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羽田新ルート|教室型説明会の次は公聴会!?【追記あり】

新宿・品川区のようにやっと教室型説明会が実施されるようになった区があるかと思えば、渋谷・港区のように未だに教室型説明会の実施を国に要請している区があるというアンバランスな状況。

そんななかで、「教室型説明会だけですむ話ではない。航空法で国は利害関係者の意見を聴取し公聴会を開くことを義務づけている」という趣旨のツイートに出くわした。

航空法をひも解き、羽田新ルートに係る公聴会開催の可能性につき、整理してみた。

※以下長文なので、時間のない方は最後の「まとめ」をお読みいただければと。


もくじ

空港等の設置・変更、公聴会の開催義務あり

航空法で「公聴会」に言及しているのは第39条(申請の審査)。

空港等の設置によって「他人の利益を著しく害することとならないものであること」(第39条1項)を審査するために、国交大臣に公聴会の開催を義務づけている。

第39条(申請の審査)

  • 国土交通大臣は前条第1項の許可の申請があつたときは、その申請が次の各号のいずれにも適合しているかどうかを審査しなければならない
    1 当該空港等又は航空保安施設の位置、構造等の設置の計画が国土交通省令で定める基準(空港にあつては、当該基準及び空港法第3条第1項に規定する基本方針(第47条第1項において単に「基本方針」という。)。第3号において同じ。)に適合するものであること。
    2 当該空港等又は航空保安施設の設置によつて、他人の利益を著しく害することとならないものであること
    (※第2〜5号は省略)

  • 2 国土交通大臣は、空港等の設置の許可に係る前項の審査を行う場合には、公聴会を開き、当該空港等の設置に関し利害関係を有する者に当該空港等の設置に関する意見を述べる機会を与えなければならない

 

国交大臣に審査義務が生じるのは、「前条第1項の許可の申請があったとき」。前条第1項とは、第38条(空港等又は航空保安施設の設置)のことで、空港等が設置される場合に適用される条文。

第38条(空港等又は航空保安施設の設置)

  • 国土交通大臣以外の者は、空港等又は政令で定める航空保安施設を設置しようとするときは、国土交通大臣の許可を受けなければならない。
  • (※第2~4項は省略)

 

同じような条文として、第43条(空港等又は航空保安施設の変更)がある。

第38条が「空港等・・・の設置」に係る条文であるのに対して、第43条は「空港等・・・の変更」に係る条文だ。変更するときにも、進入表面、転移表面又は水平表面に変更を生ずる場合に限り第39条第2項(公聴会の開催義務)が準用されている。

第43条(空港等又は航空保安施設の変更)

  • 空港等の設置者又は航空保安施設の設置者は、当該施設について国土交通省令で定める航空の安全のため特に重要な変更を加えようとするとき(空港等の標点の位置を変更しようとするときを含む。)は、国土交通大臣の許可を受けなければならない。

  • 2 第38条第1項から第4項まで、第39条、第40条及び前条の規定は、前項の場合に準用する。ただし、第38条第3項、第39条第2項及び第40条の規定については、空港等の範囲、進入表面、転移表面又は水平表面に変更を生ずる場合に限り準用する

 

ここまでをザックリまとめると、国交大臣に公聴会の開催義務があるのは、空港等の設置や変更が行われる場合ということになる。

羽田新ルートの運用は、空港等の設置や変更を伴わないので、公聴会開催義務の対象とはならないのだろうか?

羽田新ルート指定、公聴会の開催義務あるのでは…

航空路については、第37条(航空路の指定)で、国交大臣が航空路を告示で指定すればいいことになっている。

上述した空港等の「設置」や「変更」と違って、国交大臣の審査義務の対象とはなっていない(したがって、公聴会の開催義務は課せられていないことになる)。

第37条(航空路の指定)

  • 国土交通大臣は、航空機の航行に適する空中の通路を航空路として指定する。
  • 2 前項の航空路の指定は、当該空域の位置及び範囲を告示することによつて行う

 

では、航空路としての羽田新ルートを運用するにあたって、国交大臣に公聴会の開催義務はないのか?

第56条(空港等の特例)と同条の2(利害者配慮、準用規定)を合わせると、国交大臣は羽田新ルートの運用に関して公聴会を開かなければならないように読めるのではないのか。

まず、第56条では、国交大臣は「延長進入表面」を指定することができるとされている。延長進入表面とは、滑走路の延長線15km以内の範囲(詳細は後述)を指している。

第56条(空港法第4条第1項第1号から第5号までに掲げる空港等の特例)

  • 国土交通大臣は、空港法第4条第1項第1号から第5号までに掲げる空港(筆者注:第2号は東京国際空港)並びに同項第6号に掲げる空港及び同法第5条第1項に規定する地方管理空港のうち政令で定める空港について、延長進入表面、円錐すい表面又は外側水平表面を指定することができる。

  • 2 延長進入表面は、進入表面を含む平面のうち、進入表面の外側底辺、進入表面の斜辺の外側上方への延長線及び当該底辺に平行な直線でその進入表面の内側底辺からの水平距離が1万5千メートルであるものにより囲まれる部分とする。
  • (※第3〜4項は省略)

 

さらに、第56条の2では、前条第1項で指定した事項(すなわち延長進入表面)に変更を加える場合には、国交大臣にその他の利害関係を有する者の利益を著しく害することとならないように配慮義務を課している。

