不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

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齊藤広子・浅見泰司編著『タワーマンションは大丈夫か?!』

齊藤広子・浅見泰司編著『タワーマンションは大丈夫か?!』プログレス (2020/4/18)を読了。

本書は、タワマンの様々な課題について意見交換をするために執筆者が集まり、タワマンの見学・研究会を経て取りまとめられたという。

執筆者13名(座談会を除く)は、編者ら大学教授8名、企業等4名、弁護士1名で構成されている。

※朱書きは、私のコメント。


もくじ

超高層マンションは廃墟化のリスクが高い

超高層マンションに限らず、「マンションは、一回目は築後30年頃、そして二回目は築後45~50年頃にその先まで存続できるかの瀬戸際に立たされるのではないか」という村島正彦氏(有限会社studio harappa代表。NPOコーポラティブハウス全国推進協議会副理事長)の仮説。

超高層マンションは廃墟化のリスクが高い

(前略)現在は適正に運営されている超高層マンションでも、空き室の増加から管理費・修繕積立金の徴収がうまくいかなくなると、この危機は現実の問題となる。

2~3割程度の徴収漏れがあると危険水域ではないだろうか。不足分は残った住戸からの追加徴収で何とかなるだろうか。そうなると、中古住戸が格安で市場に出たとしても、次の引き受け手が現れないだろう。居住者の死亡・転出などを契機として、歯が抜けるように居住者が減少する。まさに負のスパイラルに陥る

 筆者は、超高層マンションに限らず、分譲マンション(いわゆる区分所有マンション)についての取材・研究を行っているが、近年、ある仮説にたどり着いた。
 それは、「マンションは、一回目は築後30年頃、そして二回目は築後45~50年頃にその先まで存続できるかの瀬戸際に立たされるのではないか」というものである。(以下略)

(P53/タワーマンションは廃墟化するのか?[村島正彦])

※本書では海外のタワマン廃墟化の事例(南ア・ヨハネスブルク、米国・ボストン)が記されている。国内ではまだタワマン廃墟化の事例はないが、一般のマンションの廃墟化事例であれば、「廃墟探索地図」で調べることができる。

東京23区内の「廃墟(団地・住宅・別荘)」の内訳
「廃墟探索地図」で23区の「廃墟」を調べてみた」より

修繕積立金不足と中古価格値崩れの可能性

積立金不足や2回目に向けた積立金の大幅増額の必要性などが広く認識されるようになると、その時点で中古になっても高値で取引されていたタワーマンションが値崩れする可能性は否定できないという米山秀隆氏(元 富士通総研)の指摘。

修繕積立金不足と中古価格値崩れの可能性

(前略)実際問題として、区分所有者の高い意識に基づいて資産価値を維持していくことは簡単ではない。

そうした問題を見越して、タワーマンションを購入しても10~15年ほどで売り抜けることを考えるべきだと指南する専門家も存在する。つまり、1回目の大規模修繕の前である。そうであれば、1回目の大規模修繕で積立金が不足していたとしても一時金を徴収されることもなく、値崩れしないまま高い価格で売却できる可能性が高いとの考え方である。

 こうした考え方は現時点で広まってはいないが、今後、2000年代に供給が増加したタワーマンションが続々1回目の大規模修繕を迎え、そこでの積立金不足や2回目に向けた積立金の大幅増額の必要性などが広く認識されるようになると、その時点で中古になっても高値で取引されていたタワーマンションが値崩れする可能性は否定できない

物件としての維持可能性に疑問符が付いたタワーマンションは、居住者の高齢化や空室化が進む中、必要な管理費用や修繕積立金を徴収することがさらに困難になり、スラム化に向かうという、現在、通常のマンションで進展しつつあることがタワーマンションにも波及していくことになる。

(P71/タワーマンションは供給過剰か?[米山秀隆])

※「タワーマンションを購入しても10~15年ほどで売り抜けることを考えるべきだと指南する専門家」とは、ベストセラー「マンションは10年で買い替えなさい」(朝日新書 12年12月)の著者である沖有人氏のことを指しているのであろう。

※タワマンの維持管理問題については、丸山穂高 衆議院議員(N国党)が20年6月4日に提出した質問主意書に対する政府答弁書によくまとめられている。

建替えの困難性

タワマンの建替えの困難性を指摘する大木祐悟氏(旭化成不動産レジデンス株式会社 マンション建替え研究所 副研究所長 エキスパート)。

建替えの困難性

(前略)そこで、将来、タワーマンションの老朽化等が進捗した際における建替えの可否について考えてみたい。

 結論から言えば、管理組合が建物の寿命を的確に見極めたうえで相応の準備を整えていない限り、建替えは困難である可能性が高いだろう。
 その理由は以下のとおりである。

  1. 区分所有者の数が多いこと
  2. 建替えに際しての経済的負担が極めて大きくなると想定されること
  3. 階別の市場流通価格と建替えを前提とした評価の乖離が大きいこと
  4. その他

(中略)
 次に、経済的な負担であるが、多くのタワーマンションはすでに総合設計制度等により余剰容積を享受して建てられているが、そのタワーマンションの建替えの際にさらに余剰容積を与えて建替えを促すようなことになるのだろうか
 前述のように、わが国の人口が将来的に減少し、結果として空き家の増加が懸念される中で、都市中心部とはいっても、これ以上の余剰容積を設定して住宅を増やすことは考えにくいように思われる。

 さらに、タワーマンションには高強度のコンクリートが使われていることが多いので、建物の解体コストが高額になるほか、建築費も一般的なマンションよりも高くなることを考えると、建て替えるための負担はかなり大きくなる可能性がある。

(P236-237/タワーマンションは建替えが出来るのか?[大木祐悟])

※特に巨額の費用を要するタワーマンションの解体費用問題については、識者らが区分所有者が解体費用を負担する仕組みを確立する必要性を訴えている。でも、行政の動きは鈍い。問題が顕在化してから右往左往するのは、感染症問題と同じか……。

本書の構成

全15項目、296頁。

  • タワーマンションはコンパクトシティ実現に寄与するのか?[安藤至大]
  • タワーマンションは都市景観を壊すのか?[浅見泰司]
  • タワーマンションは廃墟化するのか?[村島正彦]
  • タワーマンションは供給過剰か?[米山秀隆]
  • タワーマンションは投資によいか?[中城康彦]
  • タワーマンションは暮らしやすいのか?[高井宏之]
  • タワーマンションではコミュニティ形成は難しい?[齊藤広子]
  • タワーマンションで子育ち・子育ては心配ないのか?[大谷由紀子]
  • タワーマンションのエレベータが止まるとどうなる?[森田芳朗]
  • タワーマンションは管理不全になりやすい?[齊藤広子]
  • タワーマンションは第三者管理がよいのか?[佐藤元]
  • タワーマンションでは修繕費が割高?[関栄一]
  • タワーマンションは建替えが出来るのか?[大木祐悟]
  • タワーマンションは管理しにくいのか?[杉山丞]
  • 《座談会》――タワーマンションは大丈夫か?!

タワーマンションは大丈夫か?!

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