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米軍ヘリによる首都異常飛行問題とは

米軍ヘリが度々都心上空を低空で飛行している様子が目撃されている。

米軍ヘリによる首都異常飛行問題とは何なのか……。

#首都異常飛行 #米軍ヘリ低空飛行


もくじ

毎日新聞の連載記事「特権を問う」によって、米軍ヘリによる首都異常飛行問題が明らかになりつつある。

毎日新聞は20年7月から約半年かけて新宿区にある都庁第1本庁舎展望室など高さ200メートル級の複数地点から飛行状況を調査した結果として、今年の2月から米軍ヘリが都心上空を低空飛行する様子を動画と共に度々報じている。

住宅街、低空飛行常態化(毎日新聞)

米軍ヘリが世田谷区の住宅街でも計7回、低空飛行を繰り返している様子が確認されたという。

住宅街、低空飛行常態化 基地と都心結ぶルートか 機体確認困難、行政動けず

在日米軍ヘリが東京都心の上空で日本のヘリであれば違法となる低空飛行を繰り返している問題で、世田谷区の住宅街でも計7回にわたり同様の飛行をしている様子を毎日新聞が確認した。

神奈川県の基地と都心を移動する際の通り道にしているとみられ、住宅やビルが建ち並ぶ同区の上空を200メートル前後の高さで飛ぶこともあった。低空飛行の常態化は明らかで、日本政府の早期対応が求められる。

日本の航空法は航空機から半径600メートル内にある最も高い障害物から300メートルの高さを最低安全高度とし、これよりも高く飛ぶように規定している。

毎日新聞は都心を一望できる高さ200メートル級の複数地点で調査し、新宿や渋谷上空で米軍ヘリが最低安全高度よりも低く飛ぶ姿を計17回にわたり確認。昨年11月以降、世田谷区上空でも同様の低空飛行を4日間で計7回確認した。(以下略)

毎日新聞 3月16日

なぜ、米軍ヘリは首都異常飛行を始めたのか

なぜ、米軍ヘリは日米合意を無視したような低空飛行を始めたのか。

軍事アナリストの小川和久・静岡県立大特任教授は、毎日新聞の取材に対して、羽田新ルートを要因の一つに掲げている。

低空飛行「米軍を責めるわけにいかぬ」 アナリストが語る本質

(前略)米軍のヘリは、米国の要人らを米軍横田基地や神奈川にある基地から都心に安全に輸送しなくてはならない。そのためには、まず都心を低空で飛んでヘリポートに安全にアプローチするための入念な訓練が必要になる。
(略)
低空で飛ぶもう一つの背景には、羽田空港への民間旅客機の着陸ルートが昨年、都心上空に新設されたこともあると思う。旅客機の航路と交差しないよう低く飛べるようにしておかなくてはならない。こうした状況に対応できるようにする「慣熟訓練」は日本に着任したばかりのパイロットには特に欠かせない。

毎日新聞 3月15日

六本木の米軍ヘリポートを拠点に移動

まずは米軍ヘリの進路を確認しておこう。

米軍ヘリは羽田新ルートの近くにある六本木の米軍基地「赤坂プレスセンター」のヘリポートを拠点に、横田空域下にある横田基地(在日米軍司令部・空軍)、キャンプ座間(在日米軍)、厚木基地(在日海軍)、横須賀基地(在日米海軍)を移動している(次図)。

六本木の米軍ヘリポートを拠点に移動

米軍ヘリに適用される最低高度基準とは

米軍ヘリは日米地位協定によって航空法が定める「最低安全高度」の規制が適用されていないが、日本国内を自由に飛び回れるというわけではない。

米軍ヘリは都市部では、ヘリを中心として水平距離600mの範囲内の最も高い障害物の上端から300mの高度以上を飛行しなければならないことになっているのである(次図)。

航空法施行規則第174条1項のイ
陸上自衛隊オスプレイの暫定配備要請に関する説明内容等について(回答)」P12からの切り抜き

 

その根拠を以下に記す。

米軍ヘリの最低飛行高度は、1999年の日米合意文書「在日米軍による低空飛行訓練について」に縛られている。

(略)安全性が最重要であることから、在日米軍は低空飛行訓練を実施する際に安全性を最大限確保する。同時に、在日米軍は、低空飛行訓練が日本の地元住民に与える影響を最小限にする。

