第203回国会(20年10月26日~12月5日)の衆議院の質問主意書83件のなかに、38番目として羽田新ルートに係る次の質問主意書が埋もれている。
松原仁 衆議院議員が11月26日に提出した質問主意書に対する政府答弁書が公開されたのでひも解いてみた。
読みやすいように、一問一答形式に再構成。
※時間のない方は、「質疑応答のポイント」と文末の「雑感」をお読みいただければと。
- 問1:現在の羽田空港の航空需要について
- 答1:増加後の発着枠に対する割合、8月約52%・9月約41%
- 問2:都心低空飛行ルートの利用状況について
- 答2:8月8日103回、到着に係る枠に対する割合約78%
- 問3:今後の航空需要の見通しについて
- 答3:新型コロナの影響にかかわらず、引き続き運用する必要がある
- 雑感
松原仁 衆議院議員(7期、立憲民主党、早大商卒、64歳)
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、各国の国境封鎖や旅客の渡航自粛により世界全体の航空需要が大きく低下している。
こうした中、羽田空港において新たな飛行ルートが本年3月より運用開始となり、15時から19時までのうちの3時間については首都圏上空の都心低空飛行が行われている。この都心低空飛行ルートにおいては、航路下に国内では他に類を見ないほど多くの住民と労働者が暮らし、騒音や電波障害に関する苦情、落下物や不動産価値下落への不安を訴える多くの声が上げられている。
新飛行ルートの導入にあたり、政府はインバウンド(訪日旅行)の増加見込みを前提とした羽田空港の増便計画を理由として説明してきた。しかし現下のコロナ禍を鑑みると、インバウンドの増加とそれに伴う航空需要は、政府が当初見込んできた数値を少なくとも今後数年間は満たさないことが想定され、羽田空港では都心低空飛行ルートを使用せず旧来ルートを利用しての運用が可能ではないかとも考えられる。
他方、国内では「GoToトラベル」キャンペーンの実施により北海道や沖縄旅行が人気となり、また国際的なビジネス旅客の隔離免除による受け入れが始まるなど、徐々に航空機の利用が回復する兆しも見られる。そこで今後の羽田空港の航空需要見通し等について政府の把握するところを答えられたい。
問1:現在の羽田空港の航空需要について
問1-1:本年8~10月、羽田空港を発着した飛行機の総便数?
本年8月、9月、10月に羽田空港を発着した飛行機の総便数とその前年同月比について、各月ごとにお示しいただきたい。
問1-2:各月の総便数、増便計画枠に対して何%の利用?
1(問1-1)でお答えいただいた各月の総便数は、増便計画に伴う新飛行ルートの採用で利用可能となった羽田空港の月ごとの最大便数の枠に対して何パーセントの利用となっているか。
答1:増加後の発着枠に対する割合、8月約52%・9月約41%
東京国際空港(以下「羽田空港」という。)への航空機の発着回数(以下「発着回数」という。)は、令和2年8月において対前年同月比約39パーセント減の2万3912回、令和2年9月において対前年同月比約51パーセント減の1万8382回であり、羽田空港における新たな飛行経路(以下「新経路」という。)の運用等による増加後の発着枠に対する割合は、それぞれ約52パーセント及び約41パーセントである。また、令和2年10月における発着回数については現在集計中である。
問2:都心低空飛行ルートの利用状況について
問2-1:本年8~10月、都心低空飛行ルートの便数が最も多かった日とその便数?
本年8月から10月の各日において、15時から19時までの間の3時間に都心低空飛行ルートを利用した航空機の便数が最も多かった日とその便数をお示しいただきたい。
問2-2:最大便数に対して何%の利用?
1(問2-1)でお答えいただいた便数は、都心低空飛行ルートの採用により15時から19時の間の連続する3時間に利用可能となった最大便数に対して何パーセントの利用となっているか。
答2:8月8日103回、到着に係る枠に対する割合約78%
令和2年8月から10月までの間において、新経路のうち南風時に運用される到着経路(以下「新到着経路」という。)による羽田空港への航空機の着陸回数が最も多かった日及びその着陸回数は同年8月8日及び103回であり、新到着経路を運用している15時から19時までのうち3時間程度における発着枠のうち到着に係る枠に対する割合は約78パーセントである。
問3:今後の航空需要の見通しについて
問3-1:羽田空港の将来の航空需要?
羽田空港の将来の航空需要に関してどのような予測や見通しを持っているか。
来年1年間の短期的な予測から、5年間、10年間など中長期的な見通しまで、将来的な航空需要の変化について、政府の現時点での見解を伺いたい。
問3-2:航空需要の観点から、旧来ルートに変更することは可能か
1(問3-1)に関連して、航空需要の観点から、羽田空港の運用を今年3月まで採用されていた旧来ルートに変更することは可能か。
短期的な変更、中長期的な変更のそれぞれについて、変更の可否とその理由をお答えいただきたい。
答3:新型コロナの影響にかかわらず、引き続き運用する必要がある
我が国を含む各国において、今後、新型コロナウイルス感染症がどの程度拡大するかについては、現時点で予測することが困難であるため、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた今後の航空需要の見通しについてお答えすることは困難であるが、新経路については、新型コロナウイルス感染症の影響にかかわらず、我が国の国際競争力の強化、首都圏における航空機の騒音による影響の分散等の観点から、引き続き運用する必要があると考えている。
雑感
コロナ減便にかかわらず「引き続き運用する必要があると考えている」が菅政権の基本スタンス。
あわせて読みたい(松原議員の質問主意書)
これまでに松原仁議員が提出した、羽田新ルートに係る質問主意書関連の記事:
※日付は本ブログで記事化した日
- 20年6月25日:航空機の降下率
- 20年3月23日:新型コロナ、モラトリアム適用
- 20年3月5日:着陸方式、パイロット懸念、デルタ・エアカナダ対応
- 20年2月4日:「飛行経路指定」に関する大臣告示
- 19年12月16日:新飛行ルートの騒音調査
- 19年7月12日:区議会決議、公聴会、試験飛行、世論調査
- 19年6月13日:落下物防止のための洋上脚下げ
- 19年6月7日:京浜島の事業者・労働者への影響
- 19年6月6日:品川・渋谷区の見直しを求める決議への対応
- 19年5月31日:大田区との約束は!?
- 19年5月23日:低空飛行ルートの採用方法
- 19年5月23日:上皇陛下の仮住まい対策
- 19年2月26日:羽田空港への低空飛行問題
- 18年12月18日:羽田空港新飛行ルート案の変更