世田谷区議会の「21年第1回定例会」予算特別委員会(補充質疑、3月24日)で、「米軍ヘリの異常低空飛行について」中里光夫(共産党)の質疑応答があった。
議会中継(録画)をもとに、全文テキスト化(約1千400文字)しておいた。
#首都異常飛行 #米軍ヘリ低空飛行
※投稿21年4月13日(更新21年7月15日)
米軍ヘリの低空飛行の問題について
中里光夫 議員(共産、区議5期、小山工専卒、56歳)
中里:区内での米軍ヘリの低空飛行について事実確認は?
最後に、米軍ヘリの低空飛行の問題について質問します。
毎日新聞が在日米軍ヘリが東京都心の上空で、日本のヘリであれば違法となる低空飛行を繰り返している問題、世田谷区の住宅街でも計7回にわたり同様の飛行してる様子を毎日新聞が確認したと報道しています。神奈川県の基地と都心を移動する際の通り道にしているとみられ、住宅やビルが立ち並ぶ同区の上空を200m前後の高さで飛ぶこともあったとしています。
日本の航空法は、航空機から半径600m内にある最も高い障害物から300mの高さを最低安全高度とし、これよりも高く飛ぶように規定しています。
毎日新聞の報道では、キャロットタワーの手前を通過する米軍ヘリの写真が掲載されていました。
日本の航空法が低空飛行を違法としてるのは、それが危険だからです。区民の安全にかかわる重大問題です。区は区内での米軍ヘリの低空飛行について事実確認はしてるんでしょうか。
環境政策部長
環境政策部長:飛行事実の確認には至っておりません
令和2年4月1日以降、ヘリコプターに関する騒音苦情は50件ありました。報道のヘリだとか遊覧飛行の可能性があるものが多く、米軍機と思われるものは2件でした。
米軍機と思われる案件につきましては、防衛省の担当部署に住民から苦情があったことを伝えてあります。しかしながら飛行事実の確認には至っておりません。以上です。
中里:国や米軍に対し抗議し、やめさせるべき
けっきょく実態が分かってないということになるわけです。区民の安全にかかわる重大な問題で、何が起きているのかをつかめていない。これは重大問題だと思います。
国に情報提供を求め、低空飛行の実態をつかみ、そしてそれを区民に知らせるべきです。その上で、区民の安全を守る立場で、国や米軍に対し抗議し、やめさせるべきだと考えます。区長の見解いかがでしょうか。
保坂展人 世田谷区長
(無所属、3期、元ジャーナリスト、都立新宿高校(定時制)中退、65歳)
区長:区長会、情報集約の段階です
毎日新聞、私も3月16日(の朝刊の紙面)にキャロットタワー(世田谷区太子堂にある商業・ホール・オフィスからなる27階建ての複合ビル)の上ではなくて、中腹、横を飛行する米軍ヘリの写真を見て、非常に驚きました。
記事のなかには、こちらの住民の方が被害を訴えてるっていう、その時にまさに飛行してきたってことだったようですけども、あり得ないこと。
「そういえば」ということなんですが、最近、かなり近いところを、つまり低空を飛行してると思われる爆音が夜間に響いたりということは、私自身も「なんだろう?」と「この時間に?」ということがありました。そしてまた、区長へのメールにも、先ほど環境所管が答えたように、通報があります。このことは、世田谷区だけで起きてるわけではないんで、六本木にヘリポートがあり、横田(基地)に行く。なぜかスカイツリーの方まで巡回して一周して帰ってくるような、目的は何なのか、さっぱり分からない。
しかし、これは航空法での危険行為であって、日本のヘリはこういう飛び方はできないわけです。そういう意味では区長会が同日開かれておりましたので、問題提起を早速しまして、区長会会長の受け止めで各区でそういった実態を寄せてほしい、集約をしようじゃないかと。
そのうえで対応を考えると。対応は東京都を通して、在日米軍ならびに政府について申し入れをするということになるだろうというふうに思います。
まだいま情報集約の段階です。
中里:しっかり取り組んでいただきたい
先ほどの苦情の、世田谷区内の苦情の様子なんかを見ても、なかなか事態は分からないと思うんですね。これ、しっかり国に情報を出させる、米軍に情報を出させることが大事だといふうに思いますので、しっかり取り組んでいただきたいと思います。
以上で終わります。
補足メモ
「区長へのメール」に届いた米軍ヘリの苦情が1件も公開されていない
環境政策部長は「令和2年4月1日以降、ヘリコプターに関する騒音苦情は50件ありました」と答弁。その答弁を受けて、区長は「区長へのメールにも、先ほど環境所管が答えたように、通報があります」と答弁している。
具体的な通報内容を確認すべく、世田谷区HPの「区民の声の公表(寄せられた意見と回答の紹介)」に掲載されているエクセルファイル「民の声の公表」(令和2年1月受付分~同年12月分)をひも解いてみたのだが、ヘリコプターに関する騒音苦情は1件も掲載されていない。
※追記21年5月15日(更新21年7月6日)
「区民の声の公表(令和3年3月受付分)」にもヘリコプターに関する騒音苦情は掲載されていない。
世田谷区広報広聴課「特に意図はない」
なぜ、ヘリコプターに関する騒音苦情は1件も掲載されていないのか?
