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羽田新ルート|衆議院「予算委員会」質疑応答

第208回 国会衆議院「予算委員会第八分科会」において2月16日、「国土交通省所管」につき、笠井亮議員(共産党)により「羽田新ルート」関連の質疑があった。

ネット中継録画をもとに、テキスト化(約5千文字)しておいた。

※以下長文。時間のない方は「質疑応答のポイント」と最後の「雑感」をお読みいただければと。


質疑応答のポイント

「地元の理解」について

笠井:コロナの影響前と比べて、羽田空港の状況?

笠井亮議員(共産党)

笠井亮 衆議院議員(共産党、6期、 東大経済学部卒・東大農学部中退、69歳)

次に、羽田空港の新ルートについて伺います。国際線増便を図るとして、東京都心上空を飛行する、そういう運用が開始されてから間もなく3月で2年になります。まず、この点で伺いますが、コロナの影響前と比べて、国際線の直近の全国的な運航状況。そのなかでで羽田空港の状況について、どうなっているか示してください。

渡辺:羽田空港につきましては約70%減

渡辺猛之 国土交通副大臣
渡辺猛之 国土交通副大臣(自民党、参議院議員2期、名大卒、53歳)

新型コロナウイルス感染拡大の影響により、旅客便を中心として世界的に大幅な減便や運休が生じております。我が国発着の国際線についても同様に、大幅な減便や運休が生じており、2021年冬期スケジュールの第1週目の計画便数については、新型コロナウイルス感染症拡大前の2019年冬期スケジュールの第1週目と比べ、全体で約70%減の週約1670便、羽田空港につきましては約70%減の週約260便となっております。

笠井:「地元の理解を得て」という姿勢、岸田政権の下でも変わらない?

全国的には約30%。29.5%。羽田は32%と大幅な減便という状況です。新ルートは国際便を増便するとして導入されたものでありますが、コロナ禍で減便が続く中で、赤羽前大臣は「本格運用に向けた助走期間」と、こういうふうな形で弁解されてきました。しかし、「いま運用しなくてもいいのではないか」というのが住民の声であります。

そこで、斉藤大臣、2018年の当時の安倍首相の施政方針演説ではこう言っておりました。「地元の理解を得て発着枠の拡大を実現します」と。「地元の理解を得て」という姿勢については、今の岸田政権の下でも変わらないっていうことでしょうか

斉藤:具体化協議会、地元の理解を得られたものと判断

斉藤鉄夫 国交大臣
斉藤鉄夫 国交大臣
(公明党、衆議院議員10期、東工大院卒、元    清水建設技術研究所研究員、70歳)

羽田空港の新飛行経路については、平成26年より令和元年にかけて計5回にわたり東京都や千葉県などの関係自治体等により構成される「首都圏空港機能強化の具体化に向けた協議会」、いわゆる具体化協議会と呼んでおりますが、いわゆる具体化協議会ですが、議論を重ねてまいりました。その上で、関係自治体等から頂いた騒音対策や落下物対策、引き続きの情報提供に関するご意見等を受け止め、丁寧に対応することを前提に、地元の理解を得られたものと判断し、国土交通省として令和元年8月に導入を決定したものです。

新飛行経路の運用開始後も、地域への丁寧な情報提供等を行っているところであり、引き続き様々なご意見に耳を傾け、丁寧に対応していきたいと思っております。

笠井:地元の理解を得るっていうことの努力はなくなっちゃう?

もうその関係のところで、具体化協議会で理解を得たらお終いと。地元の理解を得るっていうことの努力はなくなっちゃうんですか

斉藤:引き続き様々なご意見に耳を傾けて丁寧に対応していきたい

先ほど申し上げましたように、地域への丁寧な情報提供等を行っているところでありまして、引き続き様々なご意見に耳を傾けて丁寧に対応していきたいと思っております。

東大総長からの外国語試験中の配慮要請について

笠井:外国語試験中に航空機の騒音で支障が生じないように配慮要請

理解を得ないでやるっていう話になったら大変ですよ。丁寧に進めていけばいいって話じゃなくて。理解なしにやるってことになるかと。重大な問題だと言わなきゃいけないと思うんですよ。


今、大学入試のシーズンであります。東京大学の総長が、国交省の航空局に対して、東京大学、東京外国大学、東京学芸大学、一橋大学の外国語試験中、特に聞き取りヒアリングの試験中に航空機の騒音で支障が生じないように配慮してほしいという要請を行っております。羽田新ルートに関しては、今年それに対してどんな方針で対処していくんですか

渡辺:試験等に応じた個別の配慮は困難

航空機の飛行に関し、東京大学総長から都内の国公立大学における前期日程試験の外国語試験の実施期間中について、静穏な環境の保持に対する可能な限り配慮を求めるとのご要望があったことは承知しております。

民間の定期便の飛行ルートは、いわば空の道であり、運航の安全確保の観点から、地上の障害物等との十分な間隔の確保や、風向きに応じた離着陸の必要性に基づいて設定されるものです。このため、試験等に応じた個別の配慮は困難だと考えております。


