米軍ヘリが都心上空を低空で飛行している問題。
官房長官・国交大臣・外務大臣が3月23日、それぞれの記者会見の場でなんと答えたのか。
※以下長文(約3千500文字)。時間のない方は「質疑応答ポイント」と「雑感」をお読みいただければと。
#首都異常飛行 #米軍ヘリ低空飛行
加藤官房長官(3月23日午前)
加藤勝信 内閣官房長官
(自民党、6期、元大蔵省大臣官房企画官、東大経済卒、65歳)
毎日・佐藤:日本政府のご認識をお伺いします
毎日新聞・佐藤です。米軍ヘリコプターによる低空飛行問題について、お伺いします。
在日米軍司令部が弊紙の取材に対し、「日本の航空法令が定めた高度基準を用いるとした1999年の日米合同委員会合意は、回転翼機に適用されない」とする見解を示しました。日本政府のご認識をお伺いします。
加藤:現時点で米側からは、(略)こう聞いている
報道は承知をしておりますが、米軍飛行については、在日米軍のハイレベル含めて様々なやり取りを行い、現時点で米側からは、
- ICAOのルールや日本の航空法と整合的な米軍の規制に違反する行為、飛行があったことは確認をされていない、
- 報道されてる飛行から時間が経ってることもあり詳細な事実関係の確認は容易ではない、
- 飛行にあたっての安全確保は最優先事項、米軍の飛行はICAOのルールや日本の航空法と整合的な米軍の規則に従って行われている、
- 各部隊には米軍の規則に従った飛行を徹底するよう改めて指示する、
こう聞いているところであります。
米側に対しては、安全面に最大限配慮し、地域住民に与える影響を最小限にと留めるよう、引き続き強く求めていくとともに、飛行に当たっての安全確保については最優先の課題でありますので、日米でも協力して取り組んでいきたいと考えてます。
毎日・佐藤:事実関係の確認は米側には求められてらっしゃるんでしょうか
毎日新聞・佐藤です。重ねてお伺いします。
さきほど長官のご説明では「事実関係の確認が時間が経っているので容易ではないと米側から回答があった」ということですけれども、日本政府としては事実関係の確認は米側には求められてらっしゃるんでしょうか。
加藤:米軍からそういう説明がなされた
そういうやりとりがあったので、今申し上げた米軍からそういう説明がなされた、こういうことであります。
赤羽国交大臣(3月23日午前)
赤羽一嘉 国交大臣(公明党、8期、元三井物産社員、慶大卒、62歳)
記者:19日の大臣の答弁とも食い違う内容になっております
米軍ヘリの件で伺います。
米軍が低空飛行訓練の高度などを定めた99年合意について、ヘリは適用外と毎日新聞の取材に答えています。これまで公になっていない内容であり、大臣の御所感をお聞かせください。
また、この回答は19日の大臣の答弁とも食い違う内容になっております。今後の対応をお聞かせください。
赤羽:外務省にお問い合わせいただきたいと思います
米軍の飛行に関する日米間の合意の解釈については、外務省にお問い合わせいただきたいと思います。
また、19日の衆議院国土交通委員会での津村議員からの質問に対する私の答弁(その通りでございます)は、米軍の飛行は、ICAOのルールや航空法と整合的な米軍の規則に従い、安全を最優先に配慮して行われているとの実態についてお答えしたものです。
日米間の合意については、国土交通省が直接関わっているわけではないので、外務省にお問い合わせをお願いしたいと思います。
加藤官房長官(3月23日午後)
加藤官房長官
東京・村上:米軍ヘリが(略)高度を下回って飛行しているという認識は?
午前の会見で質疑のありました、米軍ヘリの低空飛行について伺います。
午前の会見で、「米側からは、ICAOのルールや日本の航空法と整合的な米軍の規制に違反する行為、飛行があったことが確認されていないと聞いている」と述べられていらっしゃいました。
この問題を報じている毎日新聞さんが公開している動画では、昨年から今年にかけて、日本の航空法の高度基準を下回る高度で飛行してるのが確認できます。
日本政府としては米軍ヘリがこのICAOや日本の航空法に規定されている高度を下回って飛行しているという認識はありますでしょうか。
加藤:現時点で米側からは、(略)との説明がなされている
ご指摘の米軍の飛行については、確か午前中も申し上げましたが、米軍に事実関係を確認をしたところでありますが、その上で、在日米軍のハイレベルを含め様々なやり取りが行われ、現時点で米側からは、先ほどの説明、「報道されてる飛行から時間が経ってることもあり、詳細な事実関係の確認は容易ではない」との説明がなされているところであります。
東京・村上:米軍ヘリ、日米合同委員会の合意によると、許される?
