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『不動産で知る日本のこれから』祥伝社新書

不動産プロデューサー牧野知弘著『不動産で知る日本のこれから』祥伝社新書(2020/3/31)を読了。

提言内容は、アフターコロナ時代を先取りしている。

朱書きは、筆者コメント。


もくじ

「賃貸」VS「持ち家」

住宅ローンで借りるはずだった金額を借りて別の投資用案件に投資をしたほうが、はるかに豊かな人生を送ることができるようになることに、やがて多くの人が気づく日がやってくるという見方。

「賃貸」VS「持ち家」

(前略)昔は家族向けの賃貸住宅がない、だから家を買わざるをえない、などとわかったようなことを言われた。でも安心してよい。3大都市圈に、高度成長期には地方からやってきた人々が購人した戸建てやマンションが大量に存在する。この人たちの多くが東京五輪後は後期高齢者になる。相続が生じる結果、大量の家族向け賃貸住宅がマーケットに供給される日も近い

 むりやり購人して一生分の稼ぎをせっせと「価値が落ちていく」家に払い込み続けることと、家なんて生活するためのコストと割りきって、住宅ローンで借りるはずだった金額を借りて別の投資用案件(不動産に限らずいろいろな投資用商品が世の中には溢れている)に投資をしたほうが、はるかに豊かな人生を送ることができるようになることに、やがて多くの人が気づく日がやってくるのである。

(P75-76/第2章 不動産新事情)

※これからは空き家がドンドン増えていくので、特に若い世代は急いでマンションを買う必要はないのではないか。20代の若いころから35年間も住宅ローンという”年貢”を払うのは大変だろう。安定的にボーナスがもらえないと、住宅ローン破たんのリスクが高くなる。

そんなに急いで買わなくても、そのうちマンションバブルも弾ける。それまで賃貸に住むという手もある。新築・中古マンションを買えるようになるまでの中継ぎとして、UR賃貸は選択肢の一つになるのではないか。

⇒「マンション高騰で、買うかどうか迷っている人へ 

会社に通うための家を買う、働き盛りの貧しき思考能力

仕事のための移動がなくなれば、まったく異なる価値観で自らの家を選ぶ時代がくることになるという考え方。

会社に通うための家を買う、働き盛りの貧しき思考能力

(前略)現代の働き世代は車を持たない、という。車は使いたいときに使えばよい。車を買っても使うのは週末だけで、駐車場代を払って家の前に「展示」をしているくらいなら買わないほうがよい。自転車だってシェアでかまわない。今や服だってメルカリで済ますのが彼らの考え方だ。

 ところがマンションになると、彼らのこの合理的な思考回路が機能停止に追い込まれるようだ。自分たちが「暮らす」のに本当に良い街はどこなのか。仕事のための移動がなくなれば、まったく異なる価値観で自らの家を選ぶ時代がくることになる。それは会社への交通利便性ではなく、人生のそれぞれのステージで自分の「好み」の街を選んで「利用する」、そんな家選び、街選びが始まることだろう。家も、自動車や自転車あるいは服のように「しなやかに使いこなす」時代が、もうすぐそこに迫っているのだ。(中略)

会社から「近い」というだけの理由で買った家のために、夫婦そろって年収の3割くらいのお金を35年間も注ぎ込むことの馬鹿馬鹿しさに、やがて多くの人々が気づくことになる

 不動産も自動車や自転車と同じく、「買ってなんぼ」から「使ってなんぼ」のものになるのだ。

(P126-127/第3章 不動産の背景は、こうなっている!)

※若いうちは「住まい=資産」という考え方に拘泥するのかもしれないが、あと何年マンションに住めるのかという視点も重要。

⇒「人生100年時代の住宅すごろく|あと何年マンションに住めるのか?」

東京にも「街間格差」の時代が来る

テレワークが主流となれば、通勤という概念から離れ、一日のうち長い時間を過ごす、自分が住む街の魅力度を精査するようになるだろうという見立て。

東京にも「街間格差」の時代が来る

(前略)中古住宅や土地が大量にマーケットに出てくれば、これまで新築マンション広告を、目を皿のようにして眺めていた顧客が、立地の良い暮らしやすい街を選択するようになるだろう。

これまでは「会社ファースト」で住宅選びを行なってきたのが、テレワークが主流となり、必ずしも毎日朝9時から夕方5時まで会社にいなくてもよくなれば、通勤という概念から離れ、一日のうち長い時間を過ごす、自分が住む街の魅力度を精査するようになるだろう

 こうした動きは、これまでの鉄道一本やりだった交通手段に対する考え方をおおいに変える可能性を秘めている。駅から徒歩何分という選択肢ではなく、自分たちの住む街の環境や機能にも目を向けるきっかけになるのである。

 都内でも、駅からは遠くとも意外と緑などの自然環境が豊かな住宅地はたくさんある。とても都内とは思えないような静かな住宅地もある。必ずしも湾岸タワーマンションに住んで無理に着飾った生活を送らずとも、都内にはすでに良い街がたくさんあるのだ。(以下略)

(P234-235/第5章 都市開発の行方)

※本書は文春オンラインの連載記事をまとめた内容となっているため、コロナ第1波の真っ最中の20年3月31日に発刊されたにも係わらずコロナへの言及はない。ただ、提言内容は、アフターコロナ時代を先取りしている。

本書の構成

5章構成。全236頁。

第1章 マンションは、どうなっていく?
第2章 不動産新事情
第3章 不動産の背景は、こうなっている!
第4章 地方はどうなる?観光はどうなる?
第5章 都市開発の行方

不動産で知る日本のこれから

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2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
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