いずれにせよ、羽田新飛行経路につきましては、将来的な航空需要の拡大を見据えた我が国の国際競争力の強化、並びにこれまで千葉県が負担をしていた騒音影響の首都圏全体での共有などの観点から、令和2年3月に導入したものであり、国土交通省としては、引き続き運用していく必要があると考えておりますが、今後とも騒音負担の軽減に向け、固定化回避検討会における検討などに取り組みを続けてまいります

笠井:智恵出すのが政治の仕事

驚きました。試験等には対応しないと。学生の皆さんとか受験生の皆さんとか大変ですよ。それでも、そんなの関係なしに(羽田新ルートの運航を)進めるんだって話。ルート運用は航空局の責任ですよね。

これだって、ちゃんとやればできるんじゃないかと。どのような方針で対応するかっていったら、対応しませんって話。東京大学の総長の要請に対して。関係機関と協議するってだけじゃダメですよね。今年の東大の前期試験は2月の末です。

新ルートの運用時間と聞き取り時間が重なるのは、15時からの15分間。外国語試験全体も重なるのは、16時までの1時間。新ルート運用自体が南風の15時から19時までの間のその間の3時間程度というのが元々の運用っていう話でやったわけですから。だったら調整できるじゃないですか。15時から始めるやつを3時間程度でやるんだったら、16時から3時間にすりゃいいし。それもやらないっていう話なんですか。

まして、コロナ禍で減便なんだから、協力は十分可能なはずです。国交省として受験生のために、それから家族のために、本当に心配ですよね。その時間は運用しないと。工夫して対応すべきじゃないですか。智恵出すのが政治の仕事だと思うんですが、いかがですか。

渡辺:試験等に応じた個別の配慮は困難

先ほども申し上げましたように、民間定期便の飛行ルートは運航の安全確保の観点から、地上の障害物等との十分な距離の確保、そしてまた、風向きに応じた離着陸の必要性に基づいて設定をされるものでございます。このため試験等に応じた個別の配慮は困難だと考えております


また、羽田の新経路に関しましては、専用の問い合わせ受付窓口、コールセンター受付、あるいはホームページより投稿受付を設置し、騒音等のご意見を承っておりますが、これまでのところ、大学入試センター、国立私立大学等の関係者から航空機の騒音に関する苦情は一切受けておりません

落下物について

笠井:(落下物)「絶対ありません」と言い切れますか?

今年の試験について聞いているんですよ。「これまでのところ」って、今年あったらどうするかっていう問題でしょ。

結局、今の話を聞きますと、受験生の入試よりも新ルートありきってことになりますね。そんなんだったら新ルート自身、もう見直して止めるっていう話になりますよ、これ。


落下物についても聞きます。

大きな問題と。羽田など、全国の主要7空港で報告された航空機からの落下部品の総数というのは、2019年度928個、2020年度は1005個に及ぶと。国交省から私のところに提出された資料によると、2020年12月に那覇発羽田行きの日航機がエンジントラブルで引き返す事故があって、97.3 kg、 83.4 kgの部品まで欠落をさせております。

こうした部品が落下すれば重大事故になりかねないと。今後、都心上空の新ルートから住宅地や商店街、保育園の真上もルートになっていますから、「保育園、学校、ターミナルなどへの落下物はない」と、「絶対ありません」と言い切れますか

渡辺:落下物ゼロを目指して最大限取り組んでまいります

ただいま委員ご指摘を頂きました2020年12月、那覇空港を離陸した航空機のエンジンが損傷し、5つの部品が欠落する事案が発生をいたしました。

また、その翌年2月にも米国において同様の事案が発生したことから、必要な対策が策定されるまでの間、当該型式機の運航を停止しております。国土交通省としては、設計・製造国政府である米国・連邦航空局や製造メーカーとも緊密に連携し、運航再開に向けて事案発生当初より、原因究明および再発防止策の策定を行ってきているところです。


また、新飛行経路の運用にあたっては、2018年3月に取りまとめました「落下物対策総合パッケージ」により、特に、世界に類を見ない基準である「落下物防止対策基準」を策定するなどの取り組みを行っております


国土交通省と致しましては、今後も引き続き、「落下物対策総合パッケージ」に盛り込まれた対策を関係者とともに着実かつ強力に実施することにより、落下物ゼロを目指して最大限取り組んでまいります。

笠井:(落下物の問題)看過できない

「ゼロを目指して最大限」でも、落ちたらどうするのかって問題です。それが人に当たったらどうするかと。その型だけ運用停止したって、他の型で起こったらどうするのかと。基準作っても落ちているっていうのが実態ですよね


2017年に関西空港を離陸したオランダ航空機からパネルが落下して、大阪市の中心部で車両に追突するという事故がありました。
この時のパネルの重量は4.3キロですが、こんなことを繰り返さしてはいけないと。ましてや100キロ近く目のが落ちてくると、いうことがあり得るってことですから。この問題、本当に看過できないと思います。

