衆院・決算行政監視委員会第1分科会において4月24日、階猛 衆議院議員(立憲)が植田日銀総裁に不動産バブルへの認識を問う場面があった。
ネット中継録画をもとに、テキスト化(約2千500文字)しておいた。
※以下長文。時間のない方は「質疑応答のポイント」と最後の「雑感」をお読みいただければと。
※敬称略
衆院「決算行政監視委員会」質疑応答(階議員×植田総裁)
階:日銀総裁となられたその椅子の居心地?
階猛 衆議院議員(立憲民主党、6期、 元みずほ証券主任研究員、東大法卒、56歳)
立憲民主党の階猛(しなたけし)です。本日は、日銀総裁に質問させていただきたいと思います。白川総裁、黒田総裁の後を受けて、日銀総裁になられて2週間経つわけですけれども、日銀総裁となられたその椅子の居心地はどうなのかなというふうに思うわけです。
住んだ川のほとりにいるような居心地の良さを感じるのか、黒く濁った泥で埋まった田んぼで身動きが取れず苦しんでいるような気持ちなのか、どっちなのか、総裁の率直な気持ちをお聞かせください。
植田:いろいろ責任の重さを感じているところでございます
植田和男 日銀総裁(71歳)
就任早々、様々な会議に出席しましたり、国会にも今日が3回目でございますが、いろいろ責任の重さを感じているところでございます。
階:不動産バブル再来と円安による輸入物価高が進行、総裁の認識?
あまり面白みのない答弁でしたけれども、別にここで追求しようとは思ってませんので、率直なところをお聞かせいただければと思います。
これからはやはり私は総裁の説明能力といいますか、国民に訴え、そして納得する納得してもらう力というものに期待しますので、どんどん発信していただければと思います。
さて、本題に入りますけれども、最近の気になる統計として2つ挙げたいと思います。まず不動産価格に関してですが、3月の首都圏の新築マンションの価格が史上最高の1億4360万円ということで、前年同月比で2.2倍になったそうです。また、経常収支に関連する数字として2022年度の貿易赤字が21.7兆円と過去最大となったということも最近報道されていました。
私自身は、不動産バブルの再来と、実需によるドル買い円売りで円安による輸入物価高が進行することを危惧しておりますが、総裁の認識を伺いたいと思います。
植田:経済・物価情勢・金融情勢を丁寧に把握していきたい
お答えいたします。不動産価格の方でございますが、商業用不動産、マンション等の価格をここに2、3年均してみますと、都市部を中心に、これまでの建設コストの上昇、この影響などからかなり上昇しているということだと思います。また、全国の地価は2021年に一旦下落した後、経済活動の持ち直しに伴って緩やかに上昇しております。
経常収支につきましては、昨年後半にかけて黒字幅が大きく縮小した後、横ばい圏内の動きとなっております。経常収支の動向は、財の貿易動向のほか、このところ増加しているインバウンド需要の動向、さらには海外からの配当金受け取りの動向など、様々な要因の影響を受けて変動いたします。
日本銀行としては、ご指摘の不動産価格や経常収支の動向を含め、経済・物価情勢・金融情勢を丁寧に把握していきたいと考えてございます。
階:もう1回聞きます。不動産バブルの再来、総裁の見解?
もう1回聞きます。不動産バブルの再来と実需によるドル買い円売り、これを懸念しておりますけれども、この点について総裁の見解を伺います。
植田:バブルの時ほどの異常な事態ではない
不動産価格を経済活動の水準との対比等で見ますと、今のところ明確な割高感が確認されているという事態ではないかなというふうに思います。
例えば建設費との相対、あるいはGDPとの相対、という指標等を見ますと、バブルの時ほどの異常な事態ではないというふうに考えてございます。
階:総裁の率直な見解をお聞かせください
異常な事態だと思いますよ。前年同月比2.2倍ですからね。
かつ、首都圏と言いましたけれども、上がっているのは東京が著しくて、東京だけで見ると2億超えてんですよ、新築マンションの価格は。
埼玉なんかマイナスですよ。こういう数字を見た時、異常だと思いませんか。やはり、日銀の金融緩和が過剰なマネーを産んで、そういったものがこの不動産価格に反映されてるんじゃないですか。総裁の率直な見解をお聞かせください。
植田:注意深く見守っていきたい
たしかに金融緩和は、一般論として、資産価格、不動産価格を含めた資産価格にポジティブな影響を与えるというものでございます。
ご指摘の東京の直近のデータについては、私も精査しておりませんので、きちんと見て、こういう動向が続くかどうかについては、注意深く見守っていきたいと思っております。
階:異次元緩和が続く限り、悪い円安の進行が続く、どう思います?
過去のバブルの時には、急激に不動産価格が上昇して、そのあとバブルを退治するという当時の三重野総裁でしたけれども、急激な金融引き締めをやって、金融システムの混乱を招き、バブルの崩壊と金融システム危機というのもあったわけですよね。このことについて、あまり関心を持ってないというのはいかがなものかなと思いますよ。総裁、この不動産価格については過去の日銀の教訓を踏まえると、もっとしっかり見るべきじゃないですか。
それから、よく円安になると最初は赤字が増えるけれど、貿易赤字が増えるけども、Jカーブ効果でだんだん貿易黒字になっていくみたいなことを、以前は言ってましたけど、全然そういう傾向もないですよね。円安が本当に日本の経済にとってプラスになってるのかというのもありますし、この状況が続くと、ますます実需によって円が売られて円安になるのではないかというふうに危惧してます。
そういうことを、総裁の考え方をお聞きしたかったんです。日銀の異次元金融緩和が続く限り、私はこの傾向は続くと思って、それでお聞きしてるんです。
日銀の異次元緩和が続く限り、今言ったような懸念ですね。不動産価格の高騰であるとか円安の進行とか。円安といっても、悪い円安の進行が続くと思うんですけど、それはどう思いますか?
植田:不動産価格への影響、常に注意深く見守っていきたい
円安の経常収支への影響につきましては、委員仰いましたようなJカーブ効果のようなものが一般論としてあるものだというふうに、私も認識しております。
ただ、足元、遅れておりましたが、インバウンド需要が増えつつあるというようなことも含めまして、経常収支としてのプラスの効果が出てくるかどうかは、注目したいと思っております。
それから、金融緩和の不動産価格への影響については、行き過ぎた不動産価格の上昇、あるいはバブルの可能性、こういうことを起こらないかどうかについては常に注意深く見守っていきたいというふうに考えてございます。
階:是非、よろしくお願いします
是非、よろしくお願いします。賃金上昇に関して、話題を変えたいと思います。
雑感(植田日銀総裁、抜かりない答弁)
異次元の金融緩和による不動産価格と経常収支への影響について、切り口を変えながら4回、植田日銀総裁の見解を問いただす階衆議院議員(立憲)。慎重に言葉を選びながら答弁する植田日銀総裁。
東京の新築マンションの価格が2億円を超えていることに対して、「直近のデータについては、私も精査しておりませんので」とかわし、「こういう動向が続くかどうかについては、注意深く見守っていきたい」と、植田日銀総裁は抜かりない答弁。
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