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羽田新ルート|港区議会「21年第2回定例会」質疑応答

港区議会の「21年第2回定例会」本会議一般質問(6月9日・10日)で、羽田新ルートに関して、4人の質疑応答があった。

議会中継(録画)をもとに、全文テキスト化(約5千文字)しておいた。

※時間のない方は「質疑応答のポイント」と「雑感」をお読みいただければと。


質疑応答のポイント

黒崎ゆういち 議員(自民)

黒崎ゆういち議員
黒崎ゆういち 議員(自民、区議2期、元日商岩井社員、明大卒、44歳)

黒崎:改めて地方空港への分散化を強く要請していただきたい

次に、羽田空港機能強化について伺います。
先日、交通・環境等対策特別委員会の主催で羽田空港機能強化についての学習会が開催されました。学習会の中では、飛行経路変更に伴う騒音対策や落下物防止についての説明を国土交通省の担当者から受けました。

新飛行経路については固定化しないように、港区議会として港区とともに地方空港の活用を含め見直すよう求めてきた経緯がありますが、固定化を回避するために、新たに国が設置した検討会では、着陸方法の研究の議論ばかりで地方空港を有効活用した分散化については、まったく触れられておりませんでした。港区、そして港区議会が強く要望してきたことが議論されてないことは誠に遺憾であります。


港区としてはこれまで積み上げてきた機能強化についての国土交通省との議論を無駄にしないためにも改めて地方空港への分散化を強く要請していただきたいと考えますが、区長のお考えを伺います。


また、港区議会としても、改めて国土交通大臣に対して羽田空港機能強化に係る安全対策の強化、新ルートの固定化回避を求める意見書を提出すべきだと考えますが、議長のお考えをお聞かせください。

区長:飛行ルートの分散化等について国に対し強く要請をしてまいります

武井雅昭 港区長
武井雅昭 港区長(無所属、5期、元港区民生活部長、早大政経学部卒、68歳)

次に、地方空港への分散化を要請することについてのお尋ねです。区はこれまでも区議会と協力し、騒音や落下物対策、新飛行経路の固定化回避に向けた検討等、国に要請し、羽田新経路の固定化回避に係る技術的方策検討会の設置や「白金いきいきプラザ」での短期騒音測定などの実現につなげてまいりました。

今後も新ルートに限らず、飛行経路の様々な運用の検討とともに地方空港のさらなる活用による飛行ルートの分散化等について国に対し強く要請をしてまいります。

議長:固定化回避を求める意見書、各会派の皆さんにご相談

二島豊司議長
二島豊司 議長(自民、区議4期、元日本リース社員、早大卒、48歳)

ただ今の自民党議員団を代表しての黒崎ゆういち議員の質問にお答えいたします。
区議会として、国土交通大臣へ意見書を提出することについてのお尋ねです。


国土交通大臣に改めて羽田空港機能強化に係る安全対策の強化、新ルートの固定化回避を求める意見書を提出することにつきましては、各会派の皆さんにご相談してまいります。よろしくご理解の程お願い致します。

やなざわ亜紀 議員(自民)

やなざわ亜紀議員
やなざわ亜紀 議員(自民、区議3期、元資生堂社員、香川大学法学部卒、40歳)

やなざわ:新たなルートを回避することをより強く求めてもよいのでは?

はじめに羽田空港の新飛行ルートについて質問します。
国は国際競争力の強化や外国人旅行者の誘致を加速することで、地域の創生や我が国全体の経済成長を促進させるとして、令和2年3月29日から新飛行経路の運用を開始していますが、日に日に区民からは、落下物や騒音などに対する不安の声が増しているように感じます。

そこでまず新飛行ルートに関して、これまで区に寄せられた意見の件数や内容について、どのようなものがあるのかを改めて伺います。

また、コロナ禍による緊急事態宣言で老若男女、多くの国民が「今は我慢、経済より人命」と様々なことを抑えており、とりわけ飲食店や商業施設に関しては、感染防止の観点から、つまりは、安心・安全の理由に我慢を強いているのに対し、飛行機に関しては、当初の狙いとは全く異なっているにも関わらず、「将来的な経済のためだ」と飛ばし続ける現状は理解に苦しみます。


そもそもコロナ禍を経験し、羽田空港の機能強化をする理由である2030年に外国人観光客6千万人を目標とする計画自体を抜本的に見直していく必要があるのではないか。新ルートはその当初目的から見直し、そこから導いていくべきではないかと私はそのように考えております。


港区も、港区議会も、羽田空港機能強化に係る要請については、今年も既に意見書を提出しておりますが、国の羽田新経路の固定化回避に係る技術的方策検討会においては、現在のところAとC滑走路を前提としつつ、現在の新経路の見直しが可能な方策がないか検討していると、5月27日に港区議会で開かれた学習会で説明されましたが、この検討の期限は明示できないとの話でした。

