降下角が通常よりも急であることを理由に、デルタ航空は「実機飛行確認」での運用を見合わせていること、飛行確認初日にはエアカナダ機が羽田での着陸を取りやめたことを東京新聞が伝えている。
筆者の独自調査により、マスメディア報道では分からない世界が見えてきた……。
※2月20日更新
デルタ、試験飛行見合わせ(東京新聞)
降下角が通常よりも急であることを理由に、デルタ航空は「実機飛行確認」での運用を見合わせていること、飛行確認初日にはエアカナダ機が羽田での着陸を取りやめたことを東京新聞が伝えている。
デルタ、試験飛行見合わせ 羽田新ルート「安全確認できず」
東京都心を通過する羽田空港の新飛行ルートに関し、米航空大手のデルタ航空が、新たに採用された着陸方法の「安全性が社内で確認できていない」として、2日に始まった「実機飛行確認」での運用を見合わせていることが、同社への取材で分かった。
都心ルートでは、飛行高度を上げ騒音を軽減する目的で、航空機が高度を下げていく際の「降下角度」を従来の3.0度から3.5度に引き上げた。デルタは「通常よりも急角度」と見合わせの理由を挙げている。3月29日の都心ルートの正式運用までには社内の事前準備を終えたいとしている。
国土交通省は「昨年12月以降、航空各社に周知してきた」と説明。デルタが、別の方法を求めた場合の対応は「検討中」としている。
飛行確認初日には、エアカナダ機が羽田での着陸を取りやめ、成田に目的地を変更。新たな降下角度に難色を示したとみられる。同省は他の外国航空会社に対しても、準備状況の確認を進めているという。(以下略)(東京新聞 2月6日)
昨年12月、デルタ「飛行機の試験飛行では無く・・・」
デルタ航空といえば、米国航空会社社4社のなかで最も多い5枠の羽田増便枠を得たことで、20年3月に成田空港路線から完全撤退する予定となっている。
今頃になって「降下角度」に文句をいっているなんて、いったいどうなっているのか? そもそも降下角引き上げは、(国交省は騒音低減対策の一環と主張しているが)横田空域を飛行する米軍のためなのだぞ(危険な降下角引き上げ、「横田空域」が理由だった!?)。
筆者が昨年の12月、米国航空4社宛に、試験飛行機の搭乗客への事前承諾の有無につきメール照会したとき、デルタ航空は「(実機飛行確認は)飛行機の試験では無い為、(乗客への)事前承認は必要としない・割引等のサービスの適用は行わない」と答えていたではないか。
飛行機の試験飛行では無く航空管制官が2020年の新設される航路に慣れる為のもので新しい航路や誘導設備等の確認はすでに国土交通省航空局が試験用の飛行機を運航の上で確認済みのようでございます。
〇〇様のご質問への答えと致しましては、飛行機の試験では無い為、事前承認は必要としない・割引等のサービスの適用は行わないとの事でございます。
※詳しくは、「羽田新ルート|試験飛行便の扱い、米国航空4社に照会した結果」参照。
実機飛行確認への対応が異なるデルタとエアカナダ
羽田新ルートの運用開始(3月29日)に向けて、実際に乗客を乗せた旅客機を使った飛行試験(実機飛行確認)が1月30日から3月11日までの予定で実施されている。
デルタ航空とエアカナダ以外の外国航空会社は、羽田新ルートの実機飛行確認に参加しているのか?
Flightradar24のデータを使って、筆者が調べたところ、過去3日間(2月2日~4日)に実施された実機飛行確認では、全206便のうち国際線30便が運用されていたことが分かった(次表)。
(※チェック漏れがあった場合にはご容赦)
国際線30便を運用した航空会社の内訳を次表に示す。
驚いたことに、実施確認試験の2日目(2月3日)には、デルタ航空が運用しているDL7便(ロサンゼルス⇒羽田)が飛んでいたのだ。
ちなみに、飛行確認初日(2月2日)に羽田への着陸を取りやめたと報じられたエアカナダは、2月3日にはAC1便(トロント⇒羽田)を羽田に着陸させている。
(※チェック漏れがあった場合にはご容赦)
疑り深い人のために、Flightradar24の画面のコピーを張っておく。
ロサンゼルス国際空港を発ったデルタ航空DL7便は、羽田空港に15時40分頃に到着しているのである(次図)
↓上図の拡大図
デルタ航空は、2月3日のDL7便の着陸経験を踏まえ、これはマズイと思って、冒頭の報道にあるように、運用を見合わせるということになったのか。あるいは、モルモットにされた米国人からの訴えでもあったのか。
エアカナダは、実機飛行確認の初日(2月2日)こそ羽田への着陸を取りやめたものの、翌2月3日にAC1便(トロント⇒羽田)を羽田に着陸させている。日本政府の説得に応じたということなのか……。
【追記2月20日】デルタ便は「悪天時」飛行だった
国交省が騒音測定結果の詳細として、後日公表した「2月3日(月)北風/南風運用測定結果(速報値/詳細)」を見ると、「2月3日は南風悪天運用で実施」と記されていることに気づく(次図)。
南風時に実施された7回の実機飛行確認のうち、2月3日だけは「悪天時」ルートだったのである(あとの6回は「好天時」ルートだった)。
つまり、「好天時」の場合には、降下角3.5度の引き上げが行われるが、「悪天時」の場合には飛行高度が低く、降下角3.5度の引き上げは行われないのである。
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