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羽田新ルート|質問主意書(大田区との約束は!?)

第198回国会(19年1月28日~6月26日)の衆議院の質問主意書200件(5月30日現在)のなかに、168番目として羽田新ルートに係る次の質問主意書が埋もれている。

松原仁 衆議院議員(無所属)が5月13日に提出した質問主意書に対する政府答弁書が公開されたのでひも解いてみた。

読みやすいように、一問一答形式に再構成し、各回答のあとに筆者のコメントを朱書きしておいた。
※以下長文。時間のない方は、「質疑応答のポイント」と文末の「雑感」をお読みいただければと。


質疑応答のポイント

松原仁衆議院議員
松原仁 衆議院議員(7期、民進→希望→無所属、早大商卒、62歳)

1.当該文書(大田区との約束)の取り扱い

現在計画中の羽田空港の国際線増便に伴う東京都心部での低空飛行を含む新飛行経路をめぐり、ルート下の住民や町会、企業など、様々な関係者から、決定に対する慎重もしくは反対の声が日増しに多くなっている。

遡ること約10年、平成21年から22年にかけて国土交通省は東京都の大田区との間で飛行ルートの運用や変更に関する文書を交わしており、平成22年5月14日付で、大田区長宛に国土交通省航空局長名で『「D滑走路供用後の東京国際空港の運用について」に対する回答について(回答)』(以後、当該文書)が発せられている

もし都心低空飛行ルートを含む新飛行経路計画が採用される場合、当該文書の内容がどのように扱われるのかについて質問する。

※「当該文書」(D滑走路供用後の東京国際空港の運用について)とは、D滑走路供用開始後の飛行ルール、滑走路運用方式などについて国交省と大田区との間で確認された文書のこと。

具体的な内容は、「D滑走路供用後の東京国際空港の運用について」(PDF:1.3MB)参照(←奈須りえ大田区議のHPに掲載されていた文書)。

質問1-1:政府として当該文書の存在を認識?

政府として当該文書の存在を認識しているか。

回答1-1:承知している

政府としては、平成22年5月14日に国土交通省航空局長から東京都大田区長に対して、御指摘の「当該文書」である「「D滑走路供用後の東京国際空港の運用について」に対する回答について(回答)」(以下「回答」という。)が発出されたことは承知している

質問1-2:当該文書と新飛行経路計画の間に齟齬は?

当該文書における羽田空港の運用内容と、今回の新飛行経路計画の間に齟齬をきたす部分はあるか
ある場合、当該文書のどの部分の変更が必要となるか。

質問1-3:大田区行政とどのような協議?

当該文書の6において、運用の変更を行う場合「大田区と協議する」とされている。今回の新飛行経路計画を進めるにあたり、これまで大田区行政とどのような協議を行い、現在どのような合意がなされているか。まだ行っていない場合、今後、協議を行う予定はあるか。

回答1-2&1-3:新経路案の運用を開始するに当たっては協議を行う

政府としては、東京国際空港における新たな飛行経路案(以下「新経路案」という。)について、関係地域の地方公共団体及び住民の方々に説明を行っているところであるが、今後も引き続き丁寧な情報提供を行い、幅広い理解を得た上で、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会までに運用できるようにしたいと考えている。

お尋ねの「齟齬をきたす」の意味するところが必ずしも明らかではないが、東京都大田区に対しても、丁寧な情報提供を行いつつ、今後、新経路案の運用を開始するに当たっては、例えば、回答の一の(三)にある「昼間時間帯」「における離着陸ルート」を変更するなどの対応が必要となるため、回答の6にある協議を行うこととしている。

※今後、離着陸ルートの変更などの対応が必要となるため、国交省は2010年5月14日付で大田区に回答したとおり、大田区と協議を行うとしている。「協議を行う」と答弁しているが、「離着陸ルートを見直す」とは言っていない。

変更協議条項(回答の6)があるので、約束違反ではないというのが国交省のスタンスなのだろうか。

2.大田区以外の自治体との間で交わした当該文書と同等ないし類似の合意

質問2-1:大田区以外の自治体との間で交わした合意は?

今回の新飛行経路の採用に係るもので、過去に大田区以外の自治体との間で交わした合意は存在するか。存在する場合、いつ、どの自治体と、どのような合意を交わしたか。

質問2-2:合意を交わした自治体とどのような協議?

質問2-1に関連して、合意を交わした自治体との間で、今回の新飛行経路計画に関して、どのような協議を行ってきたか。もしくはその自治体との間で何らかの合意を得られているか。

回答2:必要に応じて、関係地域の地方公共団体と協議を行ってまいりたい

お尋ねの「今回の新飛行経路の採用に係るもので、過去に大田区以外の自治体との間で交わした合意」の意味するところが明らかではないため、お尋ねについてお答えすることは困難であるが、新経路案については、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会までに運用できるように、今後、必要に応じて、関係地域の地方公共団体と協議を行ってまいりたい

※国交省はなんだかんだ言っても、2020年東京オリンピック・パラリンピック開催までに羽田新ルートの運用開始を進めていくということのようだ。

雑感(約束違反ではないとしても、信義則違反では…)

質問書(約940文字)と答弁書(約900文字)は別々の文書なので、上記のように一問一答形式に再構成しないと、内容を的確に把握することはできない。

再構成して見えてきたのは、羽田新ルート推進に突き進む政府のかたくなな姿勢。

8年前に、国交省と大田区との間で交わされた約束(飛行ルート・時間帯)が反故にされようとしている。慰安婦問題や徴用工問題など、国と国との間で決定した約束が反故にされて憤慨している政府関係者らは、大田区と交わした約束を反故にすることをどう捉えているのだろうか。

変更協議条項(回答の6)という逃げ道を作っていた国交省の役人。約束違反ではないとしても、信義則違反ではないのか……。

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