不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

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人生100年時代の住宅すごろく|あと何年マンションに住めるのか?

人生100年時代の住宅すごろく。
賃貸/分譲マンション

シニア向け分譲マンション(所有権方式)※年齢制限なし
サービス付き高齢者向け住宅(賃貸借契約)※60歳以上

老人ホーム


もくじ

30代は永住できない分譲マンション

45歳の人が新築マンションを購入した場合は特に問題はない。

平成29年簡易生命表(厚生労働省)によれば(下図)、現在45歳の男性の平均余命は 37.28年(女性は43.06年)。つまり、マンションの建て替えが必要になり始める40年よりも2年ほど前、すなわち82歳で寿命が尽きるからだ(女性は、築43年、88歳で寿命が尽きるのでギリギリセーフか)。

では、35歳の人が新築マンションを購入した場合はどうか。

現在35歳の男性の平均余命は46.88年(女性は 52.79年)。男性は築47年、82歳を前に寿命が尽きる(女性は築53年、88歳を前に寿命が尽きる)ので、建て替え問題に巻き込まれることになる。

35歳の新築マンション購入者がこの問題を回避するためには、経済力のあるうちに転売しなければならない。 つまり、新築マンションは、35歳にとっては永住することはできないのだ。

年齢と余寿命の関係


では、建て替え問題に巻き込まれる前に、シニア向け分譲マンション(所有権方式)に住み替えた場合、そこは終の棲家として安住できるのか?

「シニア向け分譲マンション」は永住できない

シニア向け分譲マンションの大きな特徴は、食堂医療・介護サービスが付いていることだ。大浴場が付いている場合もある。

シニア向け分譲マンションといえども、一般の分譲マンションと同様、管理組合が形成されている。管理業務の一部を委託するにせよ、全部を委託するにせよ、運営の主体はデベロッパーではなく、あくまでも管理組合だ

食堂の運営は、管理会社に委託されず、管理組合が外部の食堂業者と直接委託契約を締結することが一般的。食堂業者は料理長や配膳掛などのスタッフの人件費と利益を居住者用に提供する食費(売上高)だけで賄うことは困難であることから、固定費と一定の利益は管理組合が支払う運営補助金で補助されなければ業務を受託できない状況にあるという(下記文献)。

また、デベロッパーが提供する資料に記載されている近隣の医療・介護施設との提携は、契約書や覚書は一般的に交わされていないことが多く、管理組合は提携自体の永続性を保証されていないという(同文献)。

同文献によれば、シニア向け分譲マンションでは、食事や医療・介護サービスは継続されないリスクを抱えているという。

たとえば夫婦者は自炊するし、健康な単身者は外部のレストランを利用するだけでなく、介護用のケータリングサービスを受ける居住者もいることから全戸数に占める食堂利用率は年々下がる傾向にある。 したがって学生寮や社員寮以上に管理組合から食堂運営業者に運営補助金を支出しないと彼らは事業から撤退をする。 同様に医療・介護施設との提携も施設側にメリットがないと判断されれば、訪問診療や訪問介護、訪問健康相談・指導も実施される訳ではなく、いつ何時提携が解消されるかわからないリスクを抱える。

文献:増永久仁郎ほか「分譲型シニアマンションの問題点と対応策 : マネジメント的考察」日本マンション学会誌177-184, 2014

 

ただ、食堂や医療・介護サービスの永続性の問題以前に、入居者の健康問題のほうが重要だ。重度の要介護状態になると、住み続けることはできないからだ

シニア向け分譲マンションを60歳で購入した場合、23区の健康寿命は男性71.89歳、女性74.19歳(厚生労働科学研究「大都市の健康寿命(2016年)」)だから、そのマンションに住める期間は男性12年(女性15年)に満たない。その後は介護施設に移ることになる

 

では、サービス付き高齢者向け住宅(賃貸借契約)ではどうなのか?

「サービス付き高齢者向け住宅」も永住できない

まず、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)のほうは、倒産問題が懸念される。

サ高住の倒産問題は、「NHK クローズアップ現代+『“老人ホーム”が空いている!?』(17年3月16日放送)で、NHKの調査結果として「倒産263件」と報じている。その後、読売新聞が17年7月12日、国交省が実施した調査では、「倒産などで廃業した施設数が、2011~15年度の5年間で計125か所に上った」ことを報じている。

 

では優良なサ高住に入居できれば生涯安心できるのかといえば、必ずしもそうではない。

NHKスペシャル人生100年時代を生きる『第1回 終の住処はどこに』(18年11月17日放送)は衝撃的な内容だった。特別養護老人ホーム待機者が30万人を超えるなか、7年前に導入された救世主、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)。要介護度は低くても徘徊行動の見られる認知症高齢者がサ高住から退去を迫られるケースが増えているというのだ。

 

では介護付有料老人ホームならば、臨終を迎えることはできるのか?

有料老人ホームも追い出される!?

消費者庁は18年7月3日、全国で有料老人ホームを運営するHITOWAケアサービスが、入居者との契約を打ち切る場合があるのに明示せず、終身で重度介護を提供するとパンフレットに表示したのは景品表示法違反として、再発防止命令を出した(HITOWAケアサービス株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について)。

有料老人ホームの標準入居契約書では、どうなっているのか?

たとえば、埼玉県がHPで公開している「住宅型有料老人ホーム標準入居契約書」には契約解除条項が明記されている。

第 29 条 事業者は、入居者が次の各号のいずれかに該当し、かつ、そのことが本契約を将来にわたって維持することが社会通念上著しく困難と認められる場合に、本契約を解除することがあります。

  • 1~3(割愛)
  • 4 入居者の行動が、他の入居者又は職員の生命に危害を及ぼし、又はその危害の切迫したおそれがあり、かつ施設における通常の接遇方法等ではこれを防止することができないとき

他の自治体の「老人ホーム標準入居契約書」にも同様の、入居者・職員危害事由による解除条項が見られる。なお、東京都の「老人ホーム標準入居契約書」なるものは、ネット上では見つからなかった(都は標準契約書を作成していないのか?)。

 

今回消費者庁から再発防止命令を受けたHITOWAケアサービスは、「終のすみか」を謳わず、契約書に入居者・職員危害事由による解除条項を明記しておけばよかった、という話なのか?

入居者・職員危害事由による解除条項を発動されて、老人ホームを放り出された老人はどこへ行けというのだ?

解除条項のない老人ホームでは、暴力の可能性のある老人には、薬を処方したり、紐で身体拘束したりして、行動を抑制することが状態化しているということはないのか? なんだか、考えれば考えるほど、問題の解決が難しいような気がしてくるのだが。ひょっとして、解決策などないのかもしれない。

人生100年時代の住宅すごろく……。

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2018年6月1日、このブログ開設から14周年を迎えました (^_^)/
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