しかも、指定をした事項(すなわち延長進入表面)に変更を加える場合には、第39条第2項(公聴会の開催義務)を準用するとしている。

第56条の2

  • 国土交通大臣は、前条第1項の指定をし又は指定をした事項に変更を加える場合には、空港の附近の土地の所有者その他の利害関係を有する者の利益を著しく害することとならないように配慮しなければならない

  • 2 第38条第3項、第39条第2項及び第40条の規定は、前条第1項の指定をし又は指定をした事項に変更を加える場合に準用する

 

ここまでをザックリまとめると、延長進入表面(滑走路の延長線15km以内の範囲)を変更する場合には、国交大臣には利害関係を有する者の利益を著しく害することとならないように配慮することとあわせて、公聴会開催義務が課せられている。

滑走路の延長線15km以内が利害関係者

延長進入表面(滑走路の延長線15km以内の範囲)を規定している第56条の条文はイメージしにくい。そこで、延長進入表面の概略図を下記に示す。

制限表面概略図
大阪航空局HP「制限表面概略図」にピンク加筆

 

滑走路の延長線15km以内には次の5区が含まれている(次図)。

  • 大田区、品川区、目黒区、港区、渋谷区

滑走路から15km以内の利害関係
羽田新ルート|騒音影響を受ける区民100万人超」にピンク加筆

公聴会はいつ開催されるのか?

航空法施行規則第81条に、法第56条の2第2項(延長進入表面の変更)で公聴会を開催するときは、公聴会の開催の10日前までに官報で公示しなければならないことになっている。

第81条(公示及び告知)

  • 国土交通大臣は、法第39条第2項(法第43条第2項、法第55条の2第3項及び法第56条の2第2項において準用する場合を含む。)の規定による公聴会を開こうとするときは、その公聴会の開催の10日前までに、事案の内容、日時、場所及び主宰者並びに公述申込書及び公述書を提出すべき場所、期限及び部数を官報で公示しなければならない。
  • (※第2項は省略)

 

公聴会を開催するときは、公聴会の開催の10日前までに官報で公示すすることしか規定されていないので、形式的に処理される恐れはないのか。

国交省は「航空機の⾶⾏と不動産価値の変動との間に直接的な因果関係を⾒出すことは難しい」というスタンスだから、「落下物対策総合パッケージ」を策定したことで「害関係を有する者の利益を著しく害することとならないように配慮」しました、というような幕引きにならないだろうか。


国交省が11月20日に公表した「新羽田空港機能強化に向けたプロセス」には、19年下期に「制限表面設定」が予定されている。さらに20年4月あたりから「新飛行経路周知」と記載されている(次図)。

ひょっとしてこの「新飛行経路周知」は、「公聴会」のことを意味しているのか……。

新飛行経路運用開始までのプロセス
羽田新ルート|第5フェーズ住民説明会の中身」より

まとめ

  • 航空法をひも解くと、国交大臣に公聴会の開催義務があるのは、空港等の設置や変更が行われる場合であることが確認できる。

  • 第56条(空港等の特例)と同条の2(利害者配慮、準用規定)を合わせると、航空路としての羽田新ルートの運用に関して、国交大臣には利害関係者への配慮義務と公聴会開催義務があるように読めるのではないか

  • 滑走路の延長線15km以内(延長進入表面)が利害関係者で、5区(大田、品川、目黒、港、渋谷)の航路下の住民が対象になるのではないか。

  • 国交省が11月20日に公表した「新羽田空港機能強化に向けたプロセス」には、20年4月あたりから「新飛行経路周知」と記載されている。ひょっとしてこの「新飛行経路周知」とは「公聴会」のことを意味しているのか……

【追記(18年12月18日)】ILS進入⇒公聴会開催義務あり

この記事をご覧になった方から次のツイートを頂戴した。

今回のルート変更は、空港に計器着陸装置(航空保安施設)が設置されることが、前提になっているので、公聴会を開く義務は発生します。(以下略)


計器着陸装置と公聴会の関係はどうなっているのか?

南風時の新たな到着経路案では、航空機は次のシステムにより誘導されることとなっている。

  • 悪天時:ILS進入(地上施設からの精密な誘導電波)
  • 好天時:RNAV進入(人工衛星を利用)

航空法施行令3条によれば、「計器着陸装置」も「衛星航法補助施設」も「航空保安施設」に該当する。前者にはILSが、後者にはRNAVが関係する。

「航空保安施設の設置者は、当該施設について国土交通省令で定める航空の安全のため特に重要な変更を加えようとするとき(43条)」は公聴会の対象になる。

 

現在羽田でILSが設置されているのは、北からの着陸と西からの着陸に対してのみ。南風時の着陸用には新たにILSを設置する必要があるので、「重要な変更を加えようとするとき」に該当する。よって公聴会が必要。

以上をまとめると、南風時のILS進入のために航空保安施設(計器着陸装置)を新たに設置する必要があるので公聴会の開催義務が生じるということになる。

【追記(19年7月12日)】政府答弁書により公聴会の開催が明確に

「羽田低空飛行ルート問題に関する質問主意書」に対する答弁書(19年7月5日)の回答2において、航空法第39条第2項の規定に基づき、公聴会が開催される予定であることが明確になった。

政府としては、新経路案に関連して、航空法(昭和27年法律第231号)第56条の2第2項において準用する同法第39条第2項の規定に基づき、羽田空港についての円錐表面及び外側水平表面の追加に伴う公聴会を開催することとしているものの、現時点でその具体的な予定は決まっておらず、これ以外の公聴会について、今後、実施する予定はない

また、「これ以外の公聴会」は実施されないことも明らかになった。

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