任期満了に伴う港区長選挙が実施される(告示5月26日、投開票6月2日)。
6選を目指す現職の武井雅昭氏(71歳、自民推薦)の対抗馬として、清家愛氏(区議4期、49歳)が”完全無所属”で挑む。
各候補の羽田新ルートに係るスタンスを適宜整理していく。
※投稿24年4月30日(追記24年5月10日:菊地正彦氏出馬)
武井雅昭氏(現職5期)
港区議会 24年第1回定例会本会議(2月16日)質疑応答より
武井雅昭 港区長(5期、元港区民生活部長、早大政経学部卒、71歳)
6選へ出馬表明
武井雅昭区長は2月14日、区議会の所信表明演説で、6選を目指して立候補する意向を表明した。
港区長選挙、武井雅昭区長が6選目指し出馬表明
(前略)武井区長は「区民の審判を仰ぎ、引き続き区民生活の向上、港区の発展のために区政運営の責任を担っていく決意だ」と述べた。(以下略)
(読売新聞 23年2月15日)
24年港区長選公約※未稿
※未稿(24年4月30日現在)
羽田新ルートに係るスタンス【国に丸投げ】
区議会での過去の発言(後述)を踏まえると、羽田新ルート問題は”国に丸投げ”が武井雅昭氏の基本スタンス。
今年2月14日の第1回定例会本会議での所信表明でも使われた、「国に迅速な対応を行うよう強く要請してまいります」という表現は、過去の定例会本会議の質疑応答で何度も登場してきた耳タコ表現。
羽田新ルートに係る区議会での過去発言
区議会定例会における羽田新ルートに係る武井氏の昨年以降の主な発言は、以下の通り。国に丸投げスタンスを示している。武井氏は物腰が柔らかいので、悪い印象は受けないのだが、役人が書いた文書をひたすら棒読みするだけ。
※以下、新しい順。
- 固定化回避に向けた検討を一層加速するよう強く要請(24年第1回定例会2月16日)
- ご意見やご要望についても早期に国へ伝えてまいります(23年第4回定例会11月29日)
- 固定化回避の早期実現を強く求めてまいります(23年第3回定例会9月11日)
- 国に対し強く求めてまいります(23年第2回定例会6月22日)
- 固定化回避を強く求めてまいります(23年第1回定例会2月14日)
【参考】武井雅昭氏の過去戦績
現区長の2期から5期の戦績を可視化してみた(次図)。
3・4期目の選挙では7割を超える得票率(=得票数÷投票総数)を獲得し圧勝している。ところが、前回5期目の選挙で62.2%まで低下。投票率が30%まで上昇し、組織票の効果が薄れたのか、あるいは多選に忌避感が出てきたのか。
「選挙の結果|港区」に掲載されたデータ(2012年以前データは現在公開されていない)を元に筆者作成。
清家愛氏(無所属で出馬)
港区議会 23年第3回定例会 決算特別委員会(9月25日)質疑応答より
清家あい議員(みなと政策会議、区議4期、青学国際政治経済学部卒、元産経新聞社会部記者、49歳)
無所属での立候補を表明
港区長選 選挙戦へ 現職・武井氏、清家区議が表明
任期満了に伴う港区長選(5月26日告示、6月2日投開票)で、区議の清家愛氏(49)が29日、無所属での立候補を表明した。2月には武井雅昭区長(71)が出馬を表明しており、選挙戦となる見通しとなった。
清家氏は2011年に初当選し4期目。医療的ケアが必要な児童や重度障害児も通える保育園設立を実現するなど、区民の声を区政に反映する姿勢をアピール。「区役所出身の区長による長い政治で、前例主義、縦割り主義に陥っている。民間力を生かすことが今一番求められている」と話し、都市経営ビジョンの見直し、区長任期を3期までとする「多選自粛条例」の制定などを公約に掲げた。(以下略)
(毎日新聞 24年3月30日)
立候補出馬会見「国に対して固定化回避の早期実現を要請して行きたい」
3月29日都庁記者クラブの行われた港区長選挙 立候補出馬会見では、「愛があふれる国際都市 港区」5つのビジョンとして次の5項目が掲げられた。
- 世界一幸せな「子育て・教育都市」
- 誰ひとり取り残さない「健康・福祉都市」
- 確実に命を守る「リアル防災都市」
- アート・スポーツ・国際化(幸福と成長の好循環都市)
- DX・区役所改革(世界につながるオープン区役所)
5つのビジョンのなかには、羽田新ルートへの言及はない。
同記者会見では、羽田新ルートに触れたのは、都政新報の記者からの質問だった.
