都議会の「20年第1回定例会」本会議の代表質問(2月27日)で和泉なおみ議員(共産党)から、一般質問(2月28日)で山内れい子議員(無所属(都議会生活者ネットワーク))と伊藤こういち議員(公明党)から、羽田新ルートに係る質疑応答があった。
録画映像をもとに、全文テキスト化(約6千文字)しておいた。
※以下長文。時間のない方は「質疑応答のポイント」と「雑感」をお読みいただければと。
※議事録速報版により、伊藤こういち議員(公明)も羽田問題を取り上げていたことが判明したので追記した(3月10日)。
和泉なおみ議員(共産)
和泉なおみ 議員(共産、都議2期、宮城県第三女子高卒、社会保険労務士、57歳)
和泉:国に羽田新飛行ルートを撤回することを強く求めるべき
第2に、羽田新飛行ルートの中止です。
都民の安全を顧みず、羽田新飛行ルートを推進している国の責任は重大です。
同時に、都民の命と健康を守ることを使命とする小池知事が、国際競争力の向上や東京五輪に資するとして、国の決定を歓迎し、国と一体となって進めていることに多くの都民が驚き、呆れ、怒っています。
小池知事の責任も極めて重大です。羽田新飛行ルートは、騒音や航空機からの落下物など、命や健康に重大な危険性があることが指摘されているにも関わらず、国は1月末から実際に乗客を乗せた試験飛行を強行しました。
直下の地域住民からは、「ボールを投げたら当たりそうなほど飛行機が低くて恐怖感を覚えた」「次から次へと飛行機が真上を通過して、これが毎日続くと思うと耐えられない」「子供の健康に影響が出ないか不安」「音楽関係の仕事をしているが、騒音がうるさくて仕事にならない」など、試験飛行の段階からすでに住民の暮らしに大きな影響を与えています。
知事はこうした実態と都民の声をどう受け止めているのですか。国は、騒音を減らすために着陸の降下角度をより急角度にするとしています。都はこの降下角度変更の理由をどのように認識しているのですか。
パイロットや専門家などは、これによりジェットコースターのような着陸となり、非常に危険だと指摘しています。また、急角度での着陸は尻餅事故やオーバーランなど、事故の危険性が高まり、世界で最も難しい空港になると警鐘を鳴らしています。
実際にアメリカのデルタ航空やカナダのエア・カナダは安全性などの観点から、羽田新ルートでの着陸を見送ったり、成田空港に着陸を変更しました。
これでも知事は羽田新飛行ルートの危険性についての認識を持っていないのですか。
航空機からの部品欠落は国の調査でも2年間で974件となり、年間で平均すれば毎日のように発生しています。また、直近1年間のほうが増加しているという衝撃的な事実が明らかになりました。
航空機からの落下物は避けることはできません。知事、重大事故が起こってからでは遅いのです。国に羽田新飛行ルートを撤回することを強く求めるべきです。知事の答弁を求めます。
知事:都民の理解がさらに深まりますように、丁寧な情報提供や・・・
小池百合子 都知事(1期、カイロ大卒、67歳)
羽田の新飛行経路についてのご質問でございます。
わが国の国際競争力の向上や東京2020大会の円滑な実施のため、羽田空港の機能強化は極めて重要でございます。
国が実施をしました実機飛行確認の期間中に都民の方から飛行機の圧迫感や騒音などに関します様々なご意見がありましたことは承知をいたしております。
これまで都は国に対しまして、丁寧な情報提供、騒音影響の軽減、安全管理の徹底を求めてまいりました。それを踏まえまして、国は6期にわたる住民説明会の実施や低騒音機の導入促進を図るための着陸料の見直し、航空機のチェック体制の強化、航空会社への世界的に類を見ない落下物防止対策の義務付けなど、様々な対策を実施をしてまいりました。
都といたしましては、引き続き国に対しまして、今回の実機飛行確認の結果も踏まえまして、都民の理解がさらに深まりますように、丁寧な情報提供や騒音・安全対策の着実な実施を求めてまいります。
技監:都としては引き続き国に対して、安全対策の着実な実施を・・・
佐藤伸朗 東京都技監(東大工学部都市工学科卒、60歳 )
まず、羽田新飛行経路における着陸時の進入角度引き上げについてでございます。
国からは、「騒音対策の1つとして、着陸時の進入角度を3度から3.5度に引き上げ、騒音影響の軽減を図ることをした」と聞いております。
また、国は、「この進入角度の引き上げについて、国際民間航空機関が定める国際的な安全基準に則ったものであり、安全性は確保されるもの」としております。
