で増やした1時間あたり90便の運用だったと明かしました。
また、太田の区議は新ルート運用後、飛行機の滑走路滑走路離脱遅れとゴーアラウンドが増えていると述べ、増便が事故の遠因ではないかと質問。国交省は否定できませんでした。
報道でも羽田空港の過密ぶり、管制官への負担が指摘されています。しかし、国は正式な事故原因が調査中にもかかわらず、1月8日C滑走路の運用再開に合わせ、羽田新ルートの運用を再開しました。事故が起こった中、増便を目的に過密を加速する羽田新ルートは中止を求めるべきです。いかがでしょうか。
部長:区民負担軽減につながる方策の実施を強く求めてまいります
(都市環境部長)
私からは、羽田新ルートについてお答えをいたします。
令和5年12月1日に、区長が国土交通省を訪問し、ルート下近傍地域での騒音による影響が大きいとするアンケートの速報結果を踏まえ、固定化回避検討会において、区民負担軽減につながる取り組みを提示し、実施することを大臣に直接求めました。
大臣からは「重いアンケートであり、しっかり受け止め検討する」と応じていただきました。区としましては、引き続き国に対し、区民負担軽減につながる方策の実施を強く求めてまいります。
次に、羽田空港衝突事故について、区は令和6年1月5日に国に対し事故の早急な原因究明と再発防止に取り組むとともに、区民への丁寧な説明の実施を強く求めました。
国は令和6年1月9日に航空の安全安心確保に向けた緊急対策を行うことを表明をしまして、外部有識者を含めた対策検討委員会を1月19日に立ち上げ、衝突防止など安全安心に向けた検討を進めていくとしております。
区としましては、引き続き国に対し安全安心対策の実施を求めてまいります。
安藤:なぜ(新ルート)撤回を求めないんでしょうか
羽田です。アンケート結果の重要性を私たちも評価し、区の評価も一定伺えたかなと思うんですけども。であるならば、なおさら、従来となぜ同じ対応なのか理解できない。
なぜ撤回を求めないんでしょうか。区長の考えをお聞かせいただければと思います。
部長:解決策の提示・実施、国に引き続き働きかけていきたい
私から羽田新ルートについてお答えをいたします。
羽田新飛行ルートにつきまして、区はこれまで一貫して、区民の不安の払拭のために国へ丁寧な説明と周知を継続して行うよう求めてまいりました。
新ルートの固定化を回避して、技術革新を踏まえて検討を行うということをいま区が求めたことに応じて、現在国において検討がなされているところです。
区長が国土交通省を訪問しまして、直接大臣にアンケート結果を手渡し、その後大臣からは「重いアンケートであり、しっかり受け止め検討する」という回答をいただいたところです。
今後、区としましては、このアンケート結果を国にしっかり受け止めてもらいまして、具体的な解決策を提示して実施してもらうよう国に引き続き働きかけていきたいと考えております。
柳沢聡 議員(無)【一般質問】2月22日
柳沢聡 議員(れいわ新選組/無所属、区議1期、介護職員、立正大卒、41歳)
柳沢:区民のウェルビーイングのために国にはっきりと反対?
次は、羽田新飛行ルートについてです。
昨年夏に、区長公約で行われた品川区民アンケート。その結果から、なんと区民の半数のウェルビーイングを1円も使わずに向上させる方法発見しましたので、区長に取り急ぎ報告いたします。
それは、飛行ルートの中止です。なぜなら、「新飛行ルートにより影響を受けている」と答えで区民は44.5%に上り、さらに68.1%がルート直下にお住まいの方との結果が出ております。
つまり、ルート直下にお住まいの方の多数が騒音や落下物の不安によりウェルビーイングを阻害されていることが分かりました。私が生まれ育ち、今も住んでいる東大井もルート直下のため、地元の方から多くの怒りと苦情の声をいただいております。
区長はこのアンケート結果を携えて、昨年12月に国交省を訪れ、大臣に要望書を手渡ししました。その際の区長の声明を読み上げます。
区民アンケートの速報結果を踏まえ、現在国土交通省において検討が進められている固定化回避を含め、区民負担軽減につながる取り組みを提示し、実施することを求める。
この文章ですと、区長の新ルートに対するスタンスや熱量が分かりにくいなと感じます。
そこでお伺いします。新飛行ルートにより、約半数の区民に悪影響が出ていると、民意がはっきりと示されたアンケートを踏まえて、区長のお考えがどう変化したのか。
区民のウェルビーイングのために国にはっきりと反対と言うのか。もしくは、区民アンケートの結果に関係なく、浜野前区長の路線を継続されるのか、区長のお考えをお示しください。
なお、区長においても、区議においても同様ですが、我々はもれなく、品川区民の投票によって選ばれた、区民の代表者としてこの場にいます。国が決めることだからと遠慮する必要は一切ございません。
区民の声を国に届けるのも我々の大切な仕事です。国に言われるがままでいいのであれば、品川区議会の存在意義も問われます。
新飛行ルートによって、ウェルビーイングを阻害されている多くの区民は、区民の代弁者として、区長が先頭に立って国に新飛行ルート反対の声を上げてほしい。その姿勢が大きな希望になる、そう考えているはずです。ご回答のほど何卒お願いいたします。
部長:区民負担軽減につながる方策の実施を強く求めてまいります
(都市環境部長)
私からは、羽田新飛行ルートについてお答えをいたします。
