品川区議会の「23年第2回定例会」本会議一般質問(6月29日・30日)で、羽田新ルートに関して2人の質疑応答があった。
議会中継(録画)と会議録をもとに、全文テキスト化(約6千文字)しておいた。
※以下長文。時間のない方は「質疑応答のポイント」と「雑感」をお読みいただければと。
※部長答弁は都市環境部長
- 中塚亮議員(共産):森澤区長は、なぜ国に中止を求めないのか
- 吉田ゆみこ議員(未来):羽田空港周辺振興協議会による助成事業応募
- 雑感(曖昧戦略を取り続ける森澤区長)
- 【参考】品川区議会の定例会本会議での代表・一般質疑応答(まとめ)
中塚亮議員(共産):森澤区長は、なぜ国に中止を求めないのか
中塚亮議員(共産、区議6期、東京農大中退、47歳)
中塚:固定化回避の早期実現とは何を実現することなのか?
日本共産党品川区議団を代表し、一般質問を行います。はじめに、「羽田新ルート運用開始から4年目、区民の苦しみが続く中、森澤区長はなぜ国に中止を求めないのか」です。
羽田新ルートの運用から4年目となりました。羽田空港への着陸機が東京タワーよりも低い高度で品川区を低空飛行し、ひどい騒音で住民の平穏な日常が壊されています。
今年4月の品川区議選でも、「もう本当にうるさい」「落下物が怖い」「引っ越しも考えたい」との声が多く寄せられ、区民の苦しみが3年以上にわたって続き、中止を求める声が改めて強いことを実感しました。
昨年の第4回定例会にて、森澤区長に「なぜ羽田新ルートに区長は反対しないのか」と本会議で続けて3回質問しましたが、区長は最後まで答弁に立つことはありませんでした。今年の第1回定例会では初めて、区長は答弁に立ちましたが、その内容は「国に固定化回避の早期実現を含む具体的な解決策を検討するよう働きかける」というものです。
まず、区長の固定化回避の早期実現とは何を実現することなのか、伺います。また固定化回避の早期実現と羽田新ルート中止を国に求めるは何がどう違うのか、お答えください。
区長は固定化回避の早期実現と言い、あたかも羽田新ルートに反対しているように装います。しかし、羽田新ルートの中止を国に求める考えは何度聞いても示されません。
どういうことなのか。
固定化回避とは実に巧妙な言い回しです。なぜならば、区長は羽田新ルートについて品川区の低空飛行を回避することを国に求めるとは決して言いません。つまり固定化回避とは、固定化を回避する事柄を不明確にしながら、区民からは羽田新ルートに反対しているように見せかけるごまかしの言葉なのです。区民が望んでいるのは言葉選びではなく低空飛行を中止させることです。
最も住宅地を低空で飛行する地域が品川区ですから、その区長の姿勢は決定的です。森澤区長は羽田新ルートの中止を国に要望すべきです。なぜできないのか伺います。
区長:(固定化回避の)検討結果を早急に示し実現するよう国に求めてまいります
森澤恭子品川区長(無所属、1期、元日テレ報道記者、慶應政治学科卒、44歳)
私からは、羽田空港の機能強化と痴漢対策のうち痴漢に対する考え方等についてお答えをいたします。
はじめに、羽田空港の機能強化についてですが、国の固定化回避の取り組みについては、現在の新ルートを将来にわたり固定化せず、可能な限り環境影響の軽減につながる方策について現在検討が行われているものと認識しています。
区が求めている早期実現とは、固定化回避検討会での検討結果を早急に示し、示した結果を早期に実現するよう求めているものです。区としましては、引き続き検討結果を早急に示し実現するよう国に求めてまいります。
中塚:検討の範囲は品川区を飛び続けるものです。区長はそうは思わないのか?