次に、羽田新飛行経路の運航についてでございますが、「今回の実機飛行確認時において、パイロットに対する周知など、新飛行経路の運用に向けた事前準備が整っていなかった外国航空会社があった」と国から聞いております。このため、国は、「来月下旬からの新飛行経路の確実な運用を行うために、羽田空港に乗り入れるすべての外国航空会社に対し、新飛行経路の運航に関する準備状況について確認を行うとともに、運航上の留意点について改めて周知徹底して、安全を図っていく」としております。
都としては、引き続き国に対し安全管理の徹底を求めてまいります。
次に、羽田新飛行経路の実施についてでございますが、東京の国際競争力の向上や東京2020大会の円滑な実施のため、羽田空港の機能強化は極めて重要でございます。
その実現に向けて、もとより都民の安全の確保が重要であり、都は国に対して丁寧な情報提供や騒音影響の軽減と合わせて安全管理の徹底を求めてまいりました。
これを受けて国は、航空機のチェック体制の強化、航空会社への世界的に類を見ない落下物対策の義務づけなどの対策を実施してまいりました。加えて、来月下旬からの新飛行経路の運用開始にあたり、羽田空港に乗り入れるすべての外国航空会社に対して、運航中の留意点について改めて周知徹底し、安全を図っていくとしております。都としては引き続き国に対して、安全対策の着実な実施を求めてまいります。
和泉:知事、「危険性の認識があるか、ないか」
羽田空港新ルート問題です。これは、知事への再質問です。
知事がきちんと答えてください。
知事は、「羽田新飛行ルートの危険性についての認識を持っていないのですか」と質問しましたが、知事は答弁しませんでした。知事、「危険性の認識があるか、ないか」ということについて、なぜ知事が自分で答弁できないのですか。知事、お答えください。
知事:引き続き国に対しましては丁寧な情報提供、・・・
再質問にお答えいたします。
まず、羽田空港の機能強化にかかります進入角度や落下物対策について、でございますけれども、こちら先ほど都技監がお答えした通りでございます。なお、都といたしまして、先ほどお答えした通り、引き続き国に対しましては丁寧な情報提供、騒音・安全対策の着実な実施を求めているということであります。
山内れい子議員(無所属(生活者ネット))
山内れい子 議員(生活者ネットワーク、都議3期、上智大学文学部卒、元フリーライター、60歳)
山内:新ルートについて計画の見直しを改めて求める
最後に、羽田新飛行ルートについてです。
都心の低空を通る新ルートは反対する多くの声を無視して、3月29日から運用されます。
先日、実機飛行が行われましたが、これまで関心のなかった人もそれに気付き、間近に飛ぶ飛行機の巨体に驚き、騒音の凄まじさに耳を塞ぎました。命の危機を感じた住民の間に不安が高まり、日に日に中止を求める声が広がっています。
地域住民の理解を得るためには、関係自治体との意見交換の場は欠かせません。各自治体から意見・要望が寄せられていると思いますが、その対応についてお伺いいたします。
また、関係区市連絡会の開催状況についても伺います。
住民が心配しているのは騒音や落下物だけでなく、都心を急降下するのは技術的に難しく、墜落事故が起こるのではないかということです。
住民の理解が得られない以上、新ルートについて計画の見直しを改めて求めるものですが、都の見解をお伺いいたします。
技監:都民の理解がさらに深まるよう、引き続き国に対し、・・・
佐藤伸朗 東京都技監
まず、羽田空港の機能強化に関する意見についてでございますが、都および関係自治体は機能強化に関する連絡会を設け、主に部長級の幹事会を活用して、率直な意見交換を重ねてまいりました。
そこでの意見も踏まえて、国に対し丁寧な情報提供や騒音影響の軽減、安全管理の徹底を要請してきており、国は5期にわたる住民説明会の実施や、低騒音機の導入促進を図るための着陸料の見直し、航空会社への世界的に類を見ない落下物防止対策の義務付けなど、総合的な対策を実施してまいりました。
昨年の7月の連絡会で、改めて関係自治体の意見を取りまとめて国に提示し、その結果、国は6期目の住民説明会の開催や着陸高度のさらなる引き上げなど、より踏み込んだ対策を実施いたしました。引き続き、関係自治体と連携し、丁寧な情報提供や対策の着実な実施を求めてまいります。
次に、羽田空港の新飛行経路についてでございます。
