ブログ読者から「中古マンション購入の注意点(あるいは落とし穴)」を教えてほしいというメールを頂戴したので、以下に整理しておいた。
(※19年8月10日この記事を更新)
- 1.とにかく現地をよく見ること
- 2.マンション管理組合から情報を入手する
- 3.いつごろ建設されたマンションがお買い得か?
- 4.中古マンションの相場を知る方法
- 5.特定の中古マンションの時価をピンポイントで知る方法
- 6.中古マンション購入の落とし穴
- 7.最近浮上している新たな問題
1.とにかく現地をよく見ること
中古マンションのメリットは、新築マンションよりも割安なことのほか、「現物を見て選べる」「即入居できる」「お隣さんを確認できる」などがある。
中古マンション購入の注意点として、いの一番に挙げたいのは「現地をよく見ること」。建築技術に明るくない人にとって、図面から汲み取れる情報には限りがあるからだ。
現地を見ることで、部屋の広さや室内外の劣化状況、外部からの騒音・振動の影響といった物理的な状況を把握することができる。
そしてもう一つ、中古マンションだからできることとして、上下左右の住民の人となりも確認しておきたい。トラブルを起こしそうな変人は住んでいないかなど。管理人や住民にヒアリングしてみるのだ。
2.マンション管理組合から情報を入手する
「マンションは管理を買え!」と言われるように、マンションの管理状況を把握することは、マンションの快適な居住環境を維持するためには欠かせない視点だ。
具体的にどうすればいいのか?
少々古くなるが、建築関係者向けの実務的月刊誌「建築知識」2011年3月号に、中古マンション選びの際に、「マンション管理組合から入手すべき情報」(99頁)が掲載されているので以下に抜粋しておこう。
(1)管理規約
- 国土交通省の『マンション標準管理規約』に沿った内容であるかどうかを確認
- 管理費と修繕積立金が明確に区分されているかを確認
- 使用細則でリフォームエ事の制約を確認
(2)長期修繕計画
- 長期修繕計画があるかどうかをまず確認
- 計画の中身については、20年程度の計画があるか。内容と金額は明確かを確認(計画内容は、国土交通省の『長期修繕計画作成ガイドライン』が参考になる)
(3)修繕の実績
- 築12年程度以上の物件では、大規模修繕が実施されているか、近いうちに実施の計画があるかを確認
(4)修繕積立金
- 金額の妥当性は、物件内容による個別性が高い
⇒「将来困るのはあなた!修繕積立金が激安な新築マンション」参照。(5)積立金の滞納率
- 滞納率の高いマンションはNG
- 滞納に対する管理組合の取り組み姿勢は議事録で確認できる場合もある。放置している場合は問題ありと判断
(6)管理組合の議事録
- 理事会や総会の記録があるかどうかをまず確認。最近1、2年の議事録がない場合は、管理組合が機能していない可能性もある
3.いつごろ建設されたマンションがお買い得か?
不動産経済研究所が定期的に発表しているデータをもとに東京23区の新築マンションの「平均価格」と「平均専有面積」の関係を可視化してみると(次図)、最も安くかつ広かったのが2002年であったことが分かる。
「過去18年間の「首都圏新築マンション市場動向」を可視化」より
首都圏全体においても、この傾向は変わらない(次図)。
(同上)
2002年に竣工した首都圏のマンションは広くて安かった。
中古マンション市場は新築マンションよりも市場原理が働くから、優良物件はそれなりに高くなるし、不良物件は安くなる。
だから、この”2002年製の中古マンション”は、中古市場では特に安くなるわけではない。
ところが、近年のように設計・建設時に無理なコストダウンを迫られていないので、階高(天井高)が高かったり、仕上げなど仕様のグレードが高かったりしても、必ずしも価格に反映されていない可能性がある。
ゆえに”2002年製の中古マンション”はお買い得な場合があると考えられる(近畿圏・地中部圏にいても同様な傾向があると予想されるが検証してはいない)。
4.中古マンションの相場を知る方法
国土交通大臣指定の不動産流通機構が運営・管理している「不動産取引情報提供サイト」で、全国の各地の中古マンションと中古戸建の実勢価格を無料で知ることができる(ただし、個別の不動産取引が特定できないように丁目単位の所在地情報は開示されていない)。
間取り、築年数、沿線などを指定すると、該当する物件の情報が分布図で表示される。
たとえば都心5区の検索結果は次のように表示される。
直近2年間の「平均成約価格・平均m2単価・平均専有面積」「間取り別件数」「築年別件数」の推移をグラフ表示することもできる。
※その他の中古マンションの相場を知るためのサイトについては、「中古マンションの相場を知るための厳選サイト(まとめ)」を参照。
5.特定の中古マンションの時価をピンポイントで知る方法
