都議会「21年第1回定例会」予算特別委員会(しめくくり総括質疑、3月23日)で、「米軍基地対策について」和泉なおみ(共産党)の質疑応答があった。
横田基地のオスプレイ問題のあと、米軍ヘリの都心低空飛行問題についても質疑応答があったので、ネット中継(録画)をもとに、全文テキスト化(約3千文字)しておいた。
※以下長文。時間のない方は「質疑応答のポイント」と「雑感」をお読みいただければと。
#首都異常飛行 #米軍ヘリ低空飛行
米軍ヘリ都心飛行問題について
和泉なおみ議員(共産党、都議2期、宮城県立第三女子高卒、58歳)
和泉:米軍ヘリが都心上空を低空飛行、知事の認識?
米軍が日本の主権を侵し、都民の命や安全を脅かしているのは、横田基地周辺だけではありません。
パネルご覧ください(下記写真)。毎日新聞のスクープで、米軍ヘリが都心上空を低空飛行している現場を捉えた動画から作成したものです。これは都庁第1本庁舎45階の展望台からほぼ水平方向に撮影されたもので、およそ202メートルの高さで飛んでいることがわかります。
航空法に基づけば、都庁舎やNTTドコモビルなど240m級のビルの、更に300m上空を飛ばなければならず、本来であれば、この低空飛行は明白な違法行為です。
毎日新聞の調査によれば、他にも、在日米軍ヘリが六本木ヒルズ、東京スカイツリー、渋谷スクランブルスクエア、竹下通り、三軒茶屋のキャロットタワーなど、人とビル、住宅が密集する首都東京の中心部で、日本のヘリであれば違法となる低空飛行を繰り返しています。
専門家からは何かしらの訓練を行っていた可能性も指摘されています。米軍赤坂プレスセンターのヘリポートでもタッチアンドゴー訓練と見られる短時間の離発着を繰り返してる様子が動画に写っており、いずれもネットで公開されています。
知事はこのような実態をどう受け止めてるんでしょうか。
菅首相は国会で証拠動画を見たとした上で「ルールに基づいて飛行するのは当然のこと」と答弁しました。大惨事につながる低空飛行やタッチアンドゴーと見られる離発着訓練は許されません。知事の認識を伺います。
小池百合子 都知事(2期、カイロ大卒、68歳)
知事:必要に応じて適切に対応してまいります
安全保障に関することは、国の専管事項であることはご承知のとおりであります。
かつ、米軍の運用にあたっては、安全確保を優先しなければならないことも、ご存知のとおりであります。
今回の事案ですが、都は国に対しまして事実関係を照会中との報告を受けており、その結果を踏まえまして、都としては必要に応じて適切に対応してまいります。
なお、都はこれまでも国に対し米軍機の飛行につきましては、航空法の飛行時の「最低安全高度」を適用するよう要請を行っていると共に、渉外知事会(渉外関係主要都道府県知事連絡協議会)(PDF:2.4MB)を通じましても従前から国に申し入れを行っているところであります。
和泉:知事は米軍に断固抗議すべき
私たちは、米軍は日本から出ていけばいいというふうに思っています。けれども、この首都東京に米軍の基地を置いている、その知事としてそのような認識で本当にいいんでしょうか。
都民の命、暮らし、命、安全を守る。本当にそういう意識があるのかというふうに言わざるを得ません。安全確保と、それが重要だと言うんであれば、毎日新聞は都庁の展望台からこの映像撮ってるわけですから、都庁としてきちんと事実確認したらいいじゃないですか。なぜはっきり「こんなことは許されない」と言えないんでしょうか。
都心上空を米軍機が勝手に低空飛行することが、どうして安全保障に繋がるんですか。知事は米軍に断固抗議すべきです。いかがですか。
上野雄一 東京都技監(千葉大院卒、86年入都)
技監:必要に応じ、適切に対応してまいります
安全保障に関することは、国の専管事項でございますが、都はこれまでも国に対し米軍機の飛行につきまして、航空法の飛行時の最低安全高度を適用するよう要請等を行っております。
報道があった件につきましては、都は国に対しまして事実関係を照会中でございまして、現在国において米側に事実関係を確認中だと聞いております。その結果を踏まえ、都は必要に応じ、適切に対応してまいります。
和泉:日本の法律に従わせるべき
自ら事実を確認しようとしない時点で適切に対応していないんですよ。そんな生ぬるい対応では日本の主権も都民の命、安全も守れません。
