開示された文書を読み解くことで、「東京国際空港周辺航空機騒音実態調査」は、国交省が公表している「短期騒音測定」のバックデータであることが明確になった、という話。
※投稿23年6月8日(追記23年6月27日)
情報開示請求して2か月で報告書をゲット!
国交省東京航空局が22年度に委託していた「東京国際空港周辺航空機騒音実態調査」の履行期間23年2月24日が経過したので、業者に委託したときの仕様書と成果物としての報告書を開示請求したのが3月26日。
本来は開示請求があった日から30日以内に開示しなければならないことになっているのだが(「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」第10条)、30日の延長処理が行われた。延長理由は「当該開示請求に係る行政文書の調整等に時間を要するため」とされている(次図)。
「開示決定等の期限の延長について(通知)」より
開示請求してから2か月余りが経過。6月5日に郵送されてきたCD-Rに保存されていたのは、次の5つの文書だ。契約は1本だが、報告書と航空機騒音実態測定精査資料はそれぞれ「千葉県」と「東京都・神奈川県・埼玉県」の2本に分かれていた。
- 特記仕様書(PDF:650KB)
- (千葉県)←羽田新ルートとは関係なかった!
- (東京都・神奈川県・埼玉県)
千葉県のほうは、2015年以降毎年実施されている騒音測定調査であって、羽田新ルートとは関係なかったことに、個人的にはショック。
なぜならば、今回の開示で国に支払った手数料は22,670円だったからだ(次図)。千葉県分を除いていれば16,270円で済んだ(6,400円節約)、といっても後の祭り。ここは勉強させてもらった授業料として前向きに捉えることにする。
「行政文書開示決定通知書」より
気を取り直して、以下、報告書と航空機騒音実態測定精査資料を整理しておく
報告書(1,376枚)は「短期騒音測定」のバックデータだった
「千葉県」の報告書は羽田新ルートに関係なかったので、以下、「東京都・神奈川県・埼玉県」の報告書をひも解く。
報告書は全部で1,376枚。7つの章(325枚)と資料(1,051枚)で構成されている。
- 調査目的
- 調査の概要
- 調査結果の概要
- 航空機騒音の測定と集計の方法
- 航空機騒音の調査結果
- 過去調査との比較及びまとめ
- 測定結果の詳細
- 資料1 測定結果一覧表(No.01-04)
- 資料2 測定結果一覧表(No.05-12)
- 資料3 測定結果一覧表(No.13-18)
1,376枚もの膨大な情報をどのように集約して読者に伝えようかと考えながら、「2.1 調査日程」と「2.2 調査地点」まで目を通していて、はたと気づいた。
羽田新ルート問題に詳しい読者なら、次の2つの表を見て、ピンとくるはずだ。
なんのことはない。この報告書は、国交省が年2回実施し、公表している「短期騒音測定」のバックデータなのだ。
「短期騒音測定」のバックデータなのだから、全面的に開示してもいいようなものだが、「7.5 地点別測定結果詳細」以降、資料3までの1,123枚のほとんどは、のり弁状態だ(次図)。
「7.5 地点別測定結果詳細」のり弁
特に、「資料1 測定結果一覧表」以降は、1,051枚のうち中表紙を除いて全てのり弁(次図)。もうおなか一杯である(笑)
ちなみに、墨消し部分に関して、国交省は「行政文書開示決定通知書」のなかで、「不開示とした部分とその理由」として次のように記している。
不開示とした部分とその理由
- 便名、機種、機体番号等を含む航空機騒音測定結果に関する一連の情報は、個別の法人の特定につながるおそれがあり、これを公にした場合、当該法人の今後の営業活動において、正当な利益が損なわれるおそれがあることから、法第5条第2号イの「公にすることにより、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」に該当するため、当該情報が記録されている部分を不開示とした。
騒音実態測定精査資料、200枚のうち38枚は国交省公表資料そのもの
「航空機騒音実態測定精査資料」のほうは、200枚のうちの最初の38枚が「短期騒音測定」の結果として国交省が公表している「2022年8月実施分」と「2022年12月実施分」そのものである(次図)。
39~160枚目までは、地点別の日報データ(次図)。
地点別の日報データは全て黒塗り(次図)。
161~200枚目までは、地点・季節・機種別(小・中・大型機)の騒音レベルごとの機数データ(次図)。
地点・季節・機種別(小・中・大型機)の騒音レベルごとの機数データは、黒塗りなし(次図)。国交省が公表している「短期騒音測定」に掲載されているグラフの元となったデータが表形式で記載されているだけなので、黒塗りにする必要はないという判断なのだろう。
雑感
開示された文書を読み解くことで、「東京国際空港周辺航空機騒音実態調査」は、国交省が公表している「短期騒音測定」のバックデータであることが明確になった。
国交省は短期騒音測定の目的を「航空機騒音の発生状況のよりきめ細かな把握のため」としているが、実際には羽田新ルート周辺住民の声を受けた区議会からの要請に押されて、形式的に対応している感が否めない。
それでも、「短期騒音測定」のバックデータとなった今回の報告書には多大な労力がかけられている。
今回入手した資料は全部で2,216枚。仕事とはいえ、これだけ膨大な資料を黒塗りした担当者には頭が下がると思ったが、ひょっとして黒塗りした担当者は委託先の業者で、国交省の担当者は黒塗りの有無をチェックしただけだったりして。
ちなみに。本調査は、確認できただけでも、20・21・22年度と日本音響エンジニアリングが3年連続で受注している。20年度は複数社の応札で途中1社辞退、21年度は2社応札、22年度は1社辞退。23年度は6月21日に入札が実施される。
※追記23年6月27日
23年度も日本音響エンジニアリングが受注した。
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