自席より再質問をさせていただきたいと思います。まず、羽田についてです。
やはり、区長は色々述べますが、要するに羽田新ルート中止を国に求めません。なぜ求めないのかと理由を伺いましたのでお答えください。
そして「固定化回避検討会の結果を早期実現に」との答弁でしたが、再三指摘する通り、この検討会はA/C滑走路が前提なので、(羽田空港の)手前にある品川を低空飛行する計画です。
検討の範囲は品川区を飛び続けるものです。区長はそうは思わないのか。思わないのであればその根拠を伺います。
区長:(固定化回避の)検討結果を早急に示し実現するよう国に求めてまいります
私からは、羽田空港の機能強化についてお答えします。国では現在の新ルートを将来にわたり固定化せず、可能な限り環境影響の軽減につながる方策について検討が行われるというふうに認識をしております。
品川区としましては、引き続き検討結果を早急に示し実現するよう国に求めてまいります。
中塚:(羽田新ルート容認)姿勢は区民から厳しい批判を私は浴びる
再々質問を行いたいと思います。まず、羽田についてですけれども、要するに森澤区長からは羽田新ルートの中止を国に求める考えは示されません。
国の検討会も(私が)指摘するとおり品川の上を飛び続けるというものです。(検討会の)結論を持っても(待っても)、(品川区の上空を)飛び続けるというものです。
国には中止を求めない。品川を飛び続ける検討会を待つ。要するに羽田新ルートを受け入れている。容認するものだということだと思います。選挙中は反対ポーズを示しながら、議会が始まると計画容認。こうした姿勢は区民から厳しい批判を私は浴びると思いますが、伺います。
部長:(固定化回避の)検討の結果を出していただくように求める
都市環境部長
私からは、羽田空港の再質問についてお答えいたします。
まず、新ルートに関しましては、固定化回避検討会。これは区が求めて国が今検討しているというそういった認識でおります。そういった観点からしますと、まずその(品川区の)求めに応じて検討していただいているというところはその結果を受け止めるべきだというふうに考えております。受け止めるというのは、まずは聞くというところだと思います。
そして、ただ、今ルートがどうなのかというようなそんなご質問もありましたけれども、区としましても、まずはこのルート下の関係自治体ですとか、あるいは東京都が集まる情報共有をするそういった会議などの機会を捉えて、ことあるごとに「固定化回避検討会の結論を早急に出してください」と、そんなことも言っておりますし、また「具体的なルートを地図に落としてほしい、そういったご意見がある」ということも伝えているというところでございます。
ただ、国からの回答は「まだ検討中であり、具体的なルートは決まっていない」というところです。そういった意味と、先ほども区が求めて検討されてる検討会というところを踏まえれば、まずは検討結果を聞くということが重要だというふうに考えております。
そこで国からはこの検討会に関しての説明では、今年の夏から秋にかけて検討結果を取りまとめると聞いておりますので、区としましては、まずは早急に検討の結果を出していただくように求めるというところで、これからも行くと、そういった考えでございます。以上でございます。
吉田ゆみこ議員(未来):羽田空港周辺振興協議会による助成事業応募
吉田ゆみこ議員(しながわ未来(生活者ネットワーク)、区議3期、元生活クラブ東京理事長、学習院大学法学部卒、69歳)
吉田:羽田増便、前向きに評価することが大前提?