記者
- 羽田新ルートの問題について、度々要望だったり、やってきたと思うんですけど、市長選の出馬にあたって、そこのスタンスはどういうふうになるのかっていうのを改めて教えてください。お願いします。
清家氏
- 羽田空港新ルートについてはいま、港区議会としては全会一致で、新ルートの固定化回避を求めて、早期実現を求めて、国の方に要請をしているところです。
- 今後も区民の生活環境を守り、安全安心を守っていくために、国に対して固定化回避の早期実現を要請して行きたいと。東京都とも連携して早期実現を要請し続けていきたいと思っています。
羽田新ルートに係る区議会での過去発言
清家氏が港区議会定例会本会議・委員会の質問で羽田新ルート問題を取り上げたのは2021年以降5回。官僚が編み出した「固定化回避」という言葉を信じているのだろうか。固定化回避とは、羽田新ルートによって現在騒音などの悪影響を受けている住民にとって、将来緩和されるかような幻想を抱かせるマジックワードなのだが……。
以下、新しい順。
(固定化回避の検討加速)是非、強く進めていただくようお願いいたします。質問は以上です、ありがとうございます。
固定化回避の検討会の傍聴はできず、私たちは公開されている資料でしか検討内容を推察することができません。検討状況を国民に説明ができるのはこの検討に加わっている国交省の方だけだと思いますし、不確定な情報による疑念を払拭するためにも、分かりやすく説明をしていただきたいと考えます。
港区としては、この技術的方策検討会での議論の内容をどう理解して、港区の上空を飛ぶ飛行ルートが変更になるという意味で理解してるかどうか、国土交通省の今後の取り組みについてどのように聞いているのか、お伺いします。
議会も区役所も、港区一丸となって羽田空港の新飛行ルートの固定化回避に向け取り組んでいるところですが、港区としてもそうした点について、国に明確な回答を求めていただきたいのと、今後区として、この問題にどのように取り組んでいくつもりか、区長の見解をお伺いします。
これまで2回の検討会での議論の内容を含め、国から得ている(?)飛行経路の固定化回避に向けた議論の状況について、区としてどのように把握されているのかお伺いします。
【参考】清家愛氏の過去戦績
清家愛 区議1~4期の戦績を次図に示す。
2~4期トップ当選。4期目の絶対得票率(得票数を有権者の総数で割った数値)は2.4%まで上昇した。
「区議会議員選挙について|港区」等に掲載されたデータを元に筆者作成
菊地正彦氏(前回の区長選落選した元都議)
※追記5月10日
菊地正彦氏(元都議(1期:1993年-1997年)、日大卒、コンサルティング会社役員、71歳)
出馬表明(無所属で立候補)
元都議の菊地氏港区長選出馬へ
港区長選(26日告示、6月2日投開票)について、元都議でコンサルティング会社役員の菊地正彦氏(71)が9日、無所属で立候補することを表明した。
菊地氏は取材に対し、「財源豊かな『富裕区』だからこそ無駄もある」として、予算の再点検を訴えたほか、区長の多選禁止や災害対策の強化、スポーツ施設の整備などを公約として掲げるという。(以下略)(朝日新聞 24年5月10日)
前回の区長選では4位/5人
前回の区長選では、5人立候補し4位で落選(次図)。
雑感
6選を目指す現職の武井氏(71)に挑む清家氏(49)は、年齢と女性であることにアドバンテージがある。逆風最中の自民の推薦を受けた武井氏に対して、”完全無所属”を謳う清家氏は、過去3回の区議選でトップ当選を果たしていることから、選挙当日の投票率が高ければ当選の確度が上がるのではないか。
5月28日(火)に予定されている東京青年会議所の主催による「港区区長選挙 候補者公開討論会」での区長としての力量が問われる。
あと、羽田新ルート問題に対する本気度を確認したい……。
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