羽田新ルートの運用開始(3月29日)に向けて、実際に乗客を乗せた旅客機を使った飛行試験(実機飛行確認)が2月12日に終了した。
これまでブログに書き散らかしてきた記事をもとに、実機飛行確認に係る情報をまとめておいた。
(羽田新ルート概念図 ※破線は「悪天時」ルート)
実機飛行確認の運用実績
南風時:520便
国交省が2月13日に公表した資料によれば、南風時に都心上空を通過する到着ルートを飛行したのは全部で520便。
うちA滑走路ルート(埼玉県方面を経由して南下)が148便、C滑走路ルート(千葉県方面を経由して南下)が372便。川崎区のコンビナート地区上空を飛行する出発ルート(B滑走路ルート)は245便(次表)。
※日別・滑走路別の航空会社・便名・機種など、詳細については、「実機飛行確認の実施状況(南風時の到着ルート)」参照。
南風時「悪天時」ルート運用は1日だけ
南風時に実施された7日間の実機飛行確認のうち、「悪天時」ルートの運用があったのは2月3日の1日だけ。あとの6日間は「好天時」ルートでの運用だった。
「好天時」の場合には、「航空機騒音の低減を目的として」降下角3.5度の引き上げが行われるが、「悪天時」の場合には飛行高度が低く、降下角3.5度の引き上げは行われない。その結果、悪天時には練馬・中野区だけでなく埼玉県内も900mで通過する。つまり飛行騒音が好天時よりも大きくなるのである。
筆者の試算によれば、悪天時にA滑走路到着ルートを通過する飛行機は、最も多い7月で、1か月間に163機、時間数にして約7時間という結果となっている。
※詳しくは、「羽田新ルート|「悪天時」はどのくらい発生するのか?」参照。
北風時:502便
国交省が2月6日に公表した資料によれば、北風時に荒川沿いを北上する出発ルートを飛行したのは全部で502便(次表)。
米国4航空会社とエア・カナダの対応の違い
降下角が通常よりも急であることを理由に、デルタ航空は「実機飛行確認」での運用を見合わせていること、飛行確認初日にはエア・カナダ機が羽田での着陸を取りやめたことを東京新聞が伝えている(2月6日)。
Flightradar24のデータに基づいた筆者の調査によれば、実機飛行確認で南風時到着ルートを飛行した515便のうち外国航空会社の運航便は20便(3.9%)だった。羽田増便枠を勝ち取った米国の4航空会社のうち、ハワイアン航空以外は、実機飛行確認に参加していたことが確認できる(次表)。
ただし、デルタとユナイテッドが飛んだ2月3日は「悪天時」のルートが運用されていた日で、降下角3.45度ではない。米国4航空会社のなかでアメリカンだけが「好天時」の降下角3.45度のルートを飛んでいる(2月5日)。
エア・カナダはといえば、2月3日の「悪天時」だけでなく、「好天時」に2回も飛んでいるのである(2月7日、12日)。
実機飛行確認に伴う飛行騒音の測定結果
到着ルート(南風時、都心上空通過)
南風時に、都心上空を低空飛行して羽田空港に到着するルート近傍の騒音測定局(15か所)につき、推定値と速報値を比較した結果を次表に示す。
国交省データを元に筆者が独自推定した最大騒音レベルに対して、多くの地点で国交省の速報値が上回っていたことが確認できる。
高輪台小学校(港区)、田道小学校(目黒区)といったブランド地域の学校の騒音の大きさが際立っている。
出発ルート(北風時、荒川沿い北上)
北風時に、羽田空港を出発して荒川に沿って北上するルート近傍の騒音測定局(2か所)につき、推定値と速報値を比較した結果を次表に示す。
国交省データを元に筆者が独自推定した最大騒音レベルに対して、国交省の速報値が上回っていたことが確認できる。
騒音測定局の位置:国交省38か所+都5か所
羽田新ルートに係る騒音測定局は、国交省(38か所)と都(5か所)を合わせて42か所。
※具体的な地点については、「羽田新ルート|騒音測定局グーグルマップ」参照。
赤羽大臣「概ね想定した騒音レベルの範囲内」
赤羽大臣は2月4日、閣議後の記者会見で羽田新ルートに係る質問に対して、「概ね想定した騒音レベルの範囲内」と答えている。
国交省がこれまで公表していた騒音データをもとに筆者が独自試算した騒音レベルに対して、多くの地点で国交省の速報値が上回っているにも関わらずである。
※詳しくは、「赤羽大臣「概ね想定した騒音レベルの範囲内」」参照。
豊島区内での「落下物」目撃情報
フリージャーナリスト福場ひとみ氏による落下物の目撃情報が「現代ビジネス」のネット記事として掲載されている。
2月2日(日)17時1分、保育園児のご子息の習い事を終えた帰宅途上、豊島区の西端エリアで、機体と翼の付け根(西側)から、黒くて丸い物体がポンっと勢いよく飛び出し、落下していく様子を目撃したというのである。
福場氏の証言が正しいとすれば、日本航空JL910便(那覇⇒羽田)が豊島区の上空約1千mを通過中に氷塊を落としたというのが筆者の推論結果。
※詳しくは、「豊島区内での落下物目撃情報を可視化」参照。
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