不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

首都圏を中心に、マンション選びのためのお役立ち情報を提供しています


家賃保証業者に法規制を!田村智子氏(共産)参院国交委

参院・国土交通委員会において3月17日、田村智子 参議院議員(共産)が家賃債務保証問題を取り上げていた。
会議録ネット中継録画をもとに、整理しておいた(約5千文字)。

※以下長文。時間のない方は「質疑応答のポイント」と最後の「雑感」をお読みいただければと。


質疑応答のポイント

家賃債務保証契約における違法な条項に対する国交省の対応

田村智子 参議院議員
田村智子 参議院議員
(共産党、3期、 元日本民主青年同盟東京都委員会専従、早大卒、57歳)

田村:家賃債務保証契約から違法な条項を排除、国交省はどう対応?

日本共産党の田村智子です。
家賃債務保証について質問いたします。

アパートなどを借りる際に、連帯保証人がいないという方にNPO法人などが家賃債務保証を行うという支援がリーマン・ショック後に取り組まれてきました。近年、この家賃債務保証が事業として急拡大し、今では保証会社との契約が賃借契約の条件とされることがほとんどになっていて、国交省の調査でも利用率は8割に及んでいます。

昨年12月12日、家賃保証会社フォーシーズの契約条項について、消費者契約法10条違反という最高裁判決が出されました。
資料の1を御覧ください。


3か月の家賃滞納で借主に通知せずに賃貸借契約を解除できるという追い出し条項2か月以上の滞納で、本人と連絡が取れず、電気、ガス、水道、郵便物などの確認から、部屋を利用していない、今後も利用する意思がないと保証会社が判断したときは明け渡したとみなす明渡し条項。これらが消費者の利益を一方的に害するとして、この条項による契約の禁止、条項が記載された契約書用紙の廃棄が命じられました

鍵を取り替えられて部屋に入れないとか所有物を勝手に処分されるなど、不動産所有者でもない保証会社が法的手続も取らずに追い出しをしていたことが厳しく断罪されたことになります。


これは個別案件にとどめてはならないと考えます。全ての家賃債務保証契約から違法な条項を排除する必要があると考えますが、国交省はどう対応されますか

大臣:(違法)契約条項の使用をしないよう是正を促してまいります

斉藤鉄夫 国交大臣
斉藤鉄夫 国交大臣
(公明党、衆議院議員10期、東工大院卒、元清水建設技術研究所研究員、71歳)

委員御指摘の最高裁判決では、家賃債務保証会社が使用していた契約条項の一部が無効と判断され、今後、当該条項を含む契約書の使用が禁じられたものと承知しております。


これを受け、国土交通省では、現在、業界団体等を通じ、他の家賃債務保証事業者に対して、同様の契約条項を使用していないかや、使用している場合の見直し方針などについて調査をしているところです。

この調査によりまして今般の最高裁判決で禁じられた契約条項を使用していることが判明した業者に対しては、当該契約条項の使用をしないよう是正を促してまいります

田村:登録制度は、違法な条項を排除できる仕組みになっている?

是正しなければならないんですが、問題は、法的な仕組みがあるかどうかというところを問題にしたいんです。


2017年に住宅セーフティーネット法の改正が行われ、家賃債務保証事業者の登録制度がつくられました。衆議院での法案審議の際、我が党の清水忠史議員が、フォーシーズによる人権侵害の取立て、これを幾つも事例を挙げて指摘をいたしました。しかし、フォーシーズは、2017年10月に何事もなく登録事業者となったと。で、今回の最高裁判決なんですよ。


事業の適正化を図るということを目的としたはずの登録制度は、違法な条項、違法行為、人権侵害、これらを排除できる仕組みになっているんでしょうか

塩見:必要な指導、助言、勧告を行うことができる仕組み

塩見英之 住宅局長
塩見英之 住宅局長(1990年建設省入省、早大政経卒、56歳)

お答えを申し上げます。
国土交通省が定めております委員御指摘の家賃債務保証業者登録規程でございますけれども、これは業務の適正な運営を確保することを目的に掲げますとともに、家賃債務保証業者によります法令遵守を確保することとしてございます。


具体的には、国土交通大臣が家賃債務保証業者を登録するに当たりまして、法令遵守に関する内部規則等が整備されていることを求めますとともに、家賃債務保証の実施に関する法令等を遵守させるために必要な措置が講じられていることについても求めているところでございます。


また、登録後におきましても、最終的には登録の取消しも背景としながら、登録事業者に対しまして必要な指導、助言、勧告を行うことができる仕組みとしておりまして、この仕組みによりまして、登録事業者によります違法な条項の使用でありますとか違法行為につきまして未然の防止や必要な是正を図るということにしているところでございます。

