国交省は22年2月から3月にかけて関係地域に、羽田新ルートの運用状況や固定化回避検討会に関する取組等を記したチラシをポスティングするという。
じつは今回配布されるチラシと同様なチラシが昨秋(21年9月~10月)配布されているのだが……。
年度末のポスティング
国交省は2月25日夕刻、「新飛行経路の運用状況や固定化回避検討会に関する取組等に関する資料(チラシ)」を公表。22年2月から3月にかけて関係地域にポスティングするという。
ただし、埼玉県版については、ポスティングではなく、県内の新飛行経路下の各市役所などで配布される(配布時期:2022年2月下旬~)。
本件チラシについては、「新飛行経路の運用状況|羽田空港のこれから」に自治体ごとの資料として公開されている(次図)。
配布地域によるチラシの違い
配布されるチラシは各自治体とも各2枚(チラシでは表面と裏面)で構成されているのだが、記載内容は微妙に違っている。次表のように2種類に大別できる(到着ルート版、出発ルート版)。
具体的にチラシのどこが違うのか。その違いをザックリ可視化したのが次図、次々図。
全地域に共通している部分が全体の約6割、地域上空を通過する到着ルート・出発ルートの違いによる部分が4分の1、残りの1割が地域別(騒音データと航跡図)。
(オモテ面)
(裏面)
各地域のチラシを見比べてみて、特筆すべきは冒頭の文章。
到着ルート版(次図)にあって出発ルート版(次々図)にないのは、<地域の皆さまのご意見・ご要望を踏まえて立ち上げた>固定化回避検討会という文言。
固定化回避検討会が立ち上がったのは、品川・港区などの到着ルート下の住民の影響であって、江戸川区や川崎市などの出発ルート下の住民は関係ないとでも言いたいのだろうか。
(品川区の例)
日頃より、羽田空港の機能強化に伴う、新飛行経路の運用にご協力いただきありがとうございます。
このチラシでは、地域の皆さまのご意見・ご要望を踏まえて立ち上げた固定化回避検討会に関する取組状況や、2021年夏ダイヤの運用実績を基にした騒音の状況などをお知らせします。
(江戸川区の例)
日頃より、羽田空港の機能強化に伴う、新飛行経路の運用にご協力いただきありがとうございます。
このチラシでは、固定化回避検討会に関する取組状況や、2021年夏ダイヤの運用実績を基にした騒音の状況などをお知らせします。
前回のチラシとの違い
じつは今回配布されるチラシと同様なチラシが昨秋(21年9月~10月)に配布されている(以下、「前回チラシ」)。
※前回チラシの詳細については、<「羽田新ルート「第4回 固定化回避検討会の内容等の資料(チラシ)」ポスティング >参照。
今回のチラシとは、配布時期こそ違うものの、配布地域もページ数も前回チラシと同じ。前回チラシから5か月後に配布される今回のチラシは、前回とどこが違うのか。
以下、品川区に配布されるチラシを例に、違っている部分をザックリ整理する。
今回追記された内容(4件)
- 安全性評価の主な具体的取組
- 航空機材の変化による騒音影響、騒音対策
- 羽田・成田の機能強化
- 情報公開について(その他)
※「その他」の項目が追加された(下図、ピンク囲み)
前回から削除された内容(2件)
- 新型コロナによる減便状況
- 想定経路の範囲内を飛行
前回と記載内容が変わった「トピックス」
- 前回のトピックス
- 航空分野でもカーボンニュートラル実現に向けた取り組みが進められています。
- 羽田空港は、わたしたちの生活を支える大事な空港です。
- 今回のトピックス
- 飛行機の種類により、地上からの見え方が異なる場合があります。
- 羽田空港は世界で高い評価を受けています。
雑感
国交省、PRしたい部分を追加!?
国交省は羽田新ルートの航路下住民らに固定化回避技術検討会の取組等を周知することを目的の一つに掲げている。でも、同検討会は昨年の8月25日(第4回)を最後に開催されていない。同検討会の進捗状況がオープンになっていないので、ポスティング内容が前回と代わり映えしないのではないか。前回チラシと今回チラシの違いからは、国交省がPRしたい部分を追加し、そうでない部分を削除しているようにも見える。
年度末にポスティングをする理由
5か月前にポスティングしたのに、なぜこの年度末のギリギリの時期に、まるで予算消化の年度末工事のように、ポスティングをするのか。考えられる理由は二つ。
ひとつは、航路下住民に対して「丁寧な説明」を行ったという実績作り。
もうひとつは、委託業務費との関係。
じつは、前回チラシのポスティングも今回チラシのポスティングも、国交省が博報堂と21年度に契約した「羽田空港機能強化に係る情報提供・意見把握検討等業務」(契約金額2.5億円)の一部。
業務内容は「各種広告媒体を通じた情報提供を行うとともに、新飛行経路に対する住民の意見把握を行う」こととされている。第5回の固定化回避技術検討会がなかなか開催されないので、年度末のギリギリのこの時期のポスティングを実施することで、当初予定されていたポスティングの規模(配布地域・回数)との帳尻を合わせようとしたのではないか。
博報堂は5年連続、ポスティング業務に絡んでいる
ちなみに、博報堂は5年連続(17~21年度)で「羽田空港機能強化に係る情報提供・意見把握検討等業務」を受注している。5年間の契約金額の合計は14億円を超える(次表)。
「羽田新ルート|気になる契約情報(22年度)※随時更新」より
22年度も同件名業務が2月4日付の入札公告に出されている。来年度の業務はどこが受注するのか……。
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