また、騒音を抑えるには、高い角度からの着陸態勢が必要で、危険度が増す恐れがあるというような説明もありました。つまりは今後も我慢していくことが前提であるというような内容に驚きというか、ショックというか、怒りというか。

でも、説明に来てくださっている国交省の方々も職務を全うしようと懸命なのが伝わってくるし、主導は政府であることから、久々に何とも言い表すことができない感情になりました。よって、ここは政治の強い力が必要だと感じました。


区民の不安払拭、安全・安心のために区として、新たなルートを回避することをより強く求めてもよいのではと思いますが、区長の見解を伺います。


元々は経済のためのこの新ルートですが、コロナ禍を経験した今、そもそもこの新ルート計画が予定通りに経済効果を生むことは想像し難い現状になっていること、また、たとえ目標に近づいていったとしても、もはや誰かの我慢や犠牲の上に成り立つ経済的豊かさというのは幸せだとは言えないのではないでしょうか。これは我々国民がコロナを通して気づき始めたことではないでしょうか。

 区長:検討を加速するよう強く要請をしてまいります

武井雅昭 港区長
武井雅昭 港区長

最初に、羽田空港の新飛行ルートの固定化回避についてのお尋ねです。
まず、新飛行ルートに対する意見についてです。

新飛行経路の運用が開始された昨年3月29日から本年5月31日までの間、区には309件の意見が寄せられております。主な意見としては、騒音・落下物に対する懸念、騒音による健康被害、防音等に係る補償、新型コロナウイルス感染症の影響により減便となっている現況下での新ルート運用中止、区が国に対して新飛行経路の見直しを求めてほしい、などとなっております。


次に、新たなルート回避することをより強く求めることについてのお尋ねです。
現在国は羽田新経路の固定化回避に係る技術的方策検討会において、固定化回避の実現に向けた12の飛行方式を6つに絞り込み、さらに精査中との説明を受けております。

また、国は騒音対策として飛行機の降下角度を引き上げて新飛行ルートの運用を開始しましたが、区には騒音に対する意見が寄せられております。

今後も区は区民の生活環境を守る立場から、国に対して区民の不安の声や区独自の騒音測定結果を示し、航空技術の進展に伴う新たな取り組み、海上ルートの活用、地方空港への分散化などの検討を加速するよう強く要請をしてまいります。

清家あい 議員(みなと政策会議)

清家あい議員(みなと政策会議)
清家あい 議員(みなと政策会議、区議3期、青学卒、元産経新聞社会部記者、47歳)

清家:固定化回避、どのように取り組んでいくつもりか?

次に、羽田空港新ルートについてです。固定化回避に向けた取り組みについて、お伺いします。

先日、港区議会では、「羽田空港の新飛行経路について」と題し、国土交通省航空局の職員を講師に招き、学習会を行いました。

そのなかで「国の固定化回避に係る技術的方策検討会での検討の結果、都心上空の新ルートを飛ばないようになるかどうかの結論はいつ出るのか」「地方空港の活用についての検討は、どのようにされているのか」「新型コロナウイルスの感染拡大により、かつてのようなインバウンドは当面望めなくなったことで、需要面からの見直しも検討するべきではないか」など、様々な意見が区議会側から出されましたが、国土交通省の返答は明確なものではありませんでした。


また、この新ルートは世界的に見ても非常に危険なルートであることが明らかになってきています。学習会で、国土交通省も認めていましたが、羽田空港では南西の風が吹いている際の着陸は横風に強く煽られるうえ、滑走路に向けて急角度で降りなければならないため、多くのパイロットから新ルートは危険であると見直しを求める声がVOICESという「航空安全情報自発報告制度」に寄せられ、国土交通省に提言されています。


多くのルート下の区民が飛行機の部品の落下事故や墜落事故の危険にさらされ、騒音に悩まされています。本年2月には当初予定していた便数の約35%しか飛んでいない状況ですが、これから夏に向け新ルートを飛ぶ飛行機が増え、さらに乗客が増えて機体が重くなれば、騒音がますますひどくなることを考えると、ルート下の区民にとって耐え難い状況になることが予想されます。


議会も区役所も、港区一丸となって羽田空港の新飛行ルートの固定化回避に向け取り組んでいるところですが、港区としてもそうした点について、国に明確な回答を求めていただきたいのと、今後区として、この問題にどのように取り組んでいくつもりか、区長の見解をお伺いします。 

