不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

首都圏を中心に、マンション選びのためのお役立ち情報を提供しています


羽田新ルート|質問主意書(落下物防止のための洋上脚下げ)

第198回国会(19年1月28日~6月26日)の衆議院の質問主意書222件(6月13日現在)のなかに、192番目として羽田新ルートに係る次の質問主意書が埋もれている。

松原仁 衆議院議員(無所属)が5月28日に提出した質問主意書に対する政府答弁書が公開されたのでひも解いてみた。

読みやすいように、一問一答形式に再構成しておいた。
※以下長文。時間のない方は、「質疑応答のポイント」と文末の「雑感」をお読みいただければと。


質疑応答のポイント

松原仁衆議院議員
松原仁 衆議院議員(7期、民進→希望→無所属、早大商卒、62歳)

1.成田空港へ着陸する航空機の洋上脚下げについて

成田空港(NAA)ホームページ(https://www.naa.jp/jp/csr/ohanashi/falling/falling.html )を参照したところ、「国土交通省・NAAはできるだけの努力をしてきました。その代表的な例が南側から着陸する場合の洋上脚下げ方式の実施です。はじめは航空会社に協力を呼びかけていましたが、その後、航空関係者にとって必要な情報を提供する文書(航空路誌)に掲載し、さらに航空機に無線で連絡して、洋上脚下げ方式の実施を徹底するようにしました。こうした対策によって、落下物(とくに氷塊)は大幅に減ったのです。現在も国土交通省・NAAは共生委員会の立会いのもと、実際に脚下げをしているかどうか、蓮沼海岸(九十九里浜)で定期的にチェックしています。」との記述がみられる。

質問1-1:洋上脚下げ方式の実施を決定したのは、いつ?

国土交通省とNAAが洋上脚下げ方式の実施を決定したのは、いつ開催されたどのような合議体の場においてか。洋上脚下げの実施を決定した文書は存在するか。

回答1-1:平成3年1月25日

御指摘の「洋上脚下げ方式の実施を決定した」の意味するところが必ずしも明らかではないが、平成3年1月25日付けで、運輸省東京航空局新東京国際空港長(当時)から、新東京国際空港航空会社運営協議会(当時)に対し、「氷塊落下物防止対策について」(以下「要請文書」という。)を発出し、航空機の脚下げ(以下「脚下げ」という。)を洋上で行うことを要請しているが、この要請文書の発出を決定するに当たって、何らかの合議体が開催された記録は、確認できていない。

質問1-2:成田空港で洋上脚下げきっかけとなった落下物減少の根拠?

当時、成田空港で洋上脚下げの実施を航空会社に奨励し始めるきっかけとなった落下物減少の根拠をお示しいただきたい。

質問1-3:洋上脚下げ実施前に比べてどの程度減っているか?

洋上脚下げの実施によって、成田空港へ着陸する航空機からの落下物が大幅に減ったと考えられる根拠をお示しいただきたい。具体的に航空機が一機着陸するにあたり確認される陸地への落下物(氷塊とそれ以外)の割合は、洋上脚下げ実施前に比べてどの程度減っているか

回答1-2&1-3:発着回数あたり約0.000028回⇒約0.000007回

要請文書を発出した平成3年当時を含め、御指摘の「落下物減少」と「洋上脚下げの実施」との因果関係は必ずしも解明されているわけではないが、国土交通省として現時点で確認している限りでお答えすれば、成田国際空港(平成15年度以前は新東京国際空港。以下同じ。)周辺において発見された航空機からの落下物(氷塊を除く。)の事例の件数を成田国際空港への航空機の発着回数(以下「発着回数」という。)で除した値は、成田国際空港が開港した昭和53年度から要請文書が発出された平成2年度までの13年間(以下「要請文書発出までの13年間」という。)においては約0.000028であり、平成3年度から平成30年度までの28年間(以下「直近28年間」という。)においては約0.000007である。

また、成田国際空港周辺において発見された航空機からの落下物(氷塊に限る。)の事例の件数を発着回数で除した値は、要請文書発出までの13年間においては約0.000061であり、直近28年間においては約0.000007である。

質問1-4:民家の多い地域では脚下げを実施しない?

成田空港へ着陸する航空機の洋上脚下げの実施は、南側から着陸する場合に行われており、北側から着陸する場合には民家の多い地域を「脚下げ」回避エリアとして設定し、当該エリア上では脚下げを実施しないよう全航空会社に国土交通省が指導するとの報道があった(千葉日報2012年6月15日付け)。この報道内容は事実か。また、現在までにこの指導の変更がある場合、その変更の内容をお示しいただきたい。

回答1-4:「民家の多い地域」における脚下げの実施を避ける

平成24年7月19日付けで、国土交通省東京航空局成田国際空港長から、成田国際空港航空会社運営協議会に対し、「成田国際空港における落下物防止対策の実施について」を発出し、その中で、御指摘の「北側から着陸する場合」に「民家の多い地域」における脚下げの実施を避けるべき旨を求めたところであり、この求めの内容について変更はない。

2.着陸前の洋上脚下げを奨励している空港

質問2:着陸前の洋上脚下げを奨励している空港は?

