港区議会の「20年第1回定例会」本会議一般質問(2月20日、21日)で、羽田新ルートに関して、4名の質疑応答があった。
議会中継(録画)をもとに、全文テキスト化(約4千500文字)しておいた。
※以下長文。時間のない方は「質疑応答のポイント」と「雑感」をお読みいただければと。
鈴木たかや議員(自民)
鈴木たかや議員(自民党、区議3期、立正大学卒、51歳)
鈴木:羽田新飛行経路を恒久化しないよう
次に、羽田空港の機能強化に関する区の対応について2点お聞きします。
はじめに、羽田新飛行経路を恒久化しないよう国に働きかけることについてです。
国は羽田空港における国際線を増便することに伴う新飛行経路の運用を令和2年3月29日より開始するとしています。この運用に先駆けて、南風運用は、2月2日から実際の旅客機による実機飛行確認が行われました。
以前より羽田空港新飛行経路の運用に伴い、区民からは落下物や騒音等に対する不安の声が寄せられておりましたが、この実機飛行に伴い、たくさんの声が区にも届いていると聞いております。
こうした不安視をする声は、私の元へも届いていて、落下物に対する不安、騒音に関するものの他にも、これは港区独自のものであると思いますが、沿岸部のタワーマンション上層階にお住まいの区民の方より、「あまりに距離の近さに恐怖すら感じます。国が決めたことだから諦めるしかないのですかと」いう声もあります。
飛行経路下にタワーマンションの建設を認めている自治体として、またその長として、羽田新飛行経路を恒久化しないよう国に働きかけていただきたいと考えますが、お考えをお聞かせください。
2点目は、区独自の騒音測定後の対応についてです。区では議会や区民の不安の声に寄り添うために、独自に区内の複数か所で騒音を測定し、影響の把握に努めるとして予算も計上しておりますが、私はこうした取り組みも本来は国の責任において行うべきであると考えます。
もちろん、国が行わないのであれば区民の不安や疑問に寄り添った区の対応は評価するものであると考えますが――。質問は、この騒音測定の結果、明らかに日常生活に影響及ぼすものであるという判断をした際、区はどのような対応を検討してるのかお聞かせください。
区長:新ルートに限らず、様々な運用を検討するよう強く求める
武井雅昭 港区長(無所属、4期、元港区民生活部長、早大政経学部卒、67歳)
次に、羽田空港機能強化に関する区の対応についてのお尋ねです。
まず、新飛行経路を恒久化しないよう国に働きかけることについてです。区はこれまでも国に対して、区民に丁寧な説明を行うとともに、区民の安全と生活環境を守る対策等を要請してまいりました。しかしながら、国が今月12日まで実施した実機飛行確認の際、区民からは区内上空を飛行した旅客機による騒音や落下物等に対する不安の声が寄せられております。
このため区はこれまでの要請と合わせて、今後の航空技術の進展に伴う新たな取り組みや、地方空港のさらなる活用など、新ルートに限らず羽田空港の飛行経路に係る様々な運用を検討するよう強く求めてまいります。
次に、区独自の騒音測定後の対応についてのお尋ねです。新飛行経路の運用に伴い、区としても独自に区内の複数か所で騒音測定をし、影響の把握に努めてまいります。
国に対しては騒音測定局の区内複数か所への設置を求めるとともに、区の測定結果に基づき必要な対策を検討するよう強く求めてまいります。
風見利男議員(共産)
風見利男議員(共産、区議9期、都立墨田工業高卒、75歳)
風見:羽田新飛行計画の撤回
港区上空を低空で飛行する羽田新飛行計画の撤回についてです。
2月2日から実機飛行確認が始まりました。
日曜日の午後4時半ごろ、突然、新ルートで飛びました。事前予告はなく、区民はびっくり仰天です。翌3日は午後3時過ぎから飛び始めました。控え室や自宅に、「魚籃坂を歩いているけれども、次から次と飛行機が飛んでくる」「怖くて外に出られない」「こんなにひどいとは思わなかった」「思わず外に飛び出した」等々、何本もの電話が鳴りました。
港区には電話やメールなどの抗議や問い合わせが12日現在139件届いています。
静かな空に突然爆音が響くのですから当たり前です。国交省が設置した、高輪台小学校屋上の騒音測定器には81デシベル、東京都中央卸売市場食肉市場では86デシベルを観測しました。落下物を目撃したとの話もあります。
国交省に苦情の電話をかけても、20分も待たされ、やっと通じる。港区に電話をしたら、交換台で「飛行機の問題は国交省に電話してください」と言われ、「環境課につないでほしい」というと突然電話を切られるという話もあります。
港区としての責任が問われています。区長は所信表明で新飛行経路に触れ、「区民の安全・安心と生活環境守る立場から、引き続き、国の責任において、区民の不安や疑問の払拭に向けたきめ細やかな情報提供や丁寧な説明を行うとともに、さらなる安全対策や騒音対策等に取り組むよう国に対して強く求めていく」と述べました。
今までの姿勢となんら変わりません。こんな態度を続けているから、3月29日の新ダイヤの運用を強行しようとしているのです。
いくら安全対策、騒音対策をしても、騒音、落下物、大気汚染、墜落の危険はなくなりません。区民の安全・安心と生活環境を守るというのであれば、今からでも遅くありません。誰もが求めている、港区を含む都心上空の飛行計画の撤回を国に要請すること。答弁を求めます。
区長:撤回を国に要請することは考えておりません
武井雅昭 港区長
次に、羽田空港新飛行計画の撤回を国に要請することについてのお尋ねです。