東京の国際競争力の向上や東京2020大会の円滑な実施のため、羽田空港の機能強化は極めて重要でございます。これまでも都は、国に対して丁寧な情報提供や騒音影響の軽減、安全管理の徹底を求めてきており、それを踏まえて国は様々な対策を実施してまいりました。
着陸時の進入角度を3度から3.5度に引き上げたことも騒音対策の1つであり、国は「国際民間航空機関が定める国際的な安全基準に則っており、安全性が確保されもの」としております。
都としては、都民の理解がさらに深まるよう、引き続き国に対し、取り組みの着実な実施を求めてまいります。
伊藤こういち議員(公明)※追記
伊藤こういち 議員(公明、都議4期、関東短期大学卒、元品川区役所児童課主査、58歳)
最後に、羽田空港機能強化に伴う飛行機の増便と都民生活への影響について質問します。
私の地元品川区に影響する新飛行ルートは、南風時の午後3時から7時までの間の3時間にわたり、A滑走路ルートは4分に1機、C滑走路ルートは2分に1機が飛行します。
また、着陸直前の飛行高度は、大井町で約300メートル、大井競馬場で約200メートルとなり、人口密集市街地の真上を通過します。
先日は、来月3月29日から始まる新飛行ルートの本格運用へ向けて、北風、南風のそれぞれ7日間にわたって、実際に乗客、乗員を乗せた旅客機による実機飛行確認が行われました。
その間、住民からは、まず騒音について、大型機が通過したり、中高層のビルの谷間で音が反響するときに特に大きく聞こえ、事前の説明や想像していたよりもかなりうるさかったとの声が多く寄せられました。私も現場で直接騒音を測定してみましたが、最大騒音レベルが80デシベルを超えることもありました。
さらに、飛行機の通過が余りにも頻繁過ぎることと、低空飛行による機影の大きさに恐怖を感じるなどの声も寄せられました。
問1:今後も引き続き、騒音測定結果をわかりやすく公表していくべき
そこで、実機飛行確認の期間、都は独自に騒音測定を行いましたが、その最大騒音レベルを明らかにするとともに、今後も引き続き、実態に見合った騒音調査を実施し、測定結果をわかりやすく公表していくべきです。見解を求めます。
問2:コールセンターの周知と体制の強化を求めるべき
また、住民の意見、要望を受けとめるはずの国の電話相談コールセンターの存在を知らない方が多くおり、さらには何度かけてもつながらないという方からの苦情が相次ぎました。
そこで、都は国に対し、コールセンターの周知と体制の強化を求めるべきです。見解を求めます。
問3:騒音についての住民の負担軽減を国に強く求めるべき
そして、都は、都民から寄せられた意見、要望を踏まえ、大型機は都心上空を飛行する対象から外すなど、騒音についての住民の負担軽減を国に強く求めるべきです。見解を求めます。
問4:落下物事故、万全な対策を国に強く求めるべき
さらに住民からは、飛行機からの落下物事故についても心配の声が上がっています。
私は、一昨年の予算特別委員会でもこのことを取り上げましたが、このたびの実機飛行確認において、部品欠落や落下物事故の状況はどうだったのか伺うとともに、絶対に事故を起こしてはならないという観点から、その万全な対策を国に強く求めるべきです。見解を求めます。
問5:人口密集地域の上空を低空で飛行しない航空システムの構築を強く求め
東京2020大会まであと147日と迫りました。大会の成功は世界中の人々の願いです。
私は、今回の飛行ルートは、東京2020大会を成功させるためのルートとし、将来にわたって固定化するのではなく、今後は、首都圏近郊の地方空港を交通ネットワークで結び、東京に集中する航空需要を広域的に対応する方策を検討すべきと提案します。
そして、都心の人口密集地域の上空を低空で飛行しない航空システムの構築を強く求め、質問を終わります。
答1:(なし)
佐藤伸朗 東京都技監
答2:コールセンターの周知・充実、求めてまいります。
次に、羽田空港の機能強化に関する問い合わせ先についてでございますが、これまでも都は、国に丁寧な情報提供を要請してまいりました。
国は、機能強化に関する問い合わせ窓口として、平成27年7月からコールセンターを設置し、ホームページなどにより、その連絡先の周知を図っております。
今回、実機飛行確認に合わせて、国はコールセンターの機能を拡充したものの、14日間に合計約700件、特に多い日に1日当たり約100件の問い合わせを受けており、電話がつながりにくいなど、さまざまな声があったと聞いております。
都といたしましては、来月下旬からの運用開始に向けまして、国に対し、コールセンターの幅広い周知やさらなる充実を図るなど、都民へのより丁寧な情報提供の徹底を求めてまいります。
