品川区議会の「23年第3回定例会」本会議一般質問(9月21日)で、羽田新ルートに関して安藤たい作議員(共産)の質疑応答があった。
個人が運用している「starshipglory - YouTube」に掲載された議会中継(録画)をもとに、全文テキスト化(約3千500文字)しておいた。
※以下長文。時間のない方は「質疑応答のポイント」と「雑感」をお読みいただければと。
※部長答弁は都市環境部長。一か所だけ、企画部長。
安藤たい作 議員(共産)
安藤たい作議員(共産、区議5期、漫画家、宮城教育大学卒、49歳)
安藤:アンケートの回答数は何人?
次は、「羽田新ルートは今すぐ撤回し、海上ルートに戻せ。アンケートに寄せられた被害の実態は全て公開を」です。
昨日、羽田新ルートの区民アンケートが締め切られました。アンケートについて、7月20日付け朝日では、昨年の区長選で各候補がルート撤回や賛否を問う住民投票の実施などを主張し、争点の一つになった。初当選した森澤区長は区民アンケートの実施を公約していたと報道。区民の声と世論と運動が森澤区長をして実施させたものです。
行政がほぼ全区民を対象としたアンケートで、市街地低空飛行の影響調査を行うことには大きな意味があります。アンケートの回答数は何人か、直近でわかる数字をお答えください。
アンケート結果は個人情報には当然配慮しながら、自由記述欄含め全て公開すること。ルート直下付近の実態がわかるよう、町域ごとのクロス集計の発表を求めます。それぞれいかがでしょうか。
共産党が区長に、国に意見を述べるよう、繰り返し求めるのはそれが新ルート撤回に極めて重要だと考えるからです。新ルートにおいて、着陸寸前で滑走路の手前に位置する品川区は騒音等、最も被害が大きい自治体です。ところがその当事者の品川は、区長も議会もこれまで一度も新ルートの撤回を求めたことはありません。区が早急に具体化をと求めている固定化回避検討会における2ルート同時並行によりカーブを描いて進入する経路も品川を避けて飛ぶことはできません。新たな被害地域も生み出しかねず、航空評論家の杉江弘氏は安全性からも問題があると指摘しています。
かつて、品川区は健康被害を含めたアンケート調査も行うなど、区民とともに運動し、1981年には品川区長と大田区長の立会いのもとで都知事に当時の運輸大臣と確認書を交わさせ、滑走路移設、音の沖合移転を実現させました。区長の姿勢が国策を変えた大きな実績があります。
現区長はこの国策を変えた実績について、どう評価しているのか伺います。ここに学ぶべきかと思いますがいかがでしょうか。
国際競争力強化の名のもと、経済効率最優先で何が何でも東京羽田に集中、世界にも例がない低さと時間、都心の密集市街地の真上を低空飛行させ、住民の暮らしと環境、安全を犠牲にする新ルートは根本的に間違った政策です。
国は将来の滑走路増設や飛行する時間帯の延長など、さらなる増便も視野に入れています。実際、成田空港では機能強化の名で3本目の滑走路増設が決まり、夜11時から翌6時までの飛行禁止時間は、深夜1時から翌朝5時までに短縮されました。孫・子の代まで品川の空に都心低空飛行を残すわけにはいきません。いま撤回させることが必要なのです。改めて、区長に求めます。国に羽田新ルートの撤回を申し入れてください。いかがでしょうか。
部長:約8万4千件の回答があり、回答率は23.4%
都市環境部長
私からは、羽田空港の機能強化についてお答えいたします。
初めに、区民アンケートにつきましては、9月8日現在、約8万4千件の回答があり、回答率は23.4%であります。
また集計につきましては、年代や町名等の属性とのクロス集計を行うとともに、テキストマイニングツールなどを活用し、集計の上、公表する予定です。なお、自由意見につきましては、個人情報等の観点も踏まえつつ、公表のあり方を検討してまいります。
次に、1981年の沖合移転確認書についてですが、当時、航空機の飛行が東京モノレールの線路を超えて内陸側に進入するなど、禁止事項が守られないなか、国により空港に隣接する東京都の埋め立て地を利用し、空港規模を拡張しようとする報告書が取りまとめられました。そこで区として国と都に働きかけを行い、埋め立て地への滑走路の移転について、品川区と大田区が立ち会いのもと、国と都により確認書が交わされたものでございます。
羽田新飛行ルートにつきましては、区はこれまで一貫して、区民の不安払拭のため、国に落下物対策、騒音軽減への取り組み、さらに、区民への丁寧な周知と説明を継続して行うよう求めてまいりました。また、新ルートの固定化を回避し、技術革新を踏まえて検討を行うことを求め、現在、国において検討がなされているところです。
今後は、アンケートの結果を把握、分析し、具体的な解決策を検討するよう国に働きかけてまいります。
安藤:回答率を上げる努力? 国を動かした経験に学ぶべき
羽田です。アンケート、区が掲げていたのは、「目標回答率45%」。これ程遠いなと思います。今の数字。回答率を上げる努力が足りなかったと思いますがいかがでしょうか。
それともう1つ。国を動かした経験について、経過述べられたんですが、私はそれに学ぶべきではないかと区長に言いたいんですけど、質問したんです。お答えください。
企画部長:適時広報を図ってきた
企画部長