田村:借金の取立てをする事業者、登録は義務付けられてもいない

その登録事業者だったフォーシーズが最高裁で断罪されたんですよ。ここ、どう考えるかだと私は思いますね。


私の事務所から消費者庁に依頼をして、家賃債務保証、家賃保証というキーワードで全国消費者ネットワークシステムでの検索をしてもらいました。資料の2枚目です。


家賃保証制度がつくられたのは2017年の12月なので、この2017年度の件数見ると864件、まあこれがまだ登録制度が普及していないときですよね。で、2020年度、21年度は995件、昨年度も831件と、高止まりという状況です。実際の相談件数は減っているんだという資料もあるんですけれども、こういうキーワードで全国のネットワークシステムで調べれば決して減っていない


資料の3枚目、全国借地借家人組合連合会が昨年秋、3週間という短期間でしたが、ウェブ調査を行って142人の方から回答を得ています。人権侵害と思われる事例が幾つもあります


朝方車で来て駅までずっと付いてきて、その間支払いしろよと大声を出していた。1時間から2時間玄関のドアをどんどんとたたき、ドアホンを何度も鳴らされた。家賃支払が1日でも遅れると家賃プラス3000円の請求が来る。1分に10回の電話も掛かってきた。退去時に高額請求され、納得いかずサインもしていないのに勝手に立替えが行われ、代位弁済ですね、で、保証会社から高額請求を受けた。これらの事例がいっぱい出てくるんですよ。


家賃滞納というのは生活困窮、収入減少などが主な原因ですから、これ払う約束しても払えないということが繰り返されるという危険性はあるわけですね。そうすると、人権侵害の取立てが大変生じやすいと思います。法規制をしなければ命にも関わる深刻な事態が起きかねません。


貸金業というのは法律によって事業者の登録が義務付けられ、行政による指導監督の対象となっています。家賃の求償として借金の取立てをする事業者に法的な規制がない、登録は義務付けられてもいない、それでよいのかと考えますが、大臣の認識はいかがでしょうか。

大臣:賃債務保証業の適正な運営を確保してまいりたい

家賃債務保証業者登録制度では、貸金業法で規制されているような取立て行為を禁ずる内部規則等が設けられていることを登録要件としております


具体的には、不適当な時間帯における電話や訪問の禁止、勤務先への電話や訪問の禁止、退去を求められた場合に居座ることの禁止などを内部規制として、内部規則として定めることを求めております。

また、登録事業者に対しては指導等を行うことができることとしており、具体的には、国土交通省において、賃借人等から求償権の行使に関する相談をいただいた際には、その内容に応じて当該業者に対する確認や注意喚起などを行っております。

今後は、さらに、消費者から寄せられた相談事項を踏まえ、登録事業者に対する指導等をより積極的に行ってまいります


国土交通省としましては、登録事業者を活用するよう広く国民に周知を図るとともに、消費者庁とも連携しながら、登録制度に基づき家賃債務保証業の適正な運営を確保してまいりたいと思っております。

家賃債務保証業における法的規制の在り方

田村:家賃保証会社への支払い滞った場合の利率、法的な規制?

だったらなぜ登録を義務付けないのかという問題が出てくるんですよ、なぜ義務付けないのか。


そしてまた、先ほど、例えば貸金業法、上限金利定めています。だけども、この家賃の保証の場合は内部規定なんですよね。家賃保証会社への支払い滞った場合の利率について法的な規制ってあるんでしょうか。いかがですか。

塩見:(家賃債務保証業者登録規程)では定めている

お答えを申し上げます。
家賃債務保証業者登録規程におきましては、保証委託契約におきまして、消費者契約法第9条の規定によりその一部が無効となる違約金条項等を定めてはならないということとしてございます。


ここで消費者契約法第9条と申しますのは、消費者が支払期日までに支払うべき金銭を支払わないという場合における損害賠償の額の予定や違約金の定めの条項につきまして、支払期日の翌日から実際の支払日までの期間に応じまして年14.6%を乗じて計算した額を超える定めにつきましては、その超える部分については規定が無効であるというのが消費者契約法の第9条でございます。


したがいまして、家賃債務保証業者登録規程では、こうした無効となる契約条項、すなわち年14.6%を超える違約金条項等を定めてはならないということをこの登録規程では定めているところでございます。

田村:なぜその事業者を使うのか、(重説で)説明を義務付けるべき

ならば、法律で明示すべきなんじゃないでしょうかね。今、自主ルールとして書かれているんですよ。年利14.6%を超える遅延損害金、損害賠償、違約金等を請求することを行ってはならないと。これ、自主ルールに任せる、あるいは今みたいに直接の法規制ではないやり方にそのまましていくのかということなんですね。


