衆院は2010年以降の中継録画を視聴できるのに、なぜ参院は会期終了日から1年間しか中継録画を視聴できないのか。参院事務局に開示請求してその理由が分かった。
- 国会では不動産に係る興味深い議論が交わされている
- なぜ参院の中継録画は会期終了日から1年間しか視聴できないのか
- 参院 広報課:中継録画に係る議事録は非公開
- 参院 事務局庶務部文書課:中継録画に係る議事録は作成していない
- まとめ:民主党政権の衆参ねじれ、録画公開期限を撤廃できず!?
国会では不動産に係る興味深い議論が交わされている
国会では不動産に係る興味深い議論が交わされている。NHKは予算委員会の様子をときおり中継するが、不動産問題が議論される国土交通委員会の様子が中継されることは稀だ。
たとえば、いまの通常国会(23年1月23日~6月21日)では、筆者が記事化したものだけでも7件ある。※( )内の日付は委員会開催日。
- 衆院
- 決算委員会
(4月24日)植田日銀総裁「(不動産価格は)バブルの時ほどの異常な事態ではない」 - 国土交通委員会
(5月10日)賃貸アパート・マンションの空き室問題、古川元久氏(国民)
(3月10日)新築重視から既存住宅活用へ政策を転換する必要性、小宮山泰子氏(立憲)
- 決算委員会
- 参院
- 予算委員会
(3月27日)UR都市機構の民営化!東徹氏(維新) - 国土交通委員会
(4月25日)レオパレス21欠陥住宅問題を追及!田村智子氏(共産)
(3月17日)家賃保証業者に法規制を!田村智子氏(共産)
(3月9日)空き家問題!石井苗子氏(維新)
- 予算委員会
過去に議論された不動産の問題を調べようとしていて、妙なことに気がついた。
「国会会議録検索システム」を利用すれば、第1回国会(昭和22年5月)からの本会議・委員会の会議録を閲覧できるのだが、ネット審議中継の録画のほうは視聴できる期間が限られていることだ。
衆議院は第174回国会(2010年1月18日~6月16日)以降の録画が公開されている(次図)。
ところが、参議院の録画が視聴できるのは会期終了日から1年が経過した日までとなっているのである(次図)。
参議院インターネット審議中継⇒よくある質問⇒Q10
なぜ参院の中継録画は会期終了日から1年間しか視聴できないのか
なぜ参院の中継録画は会期終了日から1年間しか視聴できないのか。
ネットをググると、2011年の日経記事に「会期終了後1年経過したときに公開を終える」との規定を削除するという与党方針が報じられていた。
国会映像の公開期限を撤廃 与党方針
与党はネットで中継した国会審議をサーバーに保存し、半永久的に視聴できるようにする。これまでは会期の終了後、1年分だけを保存・公開していたが、サーバーの保存容量が年々、技術⾰新で拡⼤していることを受け、衆参両院の議院運営委員会の「会期終了後1年経過したときに公開を終える」との規定を削除する。
(日経新聞 2011年1月4日)
当時(2011年)の与党は、自民党ではなく、2009年に政権交代を果たしていた民主党だ。ただ、民主党は2010年の参院選で敗北し自民が第1党となり、ねじれ国会状態となっていた時期。このことが影響して、衆院の中継録画の公開制限は削除されたが、参院の中継録画の公開制限のほうは削除されなかったのではないか。
参院 広報課:中継録画に係る議事録は非公開
実際のところを知るために5月1日05時、「衆議院-お問い合わせについて」に記されていたwebmaster@shugiin.go.jp宛てにメール照会してみた。
以下2点、理由を教えてください。
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(1)
なぜ、参議院ネット審議中継録画を視聴できる期間は「会期終了日から1年が経過した日まで」と短いのでしょうか?
(理由と共に、いつ、誰が、どのようにして決めたのか教えてください)
(2)
なぜ、衆議院ネット審議中継録画のように、「公開期間は、第174回国会(常会)より継続して公開」することができないのでしょうか?
