都議会「24年第1回定例会」予算特別委員会(総括質疑 3月14日)で、「羽田新飛行ルートについて」藤田りょうこ議員(共産、大田区選出)の質疑応答があった。
ネット中継(録画)をもとに、全文テキスト化(約3千文字)しておいた。
※以下長文。時間のない方は「質疑応答のポイント」と「雑感」をお読みいただければと。
※投稿24年3月16日(追記24年4月23日)
※答弁は、谷崎馨一 都市整備局長。
藤田りょうこ議員(共産)
藤田りょうこ 議員(共産党、都議2期、都立医療技術短期大学卒、49歳)
藤田:羽田空港の機能強化の意義?
日本共産党の藤田りょうこ子です。私の地元、大田区にある羽田空港で1月2日、日航機と海保機が衝突炎上し、海保機の乗組員6人のうち5人が亡くなられました。亡くなられた方とご家族に対し深い哀悼の意を表します。関係者の皆様に心からお見舞いを申し上げます。
身近な空港で起きた事故だけに私を含め、区民は大きな衝撃を受けています。原因究明が急がれます。同時に再発防止のために何が必要か、考える必要があります。
私は日本の航空業界で最大の団体「航空安全会議」の現役パイロットの方からお話を伺いました。「羽田空港の大きな特徴は天候が変わりやすく、頻繁に滑走路の使い方が変わることだ」と話していました。滑走路は4本あるものの、風向きによって使い分けるため、使える滑走路が限られることなどから、安全会議の方は「羽田空港は世界でトップクラスの混雑空港だ」と話していました。それなのに管制官の体制強化がなかなか実現しないことへの怒りも口にされていました。
私たちはまた、国交省からのヒアリングも行いました。「今回の事故について、『羽田空港の過密化が原因ではない』と言い切れるのか」と航空局に聞いたところ、「因果関係についてはまだ明らかではない」とのことでした答えでした。事故の原因究明は運輸安全委員会のもと、慎重に進める必要があります。同時に、今紹介した関係者の話からも、羽田空港の過密化が事故の要因の一つであることは否定しがたいと思います。
そして、羽田空港の過密化を招いたのは、羽田新ルートの導入をはじめとした空港の機能強化に他なりません。まず、羽田空港の機能強化の意義について、知事がどのように考えているのか、伺います。
都整局長:航空需要に応え、国際競争力向上
谷崎馨一 都市整備局長(91年入都、58歳 )
将来にわたり、国内外の都市をつなぐ交通ネットワークを強化し、世界の旺盛な航空需要に的確に応えなければ、厳しい国際競争の中で取り残されてしまいます。羽田空港は都心に近く、国内外に豊富なネットワークを有する基幹的なインフラであり、その機能を十二分に発揮させていくことが必要でございます。
航空需要に応え、東京、ひいては日本の国際構想力(「競争力」の誤読?)を向上させていくためには、容量拡大や空港アクセスの改善、駐車場等の既存施設の機能向上等による羽田空港の機能強化が必要不可欠でございます。
藤田:羽田衝突事故を受けて、どのような再発防止策を求めた?
これまで都は、「羽田新ルートは国の判断と責任により導入した」と繰り返してきました。しかし、答弁の通り東京都も「機能強化は必要だ」という立場から羽田新ルートの導入を歓迎してきたわけです。その責任において、都としても羽田空港の安全対策について自ら深く考える必要があります。
都は1月2日の羽田空港の事故を受けて1月5日、国に対し再発防止策の徹底を求めています。どのような再発防止策を求めたのですか。
局長:原因究明と再発防止等について要請
羽田空港の安全な運用は何より重要であることから、都といたしましては、事故発生後、国に対して直ちに原因究明と再発防止等について要請してきました。
現在、事故原因については国の運用安全委員会において調査中であり、国からは1月中旬に羽田空港航空機衝突事故対策検討委員会を立ち上げ、さらなる安全、安心対策について検討を進めていると聞いております。
羽田空港の運用は国の責任と判断で行われており、都はこれまでも国に対し提案要求などの機会をとらえて安全対策について万全を尽くすよう求めるとともに、羽田空港に発着する航空会社に安全対策の徹底を指導するよう、適宜要請しております。
藤田:都の羽田空港機能強化に関する調査、いつから?総額?
