任期満了に伴う渋谷区長選挙が実施される(告示4月16日、投開票4月23日)。
現職の長谷部健氏(50歳)の対抗馬として、吉田佳代子氏(区議4期、立憲推薦、60歳)を野党候補として一本化できるか……。
各候補の羽田新ルートに係るスタンスを適宜整理していく。
※投稿22年12月29日(更新23年4月17日:選挙公報反映)
長谷部 健氏(現職2期)
Photo by 内閣府 地方創生推進室.CC BY 4.0.
長谷部健氏(無所属、2期、元渋谷区議会議員3期、専修大学商卒、50歳)
3選へ出馬表明
長谷部健区長は1月4日、区内で開かれた新年賀詞交歓会で「3期目に挑戦したい」と述べた。
長谷部・渋谷区長、3選へ出馬表明
渋谷区の長谷部健区長(50)は4日、今春の統一地方選(4月16日告示、23日投開票)で実施される区長選に、3選を目指して立候補する意向を表明した。同日区内で開かれた区新年賀詞交歓会で、「まだまだやるべきことがあり、渋谷区の可能性を育むため3期目に挑戦したい」と述べた。(以下略)
(毎日新聞 23年1月5日)
23年渋谷区長選公約
※追記4月17日:選挙公報には「羽田」の文言なし。
羽田新ルートに係るスタンス【国に丸投げ】
区議会での過去の発言(後述)を踏まえると、羽田新ルート問題は”国に丸投げ”が長谷部健氏の基本スタンス。
羽田新ルートに係る区議会での過去発言
区議会定例会における羽田新ルートに係る長谷部健氏の主な発言は、以下の通り。国に丸投げスタンスを示している。
※以下、新しい順。
- 必要に応じて(国に)求めていきます(22年第4回定例会11月24日)
- (氷塊の落下調査)要請を国に行う考えはありません(22年第2回定例会6月3日)
- (都及び関係区市連絡会で)区から発言すべきことはありませんでした(22年第1回定例会2月24日)
- 運用停止を求める声明を出す考えはありません(21年第4回定例会11月25日)
- 現段階では国に撤回を求める考えはありません(21年第3回定例会9月14日)
- 国の責任において情報提供すべき(21年第2回定例会6月3日)
- 国が判断することで区が判断することではありません(21年第1回定例会2月26日)
長谷部氏の本音が最も出ているのは18年第3回定例会本会議(9月21日)一般質問に対する次のアドリブ答弁。
- 吉田佳代子議員(立民)から「区長の認識と今後の具体的対応」を問われて、「(羽田空港の機能強化について)まぁ賛成という、まぁ賛成というかですね、まぁそういうことだというふうに考えております」と答弁。
- 五十嵐千代子議員(共産)から「羽田の新ルートのような都心の超過密地帯の上空を低空飛行している例はありません。区長が言っていること(ニューヨーク、パリ、ロンドンに事例がある)と逆行するのではないか」と詰め寄られて、「機能強化については仕方ない」とか、「(私は国が住民にしっかり説明することを要望しているので)国会議員もいらっしゃる共産党ですから、是非そちらの方でもやっていただければありがたい」と答弁。
【参考】長谷部 健氏の過去戦績
1期目は候補者が4人だったこともあり、長谷部氏の得票率(=得票数÷投票総数)は34.6%に留まった。2期目は共産党推薦の大井一雄氏との一騎打ちとなり圧勝。
「選挙速報 | 渋谷区公式サイト」に掲載されたデータを元に筆者作成
吉田佳代子氏(立憲推薦・共産支援)
吉田佳代子氏(立憲民主、区議4期、日大理工学部数学科卒、60歳)
※追記23年1月19日
日本共産党渋谷地区委員会は1月16日、4月の区長選挙では、立憲民主党推薦の「吉田かよこ」さんを、市民と野党の共闘候補として、支援することを発表した。(日本共産党渋谷 1月17日ツイートより)
【メモ】一般に、候補者との関わりが強い順に「公認」→「推薦」→「支持」→「支援」(選挙ドットウィンより)
吉田佳代子氏は自身のツイッターで22年11月7日、区長選挙推薦決定の新しいチラシができたことを伝えている。
※22年11月1日発行の立憲民主「号外」には、23年渋谷区長選挙に吉田佳代子氏の推薦が決定したことが記されている(次図)。
おはようございます。気持ちいい季節になりました。今朝は、はるた学区議会議員と一緒に街頭活動を行いました。区長選挙推薦決定の新しいチラシも出来ました。是非、ご一読ください。
⇒拡大
出馬表明、都心の低空飛行の撤回を国に求める
吉田佳代子氏は3月27日出馬表明。
統1地方選で行われる東京都の渋谷区長選(4月23日投開票)で、税理士で区議の吉田佳代子さん(60)が27日、無所属で立候補すると表明した。立憲民主からの推薦が決定している。
都庁で記者会見した吉田さんは「区民の意見が反映されない区政になっていることが大きな問題」と出馬動機を述べた。学校給食費の無償化や、羽田空港の新飛行ルートで都心の低空飛行の撤回を国に求めること、昨年3月に閉館した区立渋谷図書館の復活などを掲げる。(以下略)(東京新聞 23年3月28日)