個人情報や特定の個人等の不利益になるものなどは、公表対象から除外されることになっているのだが、ヘリコプターに関する騒音苦情が除外対象になるとは思えない。
ワードファイル「公表の対象とならない区民の声について」をひも解くと、「匿名及び住所、連絡先が明らかでないものは、公表の対象となりません」と記されている。
ひょっとして、「 区以外の機関(他市区、警察署等)の対応が必要なもの」に該当するものとして公表されていないのだろうか。
「区民の声の公表」を所管している広報広聴課に電話照会してみた。
- 当方:なぜ、ヘリコプターに関する騒音苦情は1件も掲載されていないのですか?
- 相手:特に意図はありません。
- 当方:「公表の対象とならない区民の声について」に該当するのですか?
- 相手:それはありません。件数が少ないと掲載されないことがあります。
- 当方:環境政策部長が委員会で、昨年4月から騒音苦情50件あったと回答しています。
- 相手:たしかにコンスタントに届いています。
- 当方:それは特定の人からですか?
- 相手:それはその……。
- 当方:では、なぜ1件も掲載していないのですか?
- 相手:投稿者が公表を希望していない可能性がありますが、確認してみないと分かりません。
- 当方:現在公表されているのは「令和2年12月受付分」までとなっています。今後はどうなりますか?
- 相手:毎日新聞の報道の件もありますから、今後は(投稿)件数が増えてくるかもしれません。そうなれば、今後は掲載されるのではないでしょうか。
ちなみに、毎日新聞の4月11日に記事「都心低空飛行 ヘリ苦情、米軍に178件通知 防衛省、歯止めにならず」によれば、23区内のヘリに関する苦情178件(17年4月~20年12月)のうち世田谷は140件と8割近くを占めている。その理由として、こまめに通報する住民の存在を伝えている。
世田谷で多いのは横田など首都圏の基地と東京・六本木の米軍ヘリポートの往復ルートになっているうえ、こまめに通報する住民がいたためとみられる。
※世田谷区広報広聴課 担当者の方、お忙しいなか、電話取材に応じていただきありがとうございました。
【追記】なぜ、米軍ヘリ騒音苦情が「区民の声」に掲載されてないのか
※追記21年7月10日
環境政策部長は予算特別委員会(3月24日)で「令和2年4月1日以降、ヘリコプターに関する騒音苦情は50件ありました」と答弁しているし、世田谷区の広報広聴課に電話照会したとき(4月13日)、担当者は「今後は(区HPに)掲載されるのではないでしょうか」と答えていた。ところが、「区民の声の公表(寄せられた意見と回答の紹介)」にはいつまでたってもヘリコプターに関する騒音苦情は掲載されていない(最新は「令和3年3月受付分」)。
なぜ、掲載されていないのか、「せたがやコール」(ウェブベースでの受付)で問い合せてみた。
- 筆者問合せ(7月6日火)
世田谷区議会の「21年第1回定例会」予算特別委員会(3月24日)における中里光夫議員の質問に対して、環境政策部長は「米軍機と思われる案件につきましては、防衛省の担当部署に住民から苦情があったことを伝えてあります」と答弁しています。
ところが、「区民の声の公表(寄せられた意見と回答の紹介)」(https://www.city.setagaya.lg.jp/mokuji/kusei/006/001/d00150024.html)のうち、令和2年1月受付分から令和3年3月受付分のエクセルファイルには、米軍機と思われる案件の記載が1件もありません。
なぜ、1件も記載されていないのでしょうか? - 広報広聴課から回答(7月7日水)
区では、区長へのメール等により区民の皆さんから寄せられたご意見やご要望(区民の声)を区政運営の参考にさせていただいています。
このうち、区民の皆さんに広く知っていただきたいことや区民生活に有益になると思われるもの、多く寄せられ関心の高いと思われるご意見等を区のホームページで紹介しています。
