渋谷区議会の「22年第4回定例会」本会議の代表・一般質問(11月24日~25日)で、羽田新ルートに関して2人の質疑応答があった。
議会中継(録画)をもとに、全文テキスト化(約2千600文字)しておいた。
※時間のない方は「質疑応答のポイント」と「雑感」をお読みいただければと。
吉田佳代子 議員(立憲)
吉田佳代子議員(立憲民主、区議4期、日大理工学部数学科卒、60歳)
吉田:落下物の直撃に対する区民の恐怖と懸念
次に、羽田空港新飛行ルートに対する対応についてです。
新型コロナウイルスの水際対策が10月11日から大幅に緩和されました。ワクチン接種などの一部制限は残りましたが、1日当たり5万人の入国者数の上限は撤廃され、観光目的での個人旅行やビザなし入国も解禁されました。羽田空港に着陸する便も増え始めていますが、今は冬場で南風が吹くことが少ないため、飛行する国際線も少ない状況ですが、春に向けてぜひ対策をしていただきたいと思います。
本年3月13日に本町で落下した氷塊については、極めて飛行機から落下した可能性が高いにも関わらず、原因究明もされないままに幕引きとなりました。成田空港近辺では、氷塊落下対策として、九十九里沖ないし林・農地の上で脚下げをしていますが、渋谷区上空での飛行機の脚下げについて、区長はどのように考えていますか。
落下物の直撃に対する区民の恐怖と懸念に是非寄り添った対応をして頂きたいと思いますが、区長のお考えを伺います。
区長:必要に応じて(国に)求めていきます
長谷部健 渋谷区長(無所属、2期、元渋谷区議会議員3期、専修大学商卒、49歳)
次に、羽田空港新飛行ルートに対する対応について、2点のお尋ねです。
はじめに飛行機の脚下げについてです。
飛行機の専門家ではないので確かなことはわかりませんが、飛行機が安全に着陸するために必要なタイミングで脚下げしているのではないかと考えます。なお、「氷塊の落下と脚下げの因果関係は必ずしも解明されていない」と国から説明を受けています。
次に、区民対応についてのお尋ねです。
落下物に対する対応については、これまで通り国の責任において丁寧な説明と十分な情報提供を行うよう、また安全対策等に対してさらなる取り組みの強化を図るよう、必要に応じて求めていきます。
堀切稔仁 議員(れいわ渋谷)
堀切稔仁議員(れいわ渋谷、区議3期、東京綜合写真専門学校卒、54歳)
堀切:抜本的な対応を図り、区民の生活と安全を守るべき
羽田空港都心低空飛行問題について質問いたします。
羽田空港の着陸機が都心の低空飛行を通る羽田空港都心低空飛行でございますが、2019年3月から本格的な運用開始3年半が経過をいたしました。
この間、航空機の騒音や航空機に付着する氷塊の落下などの危険性に、多くの懸念と不安がありましたが、依然として問題解決されず、区民から上がる悲鳴については、国は何らかも対策をしておりません。
渋谷区の上空を通過する羽田空港新飛行ルートには、区民の誰一人として納得してないと思います。さらに区長は国に対して一刻も早く、この羽田空港の新飛行ルートを運用停止し、海上ルートの使用のみに求めていく、または区長会において羽田空港新飛行ルートの運用が中止をされるような決議を行うなど、抜本的な対応を図り、区民の生活と安全を守るべきと考えますが、区長のご所見を求めます。
区長:必要に応じて国に対して求めていきます
長谷部健 渋谷区長
次に、羽田空港新飛行ルートについてのお尋ねです。
羽田空港新飛行ルートについては、これまでも議員のご質問にお答えしてきた通り、国の責任において引き続き丁寧な説明と十分な情報提供を行うよう、また騒音対策や安全対策等に対して、さらなる取り組みの強化を図るよう、必要に応じて国に対して求めていきます。
国に対しても運用中止を求めることなど、議員のご発言にあった要請のいずれにもお答えする考えはありません。
堀切:区長会に今後とも意見を上げないんでしょうか
さらに羽田空港の都心低空飛行問題についてお聞きしますが、羽田空港都心低空飛行問題については、区長が全く前向きじゃなく、国のずっと責任にし続けて、もう3年半が回してる。
国が、例えばコロナ禍でやっと、厚生労働省が窓を開けることを推奨し始めました。これは結局、エアロゾル感染をすることをやって認めたわけです。ところが、渋谷の空は午後3時からそういう状態じゃない。窓を開ければうるさくてしょうがない。であればやはり、区長がコロナ禍を考えても、やはりもう抜本的に区長会でちゃんと意見を上げるとかされたらどうでしょうか。区長会に今後とも意見を上げないんでしょうか。
区長:何かあれば、区長会としてもしっかりと国交省に対しては意見を申し述べていきたい
羽田の空港についてですけども、区長会でも意見を申し述べています。区長会の合意としては、当然喜ばしいことではないですが、もう国が決めたことなので、しっかりと国が責任もって説明をすることというふうに話しております。
何かあれば、区長会としてもしっかりと国交省に対しては意見を申し述べていきたいと思っています。
堀切:区長から区長会にもう一度、意見として求めて、国に再考を図るということを強く言っていただきたい
さらに、国が認めてやってるからということではないと思うんですよね。もう国が云々ではなく、渋谷区としての判断をつけるべきじゃないかと。それができないんであれば、やはりもう区長会として決議を上げるぐらいのことはした方がいいんじゃないでしょうか。
我々区議仲間でも例えば、足立区から始まり板橋区から始まり、ほとんどの区の議員たちはやはりこの問題取り上げています。なぜならば、区長たちが動かないからですよ。
だから長谷部区長から動いたらどうですかと。渋谷の場合、大問題なのに、二路線もこのルートを抱えてるんですよ。一路線じゃないじゃないですか。A・C両方の滑走路を抱えて多くの区民の方たちにご負担をこれ以上強いるというのはおかしな話です。ぜひ区長から区長会にもう一度、意見として求めて、国に再考を図るということを強く言っていただきたいんですが、その辺について再々質問を求めたいと思います。
区長:そういったことがあれば、渋谷区としての話をしっかりしていきます
羽田についてですけども、区長会では意見を申し上げていますので、引き続き機会があったり、そういったことがあれば、渋谷区としての話をしっかりしていきます。
雑感
羽田新ルートの本格運用が20年3月に始まって、20年6月の第2回定例会以降、羽田新ルート問題を取り上げる議員数・文字数(≒質疑応答時間)ともに減少傾向が見られる。
22年第2回(6月)に増加したのは、3月13日に渋谷区内で発生した氷塊落下の影響による一時的な現象ではないか。
19年以降の各党派の登壇状況を可視化したのが次表。
- 共産党はこれまで毎回羽田新ルート問題を取り上げていたのに、21年第4回以降で取り上げたのは22年第2回の代表質問に立った牛尾真己 議員が最後。しかもこのときは質問項目6つのうちの最後という扱い。
- れいわ渋谷の2人(堀切・金子議員)は、長谷部区長の答弁に押し切られながらも創意工夫を凝らした質問を何回も粘り強く投げかけている。
- 立憲民主党は、治田学議員が登壇したときはそれなりにキレのある質問が見られるが、他の議員になると今一つ。
吉田佳代子 議員は今回、「2.まちづくりについて」の中で羽田新ルート問題を取り上げたので、議会を傍聴するか録画動画を全部チェックしていないと認識できない。立憲の羽田新ルート問題に対する曖昧スタンスを世間に知らしめたくなかったのか(笑)。
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