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羽田新ルート|質問主意書(区議会決議、公聴会、試験飛行、世論調査)

第198回国会(19年1月28日~6月26日)の衆議院の質問主意書309件(7月11日現在)のなかに、295番目として羽田新ルートに係る次の質問主意書が埋もれている。

松原仁 衆議院議員(無所属)が6月21日に提出した質問主意書に対する政府答弁書が公開されたのでひも解いてみた。

読みやすいように、一問一答形式に再構成しておいた。
※以下長文。時間のない方は、「質疑応答のポイント」と文末の「雑感」をお読みいただければと。


質疑応答のポイント

松原仁衆議院議員
松原仁 衆議院議員(7期、民進→希望→無所属、早大商卒、62歳)

1.品川・渋谷区議会の見直しを求める決議について

新飛行経路案に関する地元の理解に関して、本年3月、品川区議会において『品川上空を飛行する羽田新飛行ルート計画に関する決議』、渋谷区議会において『羽田空港増便による都心低空飛行計画の見直し等を国に求める意見書』が決議された。

品川区議会の決議では、自民党、公明党、共産党、民主党系、そのほかのすべての会派の議員を含め全会一致して「多くの区民に理解しがたい現状」「新飛行ルート案を容認することはできない」としている。

また渋谷区議会の意見書においても、同様に全会一致して、「未だ渋谷区内では充分な理解が進んでいる状況には至っていない」「国会及び政府に対し、区民の生活を守るために計画の見直し等を強く求める」との意見を表明している。

質問1-1:品川・渋谷区議会の(見直しを求める)決議への評価?

品川区議会、渋谷区議会におけるこれらの決議を、新飛行経路計画に対する地元の理解という観点から、どのように評価しているか。また、こうした決議に対して、政府から各区議会に対して答弁や回答はされているか。もし答弁等がなされない場合、議会を通した関係地域の住民の声を無視することになる。

政府として前向きな答弁を求める。

質問1-2:両区議会の決議の相違点は、政府による扱いに差異を生じさせる?

品川区議会の決議は、内閣や国政に対して提出されておらず、一方の渋谷区議会の決議については、衆参議長及び内閣に提出されていると了解している。こうした両区議会の決議の相違点は、政府による扱いに差異を生じさせるか

回答1-2:適切に対応してまいりたい

一の1及び4(後述:回答1-1&1-4)についてでお答えしたとおり、品川区議会で御指摘の決議が、渋谷区議会で御指摘の意見書がそれぞれ全会一致で可決されたこと、また、当該意見書が地方自治法(昭和22年法律第67号)第99条の規定に基づき、渋谷区議会から国土交通省へ提出されたことは認識しているが、いずれにしても、新経路案については、一の1及び4(後述:回答1-1&1-4)についてで述べたように適切に対応してまいりたい

質問1-3:上空を通過する自治体の議会は、「地方公共団体等」に含まれる?

新飛行経路案の採用により、飛行機が低空飛行で上空を通過する自治体の議会は、政府が新飛行経路案の採用に向けて「幅広い理解を得る」としている「地方公共団体等」に含まれているか

回答1-3:含まれる

新経路案による飛行経路下の地方公共団体の地方議会は、御指摘の「地方公共団体等」に含まれる

質問1-4:「幅広い理解」が得られたと判断することは不可能

品川区議会からの決議については、明確に「新飛行ルート案を容認せず」を主張しているが、住民を代表する議会においてこうした決議が出てきた以上は、地方自治体の首長をはじめとする行政機関だけによる受け入れ表明で、「幅広い理解」が得られたと判断することは、民主主義において極めて重要な自治体の議会を蔑ろにする行為である。

こうした議会の決議がある以上、「幅広い理解」が得られたと判断することは不可能と考えるが、ご所見はいかがか。

回答1-1&1-4:関係者からの御意見を参考に検討する

お尋ねの「評価」及び「政府から各区議会」に対する「答弁や回答」の意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の品川区議会の「品川上空を飛行する羽田新飛行ルート計画に関する決議」及び渋谷区議会の「羽田空港増便による都心低空飛行計画の見直し等を国に求める意見書」について、政府としては、当該決議及び意見書がこれらの区議会において全会一致で可決されたことは認識している。