一番私問題にしたいのは、先ほど来言っているとおり、登録制度に、つまり登録事業者にならなくともこの事業が可能になってしまうということなんですよ。ここはせめて義務付けをすべきなんじゃないでしょうか。


あわせて、今すぐにできることとしては、宅地建物取引業法、宅建法ですね、35条、重要事項説明に、保証会社が登録事業者か否か、登録事業者でないというところを使う場合には、なぜその事業者を使うのか、その理由の説明を義務付けるべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。

長橋:(登録制度の内容ですとか)情報の提供に努めてはまいりたい

長橋和久 不動産・建設経済局長
長橋和久 不動産・建設経済局長
(1989年建設省入省、京大農学部卒、57歳)

宅地建物取引業法に基づく重要事項説明は、取引の対象となる宅地や建物に関して説明すべき必要な事項、これは例えば登記上の権利関係あるいは法令に基づく権利の制限の内容など当たりますが、それを宅地建物取引業者に説明することを義務付けているものであり、その説明対象とする事項は法令上明記しております。


家賃債務の保証契約に関する事項については重要事項説明の今対象となっておりませんが、保証会社に関する情報が提供されることは借主にとって判断材料になると考えられることから、関係業界と協力を得ながら、例えば登録制度の内容ですとかその登録されている会社の情報など、そうした情報の提供に努めてはまいりたいと思います。

田村:借り手の権利が余りにもないがしろにされている

是非やっていただきたいんですね。法改正も是非検討いただきたいんです。

そもそも、家賃債務保証って何を目的としているのかなんですね。始まりは、高齢者、障害者、低所得者の方にも住まいを保障するための制度で、家賃滞納があれば支援策につなげるということが求められるはずなんですよ。ところが、今の家賃保証はまさにビジネスになっていて、借り手の権利が極めて弱い。


例えばなんですけど、保証会社が事前審査を行って、これ賃貸借契約の事前審査なんですよ。その審査基準も分からないと。支払能力が問題視されれば、住宅確保が困難な人、低所得な人が審査に落とされて賃貸借契約ができないという事態にもなりかねません。

保証会社との契約に連帯保証人を必要とするという事例も増えています。連帯保証人が必要ないから保証会社だって言われているのに、その保証会社を使うのに、契約するのに連帯保証人が必要と言われちゃう。何のための制度かなんですね。

それから、保証会社がもう物件に付いているんですよ。だから、ほかの保証会社を選べない。また、私は連帯保証人が確保できるから使いたいと言っても認められない。また、保証会社との契約金というのは、多くの場合、家賃1か月分を必要としていて、更新料も1年ごとに徴収されるため、借り手の負担がより重くなっていると。


これらは、私は借り手の権利が余りにもないがしろにされているというふうに思えるんですけれども、いかがでしょうか。

大臣:家賃債務保証業の適正な運営を確保してまいります

家賃債務保証は、賃貸借契約を締結するに当たり、連帯保証人を見付けることができない賃借人がこれを利用することにより賃貸借契約が締結可能となるため、賃借人の居住の安定を図る上で一定の役割を果たしていると認識しております。

ただ、賃借人が十分な情報を与えられないまま不適切な保証業者と契約を結ぶことのないようにしなければならないと考えます。このため、賃借人の権利が保護されるよう、保証契約前の書面交付や説明を徹底させ、家賃債務保証業の適正な運営を確保してまいります


また、何らかの事情で家賃債務保証を受けられない賃借人について、居住の安定確保に努めることも必要です。この点については、居住支援法人が関わることで入居が円滑化する事例もあることから、財政支援等を通じ、こうした取組を推進してまいりたいと思っております。

田村:保証業者を選択、変更・・・など、こういう改善はすぐにも行っていただきたい

これ、2017年の住宅セーフティーネット法に位置付けるときに日弁連からも厳しい意見が付いています。是非見直しをしていただきたい


せめて、保証業者を選択、変更できる、保証会社ではなく連帯保証人での賃貸借契約を認めるなど、こういう改善はすぐにも行っていただきたいし、貸し手の側の家賃収入保証というのは保険なども考え得ると思いますので、こういった制度の改正求めまして、質問を終わります。

雑感

家賃債務保証の始まりは、高齢者、障害者、低所得者の方にも住まいを保障するための制度。「今では保証会社との契約が賃借契約の条件とされることがほとんどになっていて、国交省の調査でも利用率は8割に及んで」いるという。

なのに、保証会社との契約に連帯保証人を必要とするという事例が増えているというおかしな状況。

賃貸にお住いの方にとって、気になる情報が満載の国土交通委員会での質疑。メディアが報じないから、多くの人は知らないのではないか。NHKスペシャルなどでシッカリ報じてほしいものだ。

あわせて読みたい

2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
Copyright(C)マンション・チラシの定点観測. All rights reserved.