港区議会「23年第1回定例会」本会議の一般質問(2月14日)で、羽田新ルートに関して、2人の質疑応答があった。
議会中継(録画)をもとに、全文テキスト化(約1千800文字)しておいた。
鈴木たかや議員(自民)
鈴木たかや議員(自民党、区議3期、立正大学卒、54歳)
鈴木:国交省への要請行動も含めて、国に区民の不安の声を届けていただきたい
続いて、羽田空港機能強化についてお伺いいたします。
早いもので羽田新飛行経路の運用が始まり3年の月日が経とうとしております。この間、区民の皆様からたくさんの声が私たち自民党議員団のもとへと届いております。その声を直接国に届けるためにも、政権与党である公明党議員団とともに、国交省との交渉の場所を幾度と設けてまいりました。
時を同じくして、新型コロナ感染症が蔓延をして外国人観光客が減少しましたが、コロナ後のインバウンドを期待してのことか、新飛行経路の見直しは行われておりません。長引くコロナ禍が続いてきましたが、ようやく改善の見通しが見え始めており、このこと自体は大変喜ばしいことである一方、外国からの観光客をはじめとした訪日外国人が増えることで、増便されることになると予測される飛行機による騒音や不安は増えることが想像できます。
これまでも武井区長は、我々港区議会と共に区民の声を国に届けできていただきました。今後はさらに我々区議会と共に国交省への要請行動も含めて、国に区民の不安の声を届けていただきたいと考えますが、区長のお考えをお伺いいたします。
区長:国に対し区民の不安の声を届け、固定化回避の早期実現を強く求めてまいります
武井雅昭 港区長(無所属、5期、元港区民生活部長、早大政経学部卒、69歳)
次に、羽田空港機能強化についてのお尋ねです。
区には新飛行ルートの運用開始当初から騒音や落下物の不安などの区民の声が寄せられており、これらを踏まえ、区と区議会では国に対して海上ルートの活用、地方空港の活用等による飛行ルートの分散化、落下物対策の強化などの要請を行ってまいりました。
また、昨年7月には、私と議長の連名で住民説明会の開催などを求める要請書を発出しております。
引き続き情報共有を図りながら区議会と共に、国に対し区民の不安の声を届け、固定化回避の早期実現を強く求めてまいります。
福島宏子議員(共産)
福島宏子議員(共産党、区議1期、聖徳学園保育士専門学校卒、保育士、56歳)
福島:港区として運用中止を国に求めること
はじめに、「ストップ!羽田低空飛行について」です。
1月25日に港区独自の騒音測定の結果がまとまりました。
昨年6月6日から9月5日のうち、南風の63日が対象です。注目すべきは2021年と比べ騒音がひどくなっているということです。
青南いきいきプラザでは73.9から82.6dBへ、本村小学校では74.4から85.4dBへ最大値が上がっています。
区民の苦痛と怒りは増すばかりですが、依然国交省からの説明会の開催はありません。区民の怒りの声です。
「窓を開けるとテレビ音量を35から40にしても聞こえない」「これが正常な国やることでしょうか。こんな無謀な計画はすぐ止めてほしい」「B29を思い出しノイローゼになる」「夕食時に飛ぶので、楽しみな食事が台無し」など、多くの区民は羽田都心低空飛行の運用中止を求めています。
固定化回避では解決しません。
- 区長が主導して、23区区長会で他自治体の区長にも働きかけて、「羽田新ルートの運用中止、海上ルートに戻せ」の要望を国に提出すること。
- 区民の命と健康がかかっています。まずは港区として運用中止を国に求めること。
2点、答弁を求めます。
区長:新飛行ルートの固定化回避を強く求めてまいります
武井雅昭 港区長
ただいまの共産党議員団を代表しての福島宏子議員のご質問に順次お答えをいたします。最初に、羽田低空飛行についてのお尋ねです。
「特別区長会が国に対し運用中止を求める要望書を提出すること」および「区として運用中止を国に求めること」についてです。
区はこれまで、氷塊が発見された渋谷区や独自で騒音測定をしている品川区などの近隣区と新飛行ルートに関する課題や取り組みを共有し、対応してまいりました。特別区長会に対して国に運航中止等の要望書を提出することを提案することにつきましては、新飛行ルートの運用に伴う影響が区によって様々であることから考えておりませんが、引き続き同様の課題を抱える近隣区と連携しながら対応してまいります。
また、区は今後も区議会とともに、国に対し海上ルートの活用など、新飛行ルートの固定化回避を強く求めてまいります。
清原和幸議員(自民)、羽田新ルートの質問を取り止め
清原和幸議員(自民党、区議4期、日大理工卒、63歳)
港区議会HPに掲載された事前質問項目によれば、清原和幸議員は「その他」を含め18項目質問することになっていたのだが、実際には次のように3項目がなくなり、そのうちの1項目が羽田新ルートであった。
- 1 将来を見据えた財政運営について
- 2 ICTを活用した行政運営について
- 3 艱難辛苦を乗り越えてきた高齢者への支援について
- 4 ひとり親家庭への支援について
- 5 ヤングケアラーへの支援について
- 6 合計特殊出生率向上に向けた取組について
- 7 我が国の経済を支えている中小企業への経営支援について
- 8 プレミアム付き区内共通商品券の効果と今後の発行支援について
- 9 区の魅力を創出する起業家への支援について
- 10 消防団のポンプ操法訓練等の場所の確保について
- 11 羽田飛行経路の改善等について
- 12 歩行者の安全確保と交通事故ゼロに向けた取組について
- 13 白金高輪駅周辺らしいまちづくりの継承について
- 14 白金・白金台地域への「ちぃばす」の導入について
- 15 教育強化に向けた取組について
↓
規範意識の醸成に向けた取り組みについて - 16 コロナ禍等で就学や進学に不安を抱いている家庭への支援について
- 17 平和を尊重する文化を世界に発信する取組について
- 18 その他
清原議員は、前日に登壇した同会派の鈴木議員が「羽田空港機能強化について」質問していたのを知って、急きょ羽田新ルートの質問を取り止めたのか?
理由はともあれ、鈴木議員とは異なる切り口で質問することもできたであろうに……。
雑感(もはやプロレス)
港区議会では、定例会本会議で羽田新ルート問題に係る代表・一般質問を取り上げるのは共産党と「みなと政策会議」(無所属の議員10人で構成)だけでなく、自民・公明党議員も少なからず取り上げるのが他の区議会では見られない特徴である(次表)。
とはいえ、毎回取り上げているのは共産だけ。
羽田新ルートの本格運用開始後に開催された20年第2回定例会では、羽田新ルートに係る登壇者数・文字数(≒質疑応答時間)とも最も多かったのだが、その後減少。昨年の第3回、第4回定例会でやや盛り返していたが、今回減少(次図)。
今回の質疑応答の内容を見ると、実質的な進展はゼロ。
原稿棒読み大会は、役人が作成した耳タコ表現「固定化回避(の早期実現)を強く求めてまいります」で締めくくられており、もはやプロレスと化してしまっている……。
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