政府としては、このような決議や意見書が可決されたか否かにかかわらず、先の答弁書(令和元年5月31日内閣衆質198第178号)三の2についてでお答えしたとおり、東京国際空港(以下「羽田空港」という。)における新たな飛行経路案(以下「新経路案」という。)について、関係地域の地方公共団体及び住民の方々(以下「地方公共団体等」という。)に説明を行っているところであり、今後も引き続き丁寧な情報提供を行い、幅広い理解を得た上で、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会までに運用できるようにしたいと考えており、今後、どのような形で地方公共団体等から理解を得たと判断するかについては、地方公共団体をはじめとする関係者からの御意見を参考に検討することとしたい。

質問1-5:この決議が可決される前とは異なる環境?

地元の理解を得られたか否かを判断するうえで、これらの決議が全会一致で可決された後の状況は、この決議が可決される前とは異なる環境となったと考えるか。

質問1-6:議会の全会一致の決議と首長の決断、どちらがより尊重されるべき?

議会の全会一致の決議と首長の決断、どちらが本計画に対する地域の意思表明として、より尊重されるべきか。

回答1-5&1-6:お答えすることは困難

お尋ねの「異なる環境」及び「より尊重される」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。

2.公聴会の実施について

質問2-1:公聴会実施の法的な必要性は?

品川区、渋谷区の議会において前述の決議が上がっている現状を鑑みれば、区議会議員の参加も含めて公聴会が開催されてしかるべきと考える。

新飛行経路案に関する公聴会実施の法的な必要性はあるか

質問2-2:公聴会を実施する予定は?

今後、新飛行経路案の採用前に公聴会を実施する予定はあるか。ある場合、いつ、どこで、どのような発言者を想定して行う予定か。

回答2:具体的な予定は決まっておらず

お尋ねの「法的な必要性」の意味するところが必ずしも明らかではないが、政府としては、新経路案に関連して、航空法(昭和27年法律第231号)第56条の2第2項において準用する同法第39条第2項の規定に基づき、羽田空港についての円錐表面及び外側水平表面の追加に伴う公聴会を開催することとしているものの、現時点でその具体的な予定は決まっておらず、これ以外の公聴会について、今後、実施する予定はない。

羽田空港についての円錐表面及び外側水平表面の追加
羽田新ルート|教室型説明会の次は公聴会!?」より

3.実機による試験飛行について

質問3:実機による試験飛行の実施予定は?

新飛行経路における実機による試験飛行に関して、「試験飛行の要否については、当該整備の状況、飛行検査の時期及び地方公共団体等からの要望等を勘案して、慎重に判断することとしたいと考えており、仮に、試験飛行を行う場合には、その費用について検討することとなる」(本国会、答弁第29号)との答弁がなされている。

既述の品川区議会における「新飛行ルート案を容認することはできない」という決議を踏まえれば、政府がこれまで行ってきた「丁寧な説明」では、地元の理解を得るには不十分であることは明らかであり、見方によっては従来の「丁寧な説明」が否定されているともいえる。

したがって、もしも新飛行経路への地元の理解を得ようとするならば、従来の説明項目や手法とは異なる新たな説明材料が必要である。特に、関係地域の住民からは重要な判断材料として、実際に飛ぶ飛行機、特に頻度の高い中型機や大型機による試験飛行の実施を求める声は多い

新飛行経路案の採用決定前に、実機による試験飛行の実施予定はあるか。ある場合、いつ、どの程度の大きさの航空機を用いて行う予定か。また地元の理解を得るための試験飛行の必要性に関して、現状認識を問う。

回答3:慎重に判断する

政府としては、平成28年7月に開催された国土交通省、茨城県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県等により構成される首都圏空港機能強化の具体化に向けた協議会において、新経路案における航空機の騒音による影響等を低減するため、羽田空港の機能強化に係る環境影響等に配慮した方策を示した上で、新経路案について、幅広い理解を得られるよう地方公共団体等に説明を行っているところであり、政府としては、地方公共団体等から新経路案の運用開始前に航空機を試験的に運航すること(以下「試験飛行」という。)を求める声があることは認識しているが、先の答弁書(平成31年2月19日内閣衆質198第29号)4についてでお答えしたとおり、試験飛行については、航空保安施設の整備等が終了しなければ実施できないため、試験飛行の要否については、当該整備の状況、飛行検査の時期及び地方公共団体等からの要望等を勘案して、慎重に判断することとしたい。

4.世論調査について

幅広い理解を得たと判断する科学的、客観的な根拠について

質問4-1:世論調査を実施しない理由?

