国交省は7月30日に開催された都・関係区市連絡会で、騒音対策として都心上空での飛行高度の引き上げ策を提示。
航空機事故のリスクを高めるにもかかわらず、騒音影響の低減を図る一環として「追加対策」を打ち出した国交省の愚策……。
国交省の騒音対策としての引き上げ案
東京都が7月30日に開催した「羽田空港の機能強化に関する都及び関係区市連絡会(第1回)」で、国交省は騒音対策として都心上空での飛行高度の引き上げ策を提示した。
南風好天時の新到着経路の降下角を3°から3.5°に出来る限り引き上げることによって、飛行高度の引き上げ、騒音影響の低減を図る。
「(資料2)羽田空港機能強化に向けた追加対策」P2より
※ 気象条件等により、上図点線のような飛行となる場合もある。
騒音低減効果の試算方法
この飛行高度の引き上げによって、騒音低減効果がどの程度得られるのか試算してみる。
国交省の「FAQ冊子v5.1.2」P51に、「着陸時(経路直下)」の高度別・機種別の最大騒音レベルが掲載されている(次表)。
上表にはすべての飛行高度の騒音レベルが掲載されているわけではない。そこで、騒音レベルが不明な飛行高度については、上表データをもとに直線補間で求めた。
たとえば、高度3,400ft(見直し案の新宿駅付近)の騒音レベルは上表に出ていない。そこで、3,000ft(70dB)と3,500ft(69dB)をもとに、次式により直線補間し、高度3,400ftの騒音レベルを69.2dBと求めたのである。
- (69-70)/(3500-3000)×(3400-3000)+70=69.2
このようにして計算した、大型機(777-300)の着陸時経路直下の「飛行高度と地上での騒音レベルとの関係」を可視化したのが次図。
高度引き上げによる騒音低減効果、ほとんどない
上記で計算したデータをもとに、「現行経路案」と「見直し案」との騒音レベルの比較を次表に示す。
飛行高度を引き上げる見直し案を採用しても、1dB程度しか騒音低減効果が得られないことが分かった。つまり騒音低減効果は、ほとんどないのである。
国交省が今回提示した騒音低減策が航空機事故のリスクを高める可能性があることは、飛行経験が豊富な杉江弘氏(元日本航空機長)が指摘している(羽田新ルート|国交省の高度引き上げ策、元日本航空機長の指摘)。
航空機事故のリスクを高めるにもかかわらず、騒音影響の低減を図る一環として「追加対策」を打ち出した国交省の愚策。もっと知られていい不都合な真実である。