  • (1.省略)
  • 2.在日米軍は、国際民間航空機関(ICAO)や日本の航空法により規定される最低高度基準を用いており、低空飛行訓練を実施する際、同一の米軍飛行高度規制を現在適用している。
  • (3.~6.省略)

この合意文書が現在でも有効であることは、21年3月19日の衆議院外務委員会の場で茂木外務大臣が認めている

 

さらに、この合意文書で言及されている最低高度基準は、航空法第81条と航空法施行規則第174条により規定されている。

航空法第81条(最低安全高度)

  • 航空機は、離陸又は着陸を行う場合を除いて、地上又は水上の人又は物件の安全及び航空機の安全を考慮して国土交通省令で定める高度以下の高度で飛行してはならない。但し、国土交通大臣の許可を受けた場合は、この限りでない。

航空法施行規則第174条(最低安全高度)

法第81条の規定による航空機の最低安全高度は、次のとおりとする。

  • 1 有視界飛行方式により飛行する航空機にあっては、飛行中動力装置のみが停止した場合に地上又は水上の人又は物件に危険を及ぼすことなく着陸できる高度及び次の高度のうちいずれか高いもの
    イ 人又は家屋の密集している地域の上空にあっては、当該航空機を中心として水平距離600mの範囲内の最も高い障害物の上端から300mの高度
    (ロ、ハ省略)
  • (2項省略)

米軍ヘリ飛行可能空域を可視化

米軍ヘリは上述したように1999年の日米合意によって航空法により規定される最低高度基準が適用されることに加え、20年3月29日以降は羽田新ルートによる上限規制も受けることになった。

つまり在日米軍基地と六本木ヘリポートとの間に羽田新ルートA・C滑走路到着ルートが重くのしかかっているのである(次図)。

飛行空域の説明用断面図


在日米軍基地と六本木ヘリポートを行き来する際に、高層ビルを避けた極めて狭いルート(幅約1.1km)である特別管制空域の制約を受けている(次図)。幅約1.1kmとは具体的には「渋谷区千駄ヶ谷3丁目から神宮前1丁目」であることを、3月19日の衆議院国土交通委員会の場で赤羽国交大臣が認めている

東京第2特別管制区(新宿~原宿)

 

このように米軍ヘリは、羽田新ルートの制約を受けながら航空法により規定される最低高度基準を守らなければならないことになっている。ところが、実際には最低高度300mよりも低い高度で飛行しているという姿が毎日新聞の動画でスクープされたのである。

毎日新聞の有料記事で、武蔵小杉タワマン(203m)や赤坂スクランブルスクエア(建物高さ230m)、東京タワートップデッキ(高さ250m)や神宮前タワービルディング(建物高さ115m)など、いずれもそれ以下の高度で飛行する動画を視聴することができる。

 

ちなみに、毎日新聞の有料記事は、スタンダードコースに申し込めば、12カ月コース8,400 円 (税別)で読み放題。WSJも読み放題なので筆者は先日申し込んだ。

(毎日新聞から宣伝を頼まれているわけではない)

【追記】米軍「ヘリは適用外」

※追記3月23日10時

在日米軍司令部が毎日新聞の取材に対して、1999年の日米合意は「回転翼機(ヘリ)に適用されない」とする見解を示した。
(日米の認識が食い違っている)

米軍「ヘリは適用外」 高度基準99年合意 日本「全機種対象」

米軍ヘリコプターによる低空飛行問題で、在日米軍司令部が毎日新聞の取材に対して、日本の航空法令が定めた高度基準を用いるとした1999年の日米合意は「回転翼機(ヘリ)に適用されない」とする見解を示した

米軍ヘリの低空飛行は沖縄県などで問題となってきたが、抑止効果を持つ合意の対象外だったことになる。

一方、日本政府は「合意対象は航空機の種別を問わない」と米側とは異なる説明をしており、日米の認識が食い違う中で低空飛行が繰り返されてきた可能性が浮上した。(以下略)

毎日新聞 3月23日

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国会・都議会での議論。日付は、会議開催日。

2021年6月1日、このブログ開設から17周年を迎えました (^_^)/
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