計画に対する住民の賛成、反対について、既に、科学的調査として有効であると考えられる世論調査を実施する予定はないと答弁しているが、その理由は何か

質問4-2:世論調査が不適切な理由?

世論調査が、内閣及び国土交通省が言う「幅広い理解」を得たとの証明に不適切な理由をお示しいただきたい。費用や時間が掛かるから実施しないのか。

回答4-1&4-2:関係者からの御意見を参考に検討するため、「世論調査」を行う予定はない

先の答弁書(令和元年5月31日内閣衆質198第178号)三の2についてでお答えしたとおり、政府としては、新経路案について、今後、どのような形で地方公共団体等から理解を得たと判断するかについては、地方公共団体をはじめとする関係者からの御意見を参考に検討することとしているため、現時点において、お尋ねのような「世論調査」を行う予定はない

質問4-3:世論調査よりも科学的に正確に住民意識を調査する方法がある?

世論調査よりも科学的に正確に住民意識を調査する方法があると考えるか。ある場合、その方法は何か。

回答4-3:お答えすることは困難

お尋ねの「世論調査よりも科学的に正確に住民意識を調査する方法」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。

雑感(政府答弁は曖昧。常套句で逃げる…)

質問書(約2千文字)と答弁書(約1千800文字)は別々の文書なので、上記のように一問一答形式に再構成しないと、内容を的確に把握することはできない。 それでも、この3千字を超える難解な文章など一般の人はまず読まないだろうから、以下、できるだけわかりやすくまとめておく。

質疑応答は、「品川・渋谷区議会の決議への対応」「公聴会の実施予定」「実機による試験飛行の実施予定」「世論調査を実施しない理由」の4点。

  1. 品川・渋谷区議会で羽田新ルート計画の見直し・意見書が全会派一致で決議されたことから「幅広い理解」が得られた判断することは不可能ではないかとの質問に対して、政府は「どのような形で地方公共団体等から理解を得たと判断するかについては、地方公共団体をはじめとする関係者からの御意見を参考に検討する」と曖昧に回答
  2. 公聴会の予定については、政府は「航空法第39条第2項の規定に基づき、(略)開催する」としたものの、「現時点でその具体的な予定は決まっておらず」と明言を避けた
  3. 実機による試験飛行の実施予定についても、「慎重に判断する」と明言を避けた
  4. 世論調査を実施しない理由として、政府は「地方公共団体をはじめとする関係者からの御意見を参考に検討することとしているため」と回答。さらに、「世論調査よりも科学的に正確に住民意識を調査する方法があると考えるか」と問われて、「お尋ねの・・・意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である」と常套句で逃げる

 

なぜ、政府答弁は曖昧であったり、常套句で逃げたりしているのか?

質問主意書の日付から、答弁書を作成したの担当者の苦心のほどが想像される。つまりこういうことだ。

内閣は質問主意書を受け取った日から7日以内に答弁しなければならないことになっている(国会法第75条)。

今回の質問主意書が内閣に送られたのは6月26日。7日以内(7月3日まで)に答弁書をまとめられず、答弁延期期限が2日延長されているのである(次図)。

「羽田低空飛行ルート問題に関する質問主意書」の経過情報
質問答弁経過情報|衆議院


「最近では、答弁延期はほとんど行われなくなりました」(質問主意書とは|参議院)とされているので、今回の松原議員の質問内容は国交省の担当者にとってかなりヘビーであったということなのであろう。

あわせて読みたい(松原議員の質問主意書)

これまでに松原仁議員が提出した、羽田新ルートに係る質問主意書関連の記事:

2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
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