なお、区のホームページで紹介するご意見等につきましては、申立者の方から公表しない旨の申出があったものや、匿名及び住所、連絡先が明らかでないもの、区以外の機関の対応が必要なもの等は、公表の対象としておりません。
そのため、「区民の声」の公表は、寄せられたご意見やご要望をすべて公表しているものではございません。
翌日に回答が送られてきたスピード感だけは高く評価したい。さすが元ジャーナリスト・保坂展人氏が区長を務めているだけのことはある。でも、回答は汎用文章のコピペ的内容で、納得しがたいのでさらに質問してみた。
- 筆者問合せ(7月7日水)
世田谷区議会の「21年第1回定例会」予算特別委員会(3月24日)における中里光夫議員の質問に対して、環境政策部長は「令和2年4月1日以降、ヘリコプターに関する騒音苦情は50件ありました。報道のヘリだとか遊覧飛行の可能性があるものが多く、米軍機と思われるものは2件でした」と答弁しています。
これら50件を公表しないと判断された理由は次のどれに該当するのでしょうか?
①申立者の方から公表しない旨の申出があった
②匿名及び住所、連絡先が明らかでないもの
③区以外の機関の対応が必要なもの
③その他(※その他の場合は具体的な理由をご教示ください))
2日後に回答が送られてきた。
- 広報広聴課から回答(7月9日金)
広報広聴課で「区民の声」として受け付けたヘリコプターに関するご意見等の公表につきましては、原則、区以外の機関の対応が必要な内容のため、公表の対象としておりません。
ヘリコプターに関する騒音苦情50件(うち2件は米軍機と思われるもの)が世田谷区HP「区民の声」に掲載されていない理由は、「区以外の機関の対応が必要な内容のため」であることが確定した。
掲載されていない理由は分かったのだが、なぜ「区以外の機関の対応が必要なもの」は掲載の対象としていないのか、それでいいのか、という疑問は残る。
※追記7月15日
さらに質問してみた。
- 筆者問合せ(7月10日土)
以下追加質問です。
(1)「区以外の機関の対応が必要なもの」を公表の対象としていない理由はなんでしょうか?
(2)次の公表ルールに係る文書をお示しください。
「申立者の方から公表しない旨の申出があったものや、匿名及び住所、連絡先が明らかでないもの、区以外の機関の対応が必要なもの等は、公表の対象としておりません」
日曜をはさんで5日後に回答が送られてきた。担当者も回答に困ったのかもしれない。
- 広報広聴課から回答(7月15日木)
区では、区長へのメール等により区民の皆さんから寄せられたご意見やご要望(区民の声)を区政運営の参考にさせていただいており、この中から区民の皆さんに広く知っていただきたいことについて、区の対応や考え方を区のホームページで紹介しています。
区政運営とこれに関するご意見等の一部をご紹介するという主旨から、区以外の対応が必要な内容については、公表の対象としておりません。
なお、公表の対象とならない一覧については、区ホームページ「区民の声の公表(寄せられた意見と回答の紹介)」ページの「公表の対象とならない区民の声について(Wordファイル)」に掲載しております。https://www.city.setagaya.lg.jp/mokuji/kusei/006/001/d00150024.html rel="nofollow"
何卒ご理解のほど、よろしくお願いいたします。
なぜ、「区以外の機関の対応が必要なもの」を公表の対象としないのか。
「区政運営とこれに関するご意見等の一部をご紹介するという主旨」というのが理由のようだが、答えになっているのだろうか。
米軍ヘリ問題の存在を区民に周知する意義はあると思うのだが、区政運営の範疇外だから区民に知らせていないのだという整理でいいのか。『闘う区長』集英社新書(2012/11/16)は多選を重ねるうちに、闘わない区長になったのか……。
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