東京新聞の村上です。関連して伺います。
日米合同委員会、1999年1月14日の合意によりますと、在日米軍の低空飛行にはICAOや日本の航空法により規定される最低高度基準を用いるという合意でよろしいのでしょうか。
また、そうしますと米軍のヘリがこの都庁や代々木のドコモタワーより下回る高度で飛ぶということはこの日米合同委員会の合意によると、許されることになるんでしょうか。
加藤:米軍の飛行はICAOのルールや(略)と米側からは説明が行われている
まず、日米合同委員会の平成11年1月14日の合意では、在日米軍は国際民間航空機関ICAOや日本の航空法により規定される最低高度基準を用いており、低空飛行訓練を実施する際、同一の米軍飛行高度規制を現在適用をしている旨が書かれているところであります。
なお、ご指摘の合意においては、航空機について航空法第2条、これは航空機は何かっていう定義でありますが、こういった定義は置かれてはいないというところであります。
その上で、これも午前中申し上げましたけれども、飛行にあたって安全確保は最優先事項であり、米軍の飛行はICAOのルールや日本の航空法と整合的な米軍の規則に従って行われてると米側からは説明が行われているところであります。
東京・村上:日本政府として把握している認識としては?
東京新聞の村上です。最後にもうひとつだけ。
米側からはそのように説明があるということですけれども、日本政府として把握している認識としてはどうなんでしょうか。
加藤:どういうことを仰っているのでしょうか?
「日本政府として把握してる認識」っていうのはどういう、ごめんなさい、どういうことを仰っているのでしょうか。
東京・村上:日本の航空法と整合的に米軍ヘリが飛んでいるという認識?
つまり、ICAOのルールや日本の航空法と整合的に米軍ヘリが飛んでいるという認識でいるのか。それともICAOのルールや日本の航空法と適合していないという認識でいるのか。
加藤:米側からは(略)、こういう説明を受けているということであります
ですから、適合してるかしてないかというよりも、米側からはそういう形で行なっている、こういう説明を受けているということであります。
茂木外務大臣(3月23日午後)
茂木敏充 外務大臣
(自民党、9期、元マッキンゼー社員、東大経済卒、65歳)
毎日・田所:米軍に対してヘリが適用外という見解なのかを、確認するお考えは?
毎日新聞の田所です。
米軍ヘリコプターの低空飛行についてお尋ねしたいと思います。
日本政府は1999年の日米合意で、米軍ヘリにも、日本の航空法令が定めた高度基準が適用されるという立場なのに対して、在日米軍は、今般、毎日新聞の取材に対して、適用されるのは固定翼ジェット機であって、ヘリではないという異なる見解を示しました。
本日の参院外防委員会(外交防衛委員会)でもやり取りありましたけれども、これについて受け止めをお聞かせいただければと思います。
日本政府としても、米軍に対してヘリが適用外という見解なのかを、確認するお考えはありますでしょうか。それも併せてお尋ねしたいと思います。
茂木:現時点では米側から(略)こういった説明を受けている
報道は承知しておりますが、米軍の飛行につきましては、在日米軍のハイレベルも含め、様々なやり取りを行ってきておりまして、現時点では米側から4点、
- 一つは、ICAOのルールや日本の航空法と整合的な米軍の規則に違反する飛行があったことは確認されていない、
- また、報道されている飛行から時間が経っていることもあり、詳細な事実関係や確認は容易ではないこと、
- 3点目は、もちろん飛行に当たっての安全確保は最優先事項であって、米軍の飛行は、ICAOのルールや、日本の航空法と整合的な米軍の規則に従って行われている、
- そして4点目でありますが、各部隊には米軍の規則に従った飛行を徹底するよう、改めて指示した。
こういった説明を受けているところであります。
米側に対して、安全面に最大限配慮し、地域住民に与える影響を最小限に留めるよう、強く求めていくとともに、飛行に当たっての安全確保は、最優先の課題と考えておりまして、日米で協力して取り組んでいきたいと考えております。
雑感(曖昧な回答を余儀なくされている)
在日米軍司令部が毎日新聞の取材に対して、1999年の日米合意は「回転翼機(ヘリ)に適用されない」(≒都心上空を低空で飛行することは日米合意に反していない)とする見解を示したことから、政府は3月23日、曖昧な回答を余儀なくされているようだ。
赤羽国交大臣は4日前(3月19日)の国土交通委員会で、津村衆議院議員(立民)から「米軍ヘリは都心部においては(略)度300m以下で飛ぶことはできないというルールになっているということでよろしいですね」と問われて、「その通りでございます」と答弁。
今回の定例記者会見では、「実態についてお答えしたものです。(略)日米間の合意については、国土交通省が直接関わっているわけではないので、外務省にお問い合わせをお願いしたいと思います」と逃げを打った。
日本政府としての認識を問われた加藤官房長官と茂木外務大臣は、現時点では米側から(略)こういった説明を受けているとして、まともに答えようとしない。
日本政府としては、米軍ヘリが日米合意に違反しているとは口が裂けても言えないだろうから、このように応じざるを得ないのだろう。
そのことに突っ込みを入れることができない記者クラブの記者に存在価値はあるのだろうか……。
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