成田空港以外の国内空港において着陸前の洋上脚下げを奨励している空港はあるか

回答2:北九州空港

空港法(昭和31年法律第80号)第2条に規定する空港のうち、御指摘の「着陸前の洋上脚下げ」の実施が求められているものとして、北九州空港がある。

3.羽田空港の新飛行経路計画における、着陸時の脚下げについて

質問3-1:羽田空港へ着陸する航空機の洋上脚下げの取り決めは?

羽田空港における現行経路では北風時、南風時ともに海側から着陸するため、洋上脚下げを実施していると考えられるが、羽田空港へ着陸する航空機の洋上脚下げの実施に関する何らかの指導や取り決めはあるか。またその実施をチェックする仕組みはあるか。

回答3-1:存在しない

お尋ねの「羽田空港へ着陸する航空機の洋上脚下げの実施に関する何らかの指導や取り決め」及び「その実施をチェックする仕組み」は存在しない

質問3-2:南風時に羽田空港の北側から着陸する航空機が洋上脚下げは可能?

新飛行経路計画において、南風時に羽田空港のA滑走路及びC滑走路に北側から着陸する航空機が洋上脚下げを実施することは可能か

質問3-3:脚下げ回避エリアの設定を検討しているか?

2(筆者注:質問3-2)に関連して、陸地から着陸する航空機の洋上脚下げの実施が困難な場合、「脚下げ」回避エリアの設定を検討しているか。している場合、回避エリアに含まれると考えられる範囲、もしくはその範囲を定める場合の基準となる要素を、民家の数、住民の数、企業や団体の数、往来する人や乗り物の数、その他あれば明示的にお示しいただきたい。

回答3-2&3-3:決まっていない

政府としては、現在、東京国際空港における新たな飛行経路案(以下「新経路案」という。)について検討を行っているところであり、現時点において、お尋ねの「洋上脚下げの実施」及び「「脚下げ」回避エリアの設定」については、決まっていない

質問3-4:陸地上での脚下げ方式に変わった場合、被害のリスクは高まる

成田空港へ着陸する航空機における洋上脚下げの実施が落下物による被害のリスクを低めたとすれば、羽田空港へ着陸する飛行機が洋上脚下げから陸地上での脚下げ方式に変わった場合、直下に生活する人や建造物への落下物による被害のリスクは高まると考えられるが、政府のご認識はいかがか。

また、そうした落下物(特に氷塊)へのリスク回避のための方策を決定、もしくは検討しているか。

回答3-4:引き続き、落下物対策に万全を尽くしてまいりたい

回答3-2&3-3についてでお答えしたとおり、新経路案による運航時の御指摘の「洋上脚下げの実施」については決まっていないが、回答1-2&1-3についてでお答えしたように、御指摘の「落下物減少」と「洋上脚下げの実施」との因果関係は必ずしも解明されておらず、仮に、御指摘の「洋上脚下げから陸地上での脚下げ方式」に変更することとした場合に、御指摘の「直下に生活する人や建造物への落下物による被害のリスク」が高まるかどうかについてお示しすることは困難である。

いずれにせよ、先の答弁書(平成31年2月19日内閣衆質198第29号)三についてでお答えしたとおり、航空機からの落下物(以下「落下物」という。)については、国土交通省において平成30年3月に取りまとめた「落下物対策総合パッケージ」を踏まえ、同年8月に航空法施行規則(昭和27年運輸省令第56号)を改正し、平成31年1月15日から本邦航空運送事業者及び航空機使用事業者に対し、同年3月15日から外国人国際航空運送事業者に対し、それぞれ部品等脱落防止措置を講ずることを義務付けたことに加え、駐機中の航空機を空港管理者がチェックする体制を強化するなどしたところであり、政府としては、引き続き、落下物対策に万全を尽くしてまいりたい

雑感

質問書(約1千500文字)と答弁書(約1千800文字)は別々の文書なので、上記のように一問一答形式に再構成しないと、内容を的確に把握することはできない。

成田空港へ着陸する航空機の洋上脚下げに係る質疑を通じて、洋上で脚下げすることによる地上への落下物減少効果が定量的に明らかになった
一方、羽田新ルートに係る洋上脚下げの実施の可能性と脚下げ回避エリア設定の検討については、「決まっていない」というのが政府の回答。でもって「いずれにせよ、・・・、政府としては、引き続き、落下物対策に万全を尽くしてまいりたい」という常套句。

あわせて読みたい(松原議員の質問主意書)

これまでに松原仁議員が提出した、羽田新ルートに係る質問主意書関連の記事:

2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
Copyright(C)マンション・チラシの定点観測. All rights reserved.