令和5年12月1日には、区長が国土交通省を訪問しまして、ルート下近傍での騒音による影響が大きいとするアンケート結果の速報を踏まえ、固定化回避検討会において、区民負担軽減につながる取り組みを提示し、実施することを大臣に直接求めました。
大臣から「重いアンケートであり、しっかり受け止め、検討する」と応じていただきました。区としましては、引き続き国に対し、区民負担軽減につながる方策の実施を強く求めてまいります。
柳沢:区長の言葉で反対という言葉が聞けるのか
羽田においてなんですけれども、「引き続き国に強く求める」ということなんですけれども、これについて、何をどのように求めていくのかということや、やはり強く求めていく上で、その先頭にやはり立つのは区長になると思うので、ぜひ区長の言葉で反対という言葉が聞けるのかどうかっていうことを改めてご答弁いただきたいと思います。
部長:区民負担の軽減、強く求めた
私からは、羽田新飛行ルートについてお答えをいたします。
まずは、区民アンケートの結果ですけれども、「影響を受けている」「やや影響を受けている」合わせて44.5%、また、「影響を受けていない」「あまり影響を受けていない」合わせて38.4%、そういった集計結果が出ております。
そうした中で特に騒音について88.9%の方が「影響を受けている」と回答した中のさらに内数でございますけれども、そういった客観的な数値分析結果をもとに、国にそれを提示しまして、固定化回避検討会において現在技術的な検討がされているということも踏まえまして、区民負担の軽減につながる取り組みを固定化回避検討会において提示し、また、実施をしていただくように強く求めたものでございます。
柳沢:区長主導で是非、国に働きかけてほしい
羽田のことに関してなんですけど、先ほどご答弁で固定化回避検討会ってありましたけど、結局それを行われてないですよね。
そういったことで、当然私も生まれ育ったこの地元品川、地元を背負って質問しています。
東大井、私の地元もルート直下でものすごい影響を受けていて、皆さん本当に困られています。そういったことで、是非最大の被害者である新ルートの最大の被害者である品川区から本当に声を上げて欲しいという声を多数いただいておりますので、ぜひ固定化回避検討会、行われてないわけでもあるので、その辺も含めて、区長主導で是非、国に働きかけてほしいというように考えておりますので、ちょっとご答弁お願いします。
部長:固定回避、検討結果をお示しくださいと(国に)伝えた
羽田新飛行ルートについてお答えをいたします。
まず固定化回避検討会ですけれども、こちら現在検討中ということで、国からは聞いておりまして、技術的な進展も踏まえて、検討しているということで。
実際に昨年の秋頃に開催予定だという説明があったんですけれども、現在さらに詳細な検討をしているというところで、現在のそれがまだ開催されてないという状況で、今後開かれるというふうに考えております。
ただ、開かれていないというところもありまして、区としましてもアンケート結果もありましたので、それを届け、そして固定回避検討会を開催し、そしてそこで具体的な解決策を、検討結果をお示しくださいというふうにお伝えをした次第でございます。
雑感
若林 議員(公明):羽田新ルートに反対しているわけではない!?
羽田衝突事故、トルコ航空機のルート逸脱と日本航空不適切整備事案を取り上げるも、羽田新ルートに反対しているわけではない!?
安藤 議員(共産):再々質問なし
いつもは再質問、再々質問と3回は切り込むのに、今回は再質問の2回までで、再々質問なし。
次回は、環境部長の耳タコ答弁を封じるような、鋭い質問を期待したい。
※(追記2月23日)品川区議会では「代表質問は再質問まで」(安藤議員からの情報)というルールになっているようだ。
柳沢 議員(れいわ新選組/無所属):質疑は新鮮だった
柳沢聡 議員(れいわ新選組/無所属)の質疑は新鮮だった。
「人生初」とういう一般質問は、品川区議会の場合、1人会派の議員が本会議上で質問できる時間は年間1回20分のみだという。
「区民の半数のウェルビーイングを1円も使わずに向上させる方法発見しましたので、区長に取り急ぎ報告いたします」という出だしが、なんとも初々しい。
「『引き続き国に強く求める』ということなんですけれども、(略)ぜひ区長の言葉で反対という言葉が聞けるのかどうかっていうことを改めてご答弁いただきたいと思います」など、区長からの答弁を3度呼びかけた。
でも、区長は環境部長に答弁を丸投げ。環境部長からは耳タコ答弁しか返ってこなかった。
【参考】品川区議会の定例会本会議での代表・一般質疑応答(まとめ)
19年以降の各党派の登壇状況を可視化したのが次表。共産は毎回、羽田新ルート問題を取り上げている。
19年以降の羽田新ルートに係る登壇者数・文字数(≒質疑応答時間)を次図に示す。
各定例会の質疑応答詳細については、以下参照。
- 23年定例会(第1回、第2回、第3回、第4回) 予算特別委員会、決算特別委員会
- 22年定例会(第1回、第2回、第3回、第4回)
- 21年定例会(第1回、第2回、第3回、第4回)
- 20年定例会(第1回、第2回、第3回、第4回)
- 19年定例会(第1回、第2回、第3回、第4回)
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