区長:検討を加速するよう強く要請し、回答を求めてまいります

武井雅昭 港区長
武井雅昭 港区長

次に、羽田空港新ルートの固定化回避についてのお尋ねです。
現在、国は羽田新経路の固定化回避に係る技術的方策検討会において固定化回避の実現に向けた12の飛行方式を6つに絞り込み、さらに精査中との説明を受けています。

また、国は騒音対策として飛行機の降下角を引き上げて新飛行ルートの運用を開始しましたが、開始後も区には騒音に対する意見が寄せられております。


今後も区は、区民の生活環境を守る立場から、国に対して区民の不安の声や区独自の騒音測定結果を示し、航空技術の進展に伴う新たな取り込み、海上ルートの活用、地方空港への分散化などの検討を加速するよう強く要請し、回答を求めてまいります。

風見利男 議員(共産)

風見利男議員(共産)
風見利男 議員(共産、区議9期、都立墨田工業高卒、76歳)

風見:都心低空飛行ルートの運用中止

羽田の新飛行経路、都心低空飛行ルートの運用中止についてです。2020年3月29日に羽田空港都心低空飛行が強行されてから1年2か月が過ぎました。毎日のように轟音、落下物、排気ガス、墜落の危険という状況の中で生活を余儀なくされています。


とりわけコロナ禍の中、「テレワークだ」「換気が必要だ」と言われているだけに、事態は深刻で、我慢の限界を超えています。


最近、様々な事故が発生しており、こうした事故が都心上空で起きたら、大惨事になります。都心上空を1年間、飛んだパイロットからヒヤリハット体験の報告が相次いでおり、昨年1年間の報告は15件に上り、同センターの木村茂雄事務局長が国土交通省に安全対策を提言する事態になっています。


報告の特徴は、悪天候や強風時に柔軟なルート運用を求める声が多いことです。
「組織を通してでも、強風時には運用を柔軟に行うよう働きかける必要性を強く感じた」「高角度進入で減速できず、通常は使わないフラップとスピードブレーキの併用で減速し、着陸に至った」。


なぜこういう報告が相次いでいるのか。元機長の奥平隆さんは、「羽田周辺は季節によって南西から強烈な風が吹き、新ルートで北西から進入する航空機は南風を受けて不安定になる。ビル風による乱気流や通常より高角度の新ルートが抱える不安定要素」と言います。


都心低空飛行ルートは東京五輪の円滑な開催、訪日外国人旅行客の受け入れ拡大などを理由に、住民の反対を押し切って強行しました。しかし、世界的な新型コロナウイルス感染症拡大によって、その大前提が崩れました。都心低空飛行は必要なくなったのです。都心低空飛行新ルートの運用を止め、海上ルートを活用するよう国に要請すること。答弁を求めます。

区長:更なる騒音対策・・・などの検討を加速するよう強く求めてまいります

武井雅昭 港区長
武井雅昭 港区長

最初に、羽田の新飛行経路の運用中止についてのお尋ねです。区はこれまでも国に対して、騒音対策や安全対策、海上ルートの活用、地方空港の活用等による飛行ルートの分散化、今後の航空技術等の進展に伴う飛行経路の様々な運用などの検討を要請してまいりました。


引き続き国に対し、騒音や落下物に対する区民の不安の声や、現在行なっている区独自の騒音測定の分析結果を示し、更なる騒音対策、安全対策、飛行経路の様々な運用などの検討を加速するよう強く求めてまいります。

雑感(自民党議員は港区民からプレッシャーを受けている!?)

港区議会では、定例会本会議で羽田新ルート問題に係る代表・一般質問を取り上げるのは共産党と「みなと政策会議」(無所属の議員10人で構成)だけでなく、自民党議員も少なからず取り上げるのが他の区議会では見られない特徴である(次表)。

羽田新ルートに係る定例会本会議代表・一般質問人数 (港区議会の党派別内訳)


羽田新ルート推進役の自民党はこれまで、「固定化しない」ことを訴える程度にとどまっていた。そして今回も黒崎 議員(自民、2期)は「地方空港への分散化」を要請するにとどまっていた。

ところが、やなざわ議員(自民、3期)は、推進派にとって都合のいい固定化回避論(将来緩和されるかような幻想を抱かせることができる)を展開しているものの、中止を感じさせるような踏み込んだ発言もしている

  • 当初の狙いとは全く異なっているにも関わらず、「将来的な経済のためだ」と飛ばし続ける現状は理解に苦しみます
  • 新たなルートを回避することをより強く求めてもよいのではと思いますが、区長の見解を伺います。
  • 元々は経済のためのこの新ルートですが、コロナ禍を経験した今、そもそもこの新ルート計画が予定通りに経済効果を生むことは想像し難い現状になっている(略)

自民党議員は港区民から強いプレッシャーを受けているのだろうか……。

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2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
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