NHKクローズアップ現代は20年9月9日、「ローン破綻!家賃が払えない!…身近に迫る“住居喪失クライシス”」を報じていた。新型コロナの影響で収入が減少し、住宅ローンが払えなくなくなる人が増えてきているというのである。
政府は住宅ローン破たんを防ぐために、顧客のニーズに応じた条件変更の速やかな実施や、条件変更時の手数料の無料化といった支援策を講じている。
では、実際に住宅ローン破綻した人はどのくらいいるのか。住宅ローン破たんデータの可視化と合わせて、住宅ローン条件変更データも可視化してみた。
※住宅ローンの破たん状況を俯瞰できる公的データは公表されてない。詳しくは「なぜ住宅ローン破たん件数に係る公的データは公開されていないのか」参照。
※投稿20年9月14日(更新24年9月4日:NEW)
住宅ローン破たん
住宅ローン破たん状況の推移(住宅金融支援機構)
住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)が毎年発行している「ディスクロージャー誌」の「資料編」に、フラット35や同機構融資を利用した人のリスク管理債権の金額推移データが掲載されている。
01年度以降のリスク管理債権比率(住宅ローンの破たん状況)を可視化したのが次図。
- リスク管理債権比率は、09・10年度の8.5%をピークに減少傾向にある。
- 破綻先債権比率(住宅ローン破綻率:ピンク色)は、14年度以降0.3%で推移していたが、21年度以降上昇し、22年度は0.7%。つまり千人に7人の割合で住宅ローン破綻しているということ。
※21年度以降、リスク管理債権の区分が変更になった。
(更新24年9月4日:23年度データ反映)
「自己破産」件数の推移(司法統計)
裁判所が公開している司法統計の検索機能を利用して、「自己破産」に係るデータをひも解く。全地方裁判所の自然人(≒個人)の新受の「自己破産」件数の推移を次図に示す。03年をピークに減少し、13年度以降は7千件前後で推移していることが分かる。
※この「自己破産」件数は、住宅ローン破産に限らない。
(更新24年9月4日:23年度データ反映)
「給与所得者等再生」件数の推移(司法統計)
裁判所が公開している司法統計データのうち、全地方裁判所の新受の「給与所得者等再生」件数推移を可視化した(次図)。
13年以降は7、800件前後で推移している。
債務を減額し返済する個人再生は、債務をゼロにする自己破産よりも1桁少ない。
※この「給与所得者等再生」件数は、住宅ローン破産に限らない。
(22年度データ反映)
住宅ローン条件変更
新型コロナに係る返済方法変更の承認件数推移(住宅金融支援機構)
住宅金融支援機構は「新型コロナウイルス感染症の影響により機構の住宅ローンのご返済にお困りの方へのお知らせ」のなかで、「新型コロナウイルス感染症に係る返済方法変更の承認実績」グラフを公開している。分かりやすく描き直したのが次図。
返済期間の延長(返済特例)や一定期間返済額を軽減(中ゆとり)など、返済方法の変更は20年6月がピーク。その後、20年11月で底を打ち再び増加に転じ、21年度に入ってからは400件前後で推移している。
※22・23年度は月次データ未公開(4半期単位データ公開)。
(更新24年9月4日:23年度データ反映)
住宅ローン「貸付条件の変更等の状況」の推移(金融庁)
金融庁は「ボーナス支給時期を迎えるに当たり、住宅ローンのボーナス払いを設定している顧客からの返済猶予の相談が寄せられることが見込まれる」として20年5月27日、業界団体宛に新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえた対応として「住宅ローン等に係る要請について」を発出。十分な期間の元本据え置きなど、顧客のニーズに応じた条件変更の速やかな実施や、条件変更時の手数料の無料化といった支援を積極的に行うことを要請した。
金融庁の当該文書が効いたのか、条件変更等の申し込みは20年5月以降急増し、22年2月末時点で10万件を超えた(次図)。23年9月末現在13万件に迫る。
金融庁「貸付条件の変更等の状況について」掲載データを元に筆者作成
(23年5月末データ反映)
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