固定化回避について

笠井:渋谷区議会「羽田新ルートの運用停止を国に求める意見書」を全会一致で採択

検討しているという固定化回避も、今の滑走路や便数が前提で、都心の飛行を回避するというものではありません。


最後に、大臣に伺います。さきほど「地元の理解」、これからもう理解は済んだんだって話しされてるけど、昨年10月13日に渋谷区議会は、「羽田新ルートの運用停止を国に求める意見書」を全会一致で採択しております。そのなかで言ってます。国土交通省は「羽田新経路の固定化回避に係る技術的方策検討会」を設置し、これまでに開催しているけれども、これらの検討は現在の滑走路の使い方を前提としており、この間、提出してきた意見書の内容を踏まえた検討が行われているとは言い難いというものであります。


地元の理解、渋谷区議会でも全会一致で、これは駄目だという形で、(地元の理解が)得られていない。地元の理解を得て本当にこの問題、新ルートというのは停止すべきじゃないかと、強く求めたいと思いますがいかがでしょう。

斉藤:固定化回避や騒音軽減につながる具体策が得られるよう、必要な作業を着実に進めてまいります

渋谷区議会より「羽田新ルートの運用停止を国に求める意見書」が昨年10月に提出され、その意見書において、固定化回避検討会について、「現在の滑走路の使い方を前提としており、意見書の内容を踏まえた検討が行われているとは言い難い」と記載されているものと承知しております。


ご指摘の固定化回避検討会については、関係自治体等から新飛行経路の固定化の回避に関し、類似の要望があったことを受け、最近の航空管制や航空機の技術革新を踏まえて現在の滑走路の使い方を前提としたうえで、固定化回避、ルートの固定化回避、騒音軽減の観点から新飛行経路の見直しが可能な技術的選択肢がないかについて、幅広くご検討いただいているところでところでございます。


昨年8月に開催した第4回検討会では羽田空港において、技術的に採用が可能でかつ採用した場合の騒音軽減効果が高いと考えられる飛行方式として二つの方式を選定いただきました。こうした議論を踏まえ、現在国土交通省において安全性評価等の具体的な作業を進めているところです。固定化回避や騒音軽減につながる具体策が得られるよう、必要な作業を着実に進めてまいります。以上でございます。

笠井:運航停止して、新ルートは廃止すべき

渋谷区だけじゃないんです。港区でも、広報紙に、受取人払いでハガキを付けて意見募集したら、もう理解得られていないって結果出てんですよ。現在の滑走路・便数が前提の検討してるわけですから。これじゃ全然解決しないっていうのが地元の意見だと。大臣は「地元の理解」ということで、それはもう終わったんだって言うけど、(地元の理解が)得られてないということなんで。まず、運航停止して、新ルートは廃止すべきだと強く求めて質問を終わります。 

雑感

切り口が3つに分散してしまったのはもったいなかった

羽田新ルート問題に係る国会議員の関心が低いなか、「羽田低空飛行見直しのための議員連盟」の副会長(3人)のうちの1人である笠井亮議員(共産)がこの問題を取り上げたことは高く評価したい。

ただ、切り口が3つに分散してしまったのはもったいなかった、と私は思う。

せっかく1問1答の舞台なのだから、たとえば「地元の理解」、あるいは「固定化回避検討」に的を絞り、相手の答弁に応じてさらに質問を重ねていくことで、問題点をより具体的に浮き彫りにしていくことができたのではないか。表面的な質疑応答では、成果を得ることが難しいことは、釈迦に説法かも知れないが……。

ゼロリスク一本やりでは…

誤解を恐れずに言うならば、落下物問題は、自動車事故をゼロにするためには車を走らせてはいけないの類。

実際に都心で落下物事故が発生した場合は悲惨な状況があり得るが、ゼロリスク一本やりでは、多くの共感を得ることは難しいのではないか。

現に、千葉県や江戸川区などは、市民はどの程度認識しているのかはともかく、長年、落下物リスクを負担してきている。

都心を航空機騒音まみれにしないために

羽田新ルートの最大の問題は、都心が航空機騒音に汚染されること。しかもそのような状態が子や孫の世代に引き継がれることである、と私は考えている。

笠井議員が質問で取り上げた、東大総長からのヒアリング試験への配慮要望。飛行騒音問題の実態を指摘するうえで、大変分かりやすく、メディア受けしそうなトピックスではある。しかも、すでに子の世代が航空機騒音の被害者になり得ることを示す事例であった。ただ、航空機騒音問題を議論するには、時期的(受験)にもまた対象的(受験生)にも、あまりにも枠が狭い。

さらに空間的・時間的に枠を広げた議論が望まれる。たとえば、羽田新ルートによってどのくらいの市民が騒音被害を受けているのか(筆者の独自調査によれば100万人超)。そんな基本的な数字さえ、国交省は示していない。

国交省はコロナ減便中であっても羽田新ルートの運用を継続するロジックとして、千葉県に偏っていたこの騒音の負担を平準化するべきという「騒音負担共有論」を持ち出している。ホントにそうなのか。千葉県との関係にどう折り合いをつけるのかは、区議や都議には難しい仕事。ここは超党派の「羽田低空飛行見直しのための議員連盟」の国会議員に期待したい……。

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2024年6月1日、このブログ開設から20周年を迎えました (^_^)/
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