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羽田新ルート|国交省が描く、したたかな戦略…

来年1月以降の試験飛行や3月末の新ダイヤ運用開始で、多くの都民は初めて巨大な旅客機が頭上を飛ぶことを知ることになるのではないか。そして、なぜこんなことになっているのと憤慨するに違いない、と筆者は想像していたのだが。

国交省はもっとしたたかな戦略を描いているのではないのかという話。


もくじ

国交省のステルス作戦が実を結ぶ

東京都は7月30日に「羽田空港の機能強化に関する都及び関係区市連絡会(第1回)」を開催し、羽田新ルート計画を容認する「関係市区の意見概要案」をオーソライズ。

その8日後、8月7日に開催された国の協議会(首都圏空港機能強化の具体化に向けた協議会)で、国交省の和田浩一航空局長は、都などの理解が得られたことを強調したうえで「来年3月の運用開始について今後は国交省の責任において判断したい」と宣言。

そして翌8日に、石井国土交通大臣は閣議の後の記者会見で、「関係自治体からは羽田空港の機能強化の必要性について理解が得られた。引き続き地元の要望を受け止め丁寧に対応していきたい」と述べ、来年3月29日の「夏ダイヤ」から都心上空を通過する新たなルートの運用を開始することを明らかにした。同日、国交省は間髪を入れずホームページに増便の決定を掲載(2020年3月29日より新飛行経路の運用を開始し羽田空港において国際線を増便します)。

同日小池都知事も、わざわざ知事コメントを発表。

東京都知事 小池百合子

(前略)国に対しては、来年春からの導入に向け、必要な手続を着実に進めるとともに、都民の理解がさらに深まるよう、引き続き、丁寧な情報提供や騒音・安全対策を着実に実施するよう求めており、都として今後とも積極的に協力してまいります。


7月30日の都の連絡会開催から、8月8日の石井大臣の羽田新ルート運用開始宣言まで、たったの10日間。

市民団体や衆院議員から国交大臣への見直し要請が活発化するなか、品川区や渋谷区の議会から反対の決議など、都民の反対の声などまったくなかったかのように、来年3月29日の羽田新ルート運用開始が決まってしまった

  • 7月30日:都の連絡会(関係市区の意見概要案オーソライズ)
  • 8月7日:国の協議会(都などの理解が得られた)
  • 8月8日:石井国交大臣(来年3月29日運用開始宣言)
  • 同日:小池都知事コメント(今後とも積極的に協力)

この気持ち悪いほどのスピーディーな流れはなんなのか。国交省がこれまで地道に進めてきたステルス作戦(羽田新ルート問題を地域住民に極力知らしめない)が一気に実を結んだということなのだろう。

国交省が描く、もっとしたたかな戦略

では、このあとの展開はどうなるのか?

国交省の目論見通りに進めば、増便枠の割り当て作業が進められる一方で、公聴会、試験飛行と続き、来年3月29日に新ダイヤの運用開始を迎える。

来年1月以降の試験飛行や3月末の新ダイヤ運用開始で、多くの都民は初めて巨大な旅客機が頭上を飛ぶことを知ることになるのではないか。そして、なぜこんなことになっているのかと憤慨するに違いない。

と筆者は想像していたのだが、国交省はもっとしたたかな戦略を描いているのではないかと最近考えるようになった。

つまりこういうことだ。

例年、南風が吹き始めるのは4月から(次図)

月別の「最多風向」
羽田新ルート|都心上空を飛行する日数が多い時期はいつか」より

 

だから1月以降に試験飛行を実施するにしても、新ルートが運用される南風が吹く日は限られる。したがって、住民が試験飛行で大型旅客機を現認する機会は少ない。

さらに3月29日から新ルートの運用がスタートしても、南風が吹かないので、実質的には新ルートを飛行機が飛ぶ頻度は限られる

飛行機の騒音問題が顕在化しないので、年度末前後に新築マンションの完売を目指す不動産会社にはありがたい状況が続く国交省がマンション販売で羽田新ルートを重説に含めるか否か曖昧にし、寝た子を起こさない状態にしたままなのも頷ける。


南風が本格的に吹くのは5月から8月だから、大型旅客機が住民の頭上を頻繁に飛び始める頃には、世の中の話題は五輪一色となりマスメディは羽田新ルートの問題を取り上げない。

そして9月になり、南風が吹かなくなり大型旅客機が住民の頭上を飛ぶ頻度が少なくなる。そのころには住民は騒音に慣らされてしまっている。

これが国交省が描くしたたかな戦略(あくまでも筆者の勝手な想像だが)。

国交省の戦略には「10万人クラウド訴訟」で対抗…

筆者の独自調査によれば、22区で羽田新ルートの影響を受ける住民は100万人を超える。このうちの1%、1万人規模の住民が差し止め訴訟を起こせば、さすがに政府もいったん立ち止まざるを得なくなるのではないか


渋谷区を相手取った宮下公園の定期借地権問題の行政訴訟を担当されている弁護士から次のような具体的なツイートが流れてきた。

1万人の原告が3千円ずつ負担してくれれば3000万円集まりますから、私でも引き受けられますね、弁護士費用のほかに集団訴訟の専従アルバイト300万円×3年分くらい見込んで。

yasaka motonori@siinokilaw 午後8:30-8月7日

1万人の原告1人3千円だけでなく、クラウドファンディングを活用すれば、原告になることを躊躇する人からも資金が集められる。目標は10万人規模のクラウド訴訟である。

クラウド訴訟の主眼は、時間をかけて裁判で戦うことではなく、10万人規模の市民が羽田新ルートに反対の声を上げていることを可視化することで、年内(?)の衆院選を控える政権に見直しを迫ること。
つまり、戦わずして勝つこと(孫子の兵法!)

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