NHKクローズアップ現代は9月9日、「ローン破綻!家賃が払えない!…身近に迫る“住居喪失クライシス”」を報じていた。新型コロナの影響で収入が減少し、住宅ローンが払えなくなくなる人が増えてきているというのである。
実際に住宅ローン破綻した人はどのくらいいるのか。残念ながら住宅ローン破綻に係る公的な統計データは見当たらない。金融庁や日銀、全国銀行協会(全銀協)など、お金を管理する側としては、住宅ローンの破たん状況を知られたくないのであろう。
情報公開に後ろ向きなお役所に代わって、入手し得る範囲で、住宅ローンの破たん関連のデータを可視化しておこう。
※随時更新
- 千人に3人の割合で住宅ローン破綻(住宅金融支援機構)
- 最大で約2%の世帯が破たん!?(マンション総合調査結果)
- 住宅ローン相談件数の推移
- 住宅ローン返済条件の変更実績の推移
- 司法統計に見る自己破産件数の推移
千人に3人の割合で住宅ローン破綻(住宅金融支援機構)
住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)が毎年発行している「ディスクロージャー誌」の「資料編」に、フラット35や同機構融資を利用した人のローンの焦げ付きデータ(リスク管理債権の金額推移データ)が掲載されている。
2001年度以降のリスク管理債権比率(住宅ローンの焦げ付き状況)を可視化したのが次図。
リスク管理債権比率は、09・10年度の8.5%をピークに減少し続けている。破綻先債権比率(住宅ローン破綻率)は、14年度以降0.3%で推移している。つまり千人に3人の割合で住宅ローン破綻しているということ。
最大で約2%の世帯が破たん!?(マンション総合調査結果)
国土交通省が19年4月26日に公表した「平成30年度マンション総合調査結果」に「管理費等の滞納」データが掲載されている。
滞納住戸が「ある」マンションの滞納住戸割合を可視化したのが次図。
「1年以上滞納」している住戸の割合は、総戸数に対して1%以下のマンションが4.5%、1〜2%のマンションが4.7%、2〜3%のマンションが2.8%、・・・・・・。平均して2.3%。
「1年以上滞納」しているということは、そのうちの何世帯かは破綻に至るだろうから、最大で約2%の世帯が破たんする可能性があると考えてもいいのではないか。
住宅ローン相談件数の推移
住宅金融支援機構が20年6月4日に公表した「新型コロナウイルス感染症の影響で返済困難となったお客さまへの返済方法の変更メニュー及び相談窓口のご案内」に「相談件数の推移(5月末時点)」が掲載されている。分かりやすく描き直したのが次図。
4月に相談件数が殺到したことが分かる。
住宅ローン返済条件の変更実績の推移
住宅金融支援機構が20年6月4日に公表した上記資料には「相談件数の推移(5月末時点)」も掲載されているが、NHKクローズアップ現代が9月9日に報じた「ローン破綻!家賃が払えない!…」には、8月末までの相談件数のグラフが掲載されていた。
そこでNHKクロ現のグラフを分かりやすく描き直したのが次図。
返済条件の変更件数は6月がピークであったことが確認できる。
※返済条件変更件数のなかには、「単独でボーナス返済の取りやめ等」は含まれていない。これを含むとさらに件数が膨らむ。
司法統計に見る自己破産件数の推移
裁判所が公開している司法統計の検索機能を利用して、自己破産のデータをひも解く。全地方裁判所の自然人(≒個人)の自己破産件数の推移を次図に示す。03年をピークに減少し、13年度以降は7千件前後で推移していることが分かる。
※この自己破産データは、住宅ローン破たんに限らない。
※19年度は「月報(速報値)」データを筆者が集計した
さらに19年4月以降の「月報(速報値)」データを可視化したのが次図。
特にコロナ禍の影響で自己破産が増加しているようには見えない。
政府の緊急政策が功を奏しているのか、あるいはこれから自己破産件数が増加していくのか、経過観察要。
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