私からは、区民アンケートの回答率についてお答え申し上げます。
区民アンケートにつきましては、回答率をできるだけ上げるために、我々、回答の仕方につきましても郵送以外にもインターネット回答を設けるなど、回答しやすい環境を整えてまいりました。
また、その他、周知に関しましても、広報誌、ホームページを始め、SNSや様々な広報媒体を使いまして、適時広報を図ってきたところでございます。
また、期間の延長等につきましても、区内にあります「ふれあい掲示板」等で周知を図り、区民の方々に回答していただけるように呼びかけてきたところでございます。
9月20日に回答の期限を締め切りましたので、その後の集計につきましては、今後集計し、また公表等していきたいと思っております。以上でございます。
部長:最大限周辺環境に配慮した選択肢として採用された
私からは、羽田新飛行ルートの1981年の確認書についてお答えをいたします。
この確認書についてですけれども、当時は空港に隣接する東京都の埋め立て地があり、そこに空港移転また滑走路を移転するという選択肢があってそれに対して、区が国と都に働きかけを行えたというところでございます。
また、今回の羽田新飛行ルートですけれども、これも国からの説明では増加する空港需要に対応するため、複数の選択肢のシミュレーション等による詳細な検討を行ったと。そういった検討を行ったうえでの唯一の方法として採用したという説明がありました。
いずれにしましても、国の立場としては、空港需要に対応しつつ最大限周辺環境に配慮した選択肢として採用されたんだというふうに、区としては認識をしているところでございます。今回の新飛行ルートにつきましては、区民の立場に立ちまして、区としては、区民の不安の払拭に向け、また理解を深めていただくために、丁寧な情報提供、そして複数回の丁寧な説明を求めて、それが今まで実現したというところでございます。
今現在では、区民アンケートを行っているというところで、今後集計をした後に、国に対して強く、必要な解決策を具体的に検討するように強く求めていくという、そういった予定でございます。以上でございます。
安藤:(かつて品川区は、国策に対しても働きかけ)なぜ学ばない
羽田ですが、かつて品川区は、国策に対しても働きかけもかなり成果を上げたことを紹介しました。ここになぜ学ばないのかと伺いました。
区が働きかけるっていうのは効果があったわけですね。そうは思わないのか、伺いたいと思います。
部長:固定化回避検討会によるさらなる検討を国に今求めている
私からは羽田新飛行ルートについてお答えをいたします。
まず、前回の1981年の確認書、こちらについては東京都の埋め立て地というところがあって移転の可能性が見えていたというところがございます。
今回の新飛行ルートにつきましては、複数のシミュレーションの中で、国としては唯一の方法として採用したという、そういった状況でございます。
区といたしましてもやはり、国策として進められてるとはいえ、その時々の状況に応じて、可能な限り、品川区内に対する環境影響については最小限となるように国に働きかけていくという必要があります。
前回につきましては、移転地を活用した方法があるということで、区として具体的に働きかけを行った。今回につきましては、可能な限り、環境影響の軽減に向けて、まずは騒音対策、そして落下物の安全対策もそうですけれども、さらに固定化回避検討会によるさらなる検討を国に今求めているというところで、その結果もまたまもなく出てくるというところでございますので、それについては、区としてはまた対応を考えていくというところでございます。
また、先ほど申し上げましたアンケートについても、今後、国に対して効果的に働きかけているというところでございます。以上でございます。
雑感
区民アンケート回答率23.4%(企画部長は首を洗って…)
品川区が当初見込んでいた回答率は45%。9月8日現在の回答率は23.4%だから当初見込みの半分ちょっと。
残りの12日間で45%を切るようだと、関係者の責任問題である。企画部長は首を洗って待っておいたほうがいいかも。
区が1981年の経験(音の沖合移転)に学ばないロジック
なぜ、過去の経験(1981年には品川区長と大田区長の立会いのもとで都知事に当時の運輸大臣と確認書を交わさせ、滑走路移設、音の沖合移転を実現)に学ばないのか、と執拗に迫る安藤議員。
1981年のときは、埋め立て地への滑走路の移転という選択肢があった。今回は「複数のシミュレーションの中で、国としては唯一の方法として採用した」から1981年のときとは状況が違うというのが区のロジック。
【参考】品川区議会の定例会本会議での代表・一般質疑応答(まとめ)
19年以降の各党派の登壇状況を可視化したのが次表。共産は毎回、羽田新ルート問題を取り上げている。
19年以降の羽田新ルートに係る登壇者数・文字数(≒質疑応答時間)を次図に示す。
各定例会の質疑応答詳細については、以下参照。
- 23年定例会(第1回、第2回、第3回、第4回)
- 22年定例会(第1回、第2回、第3回、第4回)
- 21年定例会(第1回、第2回、第3回、第4回)
- 20年定例会(第1回、第2回、第3回、第4回)
- 19年定例会(第1回、第2回、第3回、第4回)
あわせて読みたい