答3:必要な対策を検討するよう要請
次に、新飛行経路における騒音の軽減についてでございます。
騒音対策として、国は、機体がより小さく、低騒音の機材への転換が進むよう、本年1月から着陸料のさらなる見直しを行うなど、運用開始に向けてさまざまな対策を実施しております。
国は、今回の実機飛行確認に合わせて航空機の騒音測定を行っており、期間中に都内16か所の測定地点で、大型機の最大騒音レベルが、南風時で53から81デシベルを記録したと公表しており、現在、その測定結果を精査しているところでございます。
都といたしましては、引き続き国に対し、こうした騒音対策の着実な実施を求めるとともに、実機飛行確認時や運用開始後の騒音発生状況等を踏まえ、必要な対策を検討するよう要請してまいります。
答4:安全対策の着実な実施を、運用開始に向けてより強く求めてまいります
最後に、航空機からの落下物等についてでございます。
これまで都の要請を受けて、国は、落下物対策について、航空機のチェック体制の強化などに加え、世界的に類を見ない落下物防止対策の基準を定め、国内外の航空会社に対して義務づけるなど、総合的に対策を実施してまいりました。さらに、この基準について、部品の固定方法の改良を追加する見直しを行うなど、適宜強化を図っております。
こうした中で実施された今回の実機飛行確認では、落下物は現時点で確認されておらず、部品欠落の有無については国が精査中でございます。
都としては、国に対し、安全対策の着実な実施を、運用開始に向けてより強く求めてまいります。
答5:(なし)
雑感
実際に乗客を乗せた旅客機を使った飛行試験(実機飛行確認)という新たなトッピクスが加わったものの、議員からの撤回や見直し求める訴えに対して、「引き続き丁寧な情報提供」を繰り返す小池都知事と東京都技監。
和泉なおみ議員(共産)と都知事との議論は全くかみ合っていないが、羽田新ルート問題が取り上げられただけ、まだましだとしよう。
今回の質問に立った都議29名(代表質問5名、一般質問24名)のうち、羽田新ルートに係る質問をしたのは和泉なおみ議員(共産)と山内れい子議員(生活者ネット)の2名だけなのである。
※もし2名以外にも「その他」のなかで羽田新ルート問題を取り上げていたとしても、そのような軽い取り扱いでは、外部からは容易に認識できない。
「令和2年第1回定例会 質問項目」を見る限り、都民ファーストは13名(質問時間218分)も登壇しながら(次図)、誰も羽田新ルートを取り上げていない。完全に自分ファーストな議員集団となっている。
【追記3月10日】公明都議、驚きの提案
議事録速報版により、伊藤こういち議員(公明)も羽田問題を取り上げていたことが判明した。
事前の質問項目では下記とされていた。
- 災害対策の強化について
- 教育について
- 安全・安心の取組について
ところが、当日は「3 安全・安心の取組について」が「羽田空港の機能強化について」に変わっていた。
なぜ、最初から「羽田・・・」としなかったのか?
それにしても、驚いたのは伊藤議員の次の踏み込んだ発言。
私は、今回の飛行ルートは、東京2020大会を成功させるためのルートとし、将来にわたって固定化するのではなく、今後は、首都圏近郊の地方空港を交通ネットワークで結び、東京に集中する航空需要を広域的に対応する方策を検討すべきと提案します。
そして、都心の人口密集地域の上空を低空で飛行しない航空システムの構築を強く求め、質問を終わります。
羽田新ルートを推進する公明党のスタンスに反して、羽田新ルートを固定化しないこと、都心上空を低空飛行しないシステムの構築を求めたのである。
伊藤議員は都議会公明党から除名されないのかと思って、同議員の選挙区を確認して腑に落ちた。品川選挙区の都議だったのである。
品川区議会は昨年9月20日、「品川上空を飛行する羽田新飛行ルート計画決定に関する決議」として、「ルートの再考および固定化を避ける取り組みを示し、実行に移すことを強く求める」ことを全会一致で可決している。
品川選出の都議だから、都議会で羽田新ルートの固定化に反対したことを選挙区民にはアピールしておきたいが、広く都民には知らしめたくない。だから、事前の質問項目は「羽田空港の機能強化について」ではなく、「安全・安心の取組について」と目立たなくさせていた、思わずそんな想像が働いてしまった。
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