23区内の新築マンション価格が高騰し、庶民には手が届かない状況が続いている。それにも関わらず、購入意欲を見せているのは、国内外の投資家とパワーカップル。庶民は新築を諦め、中古マンションに活路を見出そうとしている。でも、中古マンション市場も価格水準は厳しく、リセールバリューを意識しながらの物件探しは容易ではない。
リセールバリューとは、マンションを売却する際の資産価値を指している。購入した時の価格が売却時にあまり下落していない、あるいは逆に高くなっている物件ほど、リセールバリューが高い物件といえる。
一般的に、リセールバリューが高い物件(資産価値の高い物件)は、立地条件が良いこと(都心アクセス、駅徒歩、生活利便性、静音・日照環境など)のほか、大規模マンションであること(スケールメリットによる管理費・修繕積立金の抑制)に加え、維持管理がシッカリ行われていることとされている。
維持管理がシッカリ行われているマンションとは、どのようなマンションなのか。一般社団法人マンション管理業協会が運営している「マンション管理適正評価サイト」に登録されているマンションのデータをひも解いてみる。同サイトでは、中古マンションの管理状況が☆0~☆5まで、6段階で評価されている(次図)。
23区内で登録されているのは1,048件
東京23区で登録されているのは、1,048件(24年4月20日現在)。区別の内訳は、次図に示すように世田谷区が多い。
☆の数では、「☆4」が多く、次いで「☆5」。「☆2」は少なく、「☆1」は1件のみ(次図)。
予想された傾向ではある。なぜなら、同サイトはマンションの成績をアピールする場なので、マンション管理組合としては、評価が低いマンションを登録するメリットは少ないからだ。
同サイトには評価が低くなりそうなマンションは登録されていないこと(生存者バイアス)に留意しながら、以下の分析を続ける。
小規模でも、古くても「☆5」「☆4」評価を獲得
東京23区で登録されている1,048件の評価につき、☆数別に、横軸に竣工年、縦軸に総戸数として描いてみた(次図)。
総戸数が大きいマンションは「☆5」「☆4」が多いことは分かるが、総戸数100戸以下の分布は、ゴチャゴチャしてよく分からない。
そこで、総戸数100戸以下に絞って分布を描いてみた(次図)。
「☆3」や「☆2」の分布も確認できるが、「☆5」「☆4」もかなり多い。
もともと評価結果の悪いマンションは登録されていないはずだから(生存者バイアス)、低評価物件への言及は避けることとしたうえで、上図から得られる主な知見は、次の2点。
- 大規模マンションでなくても(小規模マンションでも)「☆5」「☆4」評価物件が数多く存在している。
- 築浅のマンションでなくても(古いマンションでも)、「☆5」「☆4」評価物件が数多く存在している。
独立系管理会社物件でも「☆5」「☆4」評価を獲得
「マンション管理適正評価サイト」には、各物件の委託管理会社名も公開されている。
そこで、東京23区で登録されている1,048件の評価につき、☆数別に、委託管理会社の☆別受託件数ラキングを整理してみた(次表)。
興味深いのは、マンションの売主の系列会社でなく、独立系の管理会社である日本ハウズイングの順位。評価が低いほど同社のランキングが上昇。☆2評価では同社が1位になっているのだ。
管理会社が日本ハウズイングであるマンションは避けたほうがいい、という単純な話ではない。というのは、前述したように、もともと評価結果の悪いマンションは登録されていないはずだからだ(生存者バイアス)。
上表から得られる知見は、独立系の管理会社である日本ハウズイングが管理しているマンションでも「☆5」「☆4」評価物件が数多く存在しているということ。
管理委託形態は、98%が「全部委託」
東京23区で登録されている1,048件の評価につき、管理委託形態別(全部委託、一部委託、自主管理)の登録件数を次図に示す。
98%が「全部委託」(1,028件)。「一部委託」は1.8%(19件)。「自主管理」は「☆4」1件(0.1%)のみ。
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