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生き残る不動産 廃墟になる不動産『ようこそ、2050年の東京へ』

住宅ジャーナリスト・榊淳司著『ようこそ、2050年の東京へ 生き残る不動産 廃墟になる不動産』イースト新書(2020/12/10)を読了。

データに基づく緻密な未来予測ではなく、著者の脳内作業によって描かれた2050年の東京の風景を文章にしたのだという。

まあ、30年後の東京の不動産市況なんて誰にも分からないのだから、様々な可能性に思いを巡らせてくれる点で、本書はその足掛かりになるかもしれない。ただ、起こり得る可能性の高い首都直下地震と円クラッシュ後の世界への言及がない……。

朱書きは、私のコメント。


もくじ

ようこそ、2050年の東京へ

タワマン、デベロッパーに製造者責任

所かまわずに建てられたのは、デベロッパー側に「儲かる」という強烈な理由があったからだという指摘。

タワマンは「廃墟」の危機を迎える

(前略)それにしてもタワマンという住形態は、建造物としても区分所有のコミュニテイとしても、未完成で未知な部分が多すぎる。我々はタワマンという異形の住形態の、壮大な耐久実験をしているようなものなのだ。そして、どうやらこれは厄介なことになりそうだ、という未来も見えてきた。

 最悪の場合、タワマンは廃墟となる。少なくとも現行法規では救いようがない。そうなれば、もちろん資産価値もなくなる。(中略)

 そもそもタワマンとは、限られた敷地に多くの住戸を作るために作られた必要悪のような存在である。であるにもかかわらず、所かまわずに建てられたのは、デベロッパー側に「儲かる」という強烈な理由があったからだ。だから、敷地が余っている湾岸の埋立地にまで建ててしまった。考えてみれば相当に無責任なことである。

 2050年にそういったタワマンが廃墟化の危機を迎えているのであれば、それは製造者責任として開発分譲したデベロッパーに、それなりの負担を課すべきではないのか。

(P59-60/第2章 これから30年で東京の風景はどう変わるか)

※タワマン問題については、齊藤広子・浅見泰司編著『タワーマンションは大丈夫か?!』プログレス (2020/4/18)が詳しい。執筆者13名は、大学教授8名、企業等4名、弁護士1名。

港区や千代田の不動産価値は変わらない

千代田区なら、人気の高い番町エリアは港区並みの価格を維持。山手線の外側になると価格がやや落ちるという見立て。

港区や千代田の不動産価値は変わらない

(前略)新宿と千代田区エリアは、東京に住むことに対して強いモチベーションを宿しているボヘミアンやワーカホリックが住みたがるところだ。中古マンション価格のレベルを言えば、一人当たりGDPの7割から9割のラインである。現在の貨幣価値で言うのなら、303万円から390万円くらいであろうか。それが2050年頃、新宿区や千代田区中古マンション価格の基準になるのではないか。

 ただこの両区とも、場所によって価格がかなり異なるところがあることに注意したい。千代田区なら、人気の高い番町エリアは港区並みの価格を維持する。山手線の外側になると価格がやや落ちる。

(P98-99/第3章 不動産は2050年に向かってどう動くか)

※現在の不動産高価値エリアと親の学歴の高さはリンクしている(次図)。30年後もそうなのか……。

四大卒以上割合ランキング
正直に回答? 「高学歴な親が選ぶ」小学校区ランキング」より

2050年の住宅産業にとって、高齢者住宅は経営の柱

2050年の住宅産業にとって、高齢者住宅は経営の柱になっている可能性があるという予想。

2050年には後期高齢者も情報端末を使いこなす

(前略)高齢化というのは負の側面ばかりではない。それによって発生する新たな需要もあるのだ。

 医療以外での高齢者需要の中では、やはり福祉関連が大きな割合を占めそうだ。

 今行われているようなデイケアサービスは、さらに充実しているだろう。人手不足は外国人やロボットがある程度カバーしているはずだ。

 高齢者用の各種住宅も激増している。2020年時点における新築マンションの開発分譲のような、大きな利益を見込める分野ほどではないにしても、2050年の住宅産業にとって、高齢者住宅は経営の柱になっている可能性がある。

 高齢者住宅の建設や運営は、社会に貢献する事業として企業が取り組む分野になるだろう。2050年には税制上の優遇措置なども整備されて、企業にとっては取り組みやすい事業になっているのではないか。

(P169/第5章 インバウンドを魅了する東京)

※新築マンション市場が縮小していくなかで、デベロッパーは「シニア向け分譲マンション(所有権方式)」や「サービス付き高齢者向け住宅(賃貸借契約)」の可能性を模索しているが、何かと問題が多い。

本書の構成

5章構成。全199頁。

第1章 1960年からの成長期、1990年からの成熟期
第2章 これから30年で東京の風景はどう変わるか
第3章 不動産は2050年に向かってどう動くか
第4章 東京は「ハレ」の場所として輝く
第5章 インバウンドを魅了する東京

ようこそ、2050年の東京へ

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2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
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