だいたい、東京の空を米軍ヘリが勝手に勝手放題に飛んでいい、そんなことには絶対にならないんです。
沖縄県の調査によれば、現在、米軍駐留人数のトップ5が日本、ドイツ、韓国、イタリア、イギリスです。知事、このうちドイツ、イタリア、イギリスでは、米軍機はその国の法律に従わずに飛行できるんでしょうか。日本でも少なくとも日本の法律に従わせるべきではないかと思いますが、いかがですか。
技監:国に対して必要なことを申し入れてまいります
ドイツ、イタリア、イギリス等、米軍の受け入れ国の国内法適用等につきましては、沖縄県が地位協定に相当する定めにどのように規定されているか等を調査しております。
その調査にはドイツの航空法が米軍にも適用、米軍の訓練高度等に対して非軍事的事項および軍事的事項のイタリア法規であり、特定分野について有効であるものにつき遵守義務が明記、駐留軍法のイギリス国軍に関連する法の駐留軍への適用が規定、等々記載されております。
都はこれまでも航空法や環境法令等の国内法を米軍に適用するよう国に要請を行っていると共に渉外知事会を通じても、従前から国に申し入れを行っております。引き続き都民の生命と安全、安心を守る立場から、地元自治体と共に、国に対して必要なことを申し入れてまいります。
和泉:赤坂プレスセンターの撤去を国や米軍に求めるべき
住民の安全を確保すると言いながら肝心なところは、安全保障は国の専管事項だと。このようなことを答弁繰り返してるようじゃ、全然だめじゃないですか。
ご答弁の通り、ドイツ、イタリア、イギリスでは国内法を無視して米軍機は飛べないんです。だいたいですよ、このようなことすら、沖縄県の調査を使わなければ答えられないということ自体が、いかに東京都が主体的にこの問題を捉えていないかということの表れじゃないですか。
国会でわが党の宮本徹衆議院議員の質問に対して、岸防衛大臣は「米軍機が日米地位協定の16条に基づいて航空法等の我が国の国内法を遵守順守する義務を負っている」と答弁しています。
日米地位協定は極めて問題があって、改定が必要ですが、その地域協定に照らしても許されないということなんです。厳正に対応することを知事に求めておきます。
そもそも都心の一等地に米軍のヘリ基地があるという異常事態が今回のような低空飛行が長年行われてきた根本的な原因です。知事、横田基地と共に赤坂プレスセンターの撤去を国や米軍に求めるべきではありませんか。
技監:直ちに返還されるよう求めております
都は都民の生活環境を改善し、地域のまちづくりを推進する観点から、都内米軍基地の返還の可能性が検討され、整理・縮小・返還が促進されるよう、これまでも提案要求等を通じて国に要請しておりまして、赤坂プレスセンターにつきましては、直ちに返還されるよう求めております。
今後も引き続き基地の整理・縮小・返還に向けまして取り組んでまいります。
和泉:周辺自治体との連携協議会を設置することを提案
いま、基地の返還・縮小はまちづくりの観点からというふうに仰いましたけど、まちづくりどころの騒ぎじゃないですよ。
これほど米軍ヘリが低空飛行して、都民の安全、命が脅かされている状況なんですから。本当に迅速に動かなければいけないというふうに思います。
米軍ヘリの都心上空低空飛行問題は区長会が調査を開始しました。都と区長会、関係自治体が連携して対策を強化するよう求めておきます。また、赤坂プレスセンター基地についても撤去に向け、港区をはじめ、周辺自治体との連携協議会を設置することを提案して、次の質問に進みます。
雑感
小池知事も東京都技監も「安全保障に関することは、国の専管事項」「都としては必要に応じて適切に対応してまいります」を繰り返すばかり。羽田新ルート問題と似たような国丸投げスタンスを貫いている。
東京23区長でつくる特別区長会は、米軍ヘリの低空飛行に関する区民からの苦情の有無など23区全体の状況を調査し、4月9日の同会役員会までに結果を取りまとめることになっている。
4月9日に明らかにされる区民の苦情の声は、羽田新ルートに悩まされている都民の声とともに7月4日に都議会選挙を迎える議員らに届くのか……。
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