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羽田新ルート|質問主意書(上皇陛下の仮住まい対策)

第198回国会(19年1月28日~6月26日)の衆議院の質問主意書182件(5月23日現在)のなかに、159番目として「新飛行ルート間近に位置する上皇陛下仙洞仮御所の諸対策に関する質問主意書」が埋もれている。

松原仁 衆議院議員(民進→希望→無所属)が5月7日に提出した質問主意書に対する答弁書が5月23日に公開されたのでひも解いてみた。

読みやすいように、一問一答形式に再構成しておいた。
※以下長文。時間のない方は、「質疑応答のポイント」と文末の「雑感」をお読みいただければと。


質疑応答のポイント

松原仁衆議院議員
松原仁 衆議院議員(7期、民進→希望→無所属、早大商卒、62歳)

政府は2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピック前を目途にした羽田空港の国際線増便計画に伴い、東23区上空を含む新たな飛行ルート(以下、新飛行ルート)の採用に向けて説明会等を続けている。

しかし第197回国会における質問第98号及び今国会で先に提出した質問第29号、またそれぞれに対する安倍晋三内閣総理大臣からの答弁書でも示されている通り、ルート直下及び周辺住民からは騒音や落下物に対する不安の声が上げられている。

同時に、先般、皇室において御世代わりが行われたが、退位された先帝である上皇陛下の「仙洞仮御所」として「高輪皇族邸」(東京都港区高輪1の14の1)の使用が決定されている。

「高輪皇族邸」は、新飛行ルート案における南風時のC滑走路への着陸ルートのほぼ真下に位置しており、当然両陛下の生活に対しても、先述の住民から挙げられているのと同様の懸念が持たれることになる。

在位時に国家国民を思われ大変なご尽力をいただいた両陛下には、退位後は静かな環境下で新たな生活を送っていただきたいとの立場から質問させていただく。

1.仙洞仮御所への両陛下のお住まいについて

質問1-1:仮住まいの期間?

上皇・上皇后両陛下の仮住まいの期間はいつからいつまでか。

回答1-1:未定である

お尋ねの「上皇・上皇后両陛下の仮住まいの期間」の意味するところが必ずしも明らかではないが、上皇上皇后両陛下の吹上仙洞御所からの御移転の時期等は未定である。

質問1-2:宮内庁へ説明は?

本件新飛行ルートについて、国土交通省もしくはその他の省庁から宮内庁へ説明はなされているのか。

回答1-2:国交省から宮内庁に説明を行っている

東京国際空港(以下「羽田空港」という。)における新たな飛行経路案(以下「新経路案」という。)の内容については、既に国土交通省から宮内庁に対して説明を行っている

2.仙洞仮御所の防音体制について

質問2-1:仙洞仮御所を通過する飛行高度は?

新飛行ルートにおいて上皇・上皇后両陛下の仮住まいである仙洞仮御所の真上付近を航空機が通過するとき、その機体の飛行高度は地上何メートル程度と想定されているか

質問2-2:騒音レベルは?

質問2-1に関連して、仙洞仮御所の真上を航空機が飛行するとき、その直下の地上での騒音レベルは何デシベル程度と予想されるか。

国土交通省の資料「羽田空港のこれから」に代表的に引用されるボーイング社製の大型機、中型機、小型機の場合について、その騒音レベルをお示しいただきたい

質問2-3:仙洞仮御所の騒音対策?

仙洞仮御所の騒音対策についてお尋ねする。

新飛行ルート案において羽田空港C滑走路への着陸ルート使用時には、15時から19時にかけて、1時間当たり最大30回の航空機の飛行が見込まれている。

他方、上皇・上皇后両陛下は、退位後も、国民のために祈りを続ける意思を示されていると、多くの報道機関が伝えている。祈りを行う環境として断続的な騒音が想定される状況は適切ではないと考えられる。

2で想定される騒音は、仙洞仮御所の建物内では、どの程度の騒音として体感されるか

回答2:73~76dB程度(大型機)

お尋ねの「仙洞仮御所の真上付近」の意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「仙洞仮御所」が高輪皇族邸を指すとすれば、新経路案のうち羽田空港のC滑走路へ着陸する飛行経路において、航空機は、最も当該飛行経路に近い同皇族邸の敷地の中の地点から西へ約120メートルの地点を、約450メートルから約600メートル程度の高度で飛行することを想定している。

また、お尋ねの「国土交通省の資料「羽田空港のこれから」に代表的に引用されるボーイング社製の大型機、中型機、小型機」が当該高度で飛行した場合の当該飛行経路直下における航空機の騒音レベルの最大値は、それぞれ、73デシベルから76デシベル程度、69デシベルから74デシベル程度及び68デシベルから71デシベル程度と想定している。
なお、これらの値は、実際の航空機の運航時における、その重量等の運航条件や風向等の気象条件によって変動し得るものである。


また、一般に、屋内では航空機の騒音レベルは小さくなるが、その程度については、建造物の材質及び構造等により異なるため、御指摘の「2で想定される騒音」について、高輪皇族邸の屋内での騒音レベルを一概にお示しすることは困難である。

3.航空機からの落下物への対策について

質問3-1:落下物が直撃される可能性?

政府の真剣な落下物対策への取り組みにもかかわらず、航空機からの落下物の報告は後を絶たない。

新飛行ルートが採用された場合、上皇・上皇后両陛下のお住まい「仙洞仮御所」に航空機からの落下物が直撃される可能性はないか。可能性がない場合、その理由は何か。可能性がある場合、現在それに対して何らかの対策を検討しているか

質問3-2:近隣へお出かけの際の落下物対策?

新飛行ルートが採用された場合、「仙洞仮御所」敷地内を含めた両陛下の近隣へのお出かけの際を想定した、航空機からの落下物対策を予定しているか。

回答3:万全を尽くしてまいりたい

一般に、航空機からの落下物が発生した場合の落下地点は、当該落下物の形状及び重量並びに当該落下物が発生した際の天候等の様々な要因により定まるものであるため、お尋ねの「可能性」をお示しすることは困難である。


また、お尋ねの「「仙洞仮御所」敷地内を含めた両陛下の近隣へのお出かけの際を想定した、航空機からの落下物対策」の意味するところが必ずしも明らかではないが、いずれにせよ、政府としては、先の答弁書(平成31年2月19日内閣衆質198第29号)三についてでお答えしたとおり、航空機からの落下物対策に万全を尽くしてまいりたい

雑感

質問書(約1千300文字)と答弁書(約1千100文字)は別々の文書なので、上記のように一問一答形式に再構成しないと、内容を的確に把握することはできない。

再構成して見えてきたのは――

  • 羽田新ルートが上皇・上皇后両陛下の仮住まい上空を通過することについては、すでに国土交通省から宮内庁に対して説明を行っていること
  • 騒音レベルの最大値は、73~76dB程度(大型機の場合)であること
  • 落下物の可能性に対しては、「万全を尽くしてまいりたい」という精神論にとどまっていること

上皇・上皇后さまとも、退位後は静かな環境下での生活が送れないことだけは明確になったのではないか。

せっかくの質問主意書・答弁書もマスメディアが取り上げなければ、記録文書の肥しとなるだけだ。弱小なこのブログメディアによる情報が少しでもお役に立てば幸甚。

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