不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

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羽田新ルート|資産価値・騒音・落下物(まとめ)

3月29日の羽田新ルートの本格運用が迫り、マスコミから資産価値・騒音の影響、危険性などの問合せが何件か。

そこで、これらの問題についてザックリまとめておいた。


もくじ

羽田新ルートの資産価値への影響

一部の中古タワマン価格、新ルートの影響織り込み済み

羽田新ルートは不動産価値にどの程度の影響を及ぼしているのか?

都心上空を通過して羽田空港に着陸するルートが通過する11区(港、新宿、品川、目黒、大田、渋谷、中野、豊島、北、板橋、練馬)のうち、特に飛行高度が低く、騒音の影響が大きな品川区や港区のマンション価格への影響は大きい。

品川・港区などの一部の中古タワーマンションの価格にはすでに、新ルートの影響が織り込まれているというのが筆者の認識

お金をたんまり持っている富裕層は、羽田新ルートの騒音や落下物の影響を受ける可能性があるマンションにわざわざ住み続けることを選択しない金持ちは逃げ足が速い。逃げ遅れるのは、いつも庶民。

品川・港区以外の区では、中古タワマン価格の一部にしか顕著な影響が見られないのは、羽田新ルート問題の認知度が低いからなのか、あるいは富裕層が少ないからなのか。

ただ、今年の1月29日から3月12日にかけて行われた実機飛行確認(乗客を乗せた旅客機による試験飛行)によって、頭上を通過する巨大な機影と大きな騒音を体感し、新ルート周辺のマンションからの脱出を逡巡している人が増えたのではないか。

3月29日から本格運用が始まれば、中古マンション相場は現状維持からさらに下落する可能性は否定できないし、新ルート下の新築マンションは、コロナ禍と相まってかなり厳しい状況におかれるのではないか。

エビデンス

品川・港区の中古マンションの平均単価は、過去6年間で約3割り上昇している。ところが、羽田新ルートに近い一部の中古タワーマンション単価は、羽田新ルート計画が公に知られるようになり始めた16年以降、横ばいまたは下落しているのである。

以下にそのエビデンス(一例)を示す。
なお、中古タワーマンションを調査対象にしたのは、取引が盛んで相場が把握しやすいからである。

品川区内の中古タワマン相場

品川区内の羽田新ルート近くの中古タワーマンション相場の推移(13年5月時点の単価を100とした場合)を次図に示す。

品川区内の中古マンションの平均単価が上昇し続けているに対して、羽田新ルート周辺の中古タワーマンション4件の単価は16年以降下落または頭打ちの傾向が見られる(ただし、超大規模ツインタワー物件Dだけは17年下期以降、上昇傾向が見られる)。

羽田新ルート近くの中古タワマン相場の推移(品川)

【メモ】

港区内の中古タワマン相場

次に、港区内の羽田新ルート近くの中古タワーマンション相場の推移(13年5月時点の単価を100とした場合)を次図に示す。

港区内の中古マンションの平均単価が上昇し続けているに対して、羽田新ルート周辺の中古タワーマンション4件のうち、特にルート直下にある物件Bの単価は15年下期以降、下落傾向が著しい。

羽田新ルート近くの中古タワマン相場の推移(港区)
【メモ】同上

飛行ルートが資産価値に影響を及ぼすとした海外事例

飛行騒音が不動産価値にどのくらい影響するのか?

ネットをググっても、国内の文献は、ほとんど見当たらない。そのような調査をしてメリットが得られる組織や研究者がいないからなのであろうか。

一方、海外ではこの手の文献は多い。

コンサルティング会社が1994年に連邦航空局に提出した「住宅価値の空港騒音の影響」という報告書では、ロサンゼルス国際空港北部の中価格帯地域で、2地点を比較すると静かな地点のほうが18.6%不動産価値が高く、1デシベル当たりに換算すると1.33%不動産価値が高いという。

また、ワシントン州の地域通商経済発展省の1997年の助成研究では、シアトル・タコマ国際空港(シアトル市)の拡大計画に関連して、条件が同じ住宅であれば、飛行ルート直下から4分の1マイル離れるごとに3.4%資産価値が上がるとしている。