新飛行経路の運用に伴い、国が今月12日まで実施した実機飛行確認の際に、区民からは区内上空を飛行した旅客機による騒音や落下物等に対する不安の声が寄せられております。
区は現在、区民の皆さんから寄せられた声を国に伝えるとともに、国として真摯に受け止め区民の不安や疑問の払拭に向けたきめ細やかな情報提供や丁寧な説明を行うよう求めております。区は計画の撤回を国に要請することは考えておりませんが、引き続きさらなる安全対策や騒音対策等に積極的に取り組むよう国に対して強く求めてまいります。
うかい雅彦議員(自民)
うかい雅彦議員(自民党、区議4期、専修大学経済学部卒、61歳)
うかい:落下物、飛行停止などのペナルティを国が課すことも考えるべき
次に、羽田空港機能強化に伴う落下物防止対策について伺います。
落下事故防止に向けた取り組みについてでありますが、実機を使った試験飛行が始まり、家の窓から見えるその機体のあまりの大きさには違和感を感じましたし、落下事故についてはより多くの方が心配をされたと感じています。
今回の試験飛行を行ったことで、区民からの新たな声も上がっており、国土交通省はより丁寧に説明を重ねるべきものと考えます。
また、懸念される落下事故については、事故が起きた場合には航空会社からの補償がされるとのことですが、飛行ルートが安全性をより高めるためには、落下物を落としただけでも罰金や飛行停止などのペナルティを国が課すことも考えるべきであると思いますが、いかがでしょうか。区のお考えをお伺いいたします。
区長:国に対して、航空会社へのさらなる指導の強化など
武井雅昭 港区長
次に、羽田空港機能強化に伴う落下物防止対策についてのお尋ねです。
国は昨年度、新たに落下物防止対策基準を策定し、国内外の航空会社に対して改良型固定部品への交換など基準に適合する落下物防止対策の実施を義務づけました。
落下物が生じた場合には、その原因者に対し航空機の整備や落下物防止対策の処置状況を踏まえ、事業認可の取り消しを含めた行政処分を行うとしております。
区は落下物事故はあってはならないと考えており、国に対して落下物事故に対する罰則を含めた航空会社へのさらなる指導の強化など、より実効性の高い落下物防止対策に積極的に取り組むよう強く求めてまいります。
玉木まこと議員(街づくりミナト)
玉木まこと議員(街づくりミナト、区議2期、武蔵野美術大学卒、36歳)
玉木:区ができる騒音対策への支援
はじめに、羽田空港機能強化に対して、区ができる騒音対策への支援について質問します。
ほかの議員からも多数指摘があった通り、今月羽田空港機能強化に伴う南風時の飛行検査が実施されました。
この期間、私のもとにも区民から、「飛行検査で初めて計画を知った」「どうにか計画を止められないか」「予想よりも近くを飛行していて驚いた」「自宅ではうるさくて仕事にならない」など多数の意見・要望が寄せられました。
武井区長はこれまで、一貫して「羽田空港機能強化は国の責任において実施されるもの」と説明されてきました。今回の飛行検査で明らかになった通り、新ルートが運用された場合、多くの区民が騒音に悩まされると予想されます。
国が国の責任において実施する騒音対策は、羽田空港に隣接する一部の地域と用途が限られた施設のみです。ほとんどの港区民に対する国の支援はありません。
国の責任による騒音対策が期待できない以上、例えば住宅のサッシの騒音対策工事の費用助成など、区ができる支援を検討すべきと考えますが、武井区長のお考えをお聞かせください。
区長:適切な対応を検討するよう強く求める
武井雅昭 港区長
最初に、羽田空港機能強化に伴う騒音対策への支援についてのお尋ねです。
国が今月12日まで実施した実機飛行確認の際に、区民からは、区内上空を飛行した旅客機による騒音や落下物等に対する不安の声が寄せられております。
現在区内で国の騒音防止工事助成の対象となる施設は、一定の基準値を超える保育所等の施設に限られております。国に対しては、騒音測定局の区内複数か所への設置等や、区による測定結果も合わせて、区内の騒音状況の実態を把握し、適切な対応を検討するよう強く求めてまいります。
雑感
鈴木たかや議員(自民)
羽田新ルートを推進している自民党議員としては、「羽田新飛行経路を恒久化しないよう国に働きかけること」を訴えるのが精一杯か。
風見利男議員(共産)
共産党議員と区長の質疑応答は毎回、「撤回を求めるべき」「撤回を求める考えはございません」という、お馴染みのコントが演じられている。
- 19年第4回定例会(11月27日):熊田ちづ子議員「低空飛行計画の見直しを国に求めるべき」
- 19年第3回定例会(9月12日):福島宏子議員「新ルートの運用開始決定を撤回するよう国に求める」
- 19年第2回定例会(6月20日):福島宏子議員「計画撤回を求めること、港区として試験飛行の実施を国に求めること」
- 19年第1回定例会(2月14日):風見利男議員「計画の徹底を申し入れること」
うかい雅彦議員(自民)
落下物を落としただけでも罰金や飛行停止などのペナルティを国が課すことを提案。あくまでも羽田新ルート運用開始が前提というスタンス。
玉木まこと議員(街づくりミナト)
区により騒音対策費用を助成することを提案。あくまでも羽田新ルート運用開始が前提というスタンス。
武井区長
濱野健 品川区長と違って、自らが答弁に立っていることだけは評価できる。国に責任を丸投げするスタンスはブレていない。
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