『マンション管理員オロオロ日記』フォレスト出版(2020/9/23)を読了。
著者は元広告代理店プランナー。独立して設立した広告プランニング会社の経営に行き詰まり、59歳のとき夫婦で住み込みのマンション管理員に。13年で3か所、マンション管理員のリアルが描かれている。
※朱書きは、私のコメント。
管理員(著者)の守護神は奥さん
夏の暑い盛り。管理員(著者)が全長10mのホースで植栽に散水していたときのシーン。
オロオロ:私の守護神は救いの女神?
(前略)しばしの沈黙が続いたあと、ふたりの様子を見とがめ、家内が走り寄ってきた。
「いったいなにがあったんです」
息を切らしながら、家内が住民さんに問うた。
「ホース、急に引っ張られて危うくコケそうになったんや。わしやったからエエようなもんの、年寄りやったらケガしてるで!」
「申し訳ありません。足腰立たんようにしばき倒しときますわ」
家内の、身体を90度に折っての意外な詫びの入れ方に、住民さんも意表を突かれたのだろう。「ああ、そうしてくれ」とだけ言い置いて、拍子抜けしたようにその場を去っていったのだった。
生まれは九州、せっかちで男勝りの家内に言わせると、なにごとにもスローモーな私は、見ているだけでつい苛立ちの言葉を吐きたくなるという。たぶんそんなところが住民さんの逆鱗に触れたのかもしれない。
懇意にさせてもらっている得意先から届いた便りの末筆に「守護神さまにもよろしく」と書かれてあったことがある。傍から見ると、家内は覚束ない私の守護神に見えるものらしい。
この守護神がいなければ、私はとうの昔に管理員をクビになっていたことだろう。(P36-37/第1章 管理員室、本日もクレームあり)
※マンション管理業務は高年齢層に支えられている。
1年で5人もの管理員が入れ代わっていた
著者がマンション管理員として勤めた「グラン・サルーン江坂」の理事長とフロントマンは最悪だったようだ。
また辞めた:コロコロ変わる管理課員
(前略)私たちが着任したときに確認した日報によると、「グラン・サルーン江坂」では1年で5人もの管理員が入れ代わっていた。なかには、乱暴な殴り書きで、1ページにもわたる大きな字で「もう辞めた!」と書いている新任管理員もいた。
(中略)
本章では、長期留任による理事長のワンマンぶりと、それを制止すべき立場であるフロントマンの癒着ぶりを見ていただいた。
住民のために機能しなければならない管理組合が、理事長個人の遊具と化している構図はマンション管理員にとってばかりではなく、マンションの住民さんにとっても憂うべき事態である。
マンションの価値を高める外観を美しく保ち、住みやすさを追求するのが管理組合であり、管理員の役割であるはずだ。管理組合と管理会社、そして管理員の三者が一体でなければ、管理合活動はうまく機能しない。
組合活動の人まかせ、他人頼りは結局、住民自身にブーメランとなって返ってきてしまうことだろう。(P101-105/第2章 嫌いな理事長、大嫌いなフロントマン)
※これからはマンションの管理人が不足する時代がやってくる。待遇を改善しないと管理人の確保が難しくなるかも。
マンション3大トラブルに、逆ギレモンスターはつきもの
マンションの3大トラブルには、逆ギレモンスターはつきものだという。
3大トラブル:逆切れモンスター登場
(前略)「なんでもええ。早う理事長呼んでこい」
この男、ここの住民さんの息子で、現在は別の市に住んでおり、親の家に一家で遊びに来ているのだった。
聞くところによると、その昔は知らぬ者がいないくらいのワルだったという。そのなごりなのか、男によれば、駐車禁止区域であろうがなんであろうが、来客用駐車場が満車になっており、駐車禁止区域のバリカーが下にさげられる状態になっていれば、停めていいというリクツになるのだった。
ここからあとはご想像におまかせするが、男の大声で小さな男の子は怯えて泣き出し、男の嫁がやってきて男より激しく怒鳴りまくるは、家内は家内で応援にくる、理事長はその間を取りもつは――で、たいへんな夜になったのであった。
いずれにせよ、マンションの3大トラブルにこうした逆ギレモンスターはつきもの。
将来、管理員として優雅な余生をすごそうなどとお考えの向きには、深甚なる用心と覚悟のほどをお願いしておきたい。(P163/第4章 マンション管理員の用心と覚悟)
※マンションの3大トラブルは、生活音、違法駐車・駐輪、ペット飼育。
本書の構成
全4章、203頁。
第1章 管理員室、本日もクレームあり
第2章 嫌いな理事長、大嫌いなフロントマン
第3章 住民には聞かれたくない話
第4章 マンション管理員の用心と覚悟
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