港区議会「22年第4回定例会」本会議の代表・一般質問(11月24日・25日)で、羽田新ルートに関して、3人の質疑応答があった。
議会中継(録画)をもとに、全文テキスト化(約3千600文字)しておいた。
※時間のない方は「質疑応答のポイント」と「雑感」をお読みいただければと。
鵜飼雅彦議員(自民)
鵜飼雅彦議員(自民党、区議4期、専修大学経済学部卒、64歳)
鵜飼:地方空港の積極的活用を国に要請をしていただきたい
次に、羽田空港機能強化について伺います。固定化回避に向けての検討が議論されていますが、巷では悪い噂も流れています。区とともに国に対して動いてきましたが、長いコロナ禍を経て外国人観光客も入国しておりますが、年間4千万人とか5千万人の観光客を受け入れる政策を継続すべきものなのか、改めてコロナ後の日本の姿を考える時ではないのでしょうか。
これまで我々自民党、公明党で協力して、町会・自治会に対してアンケート調査や各地区町会長と国交省の担当者の面談の場を作ってきました。区とも、固定化回避に向けて足並みを揃えて行動をしてまいりましたが、改めて地方活性化としての国の重要施策として、地方空港の積極的活用を国に要請をしていただきたいと思いますが、区のお考えを伺います。
区長:地方空港の更なる活用を強く求めてまいります
武井雅昭 港区長(無所属、5期、元港区民生活部長、早大政経学部卒、69歳)
次に、羽田空港機能強化についてのお尋ねです。区はこれまでも国に対して、地方空港の更なる活用、海上ルートの活用、今後の航空技術の進展に伴う新たな取り組みなど、羽田空港の飛行経路に係る様々な運用等を検討するよう要請してまいりました。
地方空港の活用により、多くの観光客が訪れることで地域経済が活性化し、新たな雇用が生まれるなど、地方の発展につながることが期待できます。引き続き国に対し、地方空港の更なる活用を強く求めてまいります。
清家あい議員(みなと政策会議)
清家あい議員(みなと政策会議、区議3期、青学国際政治経済学部卒、元産経新聞社会部記者、48歳)
清家:住民説明会、どのように開催を促す?
次に、羽田空港新ルートの国土交通省に対する説明会の開催要請についてです。
今年の第2回定例会で、羽田に関する住民説明会の開催を求める請願が全会一致で採択されました。これを受け港区では7月に区長と議長の連名で国交省へ要望書を提出しています。
その内容は導入を検討している2つの飛行方式について、実現の可能性や変更後のルートなどについて、教室型の住民説明会を開催し、区民に対し丁寧に説明すること、区実施の意見募集に寄せられた質問や疑問に対し国の考えを丁寧に説明すること、といったものでした。
国交省では、固定化回避に向けて検討状況を国民に伝えるため、自治体ごとにリーフレットを作成し、各戸配布をしています。しかし、あの文面で内容が理解できる区民はほとんどいないと思います。
国交省は固定化回避検討会の資料や議事録をホームページにも掲載していますが、専門用語が多く、中々理解できるものではありません。現在の検討状況に対し、国交省からの説明や情報提供が十分ではないため、新飛行ルートについては、「検討はパフォーマンスではないのか」「ルート変更しても港区の上を飛ぶことは変わらないらしい」など、様々な疑念が私の耳にも入ってきます。
経路下に住む私たちにとっては、騒音や落下物の心配だけでなく、その不確定な情報に触れることでも一層不安や疑念が増大します。
固定化回避の検討会の傍聴はできず、私たちは公開されている資料でしか検討内容を推察することができません。検討状況を国民に説明ができるのはこの検討に加わっている国交省の方だけだと思いますし、不確定な情報による疑念を払拭するためにも、分かりやすく説明をしていただきたいと考えます。
そこで伺いますが、国には一刻も早く住民説明会を開催させていただきたいと思いますが、区は今後国に対してどのように開催を促していかれるのでしょうか。
区長:引き続き住民説明会の早期の開催を強く求めてまいります
武井雅昭 港区長
次に、羽田空港新ルートの国土交通省に対する説明会の開催要請についてのお尋ねです。
区は区議会と共に本年7月、国に対し住民説明会の開催や、国(区の誤読)に寄せられた意見に対する回答を区(国の誤読)のホームページで公開することを求める要請書を発出し、その後も早期の対応を繰り返し求めております。
これまで国からは、住民説明会の実施についてはその時期や実施方法などを検討する必要があるとの考えが示されていますが、実施の具体化には至っておりません。引き続き住民説明会の早期の開催を強く求めてまいります。
福島宏子議員(共産)
福島宏子議員(共産党、区議1期、聖徳学園保育士専門学校卒、保育士、56歳)
福島:行政、議会、請願者が一緒に国土交通省に住民説明会の開催を要請すること
2022年第4回定例会にあたり共産党議員団の一員として質問いたします。始めに羽田都心低空飛行ルートの運用中止についてです。