(衆議院ネット審議中継録画のほうは、2010年1月18日以降の会議が公開されています)
同日10時、参議院広報課からメールで、次の回答が送られてきた。
参議院インターネット審議中継の規定は、議会運営委員会理事会にて定められています。
理事会での議事録は公開されておりませんので、回答としましては以上となります。
参院の中継録画の規定は、議会運営委員会理事会で定められているが、その議事録は非公開だという。そこまで言われると開示請求せざるを得ない。
参院 事務局庶務部文書課:中継録画に係る議事録は作成していない
参院のネット中継録画を所管しているのは参議院事務局。参議院事務局に情報公開請求する方法に従って5月1日、次の文書を参議院事務局宛に投函した。
与党が国会映像の公開期限を撤廃する方針を2011年1月4日の日本経済新聞が報じていました(記事見出し:国会映像の公開期限を撤廃 与党方針)。
しかしながら、撤廃されずに今日に至っています。参議院広報課宛てに23年5月1日、メールで「参議院ネット審議中継録画の視聴可能期間」を照会したところ、「参議院インターネット審議中継の規定は、議会運営委員会理事会にて定められています。理事会での議事録は公開されておりませんので、回答としましては以上となります」との回答を同日頂戴しました。
そこで、参議院インターネット審議中継録画の公開期限の撤廃に係る議会運営委員会理事会の一切の議事録(ただし、国会会議録検索システムで閲覧可能分を除く)を公開してください。
回答を待つこと1か月。
参議院事務局庶務部文書課長名(6月6日付)で「事務局文書不開示通知書」が6月8日に郵送されてきた。
1 不開示とした文書の名称
参議院インターネット審議中継録画の公開期限の撤廃に係る議会運営委員会理事会の一切の議事録(ただし、国会会議録検索システムで閲覧可能分を除く)
2 不開示とした理由
参議院議院運営委員会理事会の議事録は作成しておらず、保有していないため、不開示とする。
(事務局文書不開示通知書より)
議事録を作成していないので開示できないという回答。
参議院広報課は「議事録は公開されておりません」と回答してたのに話が違うじゃないかと思ったら、「事務局文書不開示通知書」のほかに「事務連絡」という文書も同封されていた。
広報課の回答は正確でなかったので、再発防止に努めるという趣旨の事務連絡である。
事務連絡
御提出いただいた開示申出書において、「「参議院インターネット審議中継の規定は、議会運営委員会理事会にて定められています。理事会での議事録は公開されておりませんので、回答としましては以上となります」との回答を同日頂戴しました。」と記載いただいております。
本院広報課に問い合わせたところ、従前より、同種の御質問に対して記載された内容の回答を行っていたことを確認いたしました。この回答中の「理事会での議事録は公開されておりません」の部分は、より正確に記述するなら、不開示通知書と同様に、「理事会の議事録は作成しておらず、保有していないことから、公開されていない」とすべきところでした。広報課にはその旨を指摘し、再発防止を徹底いたしますので、御理解いただければ幸いです。
(事務連絡より)
まとめ:民主党政権の衆参ねじれ、録画公開期限を撤廃できず!?
衆院は2010年以降の中継録画が視聴できるのに、なぜ参院は会期終了日から1年間しか中継録画を視聴できないのか。
参議院広報課に照会すると、参院の中継録画の規定は、議会運営委員会理事会で定められているが、その議事録は非公開という趣旨の回答が返ってきた。
そこで参議院事務局に、参院中継録画の公開期限の撤廃に係る議事録を開示請求したところ、議事録を作成していないので開示できないという回答が返ってきた。
結局こういうことなのではないか。民主党政権の衆参ねじれ時代に、衆院の議院運営委員会では「会期終了後1年経過したときに公開を終える」との規定を削除できたが、自民優位の参院の議院運営委員会では同規定を削除できなかったし、そのための議論もなかった。議論がなかったので議事録が存在しないから、参議院事務局からは議事録「不開示」という回答が返ってきたということなのだろう。
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