3番目の質問として、羽田新ルートに関して、羽田空港周辺振興協議会による助成事業応募について伺います。
品川・生活者ネットワークは、羽田新飛行ルートについては計画当初より反対を主張し続けており、区に対しても国に反対を表明するよう求めてきました。残念ながら、現状では新ルートでの飛行は続いており、多くの区民は頭上から容赦なく降ってくる騒音に悩まされる日々を余儀なくされています。
音を頼りに生活している視覚障がい者の方たちの被害や、音そのものを苦手とする発達障がい者の皆さんが被る被害は大分知られるようになりましたが、精神障がい者の方たちからも飛行機の音が精神の安定に悪影響があるというお声、聴覚障がい者の方たちからは、耳が聴こえないから関係がないと思わないでほしい。振動によって音を感じる聴覚障がい者は、飛行機の音による振動が不快であるというご意見をいただいています。
このように多くの方が被害者となっている羽田新飛行ルートについて、品川区は、新飛行経路によって羽田空港国際線増便をすることと機能高度化を積極的に評価することが要件となっていると読み取れる羽田空港周辺振興協議会による助成事業に2020年に応募しており、品川・生活者ネットワークは、品川区の羽田新ルートに対する姿勢について大いに懸念を持っております。この助成事業の応募については、今年3月の予算特別委員会で取り上げましたが、応募の考え方について改めて質問をします。
最初に、この助成事業は、品川区のほかに大田区・港区・江戸川区・川崎市が対象となっており、新ルートの航路下に当たる自治体に向けた制度と思われますが、対象となっている他自治体の応募状況は把握されているか、お答えください。
次に、当助成事業についての議員への情報提供の在り方について伺います。
本年3月、品川・生活者ネットワークは予算特別委員会でこの助成事業に対する質問をしています。この助成事業についての資料として、この協議会による要項の提示を求めたのに対し、区の答弁では、任意の協議会が所有する要項であることを理由に提示しませんでした。
独立した地方公共団体である品川区がきちんと要綱も示せないような助成金に応募することは考えにくかったため、改めて情報公開の手続を取ったところ、2023年の募集要項が開示されました。きちんとした要項に基づいた手続による申請であったことが確認できたのはよかったのですが、一方で、委員会における議員の質問に対して事実と違う答弁を行ったことについては怒りを禁じ得ません。このような答弁の姿勢は、議員本人だけでなく、その議員に行政機能をチェックする役割を負託した区民をも愚弄する行為です。
実は、この助成事業については、2020年の予算特別委員会において他の議員からも質問が出ております。そのときの答弁は、「この助成制度については、飛行が決定して飛行するからだというところではなく、これまでも助成制度としてはあったものに、今回の新飛行ルートを契機として応募してみようということで助成制度を活用し始めたというところでございます」ということでしたが、今回要項を確認したところ、これも事実と違います。議員の質問に対する理事者のこうした姿勢は本来あってはならないと考えますが、区長の見解を伺います。
また、開示された助成事業の募集要項の冒頭には、助成の対象となる事業は、新飛行経路の運用開始に伴う羽田空港国際線増便・高度機能化を活用した様々な地域振興策や催事その他の事業に対して助成すると書かれており、羽田の増便や羽田空港の機能を高度化することを前向きに評価することが大前提となっているように読み取れます。
これまで濱野前区長は、羽田新ルートは品川区民にとってはマイナスしか降ってこないと言いつつも、国の事業なのでやむを得ないという態度を取り続けて、国に対して反対を明言することは避けてきました。しかし、この助成金に応募したということは、羽田増便を積極的に評価するよう転換したようにも感じられます。これはあってはならないことであると考えます。森澤区長が就任されたのはこの助成事業に応募した後でありますが、改めてこのような趣旨の助成金に応募したことについて区長のお考えをお聞かせください。
以上で一般質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。
部長:周辺地域の活性化等を目的とする当補助事業の活用は、適正
都市環境部長
私からは、羽田空港周辺振興協議会による助成事業についてお答えいたします。
初めに、振興協議会補助事業への他自治体の応募状況についてですが、詳細を把握しておりませんが、他自治体での活用もあった旨聞いております。
次に、過去の委員会における答弁についてですが、「これまでも助成制度としてあったもの」との発言の趣旨は、以前より助成制度としてあり、区も活用してきた羽田空港振興・環境整備支援機構の補助事業を意図し発言したもので、この助成制度の活用実績を踏まえ、新たに制度化された振興協議会の助成制度に応募したことをお答えしたものです。
次に、振興協議会の助成事業の活用についてですが、まちづくりを進めていくに当たりまして、様々な補助制度を活用していくことを基本的な考えとして応募したものでございます。
区は、これまでに立会川・勝島地区都市再生整備計画策定業務に対し、当補助事業を活用してまいりました。応募選考は、学識経験者を含む審査委員会による審査を経て決定されるとし、当補助事業の目的である周辺地域のさらなる発展・活性化等に資する取組か否かが審査されたと認識をしております。区といたしましては、周辺地域の活性化等を目的とする当補助事業の活用は、適正であると考えております。
吉田:助成金応募、羽田新ルート迷惑存在という認識は変わらない?