今日は #都庁 で #記者会見 を行いました。初めての経験なので準備もままならなかった。記者さんの質問にわかりやすく答えるって難しいと思いました。
23年渋谷区長選公約:羽田新飛行ルートの撤回
追記4月17日:選挙公報に「羽田新飛行ルートの撤回を」が記載された。
羽田新ルートに係るスタンス【都心上空・低空飛行に反対】
23年1月15日発行予定の立憲民主「号外」には、立憲民主党が渋谷区長選挙に吉田佳代子氏の推薦を決定したとして、「渋谷の空に平穏と安全を!都心上空・低空飛行に反対します!」という主張が掲載されている(写真)。
羽田問題訴訟の会-Twitter 12月24日(表面、裏面)より
⇒拡大
羽田新ルートに係る区議会での過去発言
吉田佳代子氏が渋谷区議会定例会本会議の一般質問で羽田新ルート問題を取り上げたのは過去4回。羽田新ルート問題に対して曖昧戦略を取っている立憲民主党の区議だからなのか、残念ながら過去発言からは積極的な反対姿勢はうかがえない。
以下、新しい順。
(22年3月13日に渋谷区内のテニスコートに氷塊が落下した事案を踏まえ)落下物の直撃に対する区民の恐怖と懸念に是非寄り添った対応をして頂きたいと思いますが、区長のお考えを伺います。
いくら賠償制度が設けられていても、立証できなければ賠償されません。まして氷は解けてなくなるので立証が非常に難しいのです。今回は民地への落下でしたが、公共施設への落下があった場合、対策はどのように考えられていますか。区長に伺います。
当区は騒音対策として補助対象地域には該当せず、一般家庭の防音対策を求めていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
健康被害や環境汚染など、考えられる弊害については全く記載がなく、今後こうした問題の情報収集を行いホームページの充実をしていっていただきたいと思いますが、区長に伺います。
【参考】吉田佳代子氏の過去戦績
吉田佳代子氏の区議4期の戦績を次図に示す。
得票数は1~3期までは2千票弱。4期で2,694票と急増し、定数34に対して3位まで上昇。
ちなみに、長谷部健氏は1・2期とも第1位。その後区長に挑んだ。
「選挙速報 | 渋谷区公式サイト」に掲載されたデータを元に筆者作成
菅原深雪氏(日本第一党)
菅原深雪氏(日本第一党、配管会社役員、湘北短大卒、60歳)
- 第26回参議院議員選挙_東京選挙区(2022/07/10)22位/34人⇒落選
- 上越市議会議員補欠選挙(2021年10月31日)3位/3人⇒落選
※追記4月17日:選挙公報には「羽田」の文言なし。
×北浦優子氏(無所属)
北浦優子氏(無所属、創価学会会員、主婦、50歳)
※「渋谷区長選挙立候補者一覧」(4月16日現在)に北浦氏の記載がないため、削除した(追記4月17日)。
4月13日に開催された「渋谷区長選挙 公開討論会」に区長候補として参加したのに、区長選選挙公報には掲載されていない。供託金100万円を納めずに、言いたいことだけ言う作戦だったのか……。
23年2月15日、出馬表明。
現役の創価学会員の主婦。生活保護受給中だという。
詳細は、急記者会見|込山 洋こみちゃんねる - YouTube
※羽田新ルートに係る発言なし
コロナ禍で生活苦を体験し、立候補を決意したと説明。「コロナに負けないよう渋谷を明るくしたい」と話した。
(朝日新聞 2月15日)
鈴木哲司氏(無所属、自民推薦)
twitter渋谷区長候補予定者 鈴木哲司より
鈴木哲司氏(自民渋谷支部推薦、日本救急救命士協会長で鈴鹿医療科学大元教授、國學院卒、49歳)
4月1日出馬表明。
渋谷区長選、救急救命士の鈴木哲司氏が立候補表明 自民支部が推薦
16日告示の東京都渋谷区長選に、日本救急救命士協会長で鈴鹿医療科学大元教授の鈴木哲司氏(49)が、無所属で立候補する意向を表明した。自民党渋谷総支部の推薦を受ける。1日、区内で事務所開きを行い、「渋谷を安全安心な街にするため、立ち上がる必要があると考えた」と支援者たちに決意を述べた。(以下略)
(朝日新聞 4月1日)
※追記4月17日:選挙公報には「羽田」の文言なし。
雑感
長谷部氏は2007年と2011年の区議選でいずれもトップ当選を果たしたあと、2015年に挑んだ区長選では村上英子氏(自公推薦)と矢部一氏(民主・維新・社民・生活の推薦、共産党の支援)を抑えて初当選。前回2019年の区長選では共産党推薦の大井一雄氏を相手に圧勝している。
23年4月の統一地方選挙の投票率が従前並みであれば、吉田氏は野党の統一候補になっただけでは当選を確実にものにすることはできない。なぜならば、過去4回の渋谷区議会議員選挙の野党の得票率は高々3割程度だからだ(次図)。
選挙に強い長谷部氏に吉田氏が勝つためには、野党票に加え無党派層の票を取り込むことはもちろん、自公層の票を上乗せできるような現実的な対応も求められる。
2月下旬に開催される第1回定例会本会議は、吉田氏の区長候補としての力量が試される舞台になる。
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