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不慮の事故による死亡者数、交通事故よりも転倒・転落が多い

不慮の事故といえば、交通事故や転倒・転落、溺死・溺水や窒息など。毎日多くの人が亡くなっている。

特にテレビは”絵になるニュース”を取り上げる傾向があるので、実際の死亡者数と死亡要因との関係を正しく伝えていない場合がある。代表的なのが高齢ドライバーによる死亡事故。世の中には暴走老人が多いのか。

厚労省が公表している人口動態調査のなかの「不慮の事故」データをひも解いてみよう。

※投稿2022年4月9日(更新2024年4月16日:2022年データ反映)


もくじ

不慮の事故による死亡者数、交通事故よりも転倒・転落が多い

交通事故による死亡者数は年々減少し、22年は3,541人(9.7人/日)。

いまや不慮の事故による死亡要因は、1位「転倒・転落」、2位「窒息」、3位「溺死・溺水」となっている(次図)。

特に、転倒・転落は漸増しており、17年に急増したあと1万人を目前に頭打ちとなっていたが、21年に1万人を突破し、22年は11,569人(31.7人/日)。

「不慮の事故」の種類別にみた死亡者数の推移「第5.13表 死因(死因簡単分類)別にみた性・年次別死亡数及び死亡率(人口10万対)」を元に筆者作成

交通事故による死亡する割合、高齢者よりも「15~29歳」が高い

22年の不慮の事故による死因別・年齢別の人数を可視化したのが次図。

不慮の事故による死亡者数は65歳以上が圧倒的に多い。特に、「転倒・転落」「窒息」「溺死・溺水」の死亡者数は80歳以上で跳ね上がる。

「不慮の事故」死亡者数の年齢別内訳(2022年)
「第5.31表 不慮の事故による死因(三桁基本分類)別にみた年齢(特定階級)別死亡数」を元に筆者作成

ところが、絶対人数ではなく、死亡数百分率(=当該死亡者数÷当該対象総人口×100)で可視化すると、違った姿が見えてくる(次図)。

マスメディアの報道では、暴走老人が多い印象を受けるが、割合としては「15~29歳」が高い。多くの老人は交通事故を起こしていないのである。

「不慮の事故」死亡数百分率の年齢別内訳(2022年)
「第5.32表 不慮の事故による死因(三桁基本分類)別にみた年齢(特定階級)別死亡数百分率」を元に筆者作成

不慮の事故の内訳

同様に「転倒・転落」「窒息」「溺死・溺水」の各内訳を見てみよう。

(転倒・転落)65歳以上、毎日26人が滑ったり、躓いたりして死亡

転倒・転落の死亡者数のうち、65歳以上の「スリップ、つまづき及びよろめきによる同一平面上での転倒」が圧倒的に多い(次図)。

65歳以上は9,369人(25.7人/日)。毎日26人が滑ったり、躓いたりして死亡に至っている。

「転倒・転落」死亡者数の年齢別内訳(2022年)
「第5.31表(略)」を元に筆者作成(以下、同じ)

 

死亡数百分率で見ても、65歳以上の「スリップ、つまづき及びよろめきによる同一平面上での転倒」の割合が圧倒的に高いことに変わりはない(次図)。

「転倒・転落」死亡数百分率の年齢別内訳(2022年)「第5.32表(略)」を元に筆者作成

(窒息)不慮の窒息で死亡する割合、老人よりも乳幼児が高い

不慮の窒息の死亡者数は次の4項目に分かれている。

  • 胃内容物の誤えん<嚥><吸引>
  • 気道閉塞を生じた食物の誤えん<嚥><吸引>
  • 気道閉塞を生じたその他の物体の誤えん<嚥><吸引>
  • 詳細不明の窒息

多いのは65歳以上の食物の誤えんによる死亡(次図)。年間4千人を超える人が亡くなっている(4,297、11.8人/日)。年を取ると正月の餅に限らず、固形物が飲み込みにくくなるのだろう。

「不慮の窒息」死亡者数の年齢別内訳(2022年)
「第5.31表(略)」を元に筆者作成(以下、同じ)

絶対人数ではなく、死亡数百分率で可視化すると、違った姿も見えてくる(次図)。

「胃内容物の誤えん」や「食物の誤えん」など、不慮の窒息で死亡する乳幼児の割合は老人よりも高いのである。

「不慮の窒息」死亡数百分率の年齢別内訳(2022年)
「第5.32表(略)」を元に筆者作成

(溺死・溺水)浴槽で死亡する割合、10~14歳は65~79歳と同じくらい高い

不慮の溺死及び溺水の死亡者数は次の2項目に分かれている。

  • 浴槽内での及び浴槽への転落による溺死及び溺水
  • 自然の水域内での及び自然の水域への転落による溺死及び溺水

特徴的なのは65歳以上の浴槽での死亡数が多いこと(6,307人、17.3人/日)。

「不慮の溺死及び溺水」死亡者数の年齢別内訳(2022年)
「第5.31表(略)」を元に筆者作成(以下、同じ)

絶対人数ではなく、死亡数百分率で可視化すると、違った姿も見えてくる(次図)。

5~9歳は、海や川など、自然水域での死亡事故の割合が高い。
10~14歳は、自然水域だけでなく、浴槽での死亡事故の割合が65~79歳と同じくらい高い。

「不慮の溺死及び溺水」死亡数百分率の年齢別内訳(2022年)
「第5.32表(略)」を元に筆者作成

まとめ

不慮の事故による死亡者につき絶対人数ではなく、死亡数百分率(=当該死亡者数÷当該対象総人口×100)で可視化すると、違った姿が見えてくる。マスメディアの報道では、暴走老人が多い印象を受けるが、割合としては「15~29歳」のほうが高い。多くの老人は交通事故を起こしていないのである。

  • 転倒・転落
    転倒・転落の死亡者数のうち、65歳以上の「スリップ、つまづき及びよろめきによる同一平面上での転倒」が圧倒的に多い。毎日26人が滑ったり、躓いたりして死亡に至っている
  • 窒息
    年寄りが食べ物をのどに詰まらせて死亡する印象が強いが(年間約4千人)、死亡数百分率で見ると、不慮の窒息で死亡する割合は老人よりも乳幼児が高い。
  • 溺死・溺水
    65歳以上の浴槽での死亡数は確かに多い(6,307人、17.3人/日)。ただ、死亡数百分率で見ると、10~14歳が浴槽で死亡する割合は65~79歳と同じくらい高い

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