それから、羽田の助成金は、では2020年のご答弁は別の国の制度が既にあったのでということで、それと関連して今回の別の助成金についてもお答えされたということなんでしょうか。
それと最後に、この助成金には応募されたけれども、やはり羽田新ルートは品川区民にとって迷惑な存在に現在なっているという認識は変わらないということでよろしいでしょうか。その辺伺ったんですが、お答えがなかったように思います。お答えください。
部長:補助金応募とは別に、国に対しては環境影響軽減働きかけも
初めに、助成金の活用に関する過去の答弁につきましては、改めてご質問いただいたというところで、分かりにくい表現があったかというところで、今回改めてまた説明させていただいたところで、過去に活用してきた支援機構の助成制度というものもあったというところで説明させていただきました。
それから、この一連の助成の活用についてですが、先ほども申し上げましたように、区といたしましては、周辺地域のさらなる発展、活性化等に資するというところで判断をして、活用の応募をしたというところでございます。
この振興協議会の補助金につきましては、周辺地域のさらなる発展、活性化等に資することを目的としてというところを踏まえて応募したというところでございます。ただ、今まで区民の方からは、騒音や安全性など環境影響についてのお問合せやご意見もいただいているというところもありまして、この補助金の応募とは別に、国に対しては環境影響に対する可能な限りの軽減についても併せて働きかけも行っているところでございます。
吉田:事実と違うことを答弁、このようなことはないように
羽田の問題については、やはり委員会での答弁でちょっと事実と違うことを答弁されるというと、基本議員はその答弁はそのとおりだと思って、区の意向だと思って受け止めますので、その辺については強く改めてこのようなことはないようにお願いしたいと思います。
以上です。
雑感(曖昧戦略を取り続ける森澤区長)
区長自ら答弁することで濱野前区長とは違う印象を与えたいのかもしれないが、答弁内容は部長原稿の棒読みである。しかも、2回の答弁は、多少の表現は違えど、同じことを繰り返しているだけ。面の皮が厚すぎる。
中塚議員からの執拗な質問に3回目の答弁は部長が引き取った形となった。部長答弁は、句点なしにしゃべり続けるので、煙に巻かれてしまいそうだが、実際には従来の耳タコ内容を繰り返しているに過ぎない。
固定化回避の検討結果を待つというのが区の基本スタンス。夏から秋にかけてまとまるとされている検討結果において、品川区上空を回避できないとなったら、森澤区長はなんと答弁するのだろうか。森澤区長はそれでもなお曖昧戦略を取り続けるのだろうか……。
【参考】品川区議会の定例会本会議での代表・一般質疑応答(まとめ)
19年以降の各党派の登壇状況を可視化したのが次表。共産は毎回、生活者ネットワークも少なからず羽田新ルート問題を取り上げている。
19年以降の羽田新ルートに係る登壇者数・文字数(≒質疑応答時間)を次図に示す。
各定例会の質疑応答詳細については、以下参照。
- 23年定例会(第1回、第2回、第3回、第4回)
- 22年定例会(第1回、第2回、第3回、第4回)
- 21年定例会(第1回、第2回、第3回、第4回)
- 20年定例会(第1回、第2回、第3回、第4回)
- 19年定例会(第1回、第2回、第3回、第4回)
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