今私は「事故を受けて、どのような再発防止対策を求めたのですか」と伺ったんです。しかし、具体的なお答えはありませんでした。そして、「これまで安全対策を求めてきた」とすり替えて、答弁されました。
しかしこれまで東京都が繰り返し求めてきた安全対策というのは、「部品欠落事故、部品欠落が起きないように徹底した対策してくれ」という内容のものばかりです。そうであるなら今回の事故について、安全対策、具体的に伝えたという中身にはならないと思います。
結局都は、事故以前にも、そして今回の事故を受けてもなお、直接役に立つような再発防止対策や安全対策を求めて求めたわけではないと思います。
お手元の資料をご覧ください。パネルをご覧ください(写真)。
これが1月5日に都が国に要請した文章です。「空港の安全な運用は何より重要であることは言うまでもない」と空港の安全について一言も言うまでもないと言って、本来、言った方がいいと思うんですけども、結局、言ってないんです。
よくよく読みますと、この内容を見てみますと、「空港施設の早期復旧に努めてほしい」ということが盛り込まれてます。当然、安全に運用することが大事ですし、事故が起きたらそれは機能の問題も起きるでしょう。やっぱり「空港の早期復旧に努めてほしい」ということが一番言いたかったんじゃないかなと、この文章から伺えるわけです。安全対策を軽視してると言わざるを得ないと思います。
一方で東京都が羽田空港機能強化に関する調査を毎年行っていますが、いつからどのようなことを調べているのですか。総額も教えてください。
局長:平成24年度から、合計2.5億円
羽田空港の機能強化に関する調査は国への政策提案等の基礎資料とするために、平成24年度から行っているものであり、これまで羽田空港における将来的な航空需要、旅客便や貨物専用便により物資を輸送する航空物流、鉄道、バスなどの公共交通機関や自家用車による空港アクセス、国内外の空港容量等について調査しております。
また、平成27年度の調査におきましては、国内外主要空港における航空機騒音や落下物に関する事例収集や法規制について調査検討を行っており、国へ政策提案した後、国において防音工事助成および落下物防止対策基準が策定されております。
なお、これまでいくらかかったというものにつきましては、合計2.5億円というふうに認識してございます。
藤田:事故が起きたもとでもまともな対策を求めない姿勢は、“経済会ファースト”
(ヤジが多い)
いろいろ述べられたんですけれども、私、実際もらった資料によりますと、平成30年「羽田空港の機能強化に関する都民への情報提供」、皆さんにもお配りしております(写真)。
令和元年度「さらなる機能強化のあり方検討」、令和2年度「羽田空港の空港容量に関する検討」、令和4年度「羽田空港の機能強化に伴うメリットの抽出と整理」です。
やはりこの中身を見てみますと、機能強化に係る調査委託ということで、やはり10年以上、2.5億円もお金をかけて、税金かけて調査し続けて、機能強化の効果やメリット、容量拡大についての調査しか行っていないということです。
機能強化のデメリットや安全性に関わる調査は全く見当たりません。しかも本来、国がやるべき、理事会では、中身まで確認はするものではございません。しかも本来、国がやるべき調査を都が成り代わって行い、国に対して「機能強化をもっとやれ」と後押ししてきたことがよくわかります。
ここにも、機能強化ありきで安全は二の次、三の次という東京都の姿勢が鮮明に現れていると思います。国際競争力のもと、羽田空港の機能強化ありきで突き進み、事故が起きたもとでもまともな対策を求めない姿勢は、“経済会ファースト”そのものです。そんなことでは知事、東京の空の安全と都民の命は任せられません。
羽田空港の機能強化は立ち止まり、問題点を全面的に検証すべきです。そして、羽田新ルートは中止することを強く求めて、次の質問に進みます。
雑感
藤田議員の質問により、東京都は2012年以降、羽田空港機能強化に関する調査を実施していて、これまでに2.5億円投じてきたことが確認された。
- 2018年度「羽田空港の機能強化に関する都民への情報提供」
- 2019年度「さらなる機能強化のあり方検討」
- 2020年度「羽田空港の空港容量に関する検討」
- 2022年度「羽田空港の機能強化に伴うメリットの抽出と整理」
まあ、国交省が7年間で「羽田空港機能強化に係る情報提供・意見把握検討等業務」に約19億円もの血税を浪費したことに比べればたいしたことないってか。
【追記】羽田空港の機能強化に関する調査費用(決算額)の推移
※追記24年4月23日
都知事宛に開示請求していた2.5億円の内訳(年度別に件名・金額)が公開されたので、グラフ化しておいた(次図)。
※4月23日:都知事宛に、成果報告書の開示請求をしておいた。
※5月7日:「開示決定等期間延長通知書」により60日延長通知が届いた。
延長の理由
開示請求に係る公文書に都以外のものに関する情報が記録されており、当該都以外のものに対し、意見を聴く必要があるため、並びに開示請求のあった公文書の量が多く、開不又は不開示の判断に時間を要し、期間内に開示決定等を行うことが困難であるため。
あわせて読みたい