渋谷区議会の「21年第3回定例会」本会議の代表質問(9月14日)で、羽田新ルートに関して田中正也議員(共産)の質疑応答があった。
議会中継(録画)をもとに、全文テキスト化(約1千文字)しておいた。
※時間のない方は「質疑応答のポイント」と「雑感」をお読みいただければと。
田中正也 議員(共産)
田中正也議員(共産、区議3期、中央大学法学部卒、59歳)
田中:羽田新飛行ルートは撤回を求めるべき
次に、羽田新飛行ルートの運航から1年6か月が経ちますが、コロナ禍で海外からの利用者が激減しており、「五輪のための増便、外国人観光客呼び込みのため」との国土交通省の説明は成り立たなくなっています。
しかも、政府は羽田空港で後方乱気流管制方式を採用することで飛行時間が短縮できると認めており 、この方式を採用すれば都心飛行ルートの中止は可能です。
アンケートには「自宅が高台のため騒音は想像を絶します」「ストレスで偏頭痛を起こし鬱病と診断された」との訴えが寄せられました。
羽田新飛行ルートによって区民の健康被害を受けているのです。国に実態調査と補償を求めるとともに、危険極まる羽田新飛行ルートは撤回を求めるべきです。区長に所見を伺います。
長谷部健 渋谷区長(無所属、2期、元渋谷区議会議員3期、専修大学商卒、49歳)
区長:現段階では国に撤回を求める考えはありません
次に、羽田空港新飛行ルートについてのお尋ねです。
羽田空港新飛行ルートについては、これまでも貴会派の質問にお答えしてきた通り、国の責任において、引き続き丁寧な説明と十分な情報提供を行うよう、また騒音対策や安全対策等に対して、さらなる取り組みの強化を図るよう必要に応じて国に対して求めていきます。
こうしたことから、現段階では国に撤回を求める考えはありません。
田中:羽田新飛行ルート、中止をすべきだというふうに求めるべき
羽田新飛行ルートの問題です。これも区民の命と健康のかかった問題です。
私たち紹介しましたけれども、アンケートには健康被害を訴える声が出ていると。これは区民の命と健康にまさに関わる問題で、自治体として一番大事にしなければならない問題だと思います。このことについて区長は先ほど「必要に応じて求めていく」という話をされましたけれども、「必要に応じて」というレベルではないと思うんですよね。
だってもう機能自体はもう必要ないっていうことも国会も政府も認めているわけですし、実際に健康被害が起きてるっていう現実を正面に受け止めて、やっぱりきちんと政府に対して、私は――、政府が認めてるのは、ようするに、後方乱気流管制方式を採用することで5時間短縮できて、この方式を採用すれば都心ルートは中止できるっていう答弁書を国会議員に対して出してるんですよ。ということなので、これはそういうことなんです。ということで、もう本当に必要ないわけですから。
私はやっぱり区長は区民にも分かるような形で、きちんと羽田新飛行ルートは中止をすべきだというふうに求めるべきだということで再質問いたします。
区長:今の段階でまた何かを申し上げるそういったつもりはありません
羽田空港についてですけども、もう何回も同じ話をしてると思います。
国が責任をもってしっかりと説明していく、進めていく。説明して進めていく事業だというふうに考えています。
ですので私から今の段階でまた何かを申し上げるそういったつもりはありません。
雑感(羽田新ルート、議員の関心は低下している!?)
羽田新ルートの本格運用が20年3月に始まって、20年6月の第2回定例会以降、羽田新ルート問題を取り上げる議員数は今回が最少の1名。文字数(≒質疑応答時間)も最低(次図)。
羽田新ルート問題に対する渋谷区議会議員の関心は低くなってきているのではないか。
19年以降の各党派の登壇状況を可視化したのが次表。
- 共産党は今回もまた、お決まりの「羽田新飛行ルートは撤回を求めるべき」を投げるが、長谷部区長からお決まりの「現段階では国に撤回を求める考えはありません」と打ち返される。もはやこれは、多くの区で観測される区長vs共産議員のお決まりごとのようなものなのではないか。質問内容に創意工夫が求められる。
- れいわ渋谷の2人(堀切・金子議員)は毎回、長谷部区長の答弁に押し切られているものの、質問内容に創意工夫を凝らしている点は評価できる。
ただ、今回(21年第3回定例会)は両名が登壇していながら羽田新ルート問題を取り上げていないのはいただけない。 - 立憲民主党は、治田学議員が登壇したときはそれなりにキレのある質問が見られるが、前回(21年第2回)のように中田喬士議員(1期、31歳) がヘラヘラしながら、羽田新ルート問題の本質とは遠い「ご意見カード」の質問を投げるのは党としてどうなのか。これでは、立憲民主党が羽田新ルート曖昧戦略を取っているのがバレバレではないのか。
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