さらに、ベル氏(不動産鑑定士)が1997年にカリフォルニア州オレンジ郡理事会に提出した報告書では、3か所の空港(ロサンゼルス国際空港、ジョン・ウェイン空港、オンタリオ国際空港)近くの地域で、半年以上で190件の不動産売買事例を分析した結果、空港が原因で15.1~42.6%、平均27.4%資産価値が減少している可能性があるという。

※詳しくは、「海外情報!航空機騒音は不動産価値にどのくらい影響するのか? 」参照。

どの程度の騒音になるか

「実機飛行確認」で分かったこと

今年の1月29日から3月12日にかけて行われた「実機飛行確認」(乗客を乗せた旅客機による試験飛行)を体感した住民から、「これまでの国交省が説明してきた騒音レベルよりも大きかったのでないか」という多くの声に対して、赤羽国交大臣や菅官房長官だけでなく、安倍総理(=質問主意書に対する答弁者)までが「実機飛行確認における騒音測定の結果について現在精査中である」と回答を先送りするようになった。

安倍総理(=質問主意書に対する答弁者)までが「精査中」を言い出すからには、3月29日の本格運用開始までに、きっと多くの住民が納得できるような報告書が公開されるに違いない。

でもチコちゃんは知っています、じゃなかった、筆者は知っている。

国交省データを元に筆者が独自推定した最大騒音レベルに対して、多くの地点で国交省の速報値が上回っていたことを(次表)。

航空機騒音測定局(到着ルート)近傍の最大騒音レベル【推定値と速報値】
実機飛行確認の結果(まとめ)」より

サッシの防音効果

羽田新ルートの飛行騒音に対して、どの程度の遮音性能を持ったサッシを取り付けていれば、必要とされる室内騒音レベルが確保されるのか?

羽田新ルートに関してこの手の試算例を見たことがない。

なぜなのか。考えられる主な理由は2つ。(1)この手の騒音計算ができる技術者が少ないこと。(2)その少ない技術者が、お上の嫌がるような計算結果を世に出さない(出せない)こと。

筆者の独自試算結果を次図に示す。

  • 飛行騒音が80dBを超えるようなエリアではサッシの遮音等級T-4(二重窓)でないと、穏やかな住環境を確保することは難しそうだ

  • 飛行騒音75dBエリアでは、サッシの遮音等級T-2では足りない。T-3で「やむを得ない場合には許される水準」に届くが、「一般的な性能水準」には届かない。

  • 飛行騒音70dBエリアでは、サッシの遮音等級T-3であれば、「一般的な性能水準」に届く。 

飛行騒音に対するサッシの防音効果
※詳しくは、「羽田新ルート|サッシの防音効果を検証してみた」参照。

落下物・落下事故のリスク

御巣鷹⼭事故(1985年)のような大事故が起きたことは極めてショッキングではあるけれど、その後、日本の定期航空会社による墜落事故は発生していない(1994年4月26日に中華航空140便の墜落事故(死者264人)は発生している)。

一方、約30年以内の発生確率70%の首都直下地震で死亡するのは、23区では最大約1万1千人が想定されている。千人あたり1.2人。

あなたが羽田新ルート下で墜落事故に巻き込まれるよりも、首都直下地震で死亡する可能性のほうがはるかに高いのである

※詳しくは、「「羽田新ルート問題」気になるのは墜落事故よりも騒音」参照。

 

でも、落下物事故のリスクとなると話は別だ。特に、氷塊

洋上で脚下げを実施するようになって、成田空港周辺で発見された氷塊は、発着回数あたり約0.0000 61から約0.0000 07に減少している(19年6月7日政府答弁書)。

陸上での脚下げは氷塊落下リスクが高まるが、この点について、政府は「『直下に生活する人や建造物への落下物による被害のリスク』が高まるかどうかについてお示しすることは困難である」とお茶を濁している(同答弁書)。

※詳しくは、「羽田新ルート|質問主意書(落下物防止のための洋上脚下げ)」参照。

 

ただ、政府の答弁はどうあれ、3月29日に羽田新ルートの本格運用が始まり、ちょっとでも氷塊が落下しようものなら、今の時代、SNSで瞬く間に広く知られるところとなるから、その影響は計り知れない

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2019年6月1日、このブログ開設から16周年を迎えました (^_^)/
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