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羽田新ルート|なぜデルタ航空は「実機飛行確認」での運用を見合わせたのか

降下角が通常よりも急であることを理由に、デルタ航空は「実機飛行確認」での運用を見合わせたことを東京新聞が2月6日に報じていた。

降下角3.45度対応への準備不足だけでなく、国内外の航空会社のパイロットの技量に違いが、「実機飛行確認」での運用を見合わせたということはないのか……。

※2月20日更新


もくじ

世界中のパイロットの懸念をよそに、降下角3.45度を強行

世界100か国10万人を超えるパイロットを代表する組織体であるIFALPA(国際定期航空操縦士協会連合会)は1月20日、国交省が羽田新ルートの騒音低減策の一環として降下角3.45度を強行に導入したことに大いに懸念している旨の文書を公表した。

※詳しくは、「羽田新ルート|降下角3.45度、パイロットらの懸念 」参照。

世界中のパイロットの懸念をよそに、実際に乗客を乗せた旅客機を使った飛行試験(実機飛行確認)が3月12日に終了した。

降下角が通常よりも急であることを理由に、デルタ航空は「実機飛行確認」での運用を見合わせたことを東京新聞が2月6日に報じていた。

※詳しくは「羽田新ルート|実機飛行確認、デルタとエアカナダの対応は違う!?」参照。

実機飛行確認、デルタだけでない!ユナイテッドとアメリカンも飛んでいた

Flightradar24のデータに基づいた筆者の調査によれば、実機飛行確認で南風時到着ルートを飛行した515便のうち外国航空会社の運航便は20便(3.9%)だった(下表)。

飛行回数が多かった外国航空会社は中国東方航空(上海発)、シンガポール航空(シンガポール発)、アシアナ航空(ソウル発)でいずれも4回。

次いで多かったのがエア・カナダ(トロント発)の3回。飛行実施確認の南風時到着ルート初日(2月2日)こそ、「新たな降下角度に難色」を示し、「羽田での着陸を取りやめ、成田に目的地を変更」したというエア・カナダだが(東京新聞 2月6日)、日本政府の説得に応じたということなのだろうか。

羽田増便枠を勝ち取った米国の4航空会社はといえば、デルタ航空だけでなく、ユナイテッドとアメリカンもそれぞれ1回飛ばしている。

ハワイアン航空だけは、筆者への事前回答通り(乗客を乗せた試験飛行は行わない)、実機飛行確認には参加していなかった。

実機飛行確認の外国航空会社の運航便の内訳 (南風時の到着ルート)
実機飛行確認の実施状況(南風時の到着ルート)」より

国内外の航空会社のパイロットの技量に違い!?

2月3日に都心上空を飛行したデルタ便は、DL7便(ロサンゼルス⇒羽田)のボーイング777-232ER(大型機)。その時の降下角などについては、すでにこのブログで紹介した(実機飛行確認、デルタ便の降下角を調べてみた)。

デルタ航空が3.45度を見合わせた一方で、JALやANAはバンバン飛ばしている。この違いは何なのか? 

2月3日、デルタDL7便の前後に飛行した8つの便(次表)との飛行履歴(高度、降下角)の違いを調べてみた。

※【追記2月20日】

南風時の実機飛行確認が7日間行われたうち、2月3日は唯一「悪天時」のルートで運用されていたことが判明(詳細後述)。

「好天時」は人工衛星を利用する進入方式(RNAV方式)で、降下角が3度から3.45度に引き上げられる。でも、「悪天時」は地上からの精密な誘導電波を利用する進入方式(ILS方式)で、降下角の引き上げはない。

デルタDL7便の前後に飛行した便(2月3日)


横軸を滑走路末端(runway end)からの距離、縦軸を飛行高度として描いたのが次図。

全機とも18kmあたりから降下していく様子が確認できる。ANAの札幌発NH64便(B777-381、大型機)がチョットだけ目立つ軌道を描いている。

飛行高度の変化(各便比較)
※【メモ】Flightradar24は、必ずしも滑走路にタッチダウンした瞬間の時刻の緯度経度データを持っているわけでない。したがって、上図の折れ線は便によっては滑走路手前で終わっているものがある。以下の図も同様。

 

横軸はそのままに、縦軸を降下角として描いたのが次図。

羽田空港に近づくにつれて、素人目には、特にデルタDL7便の降下角のブレが目立つ。

降下角の変化(各便比較)

 

滑走路末端(runway end)から5km以内の飛行高度の変化を見ると、デルタDL7便は他の8つの便よりも降下ルートがブレているように見えなくもない。

飛行高度の変化(各便比較)

 

滑走路末端(runway end)から5km以内の降下角の変化を見ると、特にデルタDL7便のブレが目立つ。

降下角の変化(各便比較)

 

羽田新ルートの「悪天時」の南風時A滑走路到着ルートに係るINSTRUMENT APPROACH CHARTを次図に示す。

INSTRUMENT APPROACH CHART
(INSTRUMENT APPROACH CHART)

 

降下角3.45度対応への準備不足だけでなく、国内外の航空会社のパイロットの技量に違いが、「実機飛行確認」での運用を見合わせたということはないのか……。

【追記2月20日】デルタ便は「悪天時」飛行だった

国交省が騒音測定結果の詳細として、後日公表した「2月3日(月)北風/南風運用測定結果(速報値/詳細)」を見ると、「2月3日は南風悪天運用で実施」と記されていることに気づく(次図)。

南風時に実施された7回の実機飛行確認のうち、2月3日だけは「悪天時」ルートだったのである(あとの6回は「好天時」ルートだった)。

つまり、「好天時」の場合には、降下角3.5度の引き上げが行われるが、「悪天時」の場合には飛行高度が低く、降下角3.5度の引き上げは行われないのである。

2月3日(月)北風/南風運用測定結果(速報値/詳細)

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