住まいサーフィンというサイト(2004年4月開設)で、特定の中古マンションの時価をピンポイントで知ることができる(次図)。
首都圏と近畿圏の物件が対象。
サイト運営者代表の沖有人氏の名字を取って「沖式価格評価」と命名されている。
ただし、全てのコンテンツを閲覧するためには会員登録(無料)が必要。
⇒新築、中古マンションの価格妥当性がわかる【住まいサーフィン】
6.中古マンション購入の落とし穴
安い中古マンションにはそれなりのワケがある。
気を付けたいのは次の5つ。
- ババ抜きマンション
- 事故・訳ありマンション
- 「既存不適格」マンション
- 定借マンション(使い捨てマンション)
- 下駄ばきマンション
以下、簡単に解説しよう。
6-1 ババ抜きマンション
ババ抜きマンションの典型的な物件としては、バブル期に建てられた、苗場スキー場のある新潟県湯沢町のリゾートマンションがある。
この全国一の激安マンションはたったの10万円。バス39分+ 徒歩5分、築30年の1K間取り。
管理費と固定資産税を負担したくないオーナーが、タダ同然で売りに出している。
一度買ったら、マンションが朽ち果てるまで、第三者に売却できない限り、毎月、管理費(8,900円)・修繕積立金(1,100円)を払い続けなければならない”ババ抜きマンション”だ。
※詳しくは、全国で最も安い中古マンションは、10万円の”ババ抜きマンション”参照。
6-2 事故・訳ありマンション
「事故物件」や「ワケあり物件」は値段を通常より大きく引き下げているケースが多い。
自殺や他殺、火災などがあった事故物件、訳あり物件は、不動産版ウィキリークス「大島てる」サイト(2005年9月開設)で調べることができる。
ワケあり事情に頓着しない人にとっては、「事故物件」や「ワケあり物件」でもいいのかもしれないが。
※事故物件の詳細については、「事故物件とは」参照。
6-3 「既存不適格」マンション
建てられた当時は違法でなかったものの、その後の法改正によってその建物が法に適合しなくなった状態が既存不適格。
建替える際には、それまでよりも規模の小さなマンションしか建てられない。
各戸の専有面積を減らすか、戸数を減らさなければならないので、建て替え費用が高くなる。よって資産価値は低い。
既存不適格で、寿命が尽きそうな古いマンションには、激安であっても決して手を出してはいけない。
6-4 定借マンション(使い捨てマンション)
特に更地返還義務のある定借マンションには注意が必要だ。
たとえば、50年後にマンションの解体が義務付けられている定借マンション。40年を経過したあたりから、マンションの修繕にあまり費用を掛けなくなる可能性が高い。
分かりやすくいえば、49年目のマンションを修繕しようというインセンティブが働かないから、ボロボロ状態になっているかもしれないということだ。
このことは、一般の分譲マンションについても同様なのだが、50年後という解体期限の決められた定期借地権付きマンションであるがゆえに、スラム化現象はより確実に生じる。
資源の有効活用が叫ばれる中、定期借地権付きマンション(=使い捨てマンション)の行く末が気になるところだ。
6-5 下駄ばきマンション
下履きマンションとは、1階に店舗が入っているマンションのこと。
1階にコンビニが入っていたりすると、便利そうだがそうではない場合がある。
人の出入りが24時間あるので、深夜の騒音問題に悩まされることはないだろうか。
7.最近浮上している新たな問題
7-1 羽田新ルート問題
2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて、羽田空港の国際線発着回数を増やすため、都心上空を飛行する羽田新ルート計画。20年3月29日の運用開始が現実味を帯びてきた。
羽田新ルートの高度が低い品川区の中古タワーマンションの平均単価が上昇しているのに、羽田新ルートに近い4物件には下落傾向がみられる(次図)。
「中古タワマン相場への影響(品川区)」を更新
できれば、羽田新ルート周辺のマンションは避けたい。
⇒羽田新飛行ルート直下の地域かどうか、簡単に知る方法
7-2 民泊問題
ただでさえ、都会のマンションではお隣さんがどんな人がいるのか分からないのに、民泊仲介サイトAirbnb(エアビーアンドビー)を利用して不特定多数の人間がマンションを出入りすると、これはもう安全・安心から程遠い状況だろう。
ここは管理規約で民泊禁止を明記したマンションを選びたい。
7-3 中国人の「爆買い」
合意形成が難しい都会のマンションに、中国人の「爆買い」が加わると問題が複雑化する。
中国人のマンションの「爆買い」状況については、中国人のマンションの「爆買い」を検証してみた 」参照。
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