2020年3月29日から運用が始まった羽田都心低空飛行に対する区民の怒りの声が止まりません。共産党議員団で取り組んだ区民アンケートに、中止が61%、賛成が8%、と多くの区民が中止を求めています。
寄せられた声を紹介します。「区として全ての町会長を集めた意見交換会を開いたらどうか。学校のPTA会長にも同様に」「屋上からBB弾で撃てるのではと思うほど低い」「飛行機を怖がり、犬が円形脱毛症になり、机の下から出られなくなりました」「静かで環境が良いので無理して一軒家を購入しました。建物すれすれに旅客機が飛行する。こんな日が来るなんて夢にも思いませんでした」「すごいストレスです。人生初めて睡眠薬を飲んでいます」「いい加減にしてほしい。海は広い。海から入るべし」など、これはごく一部のご意見です。
請願採択を受けて、区長、議長の連名で要望書を提出し、その後も再三、環境課長らが国土交通省に要請していますが、依然として説明会を行おうとしません。
- 行政、議会、請願者が一緒に国土交通省に住民説明会の開催を要請すること
- 港区として、町会長や学校PTAなどを対象に意見交換会を開催すること
- 港区として、羽田新ルートの運用を中止し海上ルートに戻すよう国に求めること
区長並びに議長に答弁を求めます。
区長:引き続き国に対し、住民説明会の早期開催を求める
武井雅昭 港区長
ただ今の共産党議員団の福島宏子議員のご質問に順次お答えを致します。最初に、羽田都心低空飛行ルートの運用中止についてのお尋ねです。
まず、行政、議会、請願者が一緒に、国土交通省に住民説明会の開催を要請することについてです。
区では区議会と共に本年7月、国に対し住民説明会の開催や国(区の誤読)に寄せられた意見に対する回答を国のホームページで公開することを求める要請書を発出し、その後も早期の対応を繰り返し求めております。
これまで国からは、住民説明会の実施についてはその時期や実施方法などを検討する必要があるとの考えが示されていますが、実施の具体化には至っておりません。三者での要請につきましては、区議会と相談をさせていただきます。
次に、港区として、町会長や学校PTAなどを対象に意見交換会を開催することについてのお尋ねです。区は昨年度、羽田空港機能強化に関して、区内在住・在勤・在学者から広く意見を募集し、騒音や新飛行ルートの見直し、落下物に対する不安など、様々な意見を頂きました。
これらの意見は本年3月に国に伝え、検討に役立てるよう要請をいたしました。また、日頃から区へ寄せられる意見も全て国に伝えるとともに、意見に対する区の考えを区ホームページで公表しております。
引き続き国に対し、住民説明会の早期開催を求めるとともに、住民等からの意見を確実に伝えてまいります。
次に、港区として羽田新ルートの運用を中止を国に求めることについてのお尋ねです。区はこれまでも国に対して、海上ルートの活用、地方空港の活用等による飛行ルートの分散化、今後の航空技術等の進展に伴う飛行経路の様々な運用などにより、新飛行ルートの固定化を回避するよう要請してまいりました。引き続き海上ルートの活用など、新飛行ルートの固定化回避を国に強く求めてまいります。
議長:住民説明会の開催要請、各会派の皆さんにご相談
結城公美子議長(自民党、区議4期、雙葉学園、ノーザンバージニアコミュニティカレッジ卒卒、45歳)
ただいまの共産党議員団の福島宏子議員のご質問にお答えいたします。
行政、議会、請願者が一緒に、国土交通省に住民説明会の開催を要請することについてのお尋ねです。三者での要請につきましては、区長部局との調整も踏まえ、各会派の皆さんにご相談してまいります。どうぞよろしくご理解のほどお願いいたします。
雑感(誤読区長からは、柳に風的な答弁が繰り返された)
港区議会では、定例会本会議で羽田新ルート問題に係る代表・一般質問を取り上げるのは共産党と「みなと政策会議」(無所属の議員10人で構成)だけでなく、自民・公明党議員も少なからず取り上げるのが他の区議会では見られない特徴である(次表)。
羽田新ルート問題を取り上げる区議会が少なくなってきているなかで、港区議会では今回3人の議員が取り上げたことは高く評価したい。
羽田新ルートの本格運用開始後に開催された20年第2回定例会では、羽田新ルートに係る登壇者数・文字数(≒質疑応答時間)とも最も多かったのだが、その後減少。今年に入って低調だったが、第2回、第3回定例会でやや盛り返している(次図)。
ただ、今回の質疑応答内容を見ると、実質的な進展はゼロ。
「区」と言うべきところを「国」と3回も誤読してしまった武井区長からは「(国に対して)強く求めてまいります」という、柳に風的な答弁が繰り返されるばかりであった。
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