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羽田新ルート|都心上空を飛行する日数が多い時期はいつか

羽田新ルート周辺で販売されている新築マンションの現場では、「新ルートの対象となる時期は限定的」という意外なセールストークも使われているらしい。

飛行機が都心上空を飛ぶのは南風時。その南風が多く吹く時期はいつなのか?


もくじ

羽田新ルート周辺の新築マンションでのセールストーク

羽田新ルート周辺で販売されている新築マンションでは、営業員はどのようなセールストークを繰り出しているのだろうか?

「遮音性能の高いサッシを採用しているから窓を閉めれば静かだ」とか、「昼間は会社で働いているから(家にいないから)問題ない」とかいったセールストークは容易に想像できる。

でも、営業現場では想像を超える説明がなされていたのだ。まずは、週刊東洋経済の担当者の現場突撃取材記事を読んでみてほしい。

本誌は、水平距離500メートル圏内で販売中の新築物件をいくつか訪れた。1件目は大井町駅付近の集合住宅。物件は8月に販売を開始したばかりだが、販売戸数約100戸のうち7割が契約済みだという。騒音を35デシベル抑制する最新型の複層ガラスを採用しているため、窓を閉めれば静かだと営業員は説明した。新ルートの対象となる時期が限定的だとも強調した。
2件目は品川シーサイド駅に近い高層住宅だ。ここも売れ行きは好調だという。1件目の物件と同じく遮音ガラスを採用していること、音の感じ方は人それぞれで、住んでみないと実際にはわからないことを営業員は説明した。

「都心を襲う鉄道車内級の騒音」週刊東洋経済18年12月8日号(P28)より

「音の感じ方は人それぞれで、住んでみないと実際にはわからない」って、住んでから騒音の大きさに気が付いても手遅れでしょ!

「新ルートの対象となる時期が限定的だとも強調」とは、どういう意味なのか?

飛行機が当該マンション周辺を飛ぶのは南風時。南風が吹くのは主に夏だから、実質的には夏しか飛行機は通らないというような意味らしい。

国交省のFAQ冊子によれば、都心上空を通過する南風時の着陸経路が運用されるのは、「運用全体の約4割(年間平均)」とされている(次図)。

南風運用の割合
FAQ冊子v4.1「環境に対する影響を軽減する方策」(P59)より

 

南風が「運用全体の約4割(年間平均)」ということは、平均でなければ時期的にはいつが多いのか?

4~8月に多い「南風」

まず、気象庁がHPで公開している「過去の気象データ・ダウンロード」を使って月別の風向を確認してみよう。

東京管区気象台(大手町)で過去5年間(13~17年)に観測された月別の「最多風向(風向別回数のうち回数の最も多い風向)」をまとめたのが次表。

4月から8月にかけて南風(南南東を含む)が多いことが分かる。

月別の「最多風向」

「新ルートの対象となる時期が限定的」というセールストークは、あながち間違いともいえなさそうだ。

 

5か月(4~8月)が年間に占める割合は42%(=5÷12)。国交省が言うところの「約4割」とも一致している。

では、月別ではなく、実際に運用される時間帯(15~19時)に着目して、さらに詳しく調べてみよう。 

4~8月、約50~60%の割合で都心上空を飛ぶ

東京管区気象台(大手町)で過去5年間(13~17年)に観測された15時から17時の時刻別の「南風」(南南東・南南西を含む)の割合の平均値をまとめたのが次図。

 4〜8月は、約50~60%の割合で「南風」が吹くことが確認できる。つまり、 4〜8月は、約50~60%の割合で都心上空を飛行機が飛ぶということになる。逆に冬期(12〜2月)は、約20〜30%の割合しか「南風」が吹かない。

東京の時刻別「南風」の割合(13~17年平均)

※「南風」の範囲には、南南東・南南西を含むとして計算した(次図)。

南風の範囲

 

「新ルートの対象となる時期は限定的」というセールストーク。

4~8月は約50~60%の割合で都心上空を飛ぶので、窓を閉め切ってエアコン環境で飛行騒音をやり過ごすことができるのは猛暑の時期限定ということになる。残念ながら、4月、5月に窓を開け放して飛行騒音なしで爽快な風を感じることはできない。

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2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
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