渋谷区議会は10月13日、羽田新ルートの運用停止を求める国への意見書を全会一致で決定。
新型コロナによる減便状況から需要が回復しても、管制間隔の短縮効果をもってすれば従来の海上ルートでの増便が可能というロジックが秀逸……。
- 渋谷区議会「羽田新ルートの運用停止を国に求める意見書」全会一致で決定
- 「請願」が「意見書」を後押し
- 「需要が回復しても従来の海上ルートでの増便が可能」とは
- 雑感(なぜ全会一致で意見書を可決できたのか)
渋谷区議会「羽田新ルートの運用停止を国に求める意見書」全会一致で決定
渋谷区議会は10月13日、羽田新ルートの運用停止を求める国への意見書を全会一致で決定。
「都心上空を通過して着陸するルートの必要性の根拠はなくなった」ので、「国会及び政府に対し、都心低空飛行を伴う羽田新ルートは早急に運用の停止を検討するよう強く求める」としている。
羽田新ルートの運用停止を国に求める意見書
渋谷区議会では、「羽田空港増便による都心低空飛行計画の見直し等を国に求める意見書」や「羽田空港新飛行ルートの再考を国に求める意見書」を全会派一致で提出してきた。
一方、国土交通省は、「羽田新経路の固定化回避に係る技術的方策検討会」を設置し、これまでに3回開催しているが、これらの検討は現在の滑走路の使い方を前提としており、意見書の内容を踏まえた検討が行われているとは言い難い。
現行の管制システムであれば、需要が回復しても従来の海上ルートでの増便が可能であることを、今年6月25日付の国会答弁で認めているように、都心上空を通過して着陸するルートの必要性の根拠はなくなった。
よって、渋谷区議会は国会及び政府に対し、都心低空飛行を伴う羽田新ルートは早急に運用の停止を検討するよう強く求める。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
※意見書の内容は渋谷区議会HPに公開されている。
議案等の概要を開くと、意見書と請願が全会一致で決定・採択されていることが確認できる(次図)。
令和3年第3回定例会/議案等の概要と結果(PDF:153KB)
「請願」が「意見書」を後押し
今回、意見書が決定されただけでなく、「羽田新ルートの運用停止を求める請願」も全会一致で採択された。
この請願は、内容的に意見書と連動している。意見書が決定されることをシッカリ後押しする内容となっている。
羽田新ルートの運用停止を求める請願
(前略)昨年3月から新飛行ルートの運用が始まると共に航空管制の新方式が試行運用され、11月5日より運用が開始されています。
政府が今年6月25日付の国会の質問主意書の答弁書で「先行機と後続機の組み合わせにより相互間の間隔の短絡」について認めている通り、現行の管制システムであれば需要が回復しても従来の海上ルートでも増便できることになり、これまで国土交通省が説明してきた増便のために蔀心上空を通過して着陸するルートの必要性の根拠は無くなりました。
よって、渋谷区議会に対し以下の事項を請願いたします。(以下略)
※請願の全文は、羽田問題解決プロジェクトHPに公開されている。
「需要が回復しても従来の海上ルートでの増便が可能」とは
意見書に記載されている「現行の管制システムであれば、需要が回復しても従来の海上ルートでの増便が可能であることを、今年6月25日付の国会答弁で認めている」とは、どういうことなのか。
衆議院のネット中継録画にも、また参議院のネット中継録画にも6月25日に審議が行われた様子はない。
じつは、「6月25日付の国会答弁」とは、海江田万里 衆議院議員(立憲)が提出した「羽田空港新飛行ルートに関する質問主意書」に対する政府答弁書(令和 3年 6月25日)のことを指している。
20年11月の管理方式基準の改正によって管制間隔の短縮効果が得られるので、従来の海上ルートでの増便が可能だという考え方である。
- 海江田
(20年11月5日付け管理方式基準の改正)これらの措置によって到着機間、出発機間の管制間隔が短縮されることになると思うが、この間の試行運用が管制間隔短縮に与えた効果について明らかにされたい。- 政府
新方式の運用により、先行機と後続機の組合せにより先行機と後続機の相互間の間隔が短縮される場合があることから、より円滑な航空交通が確保され、航空機の飛行時間の短縮に一定の効果があると考えている。
※詳細は、「羽田新ルート|質問主意書(管制間隔短縮、技術的方策検討委員会で検討?) 」
雑感(なぜ全会一致で意見書を可決できたのか)
渋谷区議会には、羽田新ルートを推進している自公とシブヤ笑顔がいるのに、なぜ全会一致で羽田新ルートの運用停止を求める意見書を可決できたのか。
主な要因は3つ。
一つ目は、新型コロナによる減便状況から需要が回復しても、管制間隔の短縮効果をもってすれば従来の海上ルートでの増便が可能というロジックが提示されていること。この秀逸なロジックによって、羽田新ルートの運用停止に反対する理由がなくなった。
二つ目の要因は、渋谷の空を守る会のメンバらが地元自治会長や区議に対して地道に説明努力を重ねてきたこと(今回採択された請願は同会が提出)。
三つ目の要因は、渋谷区議会のパワーバランスに関して推進派は41%と少数であること。羽田新ルートが通過する13区